阿部譲二のMのある風景―ニューヨークSMクラブ(第四話)


ニューヨークSMクラブ(第四話)

 アルバイトを始めて二カ月が過ぎ、そろそろ限界を感じていたケンに、店のマネージャーから思いがけない申し出があった。ケンの常連客の一人であるバーバラと名乗る金髪の白人女性から、パーティへの「出張奉仕」が可能かどうか、打診があったというのである。彼女の親友が近く結婚するので、親しい仲間だけでその前夜にお祝いのパーティをするというのだ。
 アメリカでは初婚の場合、独身に別れを告げる内輪のパーティを式の前夜に催す習慣がある。それも男女別々のパーティで、花婿の方はバチラ―ズ・パーティ、花嫁の方はブライダル・パーティと呼ばれ、それぞれ友人たちが二人に夫婦の性生活へのアドバイスをして、初夜をスムースに迎えさせるという趣旨で始まったとされる。男ばかりのバチラ―ズ・パーティの場合は女性の、女ばかりのブライダル・パーティの場合は男性のプロの芸人を雇って新郎新婦にセックスの手ほどきをするのが普通だが、実態は独身最後の夜を楽しむ乱交パーティといった性格のものだった。
 支払いは店での奉仕の倍額出すし、チップも弾むとのことだが、その代わり出張すれば店で禁止のクンニも違反にならないのでケンの舌をもっと自由に使いたい、それと女性たちの中には男に飲尿させてみたいと言う者が居るが、対応して貰えるだろうかとの問合せだったそうだ。
 何のことは無い。店での屈辱がプライベート・パーティに席を変えて増幅され、大勢の女性たちに笑い者にされるわけで、ケンにとって到底、首を縦に振れるものではなかった。しかし、最近のツァーバスの日本人女性客たちに強制される屈辱はエスカレートする一方だったし、評判が評判を産んで、このところ週に一回の割でバスが店に乗り込んで来るようになっていた。また彼女らを引率するツァーコンダクターの女性たちには店から無料券が出され、ケンを二重に悩ませることとなった。圭子と名乗るケンの好みだったアナルの感度の良い例の女性も、その後何回か無料券を使って彼の前に現れ、宣言通り奉仕の都度ケンに小水を飲ませて辱めた。
 ケンは結局、パーティに出張奉仕する代りに、ツァーバスの受け入れは月一回に制限することで店のマネージャーと妥協することになったのである。早速、詳細打合せのため、パーティの司会をするバーバラが、他の幹事役の女性二人を連れて店にやって来た。
応接室の片隅にある会議机の前に座ったケンは、三人の上流社交界の白人女性たちと向かい合うことになり、思わず圧倒される思いだった。三人とも大柄なグラマーでそれぞれ個性的な美人である。ことにバーバラには、ケンが店に出て以来10回以上奉仕させられていて、その美貌は便座の下からあこがれの気持ちを込めて垣間見ていたのだが、それより肉付きの良いピンクの尻割れ、その強い臭気、そして盛り上がったアナルの菊座の味と感触をより身近なものとして馴染んできた。
英語には普段は不自由しないケンだが、精いっぱいの敬語を使おうとすることもあって何時になくどもり勝ちで、しかも伏し目勝ちで傍目にも無様なほど卑屈な態度になってしまう。
「ユー・メイ・シット・オン・ザ・フロアー……イフ・ユー・ライク(お前、床にすわった方がいいわよ)」
 バーバラは、おかしそうにケンに声を掛ける。怪訝な連れの二人に、「こいつ、何時も私の尻の穴を舐めてるから、恥ずかしくてまともに顔が見られないのよ。股の間から見上げてないと落ち着かないんだわ、きっと」と早口で説明する。蔑みの笑みを浮かべながら横のソファーに移った三人の前で、言われるままに床にひれ伏した姿勢をとると、不思議なことに落ち着きが戻った。そう、ケンの心に潜んでいた白人女性に対する憧れと、これまで繰り返された屈辱の奉仕から生まれた劣等感が、そうさせたに違いなかった。
「ツーデイ・ウィアーヒア・ツー・トライ・ユアサービス(今日はお前の奉仕ぶりを試しに来たのよ)」
 バーバラは多少高圧的な口調になって、威厳のある態度を取る。
「レイダウン・オン・ザ・フロア。アンド・アスク・アワ・アスホール(床に寝て私たちの尻の穴をせがむのよ)」
 ケンはまるで催眠術にでも掛ったように、言われるままに床に仰向けに寝る。
「プリーズ・レット・ミー・キス・ユア・アスホール(どうか、貴女たちのお尻の穴を舐めさせて下さい)」
 屈辱の願いを自ら口にさせられ、さすがに恥ずかしさで顔が火照った。
 バーバラはクックッと笑いながら、ケンの顔を跨いで立つ。いつもは便座の穴から奉仕の最初と最後にチラッと目に入るだけだった女の股間がスカートの下からじっくりと覗ける。白人女性特有の形の良いボリューム感のあるヒップが、そしてレース付きのパンティ越しに陰ったクロッチ(股間)が彼を威圧した。
 スーッとそれが目の前に近づき、彼の顔を擦るようにしてパンティが脱ぎ下ろされると、そこには何時もの懐かしい彼女のアナルがあった。何時ものように菊座を唇に押し付けられ、舌を出すと括約筋に力が込められて穴が開きケンの舌先を吸いこんだ。同時に鼻に押し付けられた女の膣口からむせるような臭気が立つ。舌を一杯に伸ばしてヌルッとした粘膜の中をまさぐるように舐めると、こびりついていた糞滓が融けてピリッとした苦みが味覚を刺激した。
「サック・アンド・テイスト・ウエル(吸って、よく味わうのよ)!」
 命ぜられるままに菊座を吸うと、チューッと音がして苦い液が口いっぱいに広がった。途端に女たちの笑い声がはじけ、笑い者にされているみじめさが身に沁みた。
「イエロー・スワイン・インディード(本当に黄色い豚ね)!」
「レッツ・コール・ヒム・アスホールスレイブ(こいつ尻穴奴隷と呼んでやろうよ)!」
 横に座っている女たちは、思わず軽蔑の念に駆られて口々に嘲りの言葉を投げかけた。
「ナウ・スペッシャル・サービス・トゥデイ(今日は特別な奉仕をして貰うわよ)」
 アナル舐めが一段落すると、バーバラはそう言いながら身体の向きを変えてケンの足の方を向いて跨り直す。今まで舐めていたアナルが今度はケンの鼻孔にあてがわれ、代りに膣口が唇を覆った。同時に少し体重を掛けながら、女の腰がゆっくりと前後に揺れる。
「スティック・アップ・ユア・タング(舌を一杯出して)!」
 女の腰が揺れる度に、ケンの舌が膣口とクリトリスの間を行き来する。ピチャッ、ピチャッと淫靡な音を立てて女の股間が男の舌を、唇を、そして顔面を蹂躙した。
バーバラが派手な声を上げて果てた後、二人の女が待ちかねたようにケンに近寄る。先ず、スペイン系の彫の深いブルーネットの美女が、軽蔑し切った態度でケンの頭を軽く靴の先でこづいてためらいも無く男の顔に跨った。
予めパンティをソファーで脱いで来たと見え、黒い陰毛で覆われた尻割れがいきなりケンの顔に擦りつけられた。バーバラへの舌奉仕を見ている内に発情したとみえ、べっとりと粘液にまみれた股間がむせるような性臭と共に、男の舌と唇を貪欲に求めてケンの顔の上でグラインドする。
「ユー・スワイン。ティスト・マイ・ホリー・ボトム(豚よ、私の尊い尻を味わうんだよ)」
 10分ほどで果てると、女は満足そうに眼をほそめ、尻を上げてソファーに戻った。
最後の女は一番若く、亜麻色の髪の白人美女。バーバラよりも引きしまった体形で尻のふくらみと形の良さは抜群。男たちにグレート・アス(いいケツしてる)と声が掛るタイプだった。続いてケンの顔に跨ろうとしたが、その汚れぶりを見るなり「私の尻が汚れるから洗っておいで」と命じる。
隣のバスルームで顔を洗いうがいをして応接室に戻ると、ドアのところで待ち構えていた女に四つん這いになるよう命じられた。背中に跨った女はベルトでケンの尻を叩き部屋の中を一周させる。他の二人が座っているソファーの前でフロアの上に仰向けに組敷かれ、顔に股間をべったりと当てがわれた。
如何に体格の良い白人女性とはいえ、女に無理やり手籠めにされる悔しさはひとしおである。
「リック! アンド・プリーズ・ミー(舐めて私を喜ばせるのよ)」
 いきなりクンニを強制され、女の尻の下でもがきながら辛うじて呼吸を確保し、懸命に舌を動かした。それに呼応するように女のクロッチ(股間)がケンの顔の上で躍動する。女が男の顔の上にへたり込んで、達した後の余韻を楽しんでいる間、彼は懸命に女の尻の下から脱出しようともがいた。その動きを封じるように女の太ももがケンの両耳を挟んで固定する。
「レット・ミー・ピス・インツー・ユア・マウス(口の中に小便するわよ)」
 慌てて空けた口の中に女の汚水が注ぎ込まれた。その塩辛いしつこい味に思わず呻き声が出る。
「ジス・イズ・ア・グッド・ピスポット(こいつ、いい便器だわ)!」
 とたんに、三人の女たちの笑い声が部屋にこだました。

(第四話完)
                   


(完)