阿部譲二のMのある風景―ニューヨークSMクラブ(第三話)
ニューヨークSMクラブ(第三話):
しかし20分ほど経つと、再びツアーコンダクターの女性の声が響く。
「皆さーん。また始めますよぅ。……時間が余り無いから急いで下さーい」
ばたんとブースのドアが開き、ケンの視界が再び奪われた途端、異臭と共にグニャリと女の股間の粘膜が彼の唇と鼻を覆う。そして、少しでもケンの舌の動きが弱まるとレバーが引かれて呼吸が奪われる。それが再び何度となく繰り返されるのである。
しかも、ブースの外で順番待ちの女とのドア越しの会話がケンの屈辱感を一層煽った。
「ね、ねぇ。そいつの舌の具合どおお?」
「一応、気持ち良いわよ。でも私、クンニじゃないといかないの」
「いいじゃないの。クンニさせちゃいよ。罰金取られるわけじゃないしさ!」
「でも、彼氏とさっきやってきたばっかだしさ。……それに、アメリカのホテルにはウォッシュレットが付いてないから、汚れたままだよ。もちろんビデもなかったしさ。」
「いいじゃない?ビデ代りに跡を清めさせたら。」
「そうだね。やってみよう。……ホレ、豚!こっちをお舐め。……そうそう、そこを吸うんだよ。……ホラ、吸わないと息が出来ないようにするよ。」
見知らぬ女に豚と呼ばれ、膣口を宛がわれて男とのセックスの残渣を吸わされる。その屈辱にケンの頭の中は真っ白になった。どうともなれと、半ばやけ気味に膣口に舌先を差し入れながら吸う。ズズーッと音がして中に溜っていた精液が吸い出されて口に溢れた。
「飲んだ、飲んだぁ……こいつやっぱ人間じゃないよ。豚だよ、豚。……ホラ、残らない様にすっかり吸うんだよ。……そうそう、今度はその周りを舐めて綺麗にしな!」
膣口からクリにかけて舌を這わせると、ねっとりした酸味のする糊が舌に絡んだ。
「ア、 アッ……アー」
思わずケンの口からくぐもった悲鳴に似た声が漏れる。
「どうしたの?……何したの?」
ドアの外からの声。
「フフフ、こいつに私のマン滓を舐めさせてんだ。……ホラ、お前の餌にちょうどいいわ。よく味わって食べな。……そうそう、おいしかったら、ブウブウ鳴いてみな。……ホレ、おいしくないのか?……これでもか!」
鼻孔を女の股間に塞がれる恐怖に、ケンは思わず言われたように豚鳴きをする。
ドアの外で聞き耳を立てていた女たちからドッと笑い声が上がった。
同時にケンの胸の中でも抑えていた屈辱感が爆発して豚鳴きが嗚咽に変り、悔し涙が目尻を伝った。
「ホラ、時間が無いよ。食べ終わったらクリをお舐め。……そうそう、もっと舌を動かすんだよ。」
軽くレバーを引きながら女は尻を前後に揺らし、ケンの顔にクリを押し付ける。ピチャッ、ピチャッと淫靡な音を立てて女の股間がケンの唇と舌を蹂躙した。無限に続くかとも思われる屈辱の時間が流れ、そのうち女の尻の動きがひときわ激しくなり、息遣いが荒くなった後、ようやく果てる。
気配でそれと察した次の女は、同様のサービスをケンに要求した。膣の中に精液は無かったものの、便座に跨る瞬間に下から垣間見た女の股間は白い恥垢でべっとりと覆われている。それを舌で掬うように舐め取らされるケンは情けなさのあまり涙が止まらなかった。
次々と口伝えされたとみえ、後半の殆どの女がアナル舐めの後にクンニを要求し、彼女らが「豚の餌」と笑いながら名付けたマン滓も、たっぷり食べさせられたのだった。
ようやく最後の女性が終わると、ツアーコンダクターの女性が様子を見に来た。便座の
穴から覗き込む女の顔は若やいで輝いて見えた。ケンの好みのキリッとした美人である。
「アラ、臭いわ。……ずいぶん酷使されたようね」
「ひどいじゃないですか。クンニ禁止なのに。……それにティッシュで清めてからと書いてあるでしょう。みんな英語が分らない人たちのようだから、あんたから注意しておいてくれないと……」
彼女に一目で好意を抱いた彼は、思わず甘えるように訴えた。とたんに女の顔から笑みが消え、硬い表情になる。
「私が今、ここに何をしに来たのか分かってないようね。……もちろん、お前の苦情を聞くためじゃないのよ。……これから30分間のフロァショーを皆が見ている間、お前の舌を使いに来たのよ。分かった?」
女は頬をすぼめると便座の中のケンの顔にペッと唾を吐きかける。ねっとりとした女の唾でぼやけた視界が、すかさず彼女のぽってりとした肉付きの良い尻で覆われた。
「さっき覗いた時、お前、みんなに豚と呼ばれて、汚い餌を食べさせられてたじゃないの。……お尻の穴を舐めるだけでも最低なのに、女の股に溜ったマン滓まで舌を鳴らして食べるなんて、豚以下だわ。……そんなお前が私に対等な口をきくなんて、失礼だと思わないの?……コレ、早く舌を出さないか!」
目を合わせた時に感じた暖かい雰囲気が裏切られた思いで、鈍く舌を動かすケンの顔の上で女の菊座が微妙に震える。明らかに感じていることが窺えた。因みにケンの経験では、アナル舐めでこれほど感じる女性は滅多にいない。殆どが、クリ派か膣派で、アナルの方に関しては、一応気持ちは良いが頂点を感じるまでいかないという女性が多く、時にはくすぐったがる者さえいる。だが、この女は例外の部類だ。
「うっ、むむぅー……いいー」
女のよがり声を聞いて、ケンは舌先を穴に差し込み唇で括約筋全体を包み込むようにしながら吸った。苦い汁が口の中に流れ込んだが、同時に女の股間が痙攣して達したことが分かり、奇妙な達成感を感じる。しばらく余韻を楽しんでから女はゆっくり尻を挙げた。
「よかったぁー……また来て使ってやるからね。……ホラ、ここにチップを置いとくよ!」
5ドル札をポンと床に投げて立ち去ろうとした女は、振り返り、思い付いたようにケンの顔を見やった。
「そうだ、お前、さっき私に失礼な口をきいたわね。その罰を忘れてたわ。」
女の尻が再び落下しケンの顔面を覆う。尻をもぞもぞ動かしてアナルを鼻孔にあてがった。プスッとガスが注入される。先ほどの女の場合より量は少ないものの臭気が異常に強かった。微かな好意を抱いた女にまで無残に卑しめられたケンの口から、ウウッとくぐもった呻き声が洩れる。
「これだけじゃないのよ。……フフフ、ホラ、口を開けて!」
大きく開いたケンの口中にすかさず女の汚水が注ぎ込まれた。意表を突かれてむせながら、懸命に女の小水を飲み込むケンの目尻から何度目かの悔し涙が伝って流れる。
「これで、自分の身分が分ったかしら?……今度使う時も飲ませるから、この味を忘れずに覚えておくのよ!」
(第三話完)
(完)