阿部譲二のMのある風景―屈辱の周辺#3痰壺


痰壺

 「女性の痰壺にされる」屈辱は、私の視点による先の屈辱のランキングでも19/29と、かなり高く位置づけされています。「女性に顔に唾を吐きかけられる」よりも上位です。具体的な行為としては、男性に口を大きく開けさせて女性がその口の中に唾混じりの痰を吐き込むのが一般的です。男性の口に漏斗を咥えさせてその中に吐き込んだり、コップの水の中に吐きだしてそれを飲ませたりすることも考えられますが、間接的になるので屈辱度が少し落ちます。女性がズズッと鼻を啜りググッと喉を鳴らして口の中に痰を溜め、男の口の中にカッと唾と一緒に勢いよく吐き込むのが理想です。
 ヤプーズビデオで多くの女性たちに次々と痰壺にされるM男性のシーンがありますので、興味があればご覧下さい。
 なお、私の新作(未完成)の一部に「痰壺シーン」を取り入れてみました。そのさわりの部分を以下に抜粋します。


犬の契り
 結婚披露宴に引き続いて計画された若者たちだけの披露パーティは、未だ始まったところである。
「この席上に新婦の元彼、田中幸夫を呼ぶのに反対の方もいらっしゃるようですが、今日の目玉イベントの主役でもあり、皆さんにもお楽しみ頂けると思いますので、幹事が独断でこれから連れてまいります。」
 幹事の近藤小夜子は、そう言い残すと夫と共に退席して、隣の控室に入った。
 そこには、驚いたことに、パンツ一枚で犬の首輪を嵌められた幸夫が床にへたり込んでいる。これからの屈辱を思うと悔しさが頭を駆けめぐり目が潤んでいた。
「用意はいいこと?すべて打ち合わせ通りにするのよ。……間違えたり、途中で逃げ出したりしたら、あの懲罰要求書違反で訴えられるわよ。」
「いいか、お前は痴漢で捕まった変態だということを忘れるなよ。どんな無理難題でも反抗したり、服従しなかったら一年の懲罰期間が二年にも三年にも延びるのだからな!」
 小夜子とその夫の言葉に頷く幸夫の首輪には、小夜子の手で赤い曳き紐が付けられた。
 そのまま小夜子夫妻に曳かれて四つん這いでパーティ会場に入る。
 その姿に会場の好奇の目がいっせいに集中した。
「皆さん、新婚夫婦の犬の入場でーす。」
 ドーッとどよめきが沸き起こる。部屋の中央に置かれたマイクの下で小夜子の足元に犬座りしながら、幸夫の胸の動悸がひときわ高まった。
「この犬は、つい先ほどまでは田中幸夫という人間だったのです。痴漢という恥ずべき行為を償うために、このほど新婚夫妻の犬として飼って頂くことになりました。……そこで、皆さんの前で新婚夫妻と犬の契りを結んでもらうことになったのです」
「質問でーす。……犬の契りって何をするんですか?」
「それは、これから見てのお楽しみです。……要は、これから一年間、香川照男、麗子さん夫妻に犬として飼って頂く訳ですから、その犬としての身分を認識するためのセレモニーを行うのです。特にこの犬にとって新婦の麗子さんは今度の事件で自分を捨てた元婚約者なのですから、きっと感無量の思いでしょう」
 会場は好奇心に包まれる。
「まず、三三九度の契りです。……照男さん、麗子さん中央にお越し下さい。」
 小夜子に促されて、二人は四つん這いの幸夫の前に立った。
「この儀式には、お酒ではなく新郎新婦の唾と痰を使います。……それも盃なしに直接犬の口の中に吐き込んで頂きます。いいですか?……新婦の麗子さんからどうぞ……犬は大きく口を開けて!」
 進み出た麗子は、膝まづいて口を大きく開けた幸夫に近づき腰をかがめた。
「まづ唾を溜めて犬の口の中に吐き込んで下さい。……犬は目を閉じないで……そうそう、御主人の唾をよく味わうのよ!」
 麗子は幸夫の口に顔を寄せると、頬をすぼめ自分の口の中に溜めた唾を「ペッ」と男の口中に吐き込んだ。意外に量が多く、飲みこむとゴクンと音がした。会場から一斉に拍手が起こる。幸夫の顔が無念さに歪む。
「ワンストライク!…それを3回繰り返して……そうそう、その調子よ。……ツーストライク……もうひとつ、ストラックアウト!……次は選手交代して照男さん、お願いしますぅー。」
 男の唾は麗子のものより三回とも量が多く、何よりも自分の恋人を奪った憎い男にこんな形で皆の面前で辱められていると思うだけで気が狂いそうだった。
「三三九度ですから、あと三回づつ、あわせて六回をお二人に追加してお願いするのですが、今度は唾だけでなく痰をお願いします。……つまり犬として御主人たちの痰壺として使われる悲哀を味わってもらうためです。……さあ、どうぞ、麗子さんから!」
 小夜子に再び促され、麗子はその表情に微かに憐みの色を浮かべて再び幸夫の前に進んだ。鼻を啜って喉を「カーッ」鳴らし痰を舌の根元に溜めると「ペーッ」と首を振りながら幸夫の口中に痰を吐き込む。ねっとりした女の痰が幸夫の舌の奥にまとわり付いた。
「痰壺へストラーイク!」
 小夜子のひときわ声高なコールに、今度はドーッと会場が笑いに包まれる。
 しばらく間隔を置いて2回目、そして3回目の痰が幸夫の喉を直撃した。塩っぽい痰の味とねっとりと口中全体が覆われる不潔感に胸がつぶれる思いである。
 でも、照男が交代すると幸夫の屈辱感は倍増した。男の痰はその量も多く味も比較にならぬエグさだったのである。ゴクンと音をたてて飲みこむ幸夫の姿が皆の注視の的になった。
「きもーいっ!」
「ここまで落ちるかぁ……とても、人間とは見えないわね」
「犬にふさわしいざま!……痴漢するとこうなるんだ!」
 女たちの呟きがひときわ目立った。
 最後の三回を終えた時には、幸夫の顔は悔し涙でクシャクシャだった。
 でも、それは未だ序の口だったのである。
(引用完)


(完)