阿部譲二のMのある風景―顔面騎乗の周辺


英語ではFace sitting、日本語では'顔騎'と略すこともあります。数年前には顔面騎乗専門の掲示板があり、私も何度か投稿しました。Mに目覚めた男性が最初に興味を持つのがこのプレイという人もいます。男性の好奇心をそそる女性の秘所を直接顔で受け、その匂いと感触を下着越しに愉しんで興奮するのが自然な展開です。その意味では女性に征服されることで性的に刺激されるMの感性を、ソフトに、或いは人によっては強く刺激するプレイと言ってよいでしょう。

 昔、奇譚クラブで「ビィーナスの重石」と題する顔騎をハイライトにしたM小説が連載されたことがあり、毎回、胸を躍らせて読んだものです。M男性にとって、顔騎は女性上位の象徴と受け止めるのですが、Face sittingの愛好者はそうとは限りません。女性の性臭を嗅がされて興奮する、一種のセックスの前戯と取る人が、特に海外では多いようです。

 ですから、顔騎のやり方が違います。女性のバギナに下着越しに顔を密着させ、想像をたくましくしながら性臭の刺激を満喫するセミ・ノーマル派に比べ、M男性はむしろ女性の肛門を鼻に押し当てられて臭気を嗅がされ、屈辱感に酔うのではないでしょうか?それも、下着越しでは物足りなくなって、素尻を鼻や唇に押し当てられ、女性に完全に征服された我が身のみじめさを噛みしめて興奮するのでは?

 私の小説「転落のフライト勤務」(スレイブ通信では屈辱の女子寮・懲罰勤務)では、トレーニング用のペダル漕ぎマシンのサドル代りに、顔を女たちの尻に敷かれる男が登場します。ペダルを漕ぎながら女たちも感じてしまう設定です。でも、これは昔のSM雑誌でも取り上げられている題材で私のオリジナルではありません。初期のヤプーズビデオでは、しばしばこのシーンが視覚化されています。

 顔騎のまま女性に放庇されてM男性が屈辱にまみれるシーンが、私の作品によく登場します。それも肛門を鼻孔にあてがわれ、ガスを注入されて、悔しさのあまり女の尻の下で嗚咽に咽ぶ設定が私の好みです。私にも経験がありますが、初心者にとって食糞よりもとっつき易いプレイです。
顔騎状態でのオーラルセックス、つまりM男性にとって、自分の顔に跨る女性への舌奉仕は大きな興奮をもたらしてくれるプレイです。
中でも顔に跨った女性に命令されて、言われるままに舌を動かす屈伏感、汚れた女性の股間を無理やり舐め清めさせられる屈辱感、そしてアナルへの舌奉仕と舌先を差し込んでの清めを強いられるみじめさと被虐感……それらはM男性にとっての醍醐味と言えると思います。性感が高まった女性は男の顔に股間を擦りつけて前後にゆすり、頂点に達するまで一方的に男の舌や顔面を自分の欲望のための道具として使い続けます。そうしためくるめく経験は、M男性にとって忘れ難いものがあります。

 女性が積極的に股間をM男性の顔面に擦りつける代りに、男性の方から積極的に舌を一杯に延ばし、舌先を尖らせて女性のバギナや肛門に挿入して出し入れする場合があります。顔騎の体位でなければ普通のオーラルセックスなのですが、女性の股間に顔を敷かれる体位だと、どうしても女性にM男が征服されているイメージです。
男性は唇と舌で懸命に女性の性欲に奉仕することになりますが、男の鼻もポイントになります。女性が男性の足の方を向いて跨った場合は、バギナに舌を差し入れる男の鼻にはちょうど女性の肛門があてがわれます。女に肛門の臭いを嗅がされながらバギナやクリトリスへの舌奉仕を強いられるM男性は、女性への屈従をいやでも脳裏に擦り込まれる結果になります。
この体位でのセックスの後始末も同様です。臭気を嗅がされながら中出しの精液を吸わされる屈辱に身体を震わせ、たまたま同時に女性のガスがタイミングよく男の鼻孔に注入された場合には、極度の悔しさと痺れるような転落感を味あわされるはめになります。
女性が男の頭の方を向いて跨った場合は、女性は自分の股間に舌奉仕する男の目を見下ろしながら嘲りの言葉を浴びせて辱めることが出来ますが、その体位でアナル奉仕をさせた場合は、男にバギナの性臭を嗅がせながら、その鼻頭にクリトリスを擦りつけて楽しむことも可能です。

 あるS女性から交際雑誌に出されたメッセージですが、「私はM男性には、その顔に跨って性的な奉仕をさせることにしています。男の好みや嗜好は一切無視して、私の欲望のままに道具として奉仕させるのです。ですから私がスッキリするまで何回でも、何時間でも、舌や唇での奉仕を強制します。こうして、私の性具になり下がったM男性を好きな時に呼び出して使い性欲を処理します。また、場合によってはパーティへ伴って他のカップルや女性たちに奉仕させたり、親しい女友達にレンタルしたりします」とありました。早速、心を躍らせて応募しましたが、残念ながらご縁がありませんでした。

 最後に、顔騎が圧迫あるいは窒息プレイに発展する場合、或いは最初から苦痛を与えることを目的とするケースがあります。いわゆる「尻責め」です。S女性から強制された顔騎によって呼吸を奪われたM男性は、女性の尻の下で身をよじってもがきます。そのみじめさと哀れさは、女に鞭で打たれて這いまわる男の情けない姿に通じるものがあり、M心をくすぐります。しかし、実際のプレイでは苦しさが先に立って耐えらないことも多いと思います。

 顔騎をプレイとして愉しむための用具があります。市販品ではありませんが、仮に「顔騎椅子」と呼んでおきましょう。簡単なものではホームセンターでも売っている身障者用の便座に足を付けたもので、便座だけ買って自分で折りたためる足を取り付けることもできます。
男性は仰向けに寝て便座の下に顔を入れます。便座には当然女性が座るのですが、男性の頭の下に座布団などを入れて高さを調節して密着の度合いを調節します。或いは便座の下にネットやストラップを取りつけて、便座に座った女性が尻に当たる男性の顔への圧迫度を好きなように調節出来るようにすることも可能です。

本格的なものでは、ヤプーズビデオで使用しているものがあります。木製のがっちりした構造で、横臥した男性の両手両足を留めるための固定具が付いたもの、勿論手作り品です。こうした手足の拘束具は、女性の尻で呼吸を奪われた男性がもがく有様を観客たちが鑑賞するのに役立ちますが、その場合この顔騎椅子は、M男性に甘い屈辱を与えるだけでなく、窒息の苦しみや恐怖を与える責め具に変ってしまうのです。