阿部譲二のMのある風景―人生案内#1
投稿者からの相談:上司気取りの元部下が昇進(2010年5月28日読売新聞朝刊)
男性会社員。春の人事異動の季節が過ぎましたが、不安に押しつぶされそうな日々を過ごしています。一年前、前の部署でうつ病になりました。当時は営業でしたが、部下の女性が取引先から気に入られ彼女のおかげで売り上げがアップ。彼女はいつしか上司気取りになりました。同僚をあおり、私からの電話を話の途中で一方的に切るように仕向けたりしました。私はうつ病になり、今の部署に異動しました。
その彼女は先日課長に昇格。社内で女性の出世頭と持ち上げられています。あれほど自分を苦しめた彼女が昇格したと思うと胸がつぶれそう。平常心を保つよう心掛けていますが、朝エレベータで会って当時のように見下げられるのが嫌で、避けるように早朝出勤しています。
いつか、彼女の部下になる日がくるのでは。そう考えると仕事が手に着かないし、またうつ病になるのではないかと心配です。(A男)
カウンセラーからの回答:
これは悔しいですね。あなたの気持ちよくわかります。「嫌なやつで、しかも有能」というのが自分にとって一番始末が悪い存在ですから。無能だったら、女性でもあることだしまだかわいげもあるのですが……。ただ、いつまでもこの感情にこだわるべきでないことも確かでしょう。ここは多少無理があったとしても、いろいろな考えを出して見ることを勧めます。
まずは彼女が昇格したのは悔しいが、彼女がどう出世しようと自分には関係ない。自分は自分の仕事を続けるのみ、という割り切りが基本です。確かに彼女が上司になるのは悪夢ですが、この可能性は低いと思います。彼女はあなたを見下していたのでしょう?これはむしろ幸い。ダメな部下を下に付けたいという上司はいないですから。
また「あんなに無礼で人をあおったりするようじゃ、彼女も長くはもたないな。しょせんそこまでの女さ」とむしろ同情しても良いかもしれない。人をうつにするような行動は、あなただけに向けられているとは思いにくいですからね。こういう人は必ずどこかで馬脚を現します。その意味では、巻き込まれないようにさけている、というあなたの対応も正解だと思います。
阿部譲二からの回答:
「部下の女性が上司気取り」そして「いつか彼女の部下になる日がくるのでは」といった御心配はもっともです。その可能性は大きいと思います。同僚をあふり貴方をいじめていたのですから彼女はいじめっ子、つまりS的性格を持った女性である可能性が高いかもしれません。彼女のいじめの対象になった貴方はきっと彼女の目から見て「いじめやすい男」「いじめに屈伏する意気地無し」と写っていることでしょう。同じ社内ですから、いくら早朝出勤して彼女を避けても逃げ切れるとは思えません。彼女の目に止まって部下にされ、彼女のストレス解消の道具としていじめ抜かれる日はきっと来ます。私の提案は「逆療法」です。逃げ回ってうつになるより、積極的に彼女に接近して部下にしてもらうのです。尻尾を振って足元にじゃれつく犬は憎めないものです。きっと可愛がって貰えますよ。それとアドバイスですが、彼女の前では必ず敬語を使ってできるだけ卑屈な態度を取って下さい。間違っても反抗的な態度を見せたり命令に背いてはいけません。彼女に咎められたら、足元に土下座して謝るくらいのパーフォーマンスが必要です。そのうち彼女に軽蔑され命令されることが貴方の喜びになる日が来ます。なぜなら貴方の相談の内容や性格に私はM性の目覚めの可能性を見てとっているからです。
投稿者から阿部譲二への連絡文:
先日の阿部先生のアドバイス通りに彼女に接近して機嫌を取るようにしたのですが、結果的に最悪の展開になってしまいました。彼女が課長となった課に先日私が異動になったのです。それも、私の能力を買ってのことではなく、自分の自由になって顎で使えるおとなしい性格の私に白羽の矢が立ったようなのです。何のことは無い、私は彼女の雑用係、つまり小間使いの役どころです。初日から彼女の命令でお茶くみ当番役に降格されました。机も取り上げられ、昨年入社した新人の女子社員の配下にされたのです。女の子に部下として呼び捨てにされ、終日お茶汲みやロッカーの掃除、コピー取り等の雑用をさせられて、悔しさに目がくらむ思いです。昨日は雨だったので入口で課内の全員の靴を拭かされました。身を屈めて女子社員達の靴を拭くみじめさに涙が出ました。これから私はどうすればよいのでしょう。