屈辱の洗脳儀式(前篇)


(雑誌「女神の愛第5号」掲載作品として2013年7月脱稿) 阿部譲二作


屈従への洗礼
 
成田空港を定刻に離陸した機体は、所定の高度に達し水平飛行に移った。
行先は、シリアの首都ダマスカス。
毎週2回の定期便だが観光客の姿は少なく、主な客筋は、石油や化学工業分野のジョイントベンチャーに関係するビジネスマンが大半を占めている。
それも、最近の不安定な政治情勢のせいか、全体的に空席が目立っていた。
 ビジネスクラス最前列の窓際シートを占めているのは、大手の現地化学プラントを支える日本の親会社に勤務する若い男女のカップルである。
と言っても、二人の関係は単に仕事上の同僚だった。
男は山名順平、29歳の独身、スポーツが苦手でどこかひ弱な印象を与える。
国内の工場で現場の施設担当の主任だが、今回は現地の設備点検のため、何回目かの海外出張だった。
女は結城理恵子、3歳下の26歳で本社勤務。
山名が本社に在籍していた時の元部下だった。
彼女は、実は先々月、社内結婚して新婚生活をスタートしたばかりである。
エキゾチックな顔立ちの美人で、なかなかのグラマー。
海外プラントの現地環境法規適合が専門の部署に所属している。
「理恵子ちゃん、つい言いそびれていたけど、この度は結婚おめでとう。……とうとうあの彼氏とゴールインしたんだね」
「そう、あなたと同期の結城幸夫さんとね。……フフフ、ほんとは、あなた、私に捨てられて口惜しいんでしょう。」
 理恵子のからかうような口振りに、順平が思わず声を荒げる。
「馬鹿言うんじゃない。……そりゃ、君には一時とても憧れてたさ。でも、今じゃ結婚を前提に付き合ってる新しい恋人がいるんだ。」
「知ってるわ。……木村幸子さんでしょう?……彼女、私と同い年だし隣の庶務課にいるから、毎日、ばっちりコミュニケーションを取ってるわ。……実は、あなたの人に言えない秘密も聞いてるのよ。」
「秘密って?……」
 山名順平の顔に、ふと不安に似た表情が浮かんだ。
「あなたが未だ童貞だっていうこと。……そして、ウフッ……それを結婚するまで守ってほしいと、彼女に言われてるってこと。」
「そ、そんな……」
 順平は思わず絶句する。
「道理で、私と付き合ってる時にも、キスもしなかったし、ホテルへ誘わなかったわけね。……初めてで怖かったの?……それとも、部下の私に馬鹿にされるとでも思ったの?……もっとも童貞って、いまどき珍しいから、却って気持ち悪がられるかもね」
「………………」
「でも、ひとりでシコシコ処理してるなんて哀れね。……それにあなたったら、オナニー用に幸子に臭い付きのパンティをねだって、断られたそうじゃないの。」
 理恵子の口ぶりには、どこか意地の悪い棘が感じられ、順平は黙り込んでしまう。
「でも、幸子には、小さい頃父親が浮気して両親が離婚したトラウマがあるそうよ。……他の女の手垢が付いた男より、臆病な童貞の方がマシだって言ってたわ。フフフ……なあーにぃ、その顔!……いいわ、このへんで許して上げる。」
「ところで、あなたに重要な話しがあるの。……」
彼女の態度が急に改まった。
「さっき、空港でチェックインした時に、人事の担当者が今日付けの辞令を成田空港まで届けに来たの。……あなたは先にゲートの中に入ってしまっていたから、私がここに預かってるのよ。」
 理恵子は、機内持ち込み用の手提げから白い封筒を取り出し、順平に手渡した。
「こ、これは……」
 内容を一瞥した順平の顔色が変った。
「そう、貴方はもと居た本社の環境施設係に転勤。……つまり、私の今居る職場に出戻ったわけよ。」
「でも、肩書きが……工場では今、ぼ、僕は係長なのに……」
「そう、あなた、ヒラに降格されたのよ。……理由を知りたい?」
「も、もちろん!……」
「あなた、あの“世界の自然環境を守る会”に入ってるでしょう。……そら、大企業が海外プラントで地域の環境を汚染しているって、メディアに告発している民間団体よ。」
「その会には入社したての頃に、こんど君が結婚した結城君に誘われて一緒に入会したさ。……でも、活動方法が過激なので会社から禁止令が出て、すぐ退会したんだ。」
「ところが、貴方の名前が未だ会員リストに残っていたのよ。……しかも、うちの会社をやり玉に挙げた告発メンバーリストにも名を連ねているわ。」
「そ、そんな……退会届は結城君に頼んで、彼の分と一緒に届けてもらってるよ。……」
「甘いわね。……結城はあなたにとって仕事上だけじゃなくって、私をめぐる競争相手じゃないの。……可哀そうにぃ。……あなた、もしかしたらうちの主人に嵌められたのかも。」
「………………」
「でも、もうすべて手遅れ。……彼は私と結婚して恋の勝利者になったし、あなたは左遷された上に降格されたのよ。……それに、実は、あなたにとってもっと口惜しいことがあるの。フフフ」
 キョトンとする順平に、理恵子は手提げからもう一通の封筒を取り出して中身を拡げた。
「ホラ、これは、今日付けで私が本社環境施設係の係長に昇進した辞令。……ということは、あなたは今日から私の部下になったのよ。」
「ぼ、僕が君のぶ、部下だって?……」
「これからは言葉づかいを改めてね。……そう、上司に対しては敬語を使うの。……私は部下に対しては名前を呼び捨てにするし、面と向かっては“お、ま、え”って呼ぶわよ。」
「………………」
「山名!……ホラ、上司の私が、お前の名前を呼んでるのよ!……“はい、係長。ご用ですか?”って丁寧に返事してご覧!」
「………………」
「お前、うつむいてなに黙り込んでるの?……顔を上げてごらん?……アラ、眼が赤いわよ。……そうかぁ。……口惜しくって言葉が出ないんだ。」
「……無理ないかもね。……降格されて年下の元恋人に、部下として呼び捨てにされたんだものね。……でも、礼儀は守ってもらうわよ。常に敬語を忘れずにね。……それに、私の言うことには絶対服従。……ちょっとでも私の機嫌を損じたら、思いっきり虐めてやる。……これはね。会社も了解済みなのよ。」
「不思議そうな顔してるわね。……実は、今度の人事異動は、お前に対する会社の懲罰人事なの。……お前が名前を連ねている“世界の自然環境を守る会”からの今度の告発で、シリア政府からクレームが来てるの。今度の出張は、いわばお前のしでかした不始末の尻拭いってとこ。……事実関係はともかく、少なくとも会社はそう取っているわ。……だからね、私は、お前の監視役、兼、懲罰役を仰せつかってるってわけ。……私の意向次第で、お前は首になるだけじゃなく会社から背任罪で告訴されるのよ。」
「こ、告訴だって?……」
「そう、職務上の機密を外部に漏らして会社に莫大な損失を与えた罪で、法廷に立たされるのよ。……有罪になったら、特別背任罪で収監、……金額が大きいから、そう、禁固10年ってとこね。」
「そ、そんな、ば、馬鹿な!」
「でも、安心なさい。……私の忠実な部下に成りきるのだったら、かばって上げる。会社にも私の懲罰を神妙に受けてるって報告するわ。……そうしたら、お前の首も繋がって木村幸子とだって結婚できるしさ。……それまでにも、ソラ、彼女のパンティだって貰って上げるわよ。ウフフフ。」
 山名順平の心の中は千路に乱れていた。冤罪とも言える身に覚えの無いとがで、元部下であり恋人でもあった、このどこか底意地の悪い年下の女に屈従させられるのである。
でも、この嵐が通り過ぎるまで頭を垂れて耐えるしかない……それが彼の結論だった。
「わ、分かりました。ゆ、結城理恵子係長のぶ、部下として……ふ、服従しますので、……ど、どうか、よろしくお願い致します。……ウ、ウッ、ウッ」
 流石に無念さで胸が一杯になり、嗚咽が込み上げる。
男の屈服の言葉にニンマリと笑みを浮かべた理恵子は、ここぞとばかり、追い打ちを掛けた。
「そう、では、そう言うお前の態度が心からのものかどうか、証明して頂戴。……」
「し、証明って、どうやって?……」
「私の命令だったら、どんなことでもするってことを、見せて頂戴。……」
「………………」
「まず、上司である私とお前とは身分が違うことを、頭に叩き込んで上げる。……それにはお前を洗脳する必要があるわ。……そう、精神的に強烈なショックを与えるのが効果的ね。」
「仰ることが、良く分かりませんが……」
 理恵子の態度が次第に威圧的になってくるにつれて、順平の口調にはおどおどとした卑屈さがにじみ出てきている。
やはり、会社から告発されるという脅しが思いのほか効を奏したのである。
「私の部下にされたのもショックだろうけど、お前をもっと心から屈服させる方法というか、そう、儀式があるのよ。……それはね、お前が私の排泄物を味わうの。うふふ、驚いた?……その昔、ローマ帝国では、身分の差を脳裏に刻み込ませるために、貴族階級の人たちが自分たちの排泄物を奴隷たちの崇拝の対象にし、定期的に味あわせたそうよ。」
「……さて、排泄物にも色々あるけど、とりあえず、お前に三つのチョイスを上げる。」
「………………?」
「オシッコ、うんこ、それに痰汁よ。……そのうち一つを選びなさい。」
「………………!」
「どうしたの、黙っているのなら私が選ぶわよ。……そうね、フフッ、ウンコが良いかなぁ……」
「あ、係長、え、選びます、選ばせて下さい。……で、では、痰汁にします。……」
「そんな言い方じゃダメよ。……ちゃんと礼儀正しくお願いしなさい。」
「結城係長のた、痰汁を、……ど、どうか味あわせて、く、下さい。」
 こみ上げる屈辱感とおぞましさに、順平の舌がもつれる。
「アラーッ、随分汚いものが好きなのね。……キモーイ!……でも、可哀そう!……だって、お前のそのお口、私の痰壺にされるのよ。……アラアラ、お前の目尻から涙がこぼれてるぅ。……そっかぁ、悔し涙かぁ。」
「善は急げって言うわね。……お前がせっかくその気になったんだから、さっそく実行しましょう。……前の方に飲み物を置いてあるパントリーがあるから、そこへ行きましょう。……今の時間だったら人も居ないしカーテンの仕切りもあるから、そこで洗礼してやる。お前の泣きっ面をたっぷり見てやるわ。……さ、早く!」
 理恵子に背中を小突かれながら、順平は重い腰を上げた。
座席の間の通路を進み、機体前方の人気の無い配膳コーナーに入る。
カーテンを引いた彼女は、壁際に置かれた高いスツールに腰掛けた。
「ここに跪いて、顔を上げなさい!」
 理恵子は、顎をしゃくって眼の前の床を指す。
順平が両膝を床に着くと、前かがみになった彼女の豊かな胸部が目の前に迫った。
「口を思いっきり大きく開くのよ。……そうそう、良い子ねぇ。フフフ」
 彼女は、目の前で鼻を啜りあげる。
風邪気味らしく、ズズーッと音が響く。
 続いて、理恵子は喉をカーッと鳴らし、男の口の中にペッと勢いよく痰を吐き込んだ。
 口腔に入った大量の痰汁が舌の上で跳ね、一部が喉の奥にまで達した。
ヌルッとした感触が舌と上愕一帯に広がり、苦みを帯びた塩っぽいぬめりのある痰の塊が舌の上にねっとりと付着し、激しい不潔感が突き上げてきた。
「未だ飲み込まないで!……そう、私の顔を見上げながら口の中全体でよく味わうのよ。……どおお?……今度は、少しずつ飲み込んでごらん。」
 淡いライトに浮かぶ理恵子の勝ち誇った表情を見上げながら、ねっとりした痰の塊を飲み込む。
ゴクンと喉が鳴った。
口惜しさとおぞましさが再び込み上げ、目の前が涙で曇る。
「アラアラ、涙が出るほどまずいの?……でも、その味をよく覚えるのよ。……そう、それが上司である私に忠誠を誓う証し。……これからは、毎日味わって部下の身分を頭に叩き込みなさい。」
 “畜生!……毎日だって?……俺は、こうして永久にこの女の言いなりにされるんだ!”
 順平は心の中で呟きながら、泣く泣く口中の痰汁を飲み干した。
「アンコールよ。……もう一度口をあけてぇ……」
 再び、ズズーッ、カーッ、ペーッと、初回に劣らぬ大量の痰汁が順平の口中に吐き込まれる。
しばらく間を置いて、それは再三にわたって繰り返された。
そのあまりの執拗さに、男の喉から低い嗚咽が漏れる。
「オーオー、お前、泣いてるのね。……じゃあ、この辺で私にお礼を言うのよ。……痰壺にして頂いて有難うございます、これから毎日お願いしますってね。ウフフフ」
 涙声で言われるままの台詞を、繰り返す男を見下ろす理恵子。
その表情には、満足の色と共に高慢な笑みさえ浮かんでいた。

アラブ流の屈辱
 
中継地の香港での給油に手間取り、ダマスカスに到着したのは予定時刻を過ぎていた。
出迎えの車に二時間余も揺られて目的地の工場に到着したのは夕刻である。
人気の無い広漠とした荒れ地の中にポツンと建てられたこの化学工場には、百名近い現地雇いの作業者を監督する日本人社員が十名近く駐在していた。
理恵子には女子職員の宿舎に個室が用意されていたが、突然の降格人事で肩書きを失った順平は個室の予約を取り消され、男子従業員の寮で現地人の作業者との同室となった。
機内での思わぬショックの連続に打ちひしがれた順平には抗議する気力も残っておらず、時差もあって、工場内の従業員用食堂で軽食をとった二人は、直ぐに寝に着いた。
翌朝、宿舎の水道配管のトラブルでシャワーが使えないハプニングもあって、朝から予定されていた会議の開始が遅れ、加えて参加を予定しているシリア政府の代表者の到着も午後になった。
時間にゆとりが出来たので朝食をゆっくり済ませた後、順平は理恵子に伴われて現地の日本人責任者たちに挨拶に行く。
続いて理恵子が通訳の女性と打合せをしている間に、順平は現地の日本人庶務担当者から降格に伴うビザ更新手続きの説明を受けていた。
管理者から作業者へ資格変更の修正が必要とのことで、パスポートを渡して手続きを依頼した後、理恵子の個室へと急いだ。
理恵子の泊った個室は、日本から役員が訪問した時などに備えたいわゆるゲスト用スイートルームで、寝室と浴室に続いてソファーと会議机が置かれたコーナーが設けられている。
「山名、お前、遅かったわね。……そこへ座って。」
 ソファーにくつろいだ理恵子は、顎をしゃくって横の会議机用の椅子を指す。
彼女の向かいのソファーには、通訳の若い女性が座っていた。
典型的な大柄なアラブ女性で長い黒髪に太い眉、なかなかの美人である。
カラフルな民族衣装に身を包んでいるが、そのグラマーな姿態とボリューム感は隠しようがなかった。
「紹介するわ。……今回通訳をお願いするナディアよ。アラビア語と日本語、それに英語も堪能なの。……実は、私とは中学から高校にかけての同級生。彼女の母は日本人だけど父親はシリア人。家族ぐるみで日本に住んでいた頃、家が近所で親友になったの。……あなたとのことは、あからさまにすっかり話したわ。……フフフ、例の儀式のことも含めてね。」
「そ、そんな……」
 順平は思わず顔を赤らめて絶句する。
「山名さん、可哀そう!……突然、元カノの部下にされて顎で使われる身になったなんてみじめぇ! そのうえ彼女の痰壺にまで落とされたんですって?……でも会社から告訴されるかもしれないようなヘマをしたんだから、仕方ないわね。……そうは言っても、私だったらとうてい耐えられない、きっと首を吊って自殺してるわ。」
「ナディア、さっきの貴女の話、こいつにも聞かせてやるね。……フフフ、実はね、山名。……アラブ社会では人を洗脳して奴隷化する伝統的な方法があるらしいの。……どんなやり方か知りたくない?」
「アラ、理恵子。伝統的というのは正確じゃないわ。昔にあったというだけよ。……でも、排泄物を口にさせるより健康的だし、相応の効果があるかもしれないわね。ウフフッ」
「ナディアの言うにはね、これまで対等な間柄の人間を屈服させて格差を認識させるには、服従のポーズを取らせるのが基本なんですって。……あのぅ……人間って顔を他人の尻に敷かれると征服されたって気になるらしいわよ。……それも鼻に肛門を押し当てられて臭いを嗅がされると、自分がひどく貶められたと感じて、心理的に二度と反抗しなくなることが多いんですって。」
「………………」
「そこで考えたんだけど、例のローマ式儀式にこのアラブ流の屈従のポーズを組み合わせたらどうかしら。……つまり、君は痰壺にされた直後に、私のお尻に顔を敷かれるの。そうすれば痰汁を味わいながら肛門の臭いを嗅ぐことが出来るじゃない?……この二つをセットにした辱めを受けたら、きっと効果が上がるんじゃないかしら。」
「………………」
「ナディアはね、そうした効果は心理的な面が主で個人差があるから、一度実験してみてはどうかって言うのよ。……それで、君ぃ、たった今この場で、しかもナディアの見ている前で試してみるから、逆らっちゃダメよ。いいわね。」
「そ、それは、……どうか、勘弁して下さい。」
 さすがに順平は仰天して、顔を真っ赤にしながら懸命に訴える。
「アラ、お前ったら、私の意志に従わない気なの?……ということは、飛行機の中でのローマ流儀式があんまり効果を発揮してないってことね。……いいわ、これは上司としての私の命令よ。……さ、そこに跪いて口を開けなさい!」
 凛とした理恵子の声音には、妥協を許さない気配がこもっていた。
順平の胸には口惜しさが渦巻いているものの、どうしても弱みを握られているという意識が先に立って反抗を封じられてしまう。
好奇心を露わにしたナディアの視線を気にしながら、順平は理恵子の前に跪いて口を開いた。顔が赤らみ、唇がワナワナと震えている。
「いくわよぉ……ズーッ……カーッ……ペーッ」
 機内での初体験時に似た大量の痰汁が吐き込まれ、ねっとりとした固めの塊が今度は喉の奥を直撃して口腔内に張り付く。おぞましさと不潔感に背筋がゾクッとした。
「口を閉じて床に仰向けに寝るのよ。……さ、早く!……そう、眼を閉じてぇ……」
 理恵子は頭の方を向いて順平の顔を跨ぎ、ゆっくりとその豊かな尻を下ろした。
パンティ越しに尻割れで男の鼻をまさぐると、薄い布地越しに肛門を鼻孔に押し当てながら重量を掛ける。
ムーッとする異臭に、順平の口から思わずくぐもった呻き声が洩れた。
女の股間が顔面全体を覆って順平の呼吸の自由を奪い、懸命に吸い込む息がスーッスーッと音を立てた。
「私の痰汁を味わいながら、肛門の臭いを嗅がされる気分はいかが?……お前にとって私の意志が絶対だってことが身に沁みたかい?……ホラ、ホラ、ホラ」
 理恵子は順平の顔の上で尻をゆっくりと前後に揺すって返事を促す。
苦しげな呻き声に男の屈服のメッセージを読み取った彼女は、ナディアの方を見やって満足げにほほ笑んだ。
 たっぷりと時間を掛けて男の脳裏に屈従のメモリーを擦り込んだ理恵子は、腰を上げてソファーに戻る。
「ナディア、貴女もやってみない?……実験例は多い方が効果の評価がし易いわ。……それに、高校で男いじめのスケバンで鳴らした貴女には格好の獲物よ。……そうだ、こいつからお願いさせてみるわ。」
「山名、お前、聞いてたでしょう。……ナディア様にも今の儀式をお願いしてごらん!……ソラ、土下座してお願いの言葉を言いなさい。」
 初対面の若い外人女性に屈従の儀式を自ら願い出る……その耐えがたい屈辱は順平の理性を麻痺させるほどのインパクトだった。
しかし、いったん与えられた屈辱は、それが強烈なほど、更なる屈辱への転落を拒む気力を人から奪ってしまう。
つまり、女の尻臭を嗅がされながらその痰汁を味わったという既成事実が重しとなって、彼女の命令を拒めなくなるのだ。
……そう、彼の意識はそうした転落のスパイラルに陥ったのである。……それはコントロールの効かない状態、俗に言う“頭の中が真っ白になる”現象を伴っていた。
 催眠術にでも掛けられたように順平はナディアの前に跪き、理恵子に命ぜられた屈辱の儀式を懇願する。
ところが、そのあまりに卑屈な態度がナディアの軽蔑を呼び、却ってその嗜虐心を煽ったようだった。
「情けないわね。お前、それでも男なの?……いいわ、言う通りにして上げる。でも、条件があるわ。……裸になって男だと言う証拠をお見せ!……そして、犬みたいに四つん這いになってお尻を振って見せてごらん。フフフ」
 目の前で理恵子への屈従を見せられたことで、順平を見るナディアの目がガラッと変った。
犬扱いすることでこの男をもっと嬲って、その反応を楽しもうといういたずら心が芽生えたのだ。
 言われるままに、おずおずと衣服を脱ぎパンツを取る。
女たちの好奇の視線を受けながら、四つん這いになって高く突き出した尻を左右に振った。
股間の一物がブラブラ揺れる。
その無様さにソファーで笑い転げる女たち。
と、サンダルを脱いだナディアの素足が男の尻に延びた。
股間の肉塊を女の足指で挟まれ、順平は思わずアッと声を上げる。
執拗な女の足指の動きに順平の一物が屹立した。
「アラアラ、ナディア。……それって、セクハラじゃない?」
「いいの、アラブでは盛りの付いたオス犬は、こうやって可愛がるのよ。……ホラ、もっと尻を振る!……そしてクンクンって犬鳴きをしてごらん!……そうそう、お前、とってもお似合いよ。」
 嗚咽まじりの犬鳴きが滑稽だと、再び女たちの笑いが弾ける。
「ご褒美に例の儀式をして上げる。……ホラ、痰壺男!……チンチンしながら口を大きく開けてぇ……」
 ナディアのすぼめた赤い唇が男の顔に近づいた。
クォーッと喉を鳴らして溜めた痰が、大きく開けた男の口に吐き込まれる。
粘り気の強い痰が丸い塊となって順平の舌を打ち、喉の近くに滑り込んだ。
それは汁というよりブヨブヨとしたゼリー状の塊のまま男の口腔を占拠する。
食べ物の違いのせいか、このアラブ女の痰は苦味に加えてえぐい塩分があり、それが味覚を刺激し、おぞましさと不潔感が順平の頭に刻み込まれた。
「ホラ、今度はケツの穴を嗅ぐんだよ。」
「アラ、ナディアの日本語ったら、しばらく使わなかったせいかガラが悪いわね。」
 ソファーの前の床に仰向けに寝た順平の顔に女の股間が迫ったが、眼の前で止まる。言うに言われぬ異臭がプーンと鼻を突いた。
ナディアが身にまとまったアラブ民族衣装は腰から下のスカート部が長い。
しかし薄手の生地を通した光でボーッと目に映ったのは、黒々とした陰毛だった。
彼女は、下着を付けていなかったのである。
「驚いた?……アラブの田舎では女は生理の時以外はノーパンで過ごすのよ。……水不足でシャワーも毎日浴びられないから臭いも強いわ。……ケツの穴は特にね。フフフ……」
 ナディアは両手で尻割れをぐいと引き開き、せり出した肛門を男の鼻孔に宛がった。
ねっとりとした大きめの菊座が、順平の鼻全体をすっぽりと包みこむ。
「ム、ムーッ、……ム、ムーッ……」
 尻圧で呼吸がままならぬこともあるが、鼻孔に密着した女の肛門から注入される異臭が順平の脳裏に突き刺さった。
その強さもさることながら、若い女性にむりやり肛門を嗅がされる屈辱と情けなさに思わず嗚咽がもれる。
 男の反応を楽しみながら、ナディアはその豊満な尻をゆっくりとグラインドさせた。
鼻の隆起を包み込んだ肛門、そしてその粘膜を覆う糞滓混じりの分秘液がその異臭と共に男の鼻孔に擦り込まれる。
順平のくぐもった呻き声がひときわ高まった。
「良いざまだわ。……男のくせに女のアスホールを嗅がされるなんて、ホントに惨めね!」
「そうよ、こうして洗脳されたオス犬はね、二度と主人に逆らえなくなるのよ。……でも、実は、私、バックも感じるの。もう少し続けさせてね。」
 ナディアの声とともに腰の動きが激しくなり、順平の顔を擦る女の股間からピチャッピチャッと淫靡な音が聞こえ出した。辱めに耐える順平にとっては、二人の会話を聞きながら、自分のみじめさを改めて身に沁みて意識させる屈辱の時間だった。
「フーッ、……こいつの鼻がもっと高ければ、頂点まで行ってしまいそう。……でも、良い気分。……だけど、午後には会議があるのだから、この位にしておくわ。……ここで、こいつに‘止め’を刺しておくわ。いいでしょう?」
「ウフフ、アレね。生理現象だから仕方ないわ。……どうぞ、お手柔らかに……」
 ナディアの尻の動きが止まり、順平は悪い予感で背筋がゾクッとする。と、鼻孔を塞ぐ女の菊座がジワリと盛り上がり、大量のガスが彼の鼻腔に注入されたのである。
「グェーッ……」
 まるで蛙が踏みつぶされ時のような悲鳴が漏れた。
「もう一発行くよ!……ソラッ」
 同じような悲鳴が、今度は涙声まじりで響く。
「これで最後、……ホラッ、三発目!」
 女の尻の下で、絶叫に似た悲鳴と共に、男の身体がまるで電撃を受けたようにピクンと反り返った。
 暫くの間、臭い余香をたっぷり嗅がせた後、ナディアの尻が上がる。
彼女は自分の股間から覗く男の顔を見下ろしてニヤリとした。
男の顔は涙でクシャクシャに崩れ、眼が真っ赤に充血している。
そこへ横から理恵子が覗き込んだ。
「お前、ナディアの臭いがよっぽどこたえたらしいわね。……アラッ、鼻の頭が黄色になってるぅ。……鼻血かしら?でも、血が黄色いわけないわね。」
「いやね、理恵子ったら。……私のおならで糞滓にまぶされたのよ。……」
「いやだぁ、そう言えば匂うわ。……アラ、鼻の穴も黄色くなってるぅ。……きもーい!……でも、しばらくこのままにしておきましょうよ。……お鼻をナディアの糞滓漬けにされてれば洗脳の効果が消えないかもよ。」
 
下着トレーニング

ランチまでは未だ1時間余もある。
屈辱の余韻に咽ぶ順平は、二人の前に正座させられた。
「上司である私の糞滓の臭いも忘れない様にね。……何時でも思い出せるように今から汚れた下着でトレーニングさせて上げる。……ホラ、これを嗅ぎなさい!」
 理恵子は腰を浮かすと尻のあたりをまさぐり、パンティの上から指を肛門に押し入れた。
指先をこねて入念に布地で汚れを拭う。
それを脱ぐと、裏返しのまま順平の目の前に突き付けた。
股間の部分が黄ばみ、その中心に拭いとったばかりの茶褐色の汚れが、これ見よがしに目に映った。
「ソラ、お前の上司の臭い付きパンティよ。……しっかり嗅いで私の臭いを覚えなさい。……嗅ぎ終わったら、後は口の中で汚れが落ちるまでしゃぶって味わうんだよ。」
 二人の女が昼食のためカフェテリアへ出掛けた後、理恵子の部屋に残された順平は、床に正座したまま彼女のパンティの汚れと格闘していた。
言われたように臭気を念入りに嗅ぎ続けたものの、口惜しさで頭が一杯になっているせいか、ナディアの臭いとの差が一向に判別できず、従って記憶にも残せないのである。
諦めて、布地を口の中でしゃぶって汚れを落とす作業に移った。
唾を含ませて歯で軽く噛み汚れを吸い取ってみたが、不潔感が先に立ってためらうせいか完全には落ちない。
それでも何回か繰り返すと、次第に黄ばみが薄くなってくる。
 そのうち、食事を終えて女たちが帰って来た。
「どれ、見せてごらん。……未だ汚れがすっかり落ちていないじゃないの。……これじゃ落第!」
 理恵子の厳しい言葉に、順平はがっくりうなだれた。
「午後の会議には出なくていいから、お前はここでトレーニングを続けなさい。……こんなことだろうと思ったから、洗濯室から練習台になりそうな下着をナディアにピックアップしてきて貰ったわ。」
 ナディアは理恵子に促されて、手に下げたビニール袋から汚れものを取り出した。
あたりにプーンと異臭が漂う。
「私ね、この近くの村に住んでいて、ここの洗濯機をよく利用するの。……そう、このあたりの村にも電気は来ているけど、冷蔵庫以外の電化製品は殆ど無いの。ちょうど、今日の会議のついでに洗濯もというわけで、今朝、家族の汚れものを持参して置いてあったってわけ。……お前、運がいいわよ。汚れもたっぷり着いていて、練習にもってこいだわ。」
「………………」
「これ、先週、私が生理中ズーッと穿いていたパンティ。……それから、これが主人の。旅行から帰って来たところだから、すごい汚れ!……それで、これはおまけ。主人の妹が大学の寄宿舎で穿いていたもの。若いから澱ものがひどくて生臭いわ。」
「で、でも……どうか勘弁して下さい。……理恵子様のなら上司への服従心を試されているのだと我慢しますが、ナディア様やそのご主人、まして妹さんのまで舐めさせられるなんて……」
 涙声で訴える順平をなだめるように、理恵子がそこで口を挟んだ。
「未だ分かってないのね。……私は上司としてお前を洗脳しようとしているのよ。……私との身分の違いを認識させるのが基本だけど、私の意向を読み取ってそれに屈従するように仕込むの。……そう、どんな命令にでも従って、私の意志に反抗しなくなるようにお前の精神構造を改造するのが主目的よ。……ナディアにはそれを手伝ってもらうわけだから、彼女の命令にも従うのよ。」
「で、でも……勘弁して下さい……とっても、みじめでぇ……」
 涙声で訴える順平に対し、理恵子の態度はますます威圧的になった。
「分からないかしら?……その、みじめだと感じさせるのが狙いなのよ。……そう、みじめな体験を記憶に蓄積することでお前は洗脳されて、私たちに対する態度がどんどん卑屈になって行くの。……さ、背任罪で告訴されたくなかったら、ナディアの持って来てくれた汚れものを舐めなさい。私たちがこれから会議に出ている間に口の中で汚れを吸い取って綺麗にしておくのよ。……分かったわね!」
 二人が出て行った後、部屋に一人残された順平は、目の前の床に置かれた汚れものを眺めてしばし茫然としていた。
気を取り直して股間が当る部分の臭い嗅ぎから始めたが、その激しい臭気に接すると、余りの情けなさに目が熱くなった。
 
戦乱の勃発

理恵子とナディアの出席している会議は夕方まで掛る筈だったが、どうしたことか二人は一時間もしないうちに慌ただしく部屋に戻って来た。
「大変!……戦争よ。反政府軍が蜂起してあちこちでゲリラ戦が始まったんですって。」
「会議に出席する予定だった政府関係者もダマスカスに引き返したわ。会議はお流れよ。……それどころか、ここも危険地帯になるのでみんな避難しなくっちゃね。」
 二人は口々に興奮したトーンで言葉を交わす。
ナディアが提案した。
「理恵子、この国にはアラブ圏のテログループが入りこんで反政府活動を支援しているわ。彼らは混乱に乗じて資金稼ぎに人質を取るの。身代金を払ってくれる日本人は格好の標的になるのよ。……そうだ、かくまって上げるから私の村にいらっしゃい。私の夫は地下組織にコネがあるから絶対安全よ。……もうじき、この工場で働いている地域出身の女子工員のための通勤バスが出るからそれに乗るのよ。」
「ナディア、私は、貴女の友情に甘えてお世話になるわ。……でも、ここで働いている日本人社員はどうなるのかしら?」
「私の知っている限りでは、総勢20名程ね。それも男性ばかり。……アラブではね。老人と子供を除いたら男は全員戦士なの。戦いを避けて逃げ隠れしたらうんと軽蔑されるわ。……私の村でかくまえるのは女性だけよ。……気の毒だけどテロの捕虜になった男たちは身代金を払ってもらうまで待つしかないわ。」
「そうかぁ。……じゃあ、こいつはダメね。……順平、お前、工場の日本人たちと一緒に居なさい。」
「そ、そんな……ナディア様、ど、どうか理恵子様と一緒にかくまって頂けませんか?……捕虜になったら殺されるかもしれません。……な、何でもしますからどうか……」
「そうね、ナディア、私からもお願いするわ。……こいつ、背任罪で訴えられそうになっているんだもの。会社も身代金を出し渋るかもね。……そうなってテロに首でもはねられたら可哀そうだわ。」
「く、首を……ですか?……そ、そんな……」
 順平の顔は蒼白になった。
ナディアもさすがに哀れを覚えたとみえ、助け船を出す。
「それじゃ、順平君。お前、女装してごらん。……まさか身体検査まではしないだろうから、女たちのグループに紛れ込めば分からないかもね。」
「じょ、女装させて下さい!……い、命ばかりは……どうか、た、助けてぇ……」
「でも、情けないわね。……男のくせに、女の格好で逃げ出すなんて」
 順平の取り乱しようを見て、理恵子も呆れ顔だった。
 話が決まると実行は早かった。
洗濯室からナディアが持って来た汚れ物の中から、女物の衣装を身にまとった順平は、小柄なこともあってどう見ても女である。
「順平、お前、案外似あうわよ。……アラッ、いやだぁ、パンツまで替えたのね。……ウフフフ、それ、さっきまで臭いを嗅いでいたナディアの妹のじゃない。」
「検問で裾をまくられた時のために替えさせたの。……何事も用心に越したことは無いわ。」
 ナディアに先導されて、三人は女子寮の玄関に停まっているバスに乗り込んだ。
乗客に男性の姿は無い。通常イスラム圏では、女性は社会的には差別を受けることが多いが、災害や内乱の折には非戦闘員として優先的に避難することが認められている。
一方、成年男子は家族や国を守るため武器を手に立ち上がるのが常識だった。
 工場のゲートを通過する時に、普段なら保安要員による検問があるのだが、戦乱勃発の報で既に従業員全体の避難が始まっているとみえ、係員の姿は見えなかった。
 30分ほどで村に着き、40人を超す女子従業員たちを下ろしたバスは、工場に取って返す。
三人は村の中程にあるナディアの自宅に落ち着いた。
土壁の粗末な民家だが、内部は以外に広く家具も充実している。
電気は来ているが水道は無く、井戸に頼る生活だった。
風呂は無く、村人たちは公共設備の有料の沐浴場を利用するか、村の傍を流れる川で毎日行水をする。
 ナディアの説明によると、村に男たちの姿が少ないのは、朝から地域の自衛組織に召集されて村の近くで警備態勢に入っているからとのことである。
問題は村として政府軍につくと、地域に根を張っている反政府軍に攻撃されるので、少なくとも中立の立場をとるか、反政府軍を応援するしかないとのことだった。
反政府軍といっても、いわゆるゲリラの団体で、人質を取ったり夜襲を繰り返したりする危険極まりない存在である。
ただ、女子供が多数残された村や町には攻撃を加えない、という不文律があった。
 
人間失格

ナディアの家の客分として数日過ごした後、ナディアの夫が数人の男たちと村に戻って来た。
ゲリラ戦があちこちで続いていて、兵力に劣る政府軍は防戦一方に追いやられているとのこと。
工場の日本人従業員は全員テロに拘束されて、なかには死者も出ているようだとのことだった。
 ナディアの夫は反政府軍と通じているが、今の所、直接戦闘には参加していないようで、暫く村の警護に当たるグループのまとめ役を務めているとのこと。名前はハッサン、精悍な風貌で体格もがっちりしていた。
1年前に結婚して以来、ナディアの妹夫婦等の女系親族とこの家に一緒に住んでいる。
ナディアが、理恵子と順平をかくまうため家に連れ帰ったと聞くと、早速、客室でくつろぐ二人に会いに来た。
 型どおりの挨拶の後、鋭い目で二人を吟味するように観察したハッサンは、ナディアから、女装した順平が実は男だと聞くと、気色ばんでナディアと激しい口論を始めた。
早口のアラビア語のため、何を言い争っているのか不明だが、どうやら順平をかくまうことに反対らしい。
ハッサンが出て行った後、ナディアが解説してくれた。
「気の毒だけど、女はともかく、男をかくまうことは出来ないそうよ。明日にでもテロのグループに引き渡すと言ってるわ。……かくまっていることがばれると、村人たちが敵に加担しているとみなされて危害を加えられる可能性があるんですって。」
「アラ、それじゃあ可哀そうよ。せっかく一緒に逃げて来たんだから、何か方法はないのかしら?」
「じゃあ、理恵子。私と一緒に来て!……ハッサンにもう一度話してみるわ」
 ナディアと理恵子が席を立った後、一人取り残された順平の胸は不安に揺れた。
テログループの人質にされたら命が危ない、と日本でも聞かされていたのである。
 理恵子を加えてのナディアとハッサンの話合いは延々と続き、理恵子が部屋にもどってきたのは夕刻だった。
「順平、私からも色々と頼んだけど、お前をこのままにしておくことは出来ないそうよ。男をかくまうことはテロとの協定を破ることになるからよ。……ただし、お前が男でなくなれば置いてくれるんですって。」
「お、男でなくなるって……いったい?」
「早い話、お前の股の間の物を切り取ってしまうの。……同居している妹の夫が外科医だから、彼がちゃんと麻酔してくれるし、後の処置も専門医に頼むことが出来るから安心なさい。三日もすれば歩けるようになるんですって。……考えてみれば、テロの人質として首をはねられるよりもずっとマシだわよ。」
 思いもかけない話しに順平は仰天した。
「そ、そんな……ひ、ひどい。……ぼ、僕には、日本に婚約者だっているんですよ。……そ、そんな目に合うんだったら、し、死んだほうが……」
「そう言うだろうと思ったわ。……だから、お前のために去勢以外の方法をあれこれ相談したの。……そこで、ひとつ妥協案にたどりついたわ。……でも、お前が承諾すれば、の話しだけど……」
「な、何でも、承諾し、します。……しますから……」
「肉体的に男で無くなれば簡単なんだけど、それがダメなら代りに人間でなくなればいいそうよ。」
「人間でなくなるって……具体的にはいったいどんな?」
「例えば犬よ。……犬の首輪を嵌めて四つん這いで歩くの。そして皆から犬として扱われるの。……お前、そんなこと出来るかしら?」
「去勢されることに比べれば……な、何だって、が、我慢します。」
「でも、それだけじゃないの。……犬として扱われても肉体的には人間のままよね。だから、お前は精神的にはもう人間じゃないって皆に認められる必要があるの。……そう、人間としてとても耐えられない行為を望み、自発的に実行して、皆に“そんなことをするのは人間じゃない”って認められるの。もちろん、みんなにはうんと軽蔑されるわよ。……分かるかしら?」
「す、少し分かるような気がします。……つまり、人間失格となるような行為をして、それを皆に公認されるという趣旨のようですね。……でも、具体的にはどんな行為をすれば?」
 何時の間にか部屋に入って来ていたナディアが、そこで口を挟む。
「今、ハッサンと相談してきたんだけど……その具体的な行為としてはね……まず、今夜から私たち夫婦の夜の営みの後始末をして貰うことにしたわ。……そう、中出しで汚れた私たち二人の性器を舐め清めるの。もちろん、お汁も全部吸い取るのよ。……分かったわね。」
「順平君、可哀そう!……夫婦のセックスの後始末なんて、人間ではとても出来ないことだわ。……きっと人間失格テストにも合格できるわよ。」
 理恵子の揶揄するような口調には、同情どころか順平の転落を楽しんでいるような風情さえあった。
「どうやらこいつにも異議が無さそうだから、これをはめてやって。」
 ナディアが理恵子に手渡したのは犬の首輪である。
赤い曳き紐も付いていた。
「この家ではね、犬は四つん這い。餌は残飯でトイレは中庭に飼い犬用の糞溜め穴が掘ってあるわ。……犬小屋は今居る飼い犬たちが使っているから、夜は客室の理恵子のベッド横の床で寝なさい。」
 余りの屈辱に、がっくりとうなだれる順平。
その晩、家族の夕食のテーブルには久々で帰宅したハッサンが姿を見せた。
ナディアとその妹夫婦も同席している。
テーブルと言っても、厚い羊毛の敷物を拡げた居間の床に直にテーブルクロスを拡げて料理を並べ、一同がその周囲に腰を下ろして食事を取る伝統的なアラブ方式だった。
香辛料をたっぷり使った肉料理がメーンで皿数も多い。
少し遅れて理恵子が四つん這いの順平を伴って食事に現れた。
理恵子は引き続きゲストとして席に連なったが、もちろん順平の席は無い。
「理恵子さん、事情はさっき私から皆に説明しておいたけれど、あなたからも一言お願いするわ。」
ナディアに促されて、理恵子が立ち上がった。
「皆さん、この男は、ここにかくまって頂くために、今日から犬になりました。そして、人間としては考えられないような目に会いたいそうです。私としては、その第一歩として人間の臭いを嗅ぎ分ける修行をさせようと思います。」
 ナディアの妹のライラが手を上げて口を開いた。
姉同様日本育ちのため日本語も流暢である。
「ちょっと待って。その男は、今晩から姉さん夫妻のセックスの後始末をさせられるんじゃなかったの?……実は、明日の晩は私たちに順番が回ると期待しているのよ。」
「それは夜の修行です。この家の二組のご夫婦たちの他に、村の人たちから希望者を募って当面最低百組のご夫婦の後始末をさせます。」
「百組ですって?……それって、毎晩一組ってこと?」
「時間が許せば、一晩に二組も可能です。」
「それじゃあ、明日まで待たなくってもいいのね。……じゃあ、今晩、姉さんたちの後で続きに私たちも使おーっと。」
「さっきの臭いの嗅ぎ分け修行ですけど、この男は先週こちらへ出張するフライトの中で、既にスタートしているんです。」
「姉さんから聞いたわ。……例のローマ式儀式で痰壺にされた後にアラブ流の尻臭嗅ぎをさせられたって話ね。……面白そう!……一度見てみたいわ。」
「食事の前ですけど、よろしかったらご披露しますわ。……犬の修行にもぴったりですから……」
 理恵子は、四つん這いで後ろに控えている順平に向かって顎をしゃくって合図する。
口惜しさと恥ずかしさで上気した順平は、目をつぶり膝立ちになって大きく口を開けた。
 カーッと痰を溜める音に続いて、ペーッと痰汁が男の口に吐き込まれる。
一座がオーッとどよめいた。
続いて、理恵子の足で蹴られて仰向けに横になった順平の顔面に、理恵子の股間が押し付けられる。
臭いの強い肛門部を鼻腔にあてがわれて、ムーッと声が出る。
理恵子が腰を前後に揺すると、くぐもった男の呻きが高まった。
周囲で一斉に笑い声が弾ける。
「そら、ライラさんが興味がありそうよ。……お前からお願いしてごらん!」
 存分に尻割れを擦りつけた後、理恵子は腰を上げながら促した。
 順平は身を起すと四つん這いでライラの傍に近付き、口を開けながら膝立ちでチンチンしてせがんでみせる。
ライラがニヤニヤしながら、喉を鳴らして男の顔に唇を近づけた。
姉に似た彫の深い美人だが、より活発で肉感的な雰囲気がある。
 再度喉を鳴らして溜めこんだ大量の痰汁が男の喉を直撃すると、順平の顔が無念さに歪んだ。
塩っぽい味に吐き気を催しながら女の尻割れに顔を寄せる無様さに、嘲笑いがさざ波のように一同に広がる。
続いて、姉とそっくりの巨尻が順平の頭を組み敷き、むき出しの菊座が鼻腔を包みこんだ。
ライラも姉同様、下穿きを着けていなかったのである。
 座り心地がまんざらでなかったらしく、意外にも彼女は食事の間中、順平の顔を尻に敷きっぱなしだった。
談笑しながらデザートを食べ終えたライラは、やっと腰を上げると尻の下の順平の顔を覗き込んだ。
「ねえ、お前の鼻息に刺激されて、私、催しちゃった。……姉さんが譲ってくれたので、これから寝室へ行ってお前の顔の上で一発やることにしたから、よろしくね。」
 思いもかけぬ屈辱の宣告に打ちひしがれる順平。
横から理恵子の声が追い打ちを掛ける。
「順平、ライラさん夫婦は新婚3カ月ですって。……夕食代りにお二人のジュースをたっぷり頂きなさい。お二人の結合部の下で汁受けにして頂くのよ。……フフフ、こぼさないようにね。」
 グイと首輪の紐が引かれ、ライラ夫婦の寝室に曳かれて行く順平は、初めての経験に心が騒いだ。
童貞である彼にはセックスの経験が無かったのである。
ベッドの上で裾を頭に仰向けに寝かされた順平の顔に跨ったライラは、彼の胸の上に尻を据えた夫と向かい合う姿勢で抱き合った。
ライラの尻割れが鼻と口を覆い、唇には女の膣口が押し付けられた。
「舌の先を入れて舐めなさい。……そうそう、唇で汚れを吸って!」
 命じられるままに舌を伸ばすと、膣の中の襞が舌先に当る。
そこは、すでに、ねっとりとした女の愛液で濡れそぼっていた。
暫く舌を出し入れしているうちに、液はその量を増し順平の口腔を満たした。
ライラは、夫と唇を合わせながら膣口を順平の唇に押し付け、腰をゆっくり前後に揺すった。
その度に唇がめくれ舌がねじれる。
女の快楽の道具にされているという意識が、彼の屈辱感を刺激した。
 胸に跨った男の奴張が順平の顎に触れ、そのまま彼の唇を擦るようにして女の膣口に宛がわれた。
ライラが少し腰を上げるとそれは順平の舌を押しのけながら、女の膣にすっぽりと挿入された。
女はアーッと声を上げて腰をくねらせる。
二人が抱き合ったままピストン運動を始めると、その度に二人の挿入部が順平の顔面を擦った。
「強く舐めて!……そして汁を吸うのよ。」
 叱咤されるままに舌と唇を動かす。
それは延々と続いた。
 やがて顔の上で二人の腰の動きがひときわ激しくなり、結合部から洩れるジュースがその量を増す。
二人は獣のような叫び声を上げて同時に頂点に達した。
順平の唇の上で結合部が痙攣し、女の膣がヒクヒクと動くのに合わせて男の奴張が震え、ドクドクと精液が注入されて行くのが舌先に感じ取れた。
抱き合ったまま余韻を楽しむ夫婦。
その股間に顔を敷かれたままの順平のことは、しばらく二人の念頭に無い。
やがて思い出したようにライラが声をかける。
「抜くわよ。……こぼさないように掃除してね。」
 ライラの声と同時に二人の結合が解ける。
男の精液に女の愛液がミックスした生臭い液体がどっとばかりに順平の口に流れ込む。
ゴクンゴクンと飲み干すと、腐った野菜ジュースのような味のネバネバした粘液が口腔内に広がった。
 男の奴張が順平の唇を割って口腔内に差し込まれ、無言のまま舐め清めを強いる。
それが引き抜かれると、直ぐに女の膣口が押し付けられた。
膣内に溜った残りのジュースを吸い込むと、ズズーッと音を立ててビックリする程の量が順平の喉に流れ込む。
しかも女の肛門がちょうど鼻孔に当っていて、呼吸の度に糞臭が鼻の奥を刺した。
‘こ、これがセックスの汁受けか’と心に呟いた順平は、余りのみじめさに泣き叫びたい心境だった。
 しばらく時間を置いて二人は再び抱き合った。
今度はベッドの裾の方を頭に仰向けになった順平の身体の上に、抱き合った二人が折り重なるように横たわる。
順平の腹がライラの背に敷かれ、順平の顔が逆さに女の股間からのぞく体位だった。
女の肛門を舐め続けるように命じられた順平の直ぐ目の前で挿入が始り、男の陰嚢が順平の額を擦る。
漏れ出した愛液が女の尻割れを伝って肛門に達し、順平の唇を濡らした。
 二度目の射精が終わった後も順平は解放されることなく、後始末が終わってもなお延々と舌での刺激を強制された。
結局、3回にわたるセックス行為に使われた後、曳かれて隣の寝室に連れて行かれ、ナディア夫妻に引き渡された。
 セックスに飢えた新婚のライラ夫婦と違って、ナディア夫婦はじっくりと前戯に時間を掛ける。
順平は、まず二人の性器を舐め清めさせられた。
鼻がひん曲がるという表現がぴったりするほど異臭のする二人の股間を舌と唇で舐め清める順平の目に、あらためて口惜し涙が溢れた。
幸い、一回のセックスで解放された順平が理恵子の寝室に戻ったのは、もう深夜近かった。
 しかし、まだ寝付いていなかった理恵子は、順平に屈辱の経験の報告を求めた。
四つん這いの姿勢で涙ながらに詳細を描写する男の姿は哀れを留めたが、それは却って理恵子の嗜虐心を刺激したようだった。
「どうやら早速人間失格の道を進み始めた様ね。おチンチンをちょん切られないために、そんなことまで我慢できるなんて、私にはとても信じられない。……でも、それがこれから当分毎晩繰り返されるのよ。ナディア夫婦は週一らしいけど、ライラ夫婦には毎晩使われそうね。……それに、この村でお前に後始末をさせたいと希望する夫婦のリストがここにあるけど、新婚さんが目立つわ。すでに目標の百組に近い数よ。……お前、当分夕食抜きで毎晩夫婦のお汁を吸わされることになるわね。」
「で、でも、戦争が終わるまでの、……し、辛抱だと……」
「そうね、でも過去の例だと休戦協定が結ばれて空港が使えるようになるまで3カ月は掛るそうよ。……と、いうことは、可哀そうだけど、お前、当分この村の夫婦たちの夜の慰み者にされるってことね。」
「……ところで、私、お前に付き合って寝そびれちゃった。お前、睡眠薬代りに私に奉仕しなさい。」
「………………?」
「どうしたの?……お前は犬なんでしょう。それにお前の上司でもあるのよ。お前の得意の舌使いで私を慰めなさい。……フフフ、もちろん対等のセックスはダメ。オーラルだけよ。」
「………………」
「そうかぁ、お前、童貞だったわね。……じゃあ、たっぷり仕込んで上げる。……ホラ、ここに首を突っ込んで……」
 ベッドに腰掛けた理恵子は、彼の目の前でパンティを脱ぎ股を大きく開いた。
同時に、首輪の紐が引かれる。
前のめりに土下座の姿勢になった順平の目の前に、女の股間の陰りが迫った。
 理恵子は足首を彼の後頭部に掛け、グイと男の顔面を股間に押し付けながら、背を後ろに倒してベッドに仰向けに横たわる。
順平の頭は、女の太腿にしっかりと挟みこまれた。
命じられるままに理恵子の膣口に舌を這わせ、クリトリスを吸う順平。
そこには、人間としての誇りを蹂躙され、かっての部下の女に完膚なきまで征服された男の姿があった。
「いいわよ。お前、なかなか上手よ。……日本に帰ったら私と夫と二人に毎週何回か汁受けとして奉仕させてやるから楽しみにしてらっしゃい。ウフフフ」
 理恵子の言葉は、戦争が終わるまで、と心に言い聞かせていた順平の心の支えを砕き、理恵子夫婦のセックス奴隷としての暗澹とした将来図を示すものだった。
ピチャッピチャッと音を立てて理恵子の快楽に奉仕する順平の口から、くぐもった嗚咽が漏れるのだった。

(続く)