027-#27転落した特捜刑事
阿部譲二作
功名心に駆られた麻薬の特捜刑事が組織幹部の家の張り込みを続ける。郵便物の中に彼の友人が経営する出版社の名前を見つけ、友人からそれが交際雑誌への投稿の連絡だと教えて貰う。驚いたことにその幹部と愛人は二人のセックス奴隷を求めていたのである。マゾ男を装って応募した刑事は首尾よくその家で飼われるが正体がばれて愛人の便器にされる。 |
夏も盛りを過ぎた九月と言うのに、うだる
様な熱い日が続いていた。
警視庁の中で、最近結成されたばかりの、
麻薬特別捜査班Kチームに与えられた事務所
は、それ迄倉庫代りに使われていた殺風景な
一室である。窓が少くて薄暗い上に、冷房の
効きも悪く、チーム員達は不平たらたらだっ
た。
リーダーの山形警部は年配のベテランだっ
たが、サブリーダー格の長谷川史郎は、二十
八歳の独身で、自他共に許す少壮気鋭の幹部
候補生である。
麻薬捜査の経験は皆無だったが、この特捜
チームに編入されたのを機会に、こゝで実績
を上げて何とか昇進のトップを切ろうと、野
心満々だった。
長身の彫りの深いマスクで、女性にもてる
タイプだが、現在特定の恋人はいない。
もっぱら仕事一筋の生活だった。
特捜班Kチームの任務は、最近急増した第
三国経由の麻薬ルート追跡である。その殆ど
が広域暴力団の扱いで全国へ流通しており、
その組織の結束の固さから、捜査は難航を極
めていた。
何とかして暴力団組織の中へ食い入って、
情報を取る・・・・・それが、チーム全員の
当面の目標だった。
長谷川刑事の狙いも同様だったが、彼の思
惑は皆と少し異っていた。つまり自分独りの
才覚で有力な手掛りを掴みたい、との功名心
が、常にチーム全体の成果より優先するので
ある。具体的に言えば、褒賞としてはトップ
レベルの警視総監賞を目標に、しかも、出来
ればそれを独り占めにしたいとさえ、思って
いたのである。
彼はリーダーの許しを得て、単独で、組織
の地域幹部、袴田亮蔵の自宅の張り込みを、
買って出る。そして、こっそりと、毎日の郵
便物をチェックし続けたのである。
若い愛人と二人暮しの袴田亮蔵の生活は、
外目には何の変哲も無い。しかし、配達され
る電話料金請求書の額から見ても、毎日、長
距離を含む多くの通話で、頻繁に組織間の連
絡を取り合っていることは明白だった。
がっしりした体格の、あまり風采の上らな
い田舎の中年男、と云ったイメージの亮蔵に
比べ、その愛人の玉枝は、年の頃二十五、六
の眉の濃い美人である。中肉中背ながら、洋
装の良く似合うグラマーなスタイルだった。
張り込みを始めてから、約一ケ月が過ぎた
ある日のことである。
袴田邸へ配達されたばかりのメールを、何
時もの様にこっそり取り出して、慌ただしく
調べていた時、SS出版株式会社のネーム入
りの封筒が長谷川の目に留まった。
彼は思わずハッとした。彼の友人が、この
SS出版に勤めていることを思い出したので
ある。一時間後、長谷川はSS出版の応接室
で、その友人と向い合っていた。
「なあ、頼むよ。君の出版社から袴田亮蔵宛
のメールの内容を調べてくれないか。今日配
達された分さ。・・・・・まさか、広告の筈
はないよな」
「広告のダイレクトメールは、うちではやっ
てないから、そりゃ、雑誌の購読者への連絡
じゃないかな。・・・・・でも、それが君の
捜査と、どんな関係があるのかね」
「関係があるかどうかは判らないが、今は少
しでも手掛りが欲しいんだ。あらゆる機会を
逃すな・・・・・これが俺のモットーさ」
「まあ、いゝだろう。警察が相手じゃ協力し
ない訳にもいかんしな。その代り、何かあっ
た時は宜しく頼むぜ。・・・・・一寸待って
くれ、調べて来るから」
席を立った友人が帰って来る迄、意外に時
間が掛かった。三十分も待っただろうか、戻
って来た彼は、一冊の雑誌を手にしている。
「これは、うちで出している所謂、交際雑誌
のひとつさ。袴田亮蔵は、これを定期購読し
ている。しかも、それだけじゃなく、彼自身
でメッセージを投稿しているんだ・・・・・
ホラ、こゝさ」
彼は長谷川に、その雑誌の中程のページを
広げて見せた。
「ちょっと待ってくれ。そのメッセージって
一体なんだね?」
「読者通信とでも言ったらよいかな。要する
に、交際の相手を求める求人広告みたいなも
んさ。・・・・・この雑誌は、普通の夫婦交
際からSMまで、幅広く取り扱っているので
マニアの間では、可成人気があるんだ」
「じゃあ、夫婦交換や乱交パーティーのメッ
セージも載るのかね?」
「勿論さ。しかし、袴田亮蔵が載せているの
は、SM欄の、カップルSの所さ。つまり、
自分と女性のカップルで、メッセージにある
様なマゾの相手を求めてるって訳さ」
意外な成行に、長谷川は思わずウームと低
く唸って、袴田亮蔵のメッセージに目を通し
た。勿論、そこでは本名は伏せてある。
私達は、四十二歳の男性と、二十五歳の女
性のカップルです。私達の家に住込んで、
奴隷として奉仕出来る強度のマゾ男性を求
めます。条件としては身元が確かなこと、
それに、どんな命令にも服従出来る男に限
ります。ひやかしは一切お断りします。
読み終って、長谷川は再び低く唸った。
「それで、このメッセージには反応があった
のかね?」
長谷川の問に答えて、
「二通あったそうだ。今日配達されたメール
が、編集部経由で回送された、その二通入り
の封筒さ」
「随分、物好きな男もあったもんだな。住み
込みで奴隷として奉仕するとはね・・・・」
最後は口の中で呟きながら、長谷川は首を
ひねった。
礼を述べて出版社を出た長谷川は、特捜K
チームの事務所へ顔を出した。
「やあ、長谷川君、何か手掛りらしいもので
もないかね?」
リーダーの山形警部が声を掛ける。
「いやー、さっぱり進展無しですわ」
長谷川は、首を振りながら席に腰を下ろし
て、配られた茶を啜った。
「こちらも御同様さ。しかし、君が張り込ん
でいる袴田亮蔵と言う男は、どうやら、麻薬
ルートのキーメンバーらしいぞ。・・・・・
ひとつ、婦人警官でも、女中として住み込ま
せる可能性は無いかな?」
「あそこは、袴田亮蔵と、その愛人の二人暮
しなんですぜ。女中なんか、只で住み込むっ
て言ったって、断られますよ」
「それもそうだな。まあ、気長に張り込みを
続けていて呉れたまえ」
山形警部との会話で、長谷川は内心ハッと
閃くものがあった。
(只の住込み・・・・・婦人警官の女中は駄
目だが、そうだ、マゾ男なら先方から募集し
ているんだ!・・・・・俺が、マゾ男に成り
すまして潜入したら・・・・・)
彼は、早速、本屋へ駈けつけ、SM雑誌を
数冊、買い込んで来た。
下宿へ持ち帰って研究を続けた結果、漸く
彼自身がマゾ男性を装うことは可能、との結
論に達した。つまり彼の理解では、すべては
体力と忍耐であり、マゾとして相手の言うま
まに振舞い、耐え忍べば良いのである。
雑誌に見られる鞭打ちや蝋燭、そして潅腸
等による責めは、所謂、拷問とは異って程度
も軽く、充分耐えられる様に思えた。
ただ、精神的な面、殊に女に責められた時
の屈辱感が問題だったが、これも、情報収集
に成功した暁に得られ筈の栄光≠思い浮
かべて我慢することにした。
早速、自分が若いハンサムなマゾ男性で、
住み込みで奴隷奉仕を希望する旨、書きした
ためる。そして、友人から貰い受けて来た問
題の交際雑誌から、回送シールを切り取って
手数料の切手と共に同封し、雑誌社の編集部
回送係宛に発送した。
それから約一週間、彼は首を長くして返事
を待ったが、何の音沙汰も無い。
考えて見れば、既に、二通の応募者が先行
しているのである。恐らく三番目の応募者に
成るであろう、彼の申し出が受け入れられる
チャンスは、むしろ少いとも思われた。
諦めかけた頃、投函してから丁度二週間目
に彼の下宿宛に、一通の手紙が舞い込んだ。
待ちに待った返事である。
震える手で開封して見ると、内容は、簡単
に一度お会いしてお話ししてみたい≠ニあ
るだけで、その後に面会の場所と日時が記さ
れている。
その当日、彼は勇躍して指定された喫茶店
へ赴いた。前もって勤務先には、郷里で不幸
があったとの口実で、二週間の休暇を申し出
てある。あくまで、独力で秘密裡に事を進め
るのが、考え抜いた末の彼の結論だった。
喫茶店で向い合って見ると、袴田亮蔵は恰
幅も立派で、何となく人に威圧感を与える。
人目を忍ぶためか黒眼鏡を掛けていて、無気
味な雰囲気だった。
一方、愛人の玉枝の方は、こうして近くで
見ると、オヤッと思う程の美人である。
やゝ丸顔のふっくらした顔立だが、濃い眉と
大きな黒い瞳が魅力的だった。
「始めまして。長谷川さんですわね」
口を切ったのは玉枝だった。長谷川は迷っ
た末、本名で通すことにしていたのである。
「そうです。あ、あのぅ、私の手紙は如何が
でしたか? お二人の奴隷として採用して頂
けるのでしょうか?」
少し性急かとも思えたが、他にも二人の応
募者がいると思うと、先ず知りたい気持が先
行する。だが、玉枝はピシャリと答えた。
「採用するかどうかは、充分お話ししてから
決めますわ」
「わ、わかりました。でも、他にも応募者が
居るのでしょうか?」
「いるにはいましたけど、落第しましたの」
玉枝は、おかしそうに手を口に当てた。
「それで、あなたに確認しておきたいんです
けど・・・・・あなた、本当に住込みが出来
ますの? 住込みって言う意味は、私達の家
で奴隷として飼われるってことよ」
玉枝の大きな瞳にテーブルの蝋燭が映り、
妖しいムードが漂う。
傍らの亮蔵が腕を組んだまゝ、黙り込んで
いるのも無気味だった。
「あの、飼われるって・・・・・動物の様に
ですか?」
「そうよ。奴隷は人間じゃないんですもの。
動物と同じ様に、飼うものなのよ」
女の唇に薄笑いが浮かんだ。
「それなら結構です。私は独身ですし、こゝ
には係累も居りませんから・・・・・」
「じゃあ、私達の奴隷として、世間を捨てら
れるわね」
重ねての玉枝の念押しに、長谷川は黙って
頷いた。
「君、今迄にマゾ男としての経験は、どの位
あるのかね?・・・・・いや、経験の中身は
どうでも良いんだがね」
袴田亮蔵が、始めて口を開いた。
「・・・・・じ、じつは、いつも雑誌を読ん
で研究、イヤ想像してはいるんですが・・・
・・実際のプレイは、未だあまり・・・・」
「ホォー、じゃあ、未だバージンだな」
亮蔵は、玉枝と顔を見合わせて頷き合う。
「私は、むしろバージンの方がいゝの。だっ
て、私好みの奴隷に仕込めるんだもの。・・
・・・でも、経験者と違って、我慢が出来る
かどうかが問題ね」
玉枝の言葉に、長谷川はこゝぞと勢い込ん
で口を開く。
「大丈夫、絶対、大丈夫です。どうか、お好
みの奴隷に仕込んで下さい。私は忍耐強い方
ですから、御安心願います」
長谷川の言葉に、玉枝は亮蔵を促して席を
立ち、隅の方で何やらヒソヒソと相談を始め
た。それを見守る長谷川の顔には、不安げな
色が浮かぶ。
五分程して席に戻った亮蔵が、玉枝を制し
て口を切った。
「わしは、あんたが我慢出来ないと見るね。
でも、こいつが、あんたを気に入った様だ。
・・・・・そこで相談だが、もし、あんたが
あくまで我慢出来ると言い張るなら、証拠を
見せて欲しい」
「証拠って・・・・・一体どんな?」
「最初の三ケ月間、あんたが弱音を吐けない
様に、口を封じさせて貰う・・・・・ナーニ
咽喉の声帯に、外から定期的に麻酔剤を注射
して、喋れない様にするのさ。それさえ承知
なら奴隷にして使ってやろう」
「それはOKですが、三ケ月後にはどうなる
んですか?」
長谷川の問には、玉枝が答える。
「三ケ月あれば充分よ。その間に、私があな
たを、身も心も完全な奴隷に仕込んで上げる
わ。オホホホッ」
こうして、彼は首尾良く採用された。
二人に伴われ、その足で袴田邸へ赴いた長谷
川は、居間のソファーでくつろいだ二人の前
で早速、裸に成る様命じられた。
ブリーフまで取らされた彼は、素裸のまゝ
二人の前の床に正座させられる。
玉枝は、戸棚から何やら取り出すと、彼の
背後へ立った。
「サー、これが奴隷の装束よ」
長谷川の頚に、女の手でヒヤリと冷たい革
の輪が穿められた。
「もうひとつあるのよ。サ、そこへ四つ這い
になって股を拡げなさい!」
言われるまゝの姿勢を取った彼の股間の物
を、女の手がむずと掴んだ。そして、その根
元にも、小さな革の輪が穿められる。
フト、横を見ると壁の姿見に、頚と股間に
それぞれ輪を付けられた我身の哀れな姿が、
そして、それ等に繋がる二本の鎖を両手に握
って、ニヤニヤ笑っている玉枝の姿が写って
いた。
「じゃあ約束通り、注射させて貰うぜ」
何時の間にか注射器を手にした亮蔵が近ず
く。咽喉仏の上部にプスリと細身の針が刺さ
り、麻酔薬が注入された。
「この麻酔薬はな、日本では仲々手に入らな
いんだ。持続性があって四日間は効果が続く
んだが、念の為に、三日毎に注射を打つこと
にする。いゝな!」
ものゝ五分も経たぬ内に、麻酔の効果が現
れて、長谷川の咽喉が重く痺れて来た。
「どおお? 声を出して御覧なさい。・・・
・・フフッ、音も出ないわね」
丁度、風邪で咽喉をやられた時を思い起し
たが、今や、かすれ声さえ出ない。只、スー
スーと喘ぎに似た空気音が、咽喉から洩れる
だけである。
「代りに鼻を鳴らして御覧! そうよ、ウフ
フッ、まるで豚そっくりね。・・・・・これ
からはね。私達に返事をする時には、その豚
鳴きをするのよ。・・・・・クックックッ、
あゝおかしい!」
笑い転げる玉枝につられて、亮蔵の口から
も笑いが洩れる。それを聞く長谷川は、みじ
めさを通り越して、泣きたい思いだった。
「お前の呼び名だけど、史郎を縮めてシロに
するわよ。・・・・・サァー、シロちゃん。
四つ這いで、少し歩いて御覧!」
玉枝の声と共に、彼の首の鎖がグイと曳か
れる。危うく前に突んのめりそうになって、
漸く踏み止まると、今度は股間の細い鎖が、
ツンツンと小刻みに引かれた。
玉枝は軽くたぐったつもりだろうが、その
鎖の先の輪で、男性のシンボルの根元を拘束
されている長谷川にしてみれば、そんなに生
易しいものではない。鎖が張る度にペニスが
振れ、股間に痛みが走った。
「ホラ、こっちへおいで・・・・・ソラッ、
今度はこっちを向くのよ」
長谷川は、四つ這いのまゝ二本の鎖を操る
玉枝の意志のまゝに引き回された。
「シロ、こゝへ来て、私の足をお舐め!・・
・・・ホレ、お返事はどうしたの?」
ソファーに身を沈めて足を組んだ玉枝の手
が鎖を引く。途端に長谷川の股間を激痛が襲
った。声の無い呻きに続いて、鼻でみじめな
豚鳴きをしながら玉枝の足元に這い寄った彼
の顔に女の汚れた足裏が押し付けられる。
それに舌を這わせると、苦い塩味が口中に
拡がった。
「くすぐったいじゃないか。・・・・・唇も
使って、もっとしっかりお舐め!」
玉枝のいらだたしそうな声。その足の下で
長谷川の顔が屈辱に歪む。
「ソラ、指の間もきれいにするのよ」
女の足先が、唇を割って口の中に押し込ま
れた。そして、もう一方の足指が、それに重
なる様に長谷川の鼻に当てられる。
プンと饐えた臭い。
口の中の指が、くねくねと動きながら、更
に奥へ挿入して来た。同時に、もう一方の足
指が彼の鼻を挟み、捩り上げる。
「ム・・・ム、ムゥ」
男のくぐもった苦しげな呻きが、女の驕慢
な笑いを誘う。
「クックックッ・・・・・苦しいかい? 男
のくせに女に足で嬲られて、悔しくないのか
い?」
声を奪われて、抗議も出来ないまゝ局所を
拘束され、女の自由にされた上、足で顔を蹂
躙される。・・・・・それは、長谷川にとっ
て、勿論、生まれて初めてのおぞましい経験
だった。
苦痛に対する耐久力には、自信があったも
のゝ、不安を抱いていた精神面の屈辱・・・
・・それも、彼の想像を超えた世界が開かれ
て行くのだった。
「そろそろ、次の訓練に移るわよ。フフフ」
両足を時間を掛けてたっぷり舐めさせたあ
と、玉枝はソファーに座ったまゝ、もぞもぞ
と腰をくねらせてパンティーを脱いだ。
淡いピンクの布地が、妙になまめかしい。
「シロ、これを見て御覧!」
玉枝の両手が、裏返したパンティーの股間
の部分を長谷川の目の前に拡げた。
尻割れからクレバスの当たる布の部分が、
帯状にベットリと褐色に汚れ、異臭を放って
いる。
「生理が近いから、こんなに汚れるのよ・・
・・・これを、どうするか判る?・・・・・
フフフ、そう、お前が口の中で清めるのよ!
でも、その前に、臭いをお嗅ぎ!」
汚れの最もひどい部分が、玉枝の足元で四
つ這いになっている長谷川の鼻に押し当てら
れる。思わず顔を伏せ、身をずらして後へ逃
げ様とした瞬間、股間にちぎれる様な痛みが
走った。玉枝が鎖を引いたのである。
「おとなしく言う通りしないと、そこが役に
立たなくなるわよ」
玉枝がニヤニヤ笑いながら引導を渡す。
諦めて顔を上げると、彼女の手のパンティー
に顔を埋め、大きく息を吸った。
ツーンと独特の臭いが、脳髄を刺激する。
若い女のむせる様な性臭と屈辱で、長谷川
は思わず頭がクラクラとした。
「サー、今度は味を覚えるのよ。・・・・・
口をお開け!」
汚れを存分に吸って、じっとりと湿りを帯
びたその部分が、彼の口中へ押し込まれる。
「先ず、たっぷり唾で濡らすの。それから、
歯で軽く噛んで・・・・・そうそう、そのお
汁を吸って御覧! どおぉ? おいしい?」
言われるまゝに、唾に溶かした汚れを歯で
絞り出し、思い切って吸って見る。
チューッと音がして、辛目の酢に似た味が
彼の口中一杯に拡がった。
それは彼にとって、生れて初めて経験する
文字通り汚辱の味である。目の前でニヤニヤ
笑いながら、彼の顔を覗き込む玉枝の目、そ
して、横から低い笑声を洩らす亮蔵の軽蔑の
視線を感じて、長谷川の瞼は悔しさでジーン
と熱くなった。
「そこの汚れが、すっかり奇麗に落ちる迄、
口の中で繰返して吸うのよ。そうそう、その
調子。・・・・・フフフ、これからは、毎日
そうやって私のパンティーを清めなさい」
長谷川の口の中で、クチャクチャと布地を
噛みしめる音、そしてチューッと汚れ汁を吸
う音が、暫くの間交互に繰返された。
「もう良い頃よ。あんまり噛むと布地が痛む
わ。・・・・・一寸出して見て御覧。ホラ、
こんなに奇麗に成ってる! お前、仲々上手
だわよ。そうだわ、ついでに旦那様のも清め
なさい」
女の手で続いて、亮蔵の異臭を放つブリー
フが口の中へ押し込まれる。
吐気を催す程のおぞましさに、長谷川は思
わず軽くむせ込んだ。途端に股間の鎖が引か
れ、忘れていた痛みが蘇える。
「ソラソラ、しっかりおやり。さぼるんじゃ
ないよ!」
無念の思いをこらえながら、しぶしぶ口を
動かす彼の頬に、悔し涙が糸を引いた。
こうして初日から、長谷川に対する玉枝の
調教は、亮蔵の立合の元で、緩みないピッチ
で進行したのである。
トイレや家の中の掃除に、長谷川を散々こ
き使った後、その日の夕方、亮蔵と連れ立っ
て風呂に入った玉枝は、彼に新たな屈辱を強
いた。
長谷川は脱衣場を兼ねたユーティリティー
ルームで、仰向けに床に寝かされる。その顔
に跨がった彼女は、彼に自分の汚れたアヌス
を舐める様に命じたのである。
「奴隷の身分をわきまえるには、これが何よ
りの行為よ。御主人様の身体の一番汚れた所
を味わって清めることで、征服された我身を
認識するの。・・・・・そう、これが所謂、
奴隷の接吻≠諱v
顔の上に大きく拡がる白い女の尻が、これ
見よがしに揺すられ、彼を威圧した。
そして、プーンと尿の臭いを漂わせたクレ
バスが鼻にタッチすると同時に、セピア色の
菊座が彼の唇をしっかりと捉える。
ぐっと尻の重みが顔にかゝり、豊かな尻丘
が彼の両頬を挟み込んだ。流石に、不潔感が
思わず彼の唇を凍らせてしまう。
「どうしたの? 奴隷の身分に落されたこと
が、未だ判らないの?」
玉枝は、尻を小刻みに前後に揺すって彼の
唇をアヌスでにじり、蹂躙した。
粘膜に付着していた澱が、彼の固く閉じた
唇を割って口中に擦り込まれる。
そのピリッとする残渣の味が舌先を染め、
じっとりと湿ったクレバスのむせる様な臭い
が鼻孔に充満すると、彼の脳髄はめくるめく
屈辱の思いで痺れ、抵抗する気力が完全に奪
われた。
男の唇が、そして舌が、アヌスの粘膜を積
極的に這い出したのを感じ取って、玉枝はニ
ンマリする。
「ウフッ、どうやら判った様だね。それじゃ
今度は、舌の先を尖らして御覧。・・・・・
そして、それをぐっと突き出すの。そうそう
それで良いわ」
玉枝は彼の顔の上で尻を微かに浮かすと、
両方の尻球を両手で掴み、ぐっと左右に拡げ
ながら男の舌先をアヌスに当てがって、再び
尻を下ろす。
彼の尖らせた舌先が、すっぽりと女の菊座
の中心に埋まった。
「そこで舌を回して汚れを取るのよ。・・・
・・そうよ。フフフ、どんな味がするの?
こんなこと迄させられて恥ずかしくない?」
舌先に触れるねっとりした糊状のものは、
明らかに直腸に付着する残便だった。
それが舌の動きにつれて口中に入り、溶けて
拡がる。強烈な悪臭が鼻へ抜け、唯でさえ耐
え難い屈辱感が玉枝の嘲けりに増幅されて、
長谷川は、気も失わんばかりの悔しさに、身
体を震わせてもだえたのだった。
その晩、夫婦の寝室へ曳き入れられた彼は
命じられるまゝに、亮蔵と玉枝のセックスの
慰みものにされた。
ベッドに腰掛けた玉枝は、長谷川の首の鎖
をたぐって、ゆっくりと彼の顔を自分の股間
に引き寄せる。
屈辱に歪む彼の顔を楽しむ様に、ニヤニヤ
笑いながら見下ろして、彼女のクレバスへの
舌奉仕を強いたのである。
少しでも舌の動きが鈍ると、玉枝は彼の股
間の鎖を引いて催促する。情けないことに、
急所の痛みには勝てず、長谷川は玉枝の意の
まゝにならざるを得なかった。
一時間を超える舌による前戯の後、玉枝は
ベッドの上で亮蔵と抱き合った。
「シロ、こゝへ来て私のお尻をお舐め!」
彼女は、亮蔵と唇を合せながら、手に握っ
た鎖を引く。横になって男と抱き合う女の尻
が、異常に大きく盛り上って見えた。
そこに顔を埋めた彼は、たわわな尻肉を両
頬で押し分ける様にして、アヌスを吸う。
上ではクスクス笑いを混え、何やら囁き合っ
ている声。・・・・・彼の胸は、みじめさで
一杯だった。
やがて玉枝が身体を捩り、彼の顔を横座り
に尻に敷いた形で仰向けになる。大きく開い
た股の間から、長谷川の顔が覗いていた。
その上に男の身体が被さり、挿入が始まっ
た。ピチャピチャと音を立てゝ亮蔵の一物が
彼の目の前で、女の膣を出入りする。
その度に男の陰嚢が、ペタッペタッと彼の頬
を打った。
「何してんの。結合部をお舐め!」
玉枝の叱咤する様な声。
慌てゝ舌を思い切り伸ばして、出入りを繰返
す陰茎の裏側と、押し拡げられた女のラビア
とを等分に舐め続けた。
ゆっくりした動きが、次第にリズミカルに
ピッチを高め、又、大きなうねりに戻る。
何回かそれが繰返され、漸く激しいピストン
運動の後、クライマックスが来た。
男の身体がヒクヒクと微かに痙攣し、放出
が行なわれている気配である。
暫く静止状態が続いた後、男が身を起す。
肉棒がスルッと抜かれ、同時に生臭い刺激
臭と共に、ドロッとした精液が、女の膣から
多量に溢れ出した。それが、尻割れを伝って
長谷川の唇を濡らす。
「吸うのよ。早く! 零さない様にね」
玉枝の声に、ハッと我に返った彼は、思い
切ってその粘液を吸った。
ズ、ズ、ズーッと音がして、そのネットリ
した液が彼の舌を濡らし、咽喉を通って胃を
満たす。男の精液に女の淫液がミックスした
その味は、将に長谷川が二人のセックス奴隷
に転落したあかし≠ノ外ならなかった。
「あと、すっかり奇麗にして! それから、
暫く舌で私を楽しませなさい」
長谷川の顔をしっかりと股に挟み込んだ玉
枝は、ゴロッと横に転がって寝息を立て始め
た亮蔵を横目で見ながら、命令する。
それから二時間余りもの間、玉枝は貪欲に
快楽を求めて、彼に舌奉仕を強い、何回かの
オルガスムスに背をのけぞらしたのである。
哀れにも、長谷川の唇は痺れ、舌はその付
根が腫れ上ってしまっていた。
逃げない様にと玉枝は彼に後手錠を穿め、
股間の鎖をベッドの足に括り付けた上で、絨
緞を敷いた床に蹴り転がした。
そのまゝ彼は、深い泥の様な眠りに陥って
しまう。
こうして、仕事の為とは言え、特捜刑事、
長谷川史郎の袴田邸での、哀れな奴隷生活が
始まったのである。
玉枝の調教は、順調に進行して行った。
そしてそのやり方は、徹底的に彼の精神を卑
しめ、人格を破壊するのを主眼としている。
足舐めとパンティー舐めとは毎日の日課と
して続けられたが、掃除や洗濯等の家事に追
い使う合間に、玉枝は暇さえあれば彼の顔に
跨がり、尻臭を嗅がせ、アヌスを舐めさせる
のだった。
そして、二週目から新たに追加になったの
が、トイレットペーパー役の訓練である。
つまり、玉枝が用便を済ませた後、トイレ
ットペーパー代りに、舌で女の股間を清めさ
せられるのである。
その最初の日の朝、便器に跨がって用を足
す玉枝の足元で、足裏を舐めさせられていた
彼は、その、おぞましい行為を命令されて、
思わず汚辱に身体を震わせた。
そんな長谷川を嘲笑いながら、玉枝は、足
元に仰向けに寝かせた彼の顔に、ゆっくりと
逆向けに跨がった。
「オシッコの跡を先に清めるのよ。そうじゃ
ないと、お前の舌で却って私の大事な所が汚
れるからね。フフフ」
すぐ目の前の、彼の顔に触れんばかりの距
離に、ベットリと褐色の糊に覆われた女のア
ヌスが異臭を放っている。
クレバスに付着している、アンモニア分の
強いピリッと刺す様な尿を、舌で吸い取りな
がら、彼は屈辱に押しつぶされて、殆ど放心
状態だった。
腰がもぞもぞと動き、糊の部分が口に触れ
る。不潔感を必死で抑えながら、唇でその糊
を挟み込む様にして吸い取った。
ヌルッとした感触と共に、ピンク色の菊座
が現われ、それが微かに震えたかと思うと、
プスッと云う音と共に鼻が曲る様な強い臭気
が放出され、彼の顔一面に、細かいはねが掛
かった。驚きと怒りで、麻酔で声の出ない咽
喉がヒューと音を立て、鼻が鳴る。
「クックックッ、おならを掛けられて豚鳴き
をするトイレットペーパーなんて、初めてだ
わ。これでも男かしらね。・・・・・サー、
全部、奇麗に舐め取るのよ。サ、早く!」
こうして、更に一週間経った頃には、彼は
玉枝の柔順な奴隷として、生れ変っていた。
しかし、彼の特捜刑事としての目的を忘れ
たわけではない。
電話が鳴って、亮蔵が出る度に聞き耳を立
てゝいたが、中々思わしい手掛りが掴めない
でいた。
確かに、麻薬の取引を指示していることは
判るのだが、肝腎の場所や日取りとなると、
符丁の様な暗号で、さっぱり意味が取れない
のである。
長谷川の心に、漸くあせりと苛立たしさが
高まって来た時のことである。
夕食を終えた二人は、畳の間に上敷を広げ
て骰を持ち出した。勿論、現金そのものを賭
けてのものではなく、碁石をチップ代りに使
ってのゲームである。どうやら遊びにかこつ
けて、亮蔵が玉枝に骰の目賭博を仕込む意図
もある様だった。
亮蔵に向い合って、幾分顔を上気させなが
ら骰を振る玉枝・・・・・そのぽってりした
尻の下には、パンティー越しに長谷川の顔が
敷かれている。
最初はツキが玉枝にあったらしく、何度か
嬌声を上げて喜ぶ女の尻が、彼の顔の上で弾
む。しかし、その内、次第に旗色が悪くなっ
て来たと見え、亮蔵の哄笑と玉枝の嘆声とが
対照的に目立つ様になった。
「コラ、お前の心掛けが悪いから、勝てない
じゃないか。ツキが変る様に、私のお尻でも
お舐め!」
長谷川に八つ当りする玉枝は、腰を少し浮
かしてパンティーをずらす。その尻の下で、
彼はアヌスの粘膜を唇で素早くまさぐって、
蛭の様に吸い付いた。
その、もの馴れた動作には、明らかにこの
二週間の調教の成果が現れている。偶然、次
のゲームは玉枝が勝ったと見え、玉枝の機嫌
の良い笑声が響く。
「サァー、これからよ。・・・・・ホラ、も
っと強く舐めて!」
その時、傍らの電話が鳴った。亮蔵が受話
器を取る。やはり、取引の連絡と見えて、例
の符丁を混えてのやり取りだった。
電話を終えた亮蔵は、玉枝に向き直った。
「明日、俺の居ない時に、もう一度連絡があ
るそうだ。内容をメモして、こゝへ知らせる
んだ。いゝか?」
「又、私がやるの? 暗号、忘れちゃった」
「この前、お前の手帳に全部控えていたじゃ
ないか。無くしたのか?」
「あるわ。バッグの中よ」
「しかし、お前は意味が判らなくても、その
まゝ間違い無く伝えれば良いのさ。じゃあ、
頼んだぜ」
二人は再びゲームに戻った。
玉枝の尻の下で耳を澄ませていた長谷川に
は、耳寄りの話である。
翌日、掃除の合間に玉枝の隙を窺って、バ
ッグの中の手帳を捜し当てた彼は、震える手
で頁を繰った。それらしい個所が直ぐ見付か
る。今迄さっぱり判らなかった符丁が、細か
い字で丁寧に解説してあった。
屑篭に捨てゝあった紙の端に、手早くそれ
を書き写す長谷川の胸は、大きく鼓動する。
「シロ、何処へ行ったの?」
玉枝の呼び声が聞こえた。丁度写し終った
紙を鏡台の下に隠し、手早く手帳を元に戻す
と、四つ這いで声の方へ急ぐ。
「何をしてたんだい。トイレの掃除は終った
んだろうね?」
玉枝の問いに鼻を鳴らして答えながら、彼
は、リクライニングチェアにくつろいでいる
女の足元にかしこまった。
「私は昼寝するからね。その前に、お前の舌
を使ってやるわ」
彼女は、椅子の背を水平近くまで倒し、足
置の上で膝を立てる。
彼は椅子と足置の間の空間に身体を置き、
女の股間に首を差し入れた。玉枝の手が彼の
髪を掴み、ぐいとばかり彼の顔をクレバスに
押し当てる。むっちりした太股が、しっかり
と男の頭をその位置に固定した。
「サー、早くお舐め! 私に、虹の夢を見せ
るのよ」
クレバスを囲むやゝ大きめの陰唇が、催促
する様にうねりながら彼の顔を擦る。
既に潤みを帯びたその部分は、熱帯の花に
似た強烈な女の性臭を放っていた。
舌の先を伸ばしてラビアをかき分け、割れ
目に沿って秘肉を舐め上げる。充血して固く
膨らんだクリトリスを、舌の腹で下から弾く
様にして刺激した。
「ウーン、そこよ。そこを吸って頂戴。・・
・・・バカね、唇を使って挟み込むの。・・
・・・そうよ、そう。・・・・・コラ、強過
ぎるわ。痛いじゃないの!」
長谷川の頭に、いきなり玉枝の拳骨が降っ
た。肉体的な痛みよりも、女の意志のまゝに
征服され、頭を殴られながらセックス奴隷と
して仕込まれる屈辱に、思わず目頭がジーン
と熱くなる。
それから一時間近くも舌奉仕を続けさせら
れ、何回も頂点を迎えた後、漸く女の寝息が
して太股の緊縛が緩んだ。
気付かれない様に、少し宛、頭を移動して
玉枝の股間から、やっとのことで脱出する。
足音を忍ばせながら、先程の場所へとって
返し、鏡台の下に隠した紙を取り出した。
そして、そこに書き止めた符丁の説明を、
一心不乱に頭の中に叩き込む。
長谷川が玉枝の許に戻って、その太股の間
にそっと頭を滑り込ませるのと、部屋の隅の
電話が鳴るのと殆ど同時だった。
眠りから覚めた彼女は、依然として股間に
顔を押し当てゝいる男を見下ろして、ニヤリ
とする。腰を捻って邪険に彼の顔を振り払う
と、立ち上って電話に出た。
玉枝の声の調子が幾分緊張し、相手の言葉
を復唱しながら、傍らの紙にメモを取る。
明らかに、亮蔵の言っていた仕事の連絡に
違いなかった。
たった今、脳裏に刻んだ符丁の説明を思い
起してその意味を解読して行くと、予想通り
それは麻薬の取引場所、日時、そして数量の
連絡である。長谷川の胸は興奮で高鳴った。
会話を終えた玉枝は、受話器を置くと、一
旦、部屋を出てバッグを持って戻って来る。
中から手帳を取り出して、暫くメモと対比し
た後、ダイヤルを回して連絡を始めた。
それ以後の長谷川の袴田邸での生活には、
張りと希望が戻って来た。依然として、玉枝
には、辱められ嬲り抜かれる毎日だったが、
亮蔵の電話の内容から、麻薬取引の実態が手
に取る様に判って来たのである。
重立った幾つかの取引場所とその数量から
見て、その流通規模は、特捜班の予想を越え
る大がかりなものだった。しかも、海外から
の輸入ルートも判明し、取引の行なわれる日
が毎月一定していて、受け渡し場所のみが、
予め決まった順序で変ることも掴むことが出
来た。
あとは、この貴重な情報を、何とかして特
捜班のメンバーに伝えることが出来れば、彼
等が一網打尽になることは明らかである。
そして、その機会が運良くやって来た・・・
・・いや、やって来たかに見えたのである。
亮蔵の留守に玉枝が外出する事はあまり無
かったが、止むを得ず出る時は、必ず長谷川
に後手錠を掛けた後、首と股間の輪の鎖を柱
に括り付けて行く。そして、玉枝と亮蔵の汚
れた下穿きを目の前に吊るして、股間の部分
を舐め清めておく様に命じるのだった。
長谷川が袴田邸で飼われる様になって、二
ケ月が経った或る日のこと、珍しく、朝から
亮蔵と玉枝が連れ立って出掛けて行った。
残された長谷川が首を伸ばして、異臭を放
つ玉枝のパンティーを口に含んだ時である。
カタンと音がして、柱の中程に括られた二本
の鎖の端が滑り落ち、その拍子に結び目が緩
んだと見え、鎖を引くとその端がズルズルと
解けて外れた。
後手錠のまゝではあるが、とにかく自由に
歩き回れる様になったのである。
願っても無いチャンスだった。
長谷川は、足を踏みしめ、鎖を引きずりな
がら、早速、電話器の所へと急ぐ。
後手で受話器を外して横に置き、プッシュ
式のボタンをまさぐりながら、特捜班の直通
番号を押した。傍らの受話器に頭を押し付け
る様にして、呼び出し音に耳を澄ます。
「モシモシ、こちら警視庁の特捜班Kチーム
です。・・・・・モシモシ」
懐しい山形警部の声である。
(モシモシ、山形さん。こちら長谷川です)
と言ったつもりだが、まるで声にならず、
ただ、ヒューヒューと虚しく咽喉が鳴るのみ
だった。
何と言うことだろう! 三日毎に咽喉に打
たれている注射で声帯が麻痺し、声が奪われ
ていることを忘れていたのである。
「モシモシ・・・・・モシモシ。何だ、いた
ずらかぁ」
ガチャンと音がして声が途絶えた。いたゝ
まらぬ思いで、再度試みようとしたが、結局
思い止まる。声の出ない身では、電話で急を
知らせることは出来なかったのである。
この上は、こゝを脱出して自分で特捜班に
出頭し、筆談で情報を伝えるしかない。
そう思い直して、フト横を見ると、姿見に
全裸で首輪に後手錠の、情けない我が身が写
っていた。しかも、むき出しの股間からの細
い鎖が、首輪からの太目の鎖と絡み合って畳
に延びている。これでは、脱出しても狂人と
見なされるだろうし、第一、弁解しようにも
口が聞けないのである。
長谷川は、寝室に入ると、不自由な後手錠
のまゝ戸棚から亮蔵の背広を取り出した。
何とかズボンを穿き、鎖を中にたくし入れ
た上で、机の角に前を擦り付ける様にして、
散々苦労した末、やっとジッパーを上げる。
上着を肩に羽負って、漸くのことで何とか
恰好を整えた。
ホッとして鏡を見やった時に、傍らに小さ
い手帳が無造作に置いてあるのに気付いた。
電話で亮蔵の使う符丁の細かい説明が書いて
ある、例の玉枝の手帳である。
長谷川にとっては、それは、自分の報告を
裏付ける貴重な証拠品だった。しかも、麻薬
ルートの連絡先の電話番号も、どこかに書い
てあるに違いない。
それを、何とかズボンのポケットに滑り込
ませると、玄関の扉の鍵を後手で外し、そっ
と表へ出た。未だ朝とは言えもう日も高く、
このあたりの住宅区域も、漸く活気を帯びて
来た頃である。
高い塀に囲まれた植込みが、鉄格子の門ま
で続いていて、両隣りの家からはこちらが窺
えない様になっていた。
後向きになって門の把手を握った彼は、そ
れがロックされているのに気付いた。亮蔵と
玉枝は当然ながら、門に鍵を掛けて外出した
のである。
それが、鍵無しでは、内側からも門が開か
ない構造になっていようとは、彼にとっても
予想外だった。
幸い、その鉄柵の背はあまり高くない。
しかし、後手錠の身では、よじ登るすべも無
かった。一策を案じた長谷川は、とって返す
と、家の中から椅子を引きずり出して来た。
それを門の前に据えて、後向きに柵の上に
身を投げ掛ける様にすれば、外へ滑り降りる
・・・・・いや、転がり落ちることが出来そ
うである。
表の人通りを気にしながら、彼が椅子の上
に立った時であった。
「シロ、シロじゃないの? そこで一体何を
してるの?」
玉枝の声である。
心臓がドキンと鳴り、思わず身体が震えた。
スーッと全身の血が抜けて行く思いである。
そして、彼は、そのまゝ凍り付いた様に、
動けなくなってしまっていた。
「そおーなの。判ったわ。・・・・・逃げ様
としていたのね」
玉枝は、鍵を取り出して門を開けると、彼
の肩から上着を剥ぎ取る。後手錠を点検して
異常無いことを確めると、首の鎖を引き出し
てグイと引いた。
よろけながら、玉枝に曳かれて家に戻る長
谷川の心は、暗澹とした雲に閉される。
(これで、もう当分逃げるチャンスはあるま
い。・・・・・しかし、もう少しの所で・・
・・・残念だ!)
部屋の中で足元に彼を引き据えた玉枝は、
手荒くズボンを引き剥いだ。
その拍子に、パタリと例の手帳がボケット
から畳に落る。
玉枝の目が、キラリと鋭く光った。
「お前、これをどうする積りたったの?」
「・・・・・・・」
「そうだわ、声が出ないんだったわね。・・
・・・いゝわ。こちらで徹底的に調べてやる
から!」
玉枝は電話で亮蔵を呼び出すと、長谷川の
方をチラチラ見やりながら、声をひそめて話
し込んだ。
その晩帰宅した亮蔵は、玉枝の前に分厚い
書類の入った封筒をポンと投げた。
「読んで見な! きっと驚くぜ。・・・・・
こいつはな、警察の犬だったんだ。今日、昼
から興信所で、身元を徹底して調べて貰った
結果さ。・・・・・警官を奴隷にしていたな
んて、俺もヤキが回ったもんさ!」
「じゃあ、あの手帳の中味も・・・・・」
「そうさ、こん畜生、あれで俺の電話の内容
を調べてやがったんだ。・・・・・とにかく
こうしちゃいられねえ。口がきけねえから、
未だ警察には通報していない筈だが、用心に
越したことはない。それに、こゝが目を付け
られている事は間違いねえ。明日にでも、早
速こゝを引き払うんだ」
「こいつは、どうするの? 始末する?」
「イヤ、連れて行くんだ。いざと言う時には
人質にだってなるからな」
その翌日、亮蔵の連絡で、早朝から屈強の
男達が何人か、二台の大型トラックに分乗し
て袴田邸を訪れる。
それは、将に、鳥が飛び立つ様な慌しさだ
った。アッと言う間に、家財道具をトラック
に積み込み、何処ともなく運び去る。
長谷川も、後手錠のまゝ頭からレインコー
トを被せられて、亮蔵と玉枝の乗る小型のワ
ゴンに押し込まれた。延々と、二時間近くも
ドライブしたであろうか、漸く目的地に到着
したと見え、長谷川は手荒く車から引き下ろ
される。
あたりを見回すと、そこは、薄暗いビルの
地下駐車場だった。一同は、傍の小さなエレ
ベーターで四階に上る。
降り立ったエレベーターホールには、絨緞
が敷かれ、ホテル調の落着いたインテリアに
なっている。しかし、スペースは狭く、横手
に非常階段用のドアと、正面に凝った装飾の
扉が二つ並んでいるだけであった。
片方の扉の横には山口時枝≠ニ表札が掛
けられている。もうひとつの方は空白のまゝ
だった。
オドオドと不安そうな様子の長谷川を振り
返って、亮蔵が口を開いた。
「この山口時枝と言うのは、こゝにいる玉枝
の妹さ。実はこの下のフロアーが、俺の経営
しているナイトクラブになっていて、時枝は
そこのママさんって訳だ。・・・・・こゝな
ら警察の目も届くまいな。ウフフフ」
亮蔵はキーを取り出すと、表札の掛かって
いない方の扉を開けて中へ入る。
内部は、びっくりする程大きなスペースの
マンションになっていた。今朝運び出した家
財道具が、早くも整然と仮置きされている。
窓際のサンルームの横のドアが開いて、玉
枝に良く似た丸顔の女が現れた。
「いらっしゃい。突然なんで、びっくりした
わ。・・・・・アラ、こいつが、電話で聞い
た警察のイヌなのね」
明らかに、玉枝の妹の山口時枝だった。
眉の濃い派手な顔立に、やや受け口の厚い
唇が肉感的で、如何にもナイトクラブのママ
と言った雰囲気を持っている。
後から判ったことだが、この部屋と隣りの
時枝の部屋とは、サンルームのドアを通って
自由に行き来でき、又、時枝の部屋から下の
ナイトクラブへは、同じサンルームから小さ
な階段が延びて、クラブのオフィスへと連絡
していた。
亮蔵は、広いリビングルームのソファーに
腰を下ろし、傍らに座った時枝と共に玉枝の
入れたコーヒーを啜る。
長谷川は、漸く手錠を外して貰ったものゝ
依然、全裸に首輪のスタイルで、玉枝の足元
に引き据えられていた。
「とにかく、今度はこいつのお蔭で、えらい
目に会ったぜ。・・・・・余程厳しく罰して
やる必要があるな」
亮蔵が、吐き捨てる様に呟く。それを受け
る様に時枝が、身を乗り出して提案した。
「良かったら、下のクラブで、こき使ってや
るわ。・・・・・フフフ、この鎖があれば、
うちのホステス連中だって、こいつを思いの
まゝに出来るしさ。ネ、姉さん、どおお?」
「いゝわよ。うんと苛めてやって頂戴。・・
・・・でもね、こいつが警察の犬で、私達が
今迄騙されていたなんて・・・・・しかも、
逃げ様としていた所へ運良く私が帰って来た
から良かったけど、危ないとこだったのよ。
私、どうしても腹の虫が収まらないわ!」
いきり立つ玉枝を、今度は、亮蔵がなだめ
る役に回った。
「こいつに与える罰は、お前の気の済む様に
すればいゝさ。・・・・・どうせ、こいつも
これからは、二度と日の目を見ることは無い
んだからな。煮て食おうと焼いて食おうと、
お前の勝手さ。・・・・・反抗でもしたら、
直ちに始末してやるぜ」
「判ったわ。それじゃ、この犬を今日から豚
にしてやるわ。・・・・・シロ! お前、私
の言う意味が判るかい?」
玉枝は、足元でキョトンとして彼女を見上
げる長谷川を、じっと睨みながら続ける。
「豚はね、犬と違うのよ。・・・・・豚の食
物は、昔は人間の排泄物だったそうよ。・・
・・・お前も、その豚になるの。いゝこと、
お前はこれから、私の排泄物を全て口にする
のよ。そして、その排泄物だけで生きるの。
・・・・・フフフ、まあ、謂わば完全な人間
便器ね。判った?」
そこへ時枝が、ニヤニヤ笑いながら割って
入る。
「ね、ねえ。お前、姉さんの分だけじゃ、直
ぐに栄養失調になって、死んでしまうわよ。
いゝわ、私の分も足して上げる。・・・・・
そうだ、ホステスの女の子達も協力してくれ
るわよ。・・・・・そうなると、ウフッ、お
前はさしずめ、婦人用共同便所ね」
哀れをとどめたのは、ショックで茫然とし
ている長谷川である。
逃亡に失敗し、警察の特捜刑事の身分がバ
レて以来、覚悟はしていたものゝ、これから
女の排泄物で生きねばならぬとは、思いも掛
けぬ悲運だった。
亮蔵は、腹を抱えて大笑いする。
「こりゃいゝ! 婦人用共同便所か。それで
こいつも償いが出来るって訳だ。ワハッハッ
ハッ」
そこへ、玉枝が、麻酔薬の注射器を片手に
近づく。
「引越し騒ぎで忘れてたわ。サァ、咽喉を出
して!」
「オイオイ、一寸待て。今日はひとつ、量を
増やすんだ。・・・・・これ迄は咽喉の機能
が後で回復する様に控えてたんだが、もう構
うことない。量を三倍にすれば、一発で咽喉
の声帯が死んで、一生、喋れなくなるさ」
ズブリと咽喉に刺さる針から、透明な麻酔
薬が注入される。これで、二度と声が出なく
なるのかと思うと、無念の涙が長谷川の頬を
伝った。
注射が終ると、時枝がいきなりグイと首の
鎖を引く。
「サァ、おいで! 下のクラブの掃除をする
んだよ」
時枝に曳かれて、四つ這いでサンルームの
階段を降りた。何とか、手摺りの下の柵に掴
まって、震えながらも、無事に階下のナイト
クラブの事務所に達する。
早速、事務所の中、続いてトイレの掃除を
命じられた。それが終ると今度はホステス達
の控え室、最後はフロワーの床磨きだった。
人気の無い客席とステージの床に、這いつ
くばってモップで汚れを拭き取り、ワックス
を滲ませたウエスで、表面を擦るのである。
意外に時間が掛かり、しかも体力を消耗す
るハードな作業だった。
折しも夕方の営業開始時間が迫り、ホステ
ス達が出勤し始める。全裸でフロワの掃除を
している長谷川は、当然、彼女等の好奇の視
線を浴びた。カウンターの横に座って、煙草
をくゆらしながら彼の仕事振りを監督してい
た玉枝が、彼女等に解説する。
「この男はね、私の姉夫妻のところへ、自分
から志願して、奴隷になったマゾ男なのよ。
女の嬲り者に成るのが望みの、生れ付いての
変態さ。・・・・・しかも、唖で口がきけな
いし、女の排泄物が好物ときてる・・・・・
どうしようもないド変態なの。皆も、功徳だ
と思って、せいぜい嬲っておやり」
時枝のもっともらしい説明を聞いて、一応
は納得したものゝ、珍しい動物でも見るかの
様に、彼の周囲には、次第に若いホステス達
が群がって来る。
「ホラ、あれ見て! あんな所にまで、鎖を
付けられてるわ」
「ホント! やはり、ママの言う様に変態奴
隷なのね」
そこへ、彼女等をかき分ける様にして、玉
枝が現れた。
「シロ、咽喉が乾いたろう?・・・・・クッ
クックッ、みんなの前で、うんと恥ずかしい
目に会わせて上げようか?」
玉枝は、長谷川の肩を、いきなり足蹴にす
る。ぐらりとよろめく所を、二本の鎖を巧み
に操って、彼を足元に仰向けに転がした。
男の両耳を、足の踝の間に挟む様にして、
顔を跨いで立った彼女は、ニヤニヤ笑いなが
ら彼の顔をジッと見下ろす。
そのまゝゆっくりと腰を下し、彼の目の前
でパンティーをめくった。
「顔を見せて御覧! アラアラ、お前、泣い
てるの? ウフッ、きっと嬉し涙ね。・・・
・・サァー、口を大きく開けてぇー」
玉枝は、股間を覗き込みながら、位置を定
めると、ぐっと尻を落す。ポッテリした尻の
重みが、まともに口の周辺に掛かり、顎が外
れんばかりに、口が引き開けられる効果を生
んだ。
呻き声が声に成らず、呼吸と共に鼻が鳴る
のが、周囲で見守る女達の失笑を誘った。
ポタポタと、舌の奥から咽喉にかけて、滴
がしたゝったかと思うと、チョロチョロと汚
水の流れが長谷川の口腔を襲う。
咽喉が詰まる恐怖に駈られて、ゴクリと汚
水を飲み込んだ。水流は勢いを増し、ゴクリ
ゴクリと彼の咽喉が鳴って、胃のあたりが大
きく上下する。
「ヒャー、この男、オシッコ飲んでるぅ・・
・・・きったない奴!」
「人間じゃないわー。・・・・・そう、ブタ
よ。変態ブタだわ!」
周囲のホステス達がどよめき、口々に長谷
川に蔑みの言葉を投げ掛けた。
飲み終って、跡を舐め清めさせられる彼の
目尻から、耳のあたりに悔し涙が流れた。
パンティーを引き上げながら、軽蔑の視線
を長谷川の顔に注ぐ玉枝。その股間で半身を
起して女の顔を振り仰ぐ彼の表情には、ハッ
キリと、披征服者の卑屈さが現われている。
その時、胃からの臭いゲップが、大きな音
を立てゝ彼の口から洩れた。同時に周囲の女
達の間で、笑いが爆発する。
それは、長谷川に対する女達の軽蔑が、ま
さに決定的になったことを意味していた。
「どおお? 皆の前で、私の便器にされて、
悔しい?・・・・・サー、お前の口から言っ
て御覧・・・・・私は婦人用の公衆便所です
から、皆さんで使って下さいって」
「・・・・・・・」
「アラアラ、そうだ、お前、口がきけないん
だったわね。いゝわ。私が代弁して上げる。
いゝこと・・・・・皆さんの排泄物は何でも
頂だきます。オシッコだけでなく、唾や痰、
そしてウンコでも、メンスの汚れでも口にし
ますから、宜しく・・・・・アラッ、シロっ
たら真っ赤になってる。・・・・・あゝ、お
かしい! クックックッ」
その晩ナイトクラブでは、華かなステージ
ショーが繰り広げられていた。客の入りも、
まずまずである。
ホステス達は、思い思いのきらびやかなド
レスに身を包み、せい一杯の職業用の笑みを
浮べて、客から客へと回り歩いていた。
一転して、こちらは舞台裏のホステス控え
室である。後手錠を穿められた長谷川が、裸
のまゝ柱に繋がれ、床に座り込んでいる。
その口には、奇妙な物が取り付けられてい
た。プラスチック製の大きな漏斗である。
それは、時枝のアイディアだった。
初めて男の口に小水を注ぐホステス達に、
出来るだけ、抵抗感無しに用が足せる様にと
の配慮なのである。
漏斗の口は、彼の口腔深く差し込まれ、胴
体は、ガムテープで口の周囲にしっかりと固
定されていた。
控え室で煙草をくゆらしながら、一息入れ
ているホステス達が数人、周囲に群がって、
この珍妙な見世物を楽しんでいた。
「ネ、ネエ。この漏斗は、痰壷の代りもする
わよ。ホラ、見てぇ!」
女の一人が身をかがめ、漏斗の縁を掴んで
上に向け、口の中にたっぷり溜めた唾をペッ
と中へ吐き込んだ。
細かい泡の混った、ねっとりした唾液が、
円錐形の壁を伝って、細くなった吐出口に、
ゆっくりと吸い込まれて行く。
「面白いわ! 私にもやらせてぇ」
もう一人の女が、今度は咽喉をカーッと鳴
らして、唾混じりの痰を吐き込む。
ボリューム感に溢れた、やゝ青味を帯びた
黄色の痰が、まるで生きているかの様に、ブ
ルブルと身震いしながら、先の唾の塊りの後
を追ってシンクの中に消えた。
生暖い唾と痰が、同時に口腔に流れ込み、
長谷川は、不潔感と屈辱感を懸命に堪えなが
ら、そのヌルヌルした塊りを飲み込む。
「ワーッ汚いわぁ。こんなもの飲まされて、
お前、悔しくないの?」
「汚れついでに、私の汚なーいお水を飲ませ
てやるわ。・・・・・変態ブタさん、覚悟は
良いわね」
三人目の女が、パンティーを脱ぎスカート
をたくし上げると、男の肩を跨ぐ様な姿勢で
漏斗を股間に挟む。
「顔をお見せ! どんな顔して私のお小水を
飲むのか、じっくり見てやるわ」
ポタポタと、プラスチックの漏斗に水滴の
当る音。途端に長谷川の顔が、引き吊れた様
に歪んだ。
「フフフ、情け無い顔!・・・・・アラアラ
涙が出て来たわよ。やっぱり悔しいのね」
塩味の強い臭みのある汚水が、漏斗を満た
し、容赦無く彼の咽喉に流れ込む。
ゴクリゴクリと咽喉を鳴らして、それを飲
み込む彼の目尻から、ツーゥと涙が零れた。
上から覗き込んでいる女達の顔には、一様に
強い蔑みの表情が浮かんでいる。・・・・・
それも、次第に涙の中にぼやけて行った。
その翌日、長谷川は、亮蔵と玉枝の寝室で
朝を迎えた。昨夜は、クラブの女達に痰壷兼
共同便器として使われ、数時間に亘って嬲ら
れた後、例の如く、この寝室で亮蔵と玉枝の
セックスの道具として奉仕させられ、後始末
も口でさせられたのである。
長谷川の正体が特捜刑事と判ってからは、
玉枝の彼に対する態度が一変していた。
これ迄の、奴隷を仕込む女主人の立場に、
憎い敵を征服する渡世人の情婦の役割が、加
わったのだから無理もない。
容赦しない厳しさと、憎しみが、彼女の行
為をエスカレートさせて行った。
日も高くなって、やっと目覚めた玉枝は、
ベッドの裾の床で、そのこと≠予期して
震えている長谷川に近ずく。そして、ニヤニ
ヤ笑いながら、彼の顔を尻に敷いた。
「朝のお勤めよ。口を大きく開けて!」
臭いと味が格段に強い女の朝尿が、彼の咽
喉を焼く。そして・・・・・
「サー、いよいよ豚の身分を思い知る時よ。
私の黄金を食べて、地獄へ落ちなさい!」
玉枝の尻に覆われた彼の口に、女のいきみ
が伝わって来る。そして、間もなく、プスッ
とガスが口中に放出された。
気の遠くなりそうな、くさい臭いが口から
鼻に抜ける。続けて、粘っこい糊の紐が彼の
口腔に振れ、舌の上にポトンと落ちた。
続けて、大きな塊りが、ググッと容赦無く
彼の口に侵入して来る。
こうして、気も狂わんばかりの屈辱と悔し
さの中に、彼の、女の便器としての汚辱の生
活が幕を開けたのだった。
(完)
----------------------------------------
1987年8月スピリッツ8月号
----------------------------------------
2011/01/15