020-#20転落の跡取り息子
                 阿部譲二作

資産家の父を亡くした高校生のひとり息子が、父の弟である叔父に全財産を乗っ取られる。しかも野球の試合で誤って股間をスパイクされた息子は去勢手術をされ、叔父の家の召使にされる。叔父には三人の娘がいて長女は偶然彼と同じクラスの高校生。男根を失った彼は女中として娘達にこき使われ高価なホルモン注射の代わりに彼女等の小水を飲まされる。

「御臨終です……」
 担当の医師が、詰め掛けた親族達に向かって、ゆっくりした動作で深々と一礼した。
介添の看護婦達も、一呼吸遅れて一斉に頭を下げる。
 ここは、都内の一流病院の最上階にある、豪華な特別病室である。南側に面した大きな
窓からは、ブラインド越に初夏の午後の日差しが床一面に光を落していた。
 亡くなった高木家の当主、長一郎の自宅は東京都内から私鉄の急行で約一時間半の距離
の、新興のベッドタウンにある。
もともと、この地方では古くから続いた由緒ある家柄で、土地や山林も含めて、かなりの資産を所有していた。
 数年前に私鉄が開通し、この地方も御多分に漏れず、都心からの移住者が急増した。
昔の雛びた地方色はどこえやら、今やビルの建ち並ぶ近代都市に急成長している。
 高木家の広壮な邸宅の周囲もすっかり開け、商店街が近い事もあって、格好の住宅地
として、アパートやマンションが林立する様になっていた。
 長一郎が高木家を継いでからは、それ迄の家業だった製材工場を人手に渡し、弟の平蔵
と二人で不動産の会社を設立した。
それが、経済の高度成長の波にうまく乗って、東京都内に小さいながらも立派なオフィスビルを設置する迄になっていたのである。
 その半面、家庭的にはあまり恵まれず、子供は、一昨年高校に進学した正男という男の
子ひとりだけで、妻の梅子には数年前に先立たれている。
 弟の平蔵の方は三人の子持だったが、皆女の子で、一番上の良子が正男と同年で、同じ
高校のしかも偶然にも同じクラスに居る。
しかし、この二人は、いとこ同志と云っても異性でもあり、幼時から頗る仲が悪かった。
 性格も正反対である。正男が身体こそひ弱だが、真面目でおとなしく、学業の成績もず
ば抜けた、所謂、優等生タイブであるのに反し、良子は身体こそ大柄のグラマーだが、気
が強く勉強嫌いで、どこか底意地の悪い所があった。
 ひとつ年下の妹、幸子、そして三つ下の敬子は、共に姉に似て身体ばかり発達して頭がついて行かない所がある。
 三人揃ってそれぞれに美人なのだが、親が甘いこともあって勉強はそっちのけで不良グループを語らって毎日遊び呆けていた。
ひとつには、彼女等三人の母親が水商売の出で万事が放任主義、従って、しつけが全く欠けていたのが、この結果を生じたのだとも言える。
 ともあれ、長一郎の突然の逝去で、高木家の内には莫大な遺産の相続を回って嵐が巻き起ることになる。
 長一郎の死後、公開された遺言状では、嫡子の正男が法定枠の範囲で全財産を相続するが、高木家の血筋を絶やさぬ為、不動産相続権の確定は正男に長男又は長女が誕生した時とするとあった。
表面上は跡取り息子の正男が一旦すべてを相続し、正男が成年に達する迄当分は、伯父の平蔵が後見人を勤める事で落着するかに見えたが、事はそう簡単には行かなかった。
 そもそも事態を複雑にしたのは、親族間の感情のもつれだった。具体的に言えば正男が
伯父の平蔵一家を、徹底的に嫌っていた点にある。
 叔父の娘である三人の従妹達とは幼時から犬猿の仲だったし、その元と云えば、水商売上りの叔母、道代の品の無さ、だらしなさが子供心に嫌悪の念を植え付けていたとも云える。
 更に、正男の目には平蔵自身もどことなく腹黒い、策の多い男と写っていたし、幼時から全く親しみの持てない叔父だったのである。
 しかし、母に続いて父を失った正男としては、本来なら頼るべき親族はこの叔父一家しか無い。しかし、どうしてもその気になれない正男は、友人の父が弁護士をしている事を思い出し、藁をも掴む思いで相談を持ち掛けた。
その結果、その弁護士が正男の代理人として叔父を相手に交渉してくれる事になり、正男
の意志通り、平蔵と縁を切る話しが着々と進められた。
 勿論、これを知った平蔵の怒りは一通りではなかった。
しかし、交渉が進むに連れ、法律的には正男に分がある事が、次第にはっきりして来た。
 即ち、叔父が要求した高木家の財産の分割請求権はしりぞけられ、共同経営の不動産会社の資産のみが切半されるとの裁定が、民事相談所から示された。
 ところが叔父も、そのまま引っ込みはせず反撃に転じたのである。
叔父が内容証明付きで送り付けて来た"相続権無効を告発する訴状"の内容を読んで正男は文字通り腰を抜かさんばかりに驚顎した。 そこには、正男が、長一郎夫妻の嫡子ではなく、長一郎が、当時高木家の女中をしていた女、春に手を付けて生ませた妾腹の子だと云うのである。
高木家の戸籍謄本が添えられてあり、正男の入籍日が、正男の母の梅子の入籍より半年も
早い事実が指摘されていた。
つまり、正男は長一郎と梅子の子ではないと言うのである。
 色を失った正男は早速、弁護士の所へ駆け込んだ。
 その後の調査で判った事実は、更に複雑で正男の想像を越えたものだった。
つまり、父の長一郎は女中の春に手を付け子供が生れたが、大変な難産で春は正男を生み落すと、そのままこと切れている。
長一郎は即日、春と正男をいったん入籍し、直後に春の死亡届けを出して春を抹消、半年
後に梅子と結婚して入籍したのである。
 実母と信じて疑わなかった梅子が、養母だったことを知った正男は、かなりのショックを
受けて暫し呆然とした。
 しかし、幸いなことに正男の入籍の手続きに違法は無く、高橋家の相続人としての法的資格は損なわれること無く成立し、叔父の訴状は却下のこととなった。
 これで一件は落着したのだが、その後正男には思いもかけぬ不運が振りかかって来るのである。
 それは、父の死後三ケ月が経過した夏の盛りのことだった。
父の葬式とその後のごたごたで二ケ月近くも高校の授業を休んだ正男は、夏休みの補修授業に出ていた。
 参加者は運動部の連中が多く、対外試合で授業に出られなかった者が大部分だった。
各学年、十五名程度の小規模な補修授業だったが、体育の時間も含まれていて、男子は三学年合同で野球試合が課せられている。
チームを二つに分けプレーを開始したが、運動部の連中は、スパイクシューズを穿くなど、本格的ないでたちだった。
 試合の最中、守備でセカンドを守った正男が、ファーストからの盗塁を刺すべく、ベースに入ってランナーにタッチしようとした時のことである。
クロスプレーでランナーと激突した正男が後へ転倒し、その身体の上へ勢い余ったランーの足がもろに踏み下ろされた。
 悪いことにそのランナーがスパイクシューズを穿いてをり、更に悪いことには、足を踏みろした所が正男の跨間だったからたまらない。
「ギャァーッ」
 と悲鳴を上げて正男は悶絶し、意識を失ってしまった。
 そして……正男の意識が戻ったのは病院のベッドの上である。
 下半身がしびれた様に感覚が無かった。
それが、手術を行った際の麻酔によるものだと看護婦が教えてくれたが、どこをどう手術
したのか問いかけても、あとで主治医の先生に聞いて、としか答えてくれない。
 そのうち、又、眠りに落ち、再び目覚めた時には、しびれが取れた代りに、鈍い痛みが
跨間に残っている。
 巡回に来た主治医に手術の内容を問いただす正男に、医師は気の毒そうに説明した。
「君は野球のプレー中にペニスをスパイクされたんだ。何とか縫合しようとしたんだが、海綿体が切れてしまって、どうしようもなかった。……で、止むを得ず、根元から切り取ったんだ」
「で、では、ぼ、ぼくのペニスは……」
「そう、もう無いんだ。睾丸もスパイクされて傷ついていたので、一諸に切り取った。ただ私は数年前から、性転換手術を手がけているので、君には相談する暇は無かったが、私の一存で睾丸の袋を使って、女性器に相当するサックを埋込んである。つまり、君は性転換手術を受けたと同じ結果になったんだ。……その意味では手術は大成功で、外見上は女性の性器と全く変らない出来映えになっているし、サックの部分に男性のペニスの挿入も可能だ。……と云うことは、君は女性として男性と性交することが出来るんだ。勿論、それは君の本意では無いことは判っているがね。それに……」
 医師は、ふと口をつぐんだ。正男の顔から血の気が殆ど失せ、胸の毛布の上で握りしめたこぶしが、ブルブルと震えているのに気が付いたからである。
 医師が去った後も、正男は魂が抜けた様に呆然としていた。
何と云うことだろうか、殊もあろうに跨間を傷つけられ、治療の為とは云え、去勢されて
しまうとは!
正男はまさに悪夢を見ている思いだった。
 しかし回復は意外に早く、一週間で歩行が可能になり二週間後にはすっかり全治して退院を許された。
 入院中、加害者の生徒が父親同伴で詫びに来たが、今更どうなる訳でもない。
おどおどと、父親が慰謝料の相談を持ちかけて来たが、正男は、きっぱりとその必要はないと断った。
 家の方からは、高木家で永年働いている執事と女中頭が何回となく見舞に来ていたが、そのうち、ふっつりと姿を見せなくなり、退院の日に迎えに現れたのは意外にも叔父の平蔵だった。
相続問題で気まずくなって以来、正男は叔父と直接顔を合わせるのを避けていたし、叔父
一家も病院には一切顔を見せていない。
 平蔵はニコリともせず、正男に軽く頷いただけで、連れて来た運転手に正男の荷物を運ばすと、先に立って車に乗り込んだ。
「ま、今度のことは、災難だったな。……退院早々だが、お前にどうしても話しておかねばならんことがあってな、……まあ、車の中ではなんだから、家に着いてからにしよう」
 叔父は思わせぶりな口調で話を切ると、パイプを取り出し、ゆっくりとシートに背を埋
めた。
その時、正男の胸に浮んだ漠然とした不安の念が現実のものとなったのは、車が広壮な高
木邸の門をくぐった時である。出迎えた使用人達は、すべて正男の知らぬ顔だった。
 水を打った植込みの緑が、夏の日を受けてみずみずしく映え、玄関の敷石がキラキラと
光って見える。
 玄関の式台の所に叔母の道代が出迎えていて、平蔵と二人で正男を挟む様にして、玄関横の応接室に入った。
そこでは見覚えのある革張りのソファーを除いて、調度類がすっかり入れ換えられている。
「これは一体何の真似ですか? 僕の留守中に、勝手なことをして!」
 平蔵は、顔色を変えて詰め寄る正男を手で制し、ソファーに身を沈めると足を組んだ。
道代も、傍に寄り添う様に腰掛ける。
しぶしぶ正男も二人の前に腰を下ろした。
「お前も知っての通り、兄貴の遺言では、子種のない者は相続の資格が無い。従って、今度のことで、お前は高木家の相続権を喪失したんだ。……それは判っているだろうな」
 叔父の言葉は、正に、突風の様に正男を打ちのめした。
なるほど、不動産相続権確定の時期が長男又は長女誕生の時となっている以上、正男には、最早その資格はない。
 男のシンボルを失ったショックが如何に大きかったと云え、その事に思いを致さなかっ
た自分の迂かつさに、正男は腹が立った。
「で、でもそれは不動産だけでしょう。そ、それに、遺言がどうあろうと、子供の僕には法律で決められた権利がある筈です」
 声が幾分震えを帯びてはいたが、正男は、弁護士から聞いた、無けなしの知識を振り絞って、懸命に反撃した。
「それさ。……実はな、お前が入院している間に、意外な事実が判ったんだ。これがそうさ。良く読んで見るんだな」
 ポンと分厚い書類の束が、正男の膝に投げられた。
S興信所のマーク入りの罫紙に、和文タイプの活字がぎっしり並んでいる。
「何です? これは一体……」
 けげんそうな正男に、横から道代が身を乗り出した。
「そこに血液鑑定書が三枚つけてあるでしょう。ひとつは長一郎さんので、その次があんたの母親の女中の春の、そして一番下があんたの分。……本文に戻って、血族関係の吟味の項を見てごらんなさい。……フフフ、どおお?」
 読み進むにつれ、書類を握る正男の手が、ブルブル震え出した。
そこに記述されている事が事実とすれば、血液型から見て、正男は春の子ではあっても、長一郎との血縁は無いことになる。
「その次の、春の素行調査書を読んでみろ。お前の母親の春はな、兄貴の長一郎をたぶらかしながら、別に愛人を持っていたんだ。……お前は、その何処の馬の骨とも知れぬ男と春の間に出来た子さ。兄貴は、まんまとだまされていたって訳だ」
「う、うそだ!……こんなもの、でっち上げだ!」
 正男の悲痛な声が、うつろに響いた。
「そうかな? お前の見ているのはコピーで原本は今、民事裁判所に提出してあるんだ。……お前の戸籍を、高橋家から分離する申請書を添えてな。……裁判所の手で裏付け調査が終れば、お前は高橋家とは何の所縁りも無くなるんだ。それには、あと一週間もかからんそうだぞ。ワッハッハッ」
 ガックリと首を頂垂れた正男に、勝誇った道代が言葉を続ける。
「私達一家は、召使共々、先週この家へ引越したわ。……いいかい、お前は女中の子のくせに、長一郎さんを永年だまして来たんだからね。せめてもの罪滅ぼしに、この家で召使として働くんだよ。……そうだわ、お前はもう男じゃ無いんだから、女中として使ってやるわ。フッフッフッ」
 道代の意地悪い宣言に、正男の胸には流石にぐっと悔しさが込み上げる。
「こっちへ、おいで。お前の寝る所を決めてやるからね」
 病院から持帰った着替えの包みを手に、道代の後に従って廊下を曲がる。そこには、元の
正男の部屋があった。
「ここは、良子の部屋にしたからね。それから、お前の衣類は全部処分したよ。そうだ、その包みもこっちへお貸し。お前には男物はもう要らないんだからね」
「あ、あの、本や学用品は……」
「それも、屑屋に払い下げたわ。だから、お前は、文字通り裸一貫よ。着る物は女中達の
古着を譲って貰えばいいわ」
「……………」
「さ、ここよ。この女中部屋に、お前も同居しなさい。但し、今居る三人の女中は、お前
の先輩になるんだから、ちゃんと礼を尽くして、仕込んで貰うんだよ。……一寸お待ち、今ここで紹介してやるからね」
 道代の呼ぶ声で、それぞれ仕事をしていた三人が女中部屋に集まった。
 女中頭の静江は、勿論一番古株だが、一度暇を取って結婚したものの、不縁になって再
び戻って来た経歴を持っていた。骨太だが、ぽってり肉が付いて、何となくギラギラと油
ぎった三十前の女である。
 あとの二人は、加世と澄で同年の十八才、共に三年前、中学を出て直ぐに奉公に来てい
た。二人共、まあまあの器量だが、大柄でグラマーな加世に較べて、澄は、背はそう高く
ないものの、引き締った均斉の取れたプロポーションである。
三人共農家の出で、日焼けした健康そうな肌をしていた。
「お静は責任を持って、こいつを仕込んで頂戴。甘やかしちゃ駄目よ。……お加世
とお澄は、先輩なんだから色々教えてやりなさい。……それから、正男、じゃなか
った、お正。お前は、新米なんだから、先輩達には敬語を使うのよ。……それも、女言葉でね。クックックッ」
 正男は赤くなって下を向いた。
つい先日迄はこの家の主人として召使達にかしずかれていた身が、同じ家で、今度は嫌っていた叔父夫婦の召使に落される。
それも、男の資格を失ったばかりに女として扱われ、しかも、女中達にまで後輩として下に見られ、仕込まれるのである。
 屈辱の波が幾重にもなって押寄せ、正男の頭をしびれさせ、思考力を奪ってしまう。
正男が反発する気力も失せ、流れに委せて素直に運命に従う気になったとしても、不思議はなかった。
「そうそう、お正に着替えをさせなくっちゃね。……お前達の古着を、こいつに恵んでやってくれないかい。破れたもんでも、汚れたもんでもいいよ」
 道代の言葉に、三人の女中は、お互いに顔を見合せた。
「私は和服ばっかりだし、加世さんも澄さんも、ついこないだ、箪笥の中を整理したところだし……」
 静江が、首をかしげる。それを聞いた加世が、ハッと気付いて立ち上がった。
「あの、ぼろを詰めた袋、この前屑屋が持ち切れないから後から取りに来るって、納屋に置いてある筈だわ。……私、とって来ます」
 加世が持って来た袋には、二人の若い女中の古着が、肌着も含めて、それも汚れたまま突っ込んであった。
畳の上にカラフルな色彩が拡がり、同時に、若い女の饐えた匂いが立ち込めた。
「まあ、臭いわ! お正、要るのだけ選んで後は納屋に戻してらっしゃい」
 道代が、大袈裟に鼻を摘んで見せる。
女の下着など見た事も無かった正男は、顔を赤くして、程度の良さそうな物を、まさぐり始めた。
その、頼りなげな手付きが、女中達のクスクス笑いを誘った。
たまりかねた澄が、手を貸す。
「それはあんたには小さいわよ。これが良いわ。……下着も要るでしょう。えーと、フフッ、ブラジャーは今の所要らないとしても……パンティは幾つか要るわよ。アラ、でも、みんなひどく汚れてるわ」
 澄がつまみ上げた色とりどりの下穿きは、跨間が褐色に変色している。
「それでいいわよ。自分で洗わせりゃいいんだから。……でも、そのひとつを、今、私達の前で穿かせるのよ。……ソラ、お正、ぼやぼやせずに、早く裸におなり!」
 道代がニヤニヤしながら、うろたえている正男をうながす。
覚悟を決めて、着ているものを脱ぐ正男に、女達の視線が集まった。
「何してんのよ。ブリーフも取るのよ。……お前は、もう二度と男のブリーフは穿けないんだからね。その代り、奇麗な色のパンティを……プッ、随分汚いけど、それを穿くのよ。……その前に、チンを切られた跡をよくお見せ!」
 おずおずと、全裸に成った正男に、女中達の心無い言葉が浴せられる。
「ヘエー、女そっくりね。……一寸、あんた、もう少し股を拡げてごらん」
「オシッコは、何処から出るんだい。……フーン、そこも女と一諸ね」
「ちょっと、ちょっと! お尻を振って歩いて見てよ。……クックックッ、お前、
ストリッパーに成れるわよ」
 そして、道代が締めくくった。
「おっぱいとお尻にシリコンを注射すれば、立派な女で通るよ。お医者の話じゃ、膣も作ってあるそうだから、男とセックスだって出来るしさ。……女中として落第したら売春婦にでも売り飛ばしてやろうかしらね。フフフッ」
 道代にいちいち指図されながら、汚れたパンティを穿き、穴の開いたスリップを身に着ける。黄ばんだブラウスに、よれよれのスカートで、女中お正が誕生した。
ヘアスタイルは、静江の手で入院中伸びた髪をショートカット風に切り揃えると、女の頭として十分通用する。
「さ、これで外見は女になったけど、問題は中身さ。今迄、高木家の跡取り息子として甘やかされて来たんだから、性根を叩き直してやらなくっちゃね」
 初めて着る女の衣装に、未だ違和感が取れず、心細げにおののいている正男を鼠とすれば、それを見つめる道代の勝誇った態度は、獲物を前にして舌なめずりしている猫に似ていた。
「奥様、この高木家の後取り息子が怪我をして、手術で女になったのは、運命のいたずらでしょうけど、それが、この家で女中にされるのは、どうしてでございますか?」
 お静が、三人の疑問を代表して質問した。
「こいつはね、もともと高木家の跡取りなんかじゃなかったのよ。こいつの母親の女中が旦様のお手付きになったのを良い事に、自分の愛人との間の子を、旦那様に押付けたって訳。……血液型の判定で、今頃になって事実が明るみに出たのよ」
「へえー、じゃあ、とんだ天一坊だったんですね」
「そう。だから、天罰を受けて女にされたのよ。でも、それだけじゃ足りないわ。旦那様をだました母親に代って、これからは女中として償いをさせるわ。……だから、お前達もこいつが骨身にこたえる迄、うんといじめてやって頂戴」
 顔を見合せて頷く女中達から、正男の方に向き直った道代は、
「お正、お前に言っとくけど、あと二週間もすれば、うちの娘達が海辺の別荘から帰って来るわ。それ迄に、心から女中に成り切るのよ。……さっき、電話で娘達と話したけど、お前に伝言があったわ。……いずれ皆でなぶり者にしてやるから、楽しみにしておいでってね。フフフ」
 がっくり首を垂れた正男の目から、悔し涙が溢れた。
 その瞬間から、正男の受難の生活が始まったのである。
入院生活で身体が弱っていることなど、一切、配慮してくれなかった。
「お正、私達の下着の洗濯をするんだよ。……パンティは、汚れた所を手でもみ洗いしてね」
「便所掃除は未だかい。本当にグズだね、お前は。……その後は、靴磨きだよ」
「そこの薬局で、アンネ用のタンポンを買っといで。……馬鹿だねぇ。お前はもう今は女なんだから、何も恥ずかしがる事は無いんだよ」
 次から次へと、静江、それに加世と澄から仕事が命じられる。
それも、皆の嫌がる屈辱的なことばかりだった。
 それに、仕事がひとつ終る毎に、必ず文句がつけられ、更に屈辱的な罰が課せられる。
「どうしたんだい。このパンティは股の汚れがとれてないわ。あれ程言ったのに!……いいわ、罰として、お前の口で汚れを吸い取るのよ。……そうそう、仲々上手よ。お前は手でやるより、口の方がうまいんだね」
 加世のいたぶりは、ねちっこく徹底していた。
「ホーラ、おまけだよ。私のを舐めて奇麗にしてごらん! その前に臭いを良く嗅ぐのよ」
 正男の鼻の先に押し付けられたのは、今迄加世の跨間を包んでいたピンクのパンティ
である。饐えた若い女の臭いが、ツーンと正男の鼻の奥に突き刺さった。
 思わず目がクラクラッとして、頭の芯がしびれる。
「フフフ、今度は味を覚えるのよ」
 汚れのひどい部分が、すっぽりと正男の口中に押込まれた。
唾で濡れた柔かい布地を軽く噛むと、酸味の強いしょっぱさがピリッと舌を刺す。
「汚れがすっかり取れて奇麗になる迄、しゃぶりなさい。フフッ、おいしい?」
 若い女、それも女中に思いのままになぶられる無念さが、胸の奥からグッと込み上げて
きて、目の奥が熱くなるのだった。
 三度の食事もすべて女中達の残飯で、それに、時々平蔵、道代夫婦の食べ残しが加えられた。
 寝るのは勿論、女中部屋だが、四人の寝床を並べて敷くには狭く、結局、正男は三人の女中の足元に横に寝かされた。
夏布団の裾からはみ出した女達の足が、丁度正男の身体や頭の傍に来る。夜中に寝相の悪
い女達の足で、身体を、それも頭や顔を蹴られる事も屡々だった。慣れない仕事で疲れ果てて、朝目覚めて見ると、顔の上に女の足の裏があった事もある。
 眠りこけて起きられない朝のことである。妙に息苦しくて目覚めると、顔の上に重圧が掛かっていた。異様な臭気と息苦しさに、懸命にもがくと、スッと視界が開け、女中達のニヤニヤ笑う顔が目の前にあった。
「私のお尻の臭い、どうだった? フフフ」
 澄の言葉で、今迄自分の顔が彼女の尻に敷かれていたことを悟ると、カーッと頭に血が上った。
「明日から、目が覚めなかったら、毎朝皆で交代でこうしてやるよ」
「プッ、私達のお尻の臭いが、お前の目覚ましだなんて、傑作だね」
 こうして、二週間が、アッと云う間に経過し、夏休みの最後の週に入る。
 そして、海辺の別荘から良子、幸子それに敬子の三姉妹が帰って来た。
三人共、まっくろに陽焼けして、健康そうな肌の色になっている。
 女中達と玄関へ出迎えに出た正男は、道代の指示で独りだけ土間に正座させられ、頭を地面に擦り付けて挨拶させられた。
正男が、この家では女中以下の身分に落されているのを皆に示すのが目的である。
 彼と同級の従妹の良子が、正男の前に立って声を掛けた。
「あらまあ、正男君、そんな所に這いつくばらされるなんて、哀れなもんね。……一寸、顔を上げてごらん。……へえー、もうすっかり女らしくなったわね。フフフ、でも悔しそうな顔してるわ。……ホレ、額が真っ黒よ」
 良子の嘲笑に、正男の顔が紅潮する。
妹の幸子と敬子も傍に寄って来た。
「私達に、この家の召使として、あらためて挨拶してごらん!」
 良子の高圧的な言葉に、ピクリと正男の肩が震えた。
「あ、あの、今度こちらで……じょ、女中として、働かせて頂くことになった、お
正です。……お、お嬢様達の御命令通りに致しますから、ど、どうか宜しくお願い
申し上げます」
 咽喉の奥からから搾り出す様な声だった。文句はあらかじめ道代から教え込まれて
いた通りである。
「フーン、女中かぁ。……私達の前で土下座するなんて、正男君も随分落ぶれたものね」
 良子が嘲ると、続いて、幸子が、そして敬子が、正男にすっかり軽蔑した調子で言葉を
浴せる。
「手術して女にされたんですって? お前、随分生意気だったからその罰よ。いい気味
だわ。……それで、お前、トイレも女の方に入るの?」
「ね、ねえ、電話で聞いたけど、お前、お加世に、パンティを舐めさせられたんだって
ね。……男のシンボルを切られた途端に、すっかり意気地無しになったんだね」
「そうよぉー。こいつ、もう男じゃないんだもん。正男じゃなくって、お正よ!」
 皆の間で、わっと、笑いがはじける。
色が変る程、唇を噛みしめた正男の目から、ポタリと涙が零れた。
 今や、高木家の当主となった平蔵夫婦の三人の娘、と言うより令嬢達に対する、正男の
女中としてのお目見えは、この一ケ月で起った変化が如何に大きかったかを、双方に強く
印象付けた。
 彼女等の目に写ったのは、みすぼらしい女の着物に身を包んだ、変り果てた正男のおど
おどした姿である。
 今迄の、本家のはだの合わない従兄としてのイメージが、無抵抗でいじめるに手頃な女中の姿に置き代るのに、時間はかからなかった。
 一方、正男も、手術で男の資格を失うと云う大きなショックを受けた上に、二週間もの間、三人の女中に顎で使われ、なぶり抜かれたため、すっかり気力を無くしていた。
 そこに現れた従妹達は、最早彼の手の届かぬ地位の令嬢達であった。
その地位にふさわしく、陽気で健康で屈託の無い、そして目下の者、特に弱者に対して
は、どこまでも底意地の悪い娘達である。
 つい、この前迄は対等に話し合っていたのが嘘の様に、正男は彼女等の前に出ると圧倒され、卑屈になった。
殊に、同級で仲の悪かった良子に、些細な事を口実にねちねち怒られると、やりきれない
悔しさと同時に、これからどんな目に合わされるか、恐ろしさに身の震える思いだった。
 娘達が、海から帰って来た最初の晩のことである。
この辺りでは珍しい洋式の食堂で一家揃っての食事だったが、ついこの間迄の主役だった正男は、今や哀れにも女中として給仕をさせられていた。
 味噌汁のお替りを良子の前に差出した正男の手が、漬物を取ろうと伸ばした彼女の手で遮られた。アッと言う間もなかった。
汁の椀が机の上で跳ね、中身がテーブルに零れると同時に、良子の膝に流れ落る。
キャーッと派手な声を上げて、良子が椅子を引くと、汁は音を立てて床を濡らした。
「す、済みません。……す、すぐ拭きます」
 あやまる正男に、居丈高な良子の声。
「なに言ってんのよ! 私のよそ行きのスカートが汚れたのよ。床は後回しにして、すぐ洗って来なさい」
 あたふたと、良子の脱いだスカートを持って洗面所に急ぐ正男の背に罵声が飛ぶ。
「本当に間抜けなんだから。大火傷するところだったわ。……洗ったら、外に干して直ぐ戻ってらっしゃい。たっぷりお仕置してあげるわ」
 食堂に戻った正男は、一同が賑やかに食事を進めているのを見てホッとした。
しかし、振り向いた良子の厳しい顔を見て、スーッと冷たいものが背筋を走る。
〔たっぷりお仕置して上げる〕の声が耳に蘇った。
「ここへおいで! 床の汚れの始末をするのよ。でも、雑巾を使っちゃ駄目。私の足元に這いつくばって、お前の舌で、舐めて清めなさい。フフフ」
「……………」
 一瞬、正男は、自分の耳が信じられなかった。
しかし、誰も良子の言うことをたしなめ様ともしない。
それどころか、皆ニヤニヤ笑いながら、正男の反応を見守っている。
「どうしたの? 早く、お舐め!」
 ぐっと、胸に突き上げて来るものを飲み込んで、正男は良子の足元に這った。
床一面に拡がった汁の跡に舌を着ける。
ザラッとした床の舌触りにひやりとする汁の味がまぶされ、思い切って吸い込むと、ズズッと大きな音がした。
流石に、情けなさで瞼が熱くなる。
 その目の前で、良子は、自分の素足を濡れた床に、わざと踏み入れた。
「ホラ、私の足も汚れたわ。お前の舌でお舐め! どうしたの? ソラ、足の裏だよ。……ウフフッ、くすぐったいわ。こいつ、まるで犬みたい。 ソーラ、ソラ、ソラ!」
 良子の足のかかとが、正男の口一杯に押し込まれた。
正男の咽喉の奥から、ウッウッと、嗚咽ともとれる呻き声が洩れる。
「ホラ、私達の足の裏もよ。お犬さん!」
 幸子と敬子までが調子に乗って、正男に屈辱の足舐めを強いた。
テーブルの下で三人の足の裏を舐め清め、やっと床に零れた汁を吸い取り終る頃、食卓ではデザートの果物になっていた。
「ホラ、これは犬にやるよ!」
 良子の口から吐き出した蜜柑の袋が、ポタリと床に落ちる。
「どうしたんだい。お食べ!」
 彼女の足が、邪険に正男の頭を蹴った。
良子の唾にまみれた蜜柑の糟に唇を被せ、吸い込む様にして飲み下す。
正男の低い、すすり泣きの声がテーブルの下に拡がった。
「私も上げる。ホラ!」
「私もよ。ソレ、こっちへおいで」
 幸子と敬子が例によって、姉の真似をして正男をいたぶった。
「こりゃいい! この前迄の跡取り息子が、女中にされたかと思うと、今度は犬かい。……うちの娘達になぶり者にされて、だらしない奴だな!」
 吐き出す様な平蔵の言葉に、道代が調子を合わせる。
「昔から親の威光を笠に着る、意気地無しだったのよ。こいつ!……ホレ、見てごらんなさい。四つ這いになって……本当に犬そっくり。オホホホ」
 叔母の嘲りに全身の血が逆流する思いだが、我ながら情けないことに、正男には抵抗する気力は、最早残っていない。
三人の娘が、ペチャッ、ペチャッと音を立てて、次々に床に吐き出す蜜柑の糟を、黙々と
口にして行く正男の顔は、涙に黒ずみ、目は真っ赤に充血していた。
 その翌日の事である。正男は道代に伴われて、退院後の初の検診の為、病院を訪れた。
「異常ありませんね。ただ、そろそろホルモン障害が出る頃ですから、女性ホルモンの注射を始めましょう。……それから、シリコン注入はどうしますか?」
 医師の言葉に、介添役と云うより監視役として、傍にぴったり突添っている叔母の道代が、受け答えする。
「先生、シリコン注入は今日お願いします。量をたっぷり入れて、うんとグラマーにして
やって下さいな」
 正男の意志を完全に無視した、道代の言葉だった。
「わかりました。でも、入れ過ぎると、激しい運動が出来なくなりますよ。第一、まともに走れなくなったら困るでしょう?」
「いいんですよ。却ってセクシーだし、……第一、その度に自分が女になったんだって意識するでしょう。フフフ」
 胸部とでん部に軽い局部麻酔の後で、シリコン注入はアッと言う間に終った。
注射器を握った看護婦に、立合の道代がニヤニヤ笑いながら、〔もっと……そう、もっと入れて〕と指図した為、正男の胸は、予想以上にポッコリと膨らんだ。
 それにも増して、ヒップは不格好な程膨張し、正男の腰から太腿に掛けて、ズシンと重量感が増す。
 女性ホルモンの注射が追加され、局部麻酔が醒める迄、ベッドに横たわっている正男の耳に、道代と医師の会話がとぎれとぎれに聞こえてきた。
「いいんですか? 股の内側にも注入したなんて、ムチャですよ。あれじゃ、満足に歩けませんよ」
「いいですわ。ヨタヨタ歩いて笑われた方が、却ってしめしがつくんです。でも、女性ホルモン注射は、本当に必要なんですか? それも、毎日だなんて……」
「手術して女になったと言っても、卵巣は無いんですからね。睾丸から分泌していた男性ホルモンの代りに、女性ホルモンを毎日投与しないと、そのうち、甲状腺が機能しなくなるんですよ。……すると、咽喉が腫れて来て声が出なくなり、精神状態もおかしくなって、突然、暴れる様になりますよ」
「でも、毎日ここ迄注射に通うなんて、費用も馬鹿にならないし、第一、時間がもったい
ないわ。……先生、何か良い方法を教えて下さいな」
 二人の声は、そこで電話に中断され、遠ざかって行った。
 一時間後、ベッドから降り立った正男は、医師が懸念した通り足を踏み出す毎に、バランスを失ってよろける始末だった。
尻の重みに加えて跨間の膨らみが歩幅を狭め、さながら幼児のヨチヨチ歩きに似ている。
「ホラ! これも天罰だよ。……でもおかしな格好だわ。そうだ、あひるそっくりだわ。クックックッ」
 帰宅した正男は、果して皆の笑い者になった。道代を出迎えた女中達が彼を見て、思わず、プッと噴き出してしまう。
「鳩胸に出っ尻も良いとこだよ。どう見ても女になったけど、それじゃグラマーを通り越して、グロテスクだね」
 道代に従って奥へ入る正男の後から、女中頭の静江が酷評した。
夕食の前で、たまたま居間に揃っていた平蔵や良子達の前で、又、ひとしきり笑い者にさ
れる。
「お正! 着物を脱いで、もっと良く見せてごらん」
 良子の高飛車な命令で、おずおず裸になった正男に、好奇の目が集まった。
娘達のクスクス笑いに、満足そうな平蔵の高笑いが重なる。
「まあ、少しやり過ぎだったかも知れんが、外国の女性には良くある体形だぞ。男がその
ケツを見てると、ムズムズして来るな」
「いやだわ、お父様。でも、お正は整形がうまく行って、女としてのセックスが可能だそうよ」
 良子の言葉に、平蔵がニンマリ笑みを浮かべた。
「そうだったな。グラマーになった所で、俺がひとつ味見してやろうか。……それからな、お正、お前舌を出して見せろ。……それで、その先を尖らして、一杯に伸ばしてみな。……そうだ。御婦人方には、そうやってその舌で奉仕するんだぞ」
 道代が笑いながら口を挟む。
「それだけじゃ駄目よ。舌を上下に動かしてごらん。そうそう、それに唇を添えるのよ。……フフフ、娘達や女中共に使い古される前に、今夜にでも私が使ってやろうかしら?」
 二人の言葉通り、その夜、夫婦の寝室に呼ばれた正男は、平蔵と道代のなぐさみ物にさ
れたのである。
 キングサイズのダブルベッドの上に裸で仰向けに寝かされた正男の顔面に、道代が跨がる。風邪気味で数日風呂に入っていない彼女の局部の異臭に、正男は気が遠くなる思いだった。
同時に、正男の下肢が平蔵の手で大きく拡げられ、跨間に当てがわれた平蔵の肉棒が正男の人工膣に押し込まれた。
 何とも言えぬ違和感で思わず呻きを洩らす正男の口の上に、道代のじっとり湿ったクレバスが押し当てられた。
「しっかりお舐め! 女中の子のくせに今迄みんなをだましていた罰だよ。ソラッ……もっと、もっと!」
 道代が腰を揺する度に、正男の舌に唇に彼女の肉ひだが擦り付けられ、グチャッ、グチャッと音を立てる。
 それに呼応するかの様に、ピストン運動をしている平蔵の下腹部が、正男の跨間を打つ音が、ペタッ、ペタッと、リズミカルに響いて、隠微な協和音をかなでた。
 無限に続くかの如く思えた凌辱も、先ず平蔵が、続いて道代が達してその夜は終りを告げるかに見えた。
しかし、それは単なる発端に過ぎなかった。 生れて初めての経験、それも、嫌っていた
叔父と叔母に跨間と口を犯されると云う屈辱に正男の脳裏はしびれ、正常な精神状態では無くなっていた。
 次々と二人の命ずるままに、意志を失った人形よろしく、二人の跨間を舐め清めさせられた後、ベッドの上で抱き合う道代のアヌスを吸わされる。
 続いて平蔵のしぼんだ肉棒を、舌で回復させる様命じられ、元気を取り戻したそれが道代のクレバスに吸い込まれると、今度は、その結合部を舐めさせられた。
 道代の跨間から平蔵の二回目の放出ジュースを吸わされた後は、道代の太腿に頭を挟まれたまま、延々と舌奉仕を強制される。
気分が高まって来ると、その都度、彼女の太腿は締木となって、正男の下顎を圧迫した。
 何度目かの頂点を迎えて、漸く満足した道代が正男を開放したのは、深夜をもうかなり過
ぎていた。
這う様にして女中部屋に戻った正男は、眠りこけている女中達の足元に身を横たえ、泥の様な深い眠りに落ちた。
 翌朝、思い切り顔を蹴られて目を覚ますと加世が身を起して大きく欠伸している。
「こいつ、寝呆けて私の足の裏をペロペロ舐めてるんだよ。気色悪いったらありゃしない。大方、昨夜は奥様のおしもを、散々舐めさせられたんだろうよ。……お正、いいかい。無断で私の足の裏を舐めた罰に、今夜は、皆でたっぷりお前の舌を使ってやるからね」
 加世の宣告が、正男のもうろうとした頭に突然の衝撃となって、ガンガン響く。
女中達にまで舌奉仕させられるのかと思うと情けなさが胸に込み上げ、腫れ上がった舌の付根の痛みが急にうずき出した。
 朝食を済ませて主人一家の食事の支度にかかった女中達の足元で、正男は犬の様に四つん這いになって、床に置かれた汚れた皿から彼女等の残飯を食べさせられていた。
これも、正男に身の程を知らせるため、との理由で静江から命じられた日課である。
 そこへ居間の掃除を終えて戻って来た澄から声がかかった。
「お正! 奥様が寝室でお呼びよ。口を濯いで行きなさい。……又、昨夜の続きかもよ。フフフ」
 彼女のやゆする様な言葉には、明らさまな軽蔑の調子が込められている。
 昨夜の屈辱に満ちた奉仕の舞台となった夫婦の寝室では、漸く目覚めた二人が、ベッドの中で煙草を吹かしていた。
 朝日が、窓のカーテン越しにまぶしく射し込み、部屋の中の豪華な調度にしっとりとした艶と輝きを与えている。
「そこへお座り。昨夜は御苦労だったわね。舌の具合はどう? フフフ」
 道代は入って来た正男に、顎をしゃくってベッドの前の床を指した。
「又、時々使ってやるからね。……そうね。週に二、三回かな。ねえ、貴方!」
 道代は、好き者らしく、ねっとりした口調で、平蔵の同意をうながす。
「そうさな。このところ忙しいし、第一、俺達もそう若くはないんだからな。……何なら、俺にかまわず、お前ひとりでこいつを使ったっていいんだぜ。俺は気分が乗ったら参加するからな」
「そうね。それじゃ一日置きってことにしておくわ。お正、判ったわね」
 黙って頷く正男の表情に諦めの色が浮ぶ。
「実はね。話は変るけど、昨日言い忘れてた事があるの。……そう、お前のホルモン注射の件。今朝、主人とも相談して結論を出したわ。お前にも、色々言い分はあるかも知れないけど、この家の使用人として私達の決定には従って貰うわよ」
「……………」
「ホルモン注射はね。毎日のこととなると時間も無駄だし、第一、随分高くつくの。それに、お前の入院費や手術代、それと昨日のシリコン注入の費用だって、みんな私達が負担してやってるんだからね」
「……………」
「でもね、お前が、甲状腺機能障害になって精神異常になっちゃ可哀そうだから、お医者様と相談したの。そしたら、ホルモン注射に代わる方法を教えてくれたわ。……考えてみれば簡単な事だけど、女性のオシッコを飲めばいいのよ」
 正男の体がピクリと震え、おどおどした眼差が救いを求める様に平蔵の方へ注がれた。
しかし、平蔵は素知らぬ顔である。
「ただし、月のもののある若い女に限るんだそうよ。私みたいに四十近くになると、女性
ホルモンの活性が無くなっていて、吸収され難いんですって。……それで、オシッコの場合、ホルモン注射の様に濃縮されてないから、毎日、最低四リットルは飲む必要があるんだそうよ。……人間は一日約一リットルを四、五回に分けて排泄するそうだから、四人分を全量飲めばいいわけ。幸い、うちには娘が三人、女中が三人と計六人も若い女がいるんだから、何とかなりそうね」
「あ、あの、お願いします。何とか注射にして下さい。女のオシッコを、しかも、そんな
に沢山飲まされるなんて……あ、あんまりです。それじゃ人間の扱いじゃありません!」
「何言ってるの、感違いしちゃ駄目よ。誰がお前にオシッコを無理やり飲ますと言ったの?
お前が自分から、皆にオシッコを飲ませて下さいってお願いするのよ。……きっと、何か交換条件が要るわ。……フフフ、例えば、お前の舌を、お礼に使って頂くとかね」
「……………」
「それに、誰も、お前をこの家で人間扱いしようとは思ってないわ。お前は犬や豚並に扱われるのが当然よ。判った?」
「……………」
「判ったら、良子の所から始めなさい。いいこと、舌を使って貰ってもいいから、オシッ
コを飲ませて下さいって、土下座して頼むのよ。あと、幸子と敬子の順ね。それが済んだら女中達。……どおお? 頼みに行くのは恥ずかしい? クスッ、そりゃそうだわね。でも、それがお前の運命よ。さ、行って、うんと軽蔑されてらっしゃい!」
 それから暫くして、良子の部屋で、けたたましい笑い声が起った。
驚いて駈け付けた幸子と敬子の前で、良子はさらに笑い転げる。
不審そうな二人に、良子は目の前に土下座して、べそをかいている正男を指差しながら、又、ひとしきり笑いを高めた。
「ヒーッヒッヒッ、ああ、おかしい。お正がね、……クックックッ、私にオシッコ飲ませてくれだって。……それだけじゃないのよ。……代りに、舌を使ってほしいんですって……アーア、おかしいったらありゃしない」
 漸く、ヒステリカルな笑いが治まると、良子は、改めて正男の方に向き直った。
多少、真顔になったものの、未だニヤニヤ笑いを浮べている。
「お正! お前は今は落ちぶれたけど、曾てはこの家の跡取り息子だったのよ。いくら女性ホルモンのためだと云っても、私の前で、よくも、そんな恥ずかしい事を口に出来たわね。……幸子や敬子にも、同じことを言いに行くんだそうだけど、今ここで、はっきり二人に頼んでごらん!」
 恥ずかしさに目から火が出る思いとは、この事だろうか。
先ず、幸子、そして、続いて敬子の前に土下座して、恥ずかしい願いを、とつとつと述べ
る正男の顔は、みじめさで紅潮し、肩が極度の屈辱にブルブル震えていた。
 姉の良子と年子で、高校の一級下に居る幸子は、姉に輪を掛けた勉強嫌いである。
しかし、その色白でエキゾチックな顔立は、美人揃いの三人の中でもひときわ人目をひいた。身体付も良子に似ていて、並んで歩くと、どちらが年上か見分けが付かなかった。
「じゃあ、やっぱり、姉さんの言う通りなのね。あきれた恥じ知らずだわ。……姉さんが良ければ、私もお前の願いは聞き届けて上げる。……でも、お前の舌の使い方は姉さんと少し違うかもよ。……私、この頃痔が悪いの。だから、フフフ、お前の舌をトイレットペーパーにするわ!」
 末娘の敬子は、未だ中三だが、バレー部の主将をしているだけあって、背も高く、三人の中で一番体格が良い。首から下だけを見ると、そのグラマー振りが目立つが、顔には、流石に未だ幼さが残っていた。
 彼女は何を思ったか、目の前に、がまの様に這いつくばった正男の頭の上に足を乗せると、ぐっと体重を掛けた。
正男の額が、冷い寄木細工の床に押し付けられる。
「頭が高いわよ。……ヨシ! 私の臭いオシッコ飲ませて上げる。そしてお前の舌も使って上げるわ。……でもね、私、今メンスなのよ。ウフッ、だからソース入りの味を、試させて上げる。覚悟してらっしゃい。……それから、明日、バレー部の連中が遊びに来るから、皆の前で、臭いお水を飲んで見せなさい」
 恥ずかしさと悔しさで、居たたまれず部屋を出ようとした正男を、良子が呼び止める。
「お正、ひとつ聞き忘れたけど、どうやって私達のオシッコを飲むの?」
「あ、あのうー、コップをひとつトイレに置いておきますから、その中にお願いします」
 おづおづと答える正男に、良子のかん高い声が飛んだ。
「アラッ、それじゃ面白くないわ! 直接飲むんじゃなければ、私はお断わりよ」
「ち、ちょくせつって……」
 うろたえる正男の前に、良子が歩み寄る。
「あったり前だわ。お前は、私達の便器になるのよ。フフフ……私達のお尻の下で……口を、おーきく開けて……ゴックン、ゴックンってね!」
 良子の、おどけた言い回しに、幸子も敬子も、つられて笑い出した。
なにしろ、箸が転がってもおかしい年頃の娘達である。
 彼女等の浴びせる言葉の、ひとつひとつに反応して、悔しさ恥ずかしさに顔を赤くしたり、青くしたりする正男の哀れな姿は、彼女等に取って同情を惹くどころか、格好のなぐさみもの、笑いものに過ぎなかった。
「お姉さんの言う通りだわ。飲み終ったら、お前の得意な舌の出番よ。ペロペロ舐めて清めるの……どおお?」
 と幸子が続ける。敬子も黙っていない。
「私のメンスも一諸に飲まして上げるわよ。フフフ、ついでに、おならもひっかけて上げようか?」
 三人の娘達の辱めの言葉に翻弄される正男は、うろたえるばかりだった。冗談ならまだ
しも、彼女等が本気で、その嘲弄を実行に移すであろうことは想像に難くない。
 逃げる様にして廊下に出た正男は、戸口で立聞きしていた誰かと、危うく鉢合せする所
だった。慌てて、パタパタと立去って行く後姿から、それが女中の澄と知れた。
 高橋家の夕食は、多忙な平蔵が遅くなる時は娘達だけで早目に済ますことになっている。
しかし、この日は宴会が中止になって早々に帰宅した平蔵を囲んで、久し振りに一家揃っ
ての夕食の団らんだった。
 給仕は女中達が代り合って勤めるが、このところ、良子の指名で正男の出番が多い。 
しかも、指名した良子が、必ずと言ってよい程、皆の前で正男に難癖をつけて嘲弄する。
それは、まるで彼女の気晴しの、ひとつの手段となっている様だった。
 この日の正男の給仕は、明らかに良子が昼間の件で彼を笑い者にする為だった。
話が話だけに、良子も食事中は遠慮していたが、デザートにコーヒーが出ると、正男を傍
に立たせて、勢い込んで両親に報告する。
良子の口にかかると、正男の"いやらしい"願いを聞き届ける迄のいきさつが、面白おか
しく脚色されてしまう。
 平蔵や道代も、たまらず噴き出してしまった。
「プーッ、人間便器か。そりゃ傑作だ。それも、自分から望むとはな」
「じゃあ、女性ホルモンの補給はこの夕食の後からなのね。……お正、お前も、よくお願いして、お嬢様方の立派な便器になる様勤めるんだよ」
 道代の"立派な便器"という言い回しが、おかしいと、又ひとしきり笑い声が高まる。
傍で笑い者にされる正男は、屈辱に目の眩む思いだった。
 夕食後、良子の部屋へ呼ばれた正男は、彼女の尻に顔を敷かれた形で、舌奉仕させられ
た。それも、奉仕の最中に少し宛、汚水を口中へ注ぎ込まれたのである。
「明日の朝は、きっと、早起の女中達に真先に飲まされるわ。初体験の味は忘れないそうだから、思い出に残る様に、一番に飲ませてやるのよ。……さ、終ったわ。これで、お前は私の便器。……明日からは毎日、何回も使ってやるわ」
 良子の勿体ぶった言い方も、文字通り生れて初めての汚辱の味の前には、正男の耳を素通りしてしまう。
 次女の幸子の部屋では、お気に入りのリクライニングシートに身を委せた彼女の前に四つん這いになった正男は、指し伸べられた素足の裏を舐める様に命じられた。
左右交互にゆっくりと舌を這わせながら、指示されるままに、徐々にふくらはぎから太腿に舌を進める。
 最後に幸子の手で髪を掴まれ、ぐいと跨間に舌を引き寄せられた。
正男の顔に密着した柔かなクレバスが、上下に波打ち、張りのある内股が正男の両頬をぐっと締め付ける。
達する迄の時間は僅かだったが、余韻を楽しむ幸子は仲々直ぐには解放してくれなかった。
 三人目の敬子は長女の良子同様、仰向けに寝かされた正男の顔の上に尻を据えた。
 予告通り、経血にまみれた彼女のクレバスは、異常な臭気と味で正男を圧倒した。
クックッと満足そうな笑い声と共に、豊かなヒップが彼の両頬をにじり、伸ばした舌を捉
えた秘肉が、唇をめくって塩辛い経血を正男の咽喉へ送り込む。
敬子は達した後も、正男の顔に尻を据えたまま暫く動かない。頃合を計って、これ又予告通り大量のガスを何回かに分けて放屁した。
 腹の調子がもうひとつと見えて、その臭気はひと通りではない。やや尻を浮かし気味にすると、アヌスを正男の鼻孔にぴったり当てがい、力む様にして放屁を続けた。
 正男の鼻孔に触れる、女の菊座の括約筋が小刻みに震える度に、湿ったガスが彼の鼻孔に注入される。その度に、ウーッと呻くと、クックッと敬子の含み笑いが、上から気を失いかけた彼の耳に入る。
みじめな被征服感と屈辱感が、その強い臭気と共に、正男の脳裏に焼き付けられた。
 漸く尻を上げた敬子は、上から正男の顔をしげしげと覗き込んだ。
正男の鼻の回りには、敬子のアヌスからガスと共に吹き付けられた粘液が、べったりと付
着し、異臭を放っている。
「情けない顔してるわ。私のオナラにまみれた感想はどおお? フフフ」
 敬子の嘲笑で、思い出した様に悔しさと涙が、どっと込み上げて来た。
 女中部屋に戻ると、そのまま、待ち構えていた女中達に掴まった。
昼間、良子の部屋の前で立聞きしていた澄の報告と、夕食の時に食堂から聞こえて来た会話で、女中達はすっかり事情に通じていた。
そのおかげで、小水を飲ませて貰う様願い出る屈辱は避けられたものの、実質的には何の変りもない。
散々、言葉でなぶられた挙句、女中達の跨間が次々と正男の顔を舌を捉えて行った。
 翌朝、未だ寝起きで頭のはっきりしていない正男の顔の上に静江が跨がる。
「さ、お前の望みの女性ホルモンよ。一滴も零さない様に、たっぷりお上り。後はちゃんと舐めて清めるんだよ」
 口中に注ぎ込まれる汚水を、懸命に飲み下だす正男の咽喉が、震えを帯びて軽くけいれんした。
 加世と澄が静江に続き、三人三様の濃い朝尿の味と臭気が正男の咽喉を焼く。
流石に、三人分の尿が納まった正男の胃は、見た目にも大きく膨らんでいた。
臭いゲップがたて続けに出る。
 一時間程して、続々と起出した三人の娘達が、今度はトイレの冷いタイルの上で、仰向
けになった正男の口を跨いだ。
  そして……幸子は、用を足した後の汚れたアヌスを正男の唇に押し付け、清めを強いた。周囲で見守る娘達の笑い声の中で、口中に拡がる苦い汚物の味が、正男にこれからのさらにみじめな運命を悟らせると共に、諦めと倒錯の世界へ彼を誘って行くのだった。
〔完)
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1986年6月スピリッツ6月号
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2011/01/01