062-#62地獄へのシナリオ(天国と地獄)
阿部譲二作
私立大の英文学部の美人学生をリーダーとするグループに入った男がメンバーの恒例の新年会に出席する。ゲームで彼女の唇への「天国のキス」の役とアナルへの「地獄のキス」の役を決める籤引きで、男には後者の役が当たり皆の前で生恥を曝す。その時の写真を種に女に脅かされ、男は彼女の家に住み込みの奴隷にされ婚約者とのセックス時に使われる。 |
例年に無い暖冬で、しのぎ易い正月を迎え
て明けて四日目、萩原邸の広い奥座敷では、
間断なく若い賑やかな笑いが弾けている。
私立では名の通ったF大英文学部、その中
でも気の合った小グループが、恒例の新年会
……いや、ニューイヤーズ・パーティーの最
中だった。
昼食の洋風おせち料理を肴に、日本酒から
始まって、卓上に林立するビールとワインを
思い思いに口に運んだ一同は、体内にたっぷ
りアルコールが回っている。
人数こそ男四・女五で計九名と少いが、は
ち切れる様な若さが精気を放ち、会話も活気
に溢れていた。
いずれも卒業を春に控えた四回生で、必要
な単位は前期に取得し、年末に卒業論文を提
出し終ったこともあって、一同、開放感を満
喫している。
たゞ、昨年夏に独文学部から転籍して来た
宮埼一郎の場合は、二月に大学院への進学試
験を控え、底抜けに明るい一座の気分に完全
に溶け込めずにいた。
宮崎がこのグループに入った動機は、国許
を離れて一人暮しの淋しさもあったが、何と
言ってもリーダー格の萩原るり子の魅力に惹
かれた為である。
るり子は姉のあや子と共に、つい数年前に
他界した父である実業家、萩原清治の莫大な
資産を相続していた。
現在、多くの使用人にかしずかれて、この
広大な邸宅に姉夫婦と住んでいる。
結婚前にミス・ワールドの候補になった程
の美形である姉のあや子に劣らず、るり子の
美しさとプロポーションの素晴しさは、まさ
に群を抜いていた。
よくしたもので、美人が中心になっている
グループには、水準以上の女子学生が集まる
ものである。るり子を取り巻く常連の四人の
女子学生は、学校の成績は別にして、何れも
個性的な美人揃いだった。
しかし、蜜に群がる蜂の様に、後から後か
ら集まって来る男子学生に対しては門戸が閉
ざされ、僅にるり子の好みに合格した数名の
みが、グループのメンバーとしての資格を与
えられていた。
背が低く、風采もパッとしない宮崎一郎が
どうして、るり子の目がねに叶ったのか誰に
も判らない。
女性経験の全く無い彼は、るり子の前でも
目を伏せてオドオドすることが多く、気のき
いた会話ひとつ出来ない。
同じグループの女達からは、明らさまに馬
鹿にされる始末だった。
「サー、それじゃこのへんで、お待ち兼ねの
籖引きゲームを始めましょうよ!」
るり子の鶴のひと声で、一同はテーブルを
離れて広い隣りの座敷に移り、男女交互に、
ひとつの大きな輪を作って座る。
籖作りを担当した女達が、小さな黒板と、
チョーク、それに、色とりどりの籖を仕分け
して入れた、幾つかの小箱を持ち出した。
彼女等は、何がおかしいのかクスクス笑っ
ている。
るり子が立ち上って口を開いた。
「じゃあ、いゝこと? ルールは例年通りよ
……アラ、そうだ、宮崎さんは、初めてだっ
たわね。……いゝわ、じゃあ簡単に説明する
わ。……エーと、先ず私が黒板に所々文字が
抜けた文章を書くの。ホラ、こんな具合よ」
彼女は、チョークを握ると、黒板に、
○○は△△の◎◎を(に)××する
と書いた。
「○○の所には男の名前、△△の所には女の
名前を入れるの。そして◎◎は身体の部分、
××は動詞で置換えるとするわ。……そして
入れる言葉は、皆が次々にそこの箱に仕分け
した籖を引いて決めるの。……例えば、◎◎
が足裏≠ナ、××がくすぐる≠セとする
わね。……文章は○○は△△の足裏をくす
ぐる≠ニなるでしょう。……そこで、最後に
私が、人の名前の籖を引いて、読み上げるっ
てわけ……フフフ、面白いでしょう?」
「………………」
「勿論、皆は義務として、そこに書かれた通
り実行するのよ。……ア、それから、時間は
五分間。……だから、△△さんは○○君が、
足裏をくすぐるのを五分間我慢させられるっ
て訳よ」
それは、初めて経験する宮崎にとって、実
に刺激的なゲームだった。
身体の部分を示す籖を入れた箱からは、皆
の手でおへそ∞おっぱい∞おしり%
のきわどい単語が、次々と読み上げれる。
一方、動詞の箱からも、もみもみする
なでなでする∞舐めまくる≠ネどの語が
とび出した。
その言葉のコンビネーションに依っては、
男女双方にとって、耐え難い行為を強制され
ることもある。
引かれた籖は、もう一度、箱に戻されるの
で、何回も同じ単語が繰り返されるチャンス
もあった。
女の身体の部位と、男がそれに対してする
行為とが決まると、皆がドッと湧く。
女性側からは、キャーッと悲鳴が上ること
もあった。
そして、皆が固唾を飲んで、るり子が男と
女の名前の籖を読み上げるのを待つ。
名前が決まると、その度にまたドッと声が
上がった。
そして、男と女のペアが円座の中央で、そ
の行為を五分間続けるのを、口笛を鳴らし、
歓声を上げて野次るのである。
おへそを揉み揉みする
おしりをなでなでする
おっぱいを舐めまくる
等の文章が、男女の間で文字通り実際の行為
として、次々と五分間宛実行されて行く。
そして、目の前で実演されるエロチックな
シーンに、宮崎一郎は手に汗を握って見入っ
ていた。
四番目に出た文章が、
おしりをくんくん嗅ぐ=@
となった途端、ワーッとひときわ高い歓声が
上った。そして、未だ番の回って来ていない
宮埼の胸に、サッと悪い予感が走る。
果して、るり子の読み上げた男の名前は、
宮崎≠セった。
頭をガンと殴られた様な思いで、フラフラ
と中央に出た彼の前で、相手の女、桜木恵子
がニヤニヤ笑いながら、ゆっくりとスカート
をめくり、淡いピンクのパンティーに包まれ
た大きな尻を突き出す。
宮崎は、顔を紅潮させてその前に跪き、手
を床に突いて、女の尻に顔を寄せた。
ムッと饐えた尻臭が、彼の鼻をつく。
「ホラ、鼻をクンクンさせて御覧!」
恵子は、後ろへ首を捻り、笑いを含んだ声
と共に、尻を揺すって催促した。
と、周囲から黄色い声の野次が巻き起る。
「宮崎君、頑張って!……ほら、クンクン…
…ほれ、クンクン……」
何人かが唱和すると同時に手拍子が入り、
ドッと爆笑が渦巻いた。
皆の注視のもと、四つ這いの姿勢で女の尻
割れに鼻を当てる宮崎は、恥ずかしさ、情け
なさで頭にカッと血が上り、目の前のピンク
のパンティーがボーッとかすむ。
それにしても、生まれて初めて嗅がされる
女の尻臭は、どこかで馴染みのある糞臭に、
生臭い、動物的な性臭がミックスしていて、
申し分無く刺激的だった。
しかし、宮崎にとっては、冷静にその臭気
を分析する余裕など勿論無い。
クラスメートの女の子に、衆人注視の中で
事もあろうに尻臭を嗅がされ、皆の笑い者に
されている屈辱感で、頭の芯が痺れていた。
るり子が終了の合図をしてくれる迄の五分
間の時間が、まるで永遠かとも思われる長さ
である。
突然、パンティー越しに宮崎の鼻に触れて
いる女のアヌスが、急に盛り上ったかと思う
と、勢いよく爆発した。
恵子の、前へ身体を折り曲げる様にして尻
を後ろへ突出す、無理な姿勢が腸を圧迫し、
ガスを誘発したと見える。
生暖かい、臭い噴流をまともに吸い込んだ
宮崎は、思わず呻き声を上げて首を後ろへ反
らそうとした。
その時、上体を半身に捻った恵子が、手を
後ろに延ばして宮崎の後頭部に掛け、彼の顔
面をグッと自分の尻割れに押し付ける。
宮崎のワッと言う悲鳴が女の尻割れで押し
殺され、思わず、ガスの残り香を満喫してし
まった。
「いっぱーつ!」
恵子の高らかな声。
そして、直ぐ続いて、
「ソラ、にぃーはっ!」
の声と共に、恵子のアヌスから、薄いパン
ティーの布地越しに宮崎の鼻孔へ直接、二度
目の噴流が注入される。
避けようも無く、その臭気を深く吸入して
しまった宮崎は、失神せんばかりのショック
に、思わず全身を震わせた。
漸く、事情を理解した周囲から、ドーッと
爆笑が巻き起る。
「ホーラ、さんぱーっ!」
暫く間を置いて、たっぷりした量の、同じ
刺激が繰り返される。
しかも、今度はブリブリッと、音まで周囲
に響き渡った。
宮崎の肩が、そして、床に付いた両手が、
まるで感電したかの様に、わなわなと大きく
震える。再び、周囲では、ひとしきり笑いの
渦が広がった。
「丁度タイムアップよ。……アラッ、宮崎君
ったら、すっかり陶酔しちゃった様ね。……
フフッ、それじゃもっと時間を延長しましょ
うか?」
るり子の笑いを含んだ声。
宮崎は、後頭部に掛けられた恵子の手が、
何時の間にか外されているのに気付いて、慌
てゝ女の尻から顔を離した。
スゴスゴと席に戻った彼に、両隣りの女の
子が、からかう様に交互に声を掛ける。
「ネ、ネエ。恵子のお尻の臭い、どうだった
の?……ウフッ、おならの付録つきなんて、
とんだハプニングね」
「でも、宮崎君って、見掛けによらず勇気が
あるわ。……皆の前で、あんな生恥を曝せる
んですものね」
「でも、恵子のお尻を、四つ這いでクンクン
嗅いでる宮崎君の姿って、何だかさま≠ノ
なってたわよ。……ウフッ、まるで、盛りの
ついた犬みたい! もしかすると、あれが、
君の真の姿かもね」
「ちょっと、宮崎君、気のせいか君の息、臭
いわよ。……肺の奥まで、恵子のおならに塗
れたってわけね。……不潔だわぁ」
普段から、宮崎に良い感情を持っていない
女達である。
意地の悪さをむき出しにして、こゝぞとば
かりの態の良い言葉いじめだった。
口惜しさの余り反発しようにも、宮崎には
もうその気力は無い。たゞ、ひたすら黙って
座ったまゝ、女達の言葉による辱しめを甘受
するしかなかった。
ティータイムの後、るり子の言葉を借りれ
ば、ゲームの最後を飾る本日のビッグイベ
ント≠ェ皆に披露された。
「いゝこと。私達、春には卒業してバラバラ
になるわ。だから、これが学生生活で最後の
ニューイヤーズ・パーティーってわけ。……
だから、こゝで男のメンバーに、一生の思い
出を作るチャンスを上げるわ」
るり子は、思わせぶりにこゝで一息いれる
と、ゆっくり皆を見渡した。
「男の人達だけで籖を引いて、当った人に、
十分間だけ私の唇を上げる。つまり接吻を許
すわ。勿論、ヘビー・キッスでもOKよ。…
…だけど、それだけじゃないの。外れた人達
で、もう一回籖を引くの。そして、今度当っ
た人は、十分間、私のアヌスに接吻するの。
これは断わっても駄目。無理矢理にでも皆の
力で強制するわ。しかも、たっぷり、私のア
ヌスの汚れを味わって貰うわ」
男達は、黙ってお互いに顔を見合せる。
るり子は、やゝ上気した顔で続けた。
「このゲームの名前は天国と地獄。……つま
り、天国の接吻と地獄の接吻のどちらが当る
かってわけ……どう? みんな、チャレンジ
して見る?」
押し黙ったまゝの男達を尻目に、観客の立
場になる女達が、真っ先に反応を示した。
「面白いわぁ。……流石、るり子さん!……
まさにグッドアイディアー、それにとっても
エキサイティング!」
取り巻きの筆頭と自認する桜木恵子が、気
障っぽく提灯をつける。
るり子は、面映ゆげに付け加えた。
「それ程でもないわ。……実は、これのヒン
トはロシアンルーレットなの。……ホラ、レ
ボルバー式のピストルに、一発だけ弾を入れ
て、弾倉を回しては頭に向けて発射するゲー
ムがあるでしょう。……運が悪けりゃ、ジ・
エンドってわけ。……それを、こゝでは地獄
の接吻に置き換えて、ついでに天国の接吻を
追加した……それが、私の新創作ゲーム天
国と地獄≠チてわけなの」
るり子は、男達の方を振り向くと、催促す
る目付きになった。
「僕はやってみる。ロシアンルーレットに較
べりゃ、ものの数じゃないさ。……それに、
天国の接吻と言うビッグ・プライズも魅力あ
るしね」
ひとりが口を切ると、あとも次々に同意の
意向を示す。
「宮崎君、さっきから元気無いけど、君も異
存無いわね?」
るり子の駄目押しに、宮崎も、その場の雰
囲気から、頷かざるを得なかった。
「じゃあ、こゝに君達、四人の名前を書いた
籖があるわ。……これを、この箱の中でかき
まわしてっと……さあ、これでいゝわね。…
…じゃあ、引くわよ!」
男達の間に、サーッと緊張が走る。
「先ず、最初の籖、天国の接吻は……遠山進
君!」
当った遠山は、立ち上ってガッツポーズを
とった。
外れた男達からホーッと溜息が洩れる。
「続いて、二番目の籖、地獄の接吻わぁ……
宮崎一郎君!」
高らかに読み上げるるり子の声が、まさ
か、まさか≠ニ心に唱える宮崎の心臓をグサ
リと刺した。
途端に、ワーッと座が湧く。
「大当りぃ! 宮崎君。……私のおならを嗅
いだ後は、るり子のアヌスの味で仕上げって
わけね。……お目出度う!」
桜木恵子の意地悪い祝福……いや嘲笑を受
けて、宮崎の心は煮えくりかえる様だった。
るり子は、流石に笑いをこらえながら、彼
を手招きする。
「宮崎君、御苦労さん。今日はついてないわ
ね。……でも、取り決めは守って頂戴。……
じゃあ、早速始めるわよ」
円座の中央で、言われた通り仰向けに寝た
宮崎の首を、るり子は両足首で挟む様に跨い
で立つ。
スカートの下から覗く男の目を充分意識し
ながら、彼女はおもむろに、黒い厚手のパン
ティーを脱いだ。
「私、一昨日から生理で、お風呂に入ってな
いの。……汚れてるから、君の唇で清めて頂
戴。勿論舌も使うのよ。……十分間、少しで
もサボったらアンコールよ。いゝわね!」
宮崎の足を背にして、るり子はゆっくりと
腰を下ろして行く。
黒い翳りの下から姿を現したピンク色のク
レバスが、グロテスクな肉襞を見せながら、
彼の顔面近くでピタリと静止した。
生臭い異臭が、ムーッと鼻を襲う。
「いゝこと。キスする場所を間違えちゃ駄目
よ。……ソラ、舌を出して……その先を硬く
尖らせて御覧!」
るり子は、頭の方から宮崎の顔を覗き込み
ながら、彼に指示を与える。
そして、両手で自らの双尻をグイと押し広
げながら、アヌスを男の舌先に当てがって、
そのまま腰を下ろした。
宮崎の顔面に、湿った柔肉がぐにゃりと触
れ、途端にぐっと重圧が掛かる。
圧迫の比較的少い鼻の部分から、肉襞の隙
間を通して辛うじて呼吸が可能だが、その代
り、生理の異臭をまともに吸い込まされるこ
とになった。
一方、両手で一杯に押し広げられた女の括
約筋の中に舌先がすっぽり捉えられ、途端に
ピリッと苦い味に包まれる。
それが、アヌスに付着する汚物の味と判っ
て、急におぞましさがこみ上げた。
「サ、ちゃんと汚れを吸い取るのよ!」
るり子の声に、彼はハッとして舌と唇を懸
命にうごめかせる。
生れて初めて口にする汚物の味と、異様な
生理の臭気に、宮崎は気も狂わんばかりの屈
辱感を味わった。
「遠山君、いらっしゃい。……貴方には、天
国のキッスを上げるわ!」
宮崎の顔面を覆う女の尻が揺れ、彼の頭の
上で、るり子と遠山が抱き合って唇を重ねる
気配が伝わる。
同時に、周囲から一斉に拍手が起った。
ちっくしょう、遠山の奴!……それに引き
かえ、この俺は……=@
舌と唇で懸命に汚れを吸いながら、宮崎は
情けなさで頭がボーッとかすみ、女の股間か
らはみ出した目尻に、ツーと涙が零れた。
天国と地獄≠フゲームから約一ケ月経っ
た日のことである。
グループの皆の前で、文字通り生恥≠
曝したショックから漸く立ち直って、宮崎は
辛うじて進学試験に合格し、大学院への切符
を手にしていた。
そこへ、下宿に配達された一通の書留便。
それを開封した宮崎の顔が、みるみる蒼白
になった。
中から出て来た数枚の写真には、記憶に生
々しい先日のニューイヤーズ・パーティーで
の彼にとって忌わしいシーンの数々が、はっ
きりと映し出されている。
恵子の尻に顔を寄せる彼の歪んだ顔、そし
て、るり子の白い尻の下で舌を突き出してい
るカット等、何れも、宮崎の顔がそれと判る
鮮明さで捉えられていた。
同封の便箋には、この写真のネガを買って
欲しいとあり、彼が腰を抜かす程の金額が書
かれている。
無記名だったが、明らかにあのパーティー
に出席したメンバーに違いなかった。
息をはずませて萩原邸を訪れた宮崎一郎を
迎え入れたるり子は、写真を一瞥するなり、
クスッと笑いを洩らした。
「ウフッ、仲々良く撮れてるじゃないの。…
…撮った人も大体見当がつくわ。でも、こん
なに沢山のお金を要求するのは問題ね。……
いゝわ、私が間に入ってうまく話をつけてあ
げる。……ところで、貴方いったい、幾ら位
いだったら出せるの?」
るり子の問に、宮崎はドギマギした。
「幾ら位いって言われても……僕の学費は全
部奨学金とアルバイトだから……」
「まあ、いゝわ。明日、また来てみて頂戴。
交渉の結果を知らせるわ」
そして、次の日。
「写真を撮った人は判ったけど、名は言わな
いって約束したの。……それで、金額は半分
にするって。但し、一週間以内に払ってくれ
なければ、学部の掲示板に張り出すそうよ」
「そ、そんな、馬鹿な! け、警察に……」
「いゝの? 警察に届け出て。……この写真
も見せることになるわよ」
「……………」
「そこで、ものは相談だけど……もし、貴方
がどうしても都合つかない様なら、私が貸し
て上げてもいゝわ」
るり子の意外な申出に、宮崎の顔はパッと
明るくなる。
「ほ、本当?……でも……こんな大金、僕に
は、返すあてが無いし……」
「だったら、私の家で働いたら? 大学院を
休学して、こゝで召使い代りに一年間、下働
きすれば借金は棒引きして上げる。……だけ
ど、金額が金額だから、普通の仕事だけじゃ
駄目よ。……先ず、何でも私の言いなりにな
ること。フフッ、一種の奴隷奉公ね。それで
よければ、ネガと写真は私が取り戻して金庫
の中に保管しておくわ。そして、一年したら
返して上げる。……だけど、私の言う通りに
しなかったら、直ぐに写真を公開するわよ。
どおお?」
宮崎は、考えるまでもなく、自分には他に
選択の余地が無いことが良く判っていた。
追い詰められた気持で、承諾の意思を示す
ために頷いたものゝ、胸の奥から漠然とした
不安がこみ上げる。
「だけど……奴隷奉公って、一体……」
「心配しなくってもいゝのよ。別に鞭で打つ
わけじゃないんだから。……でも、この前の
パーティーで君に地獄のキッスをさせたでし
ょう。あの時、私、ジーンと感じたの。……
だから、もっとやってほしいの。そう毎日、
それも朝晩ね。……それと、君の舌、私のオ
ナニーの道具に使ってみたいわ」
「……………」
あの時の屈辱を、いや、もっと色々な辱め
を一年間に亘って味あわされるのである。
宮崎が思わず絶句したのも無理なかった。
それから一週間余り悩み抜いた末、遂に、
宮崎は、萩原邸に召使いとして住み込む決心
をする。
るり子の前で、借金の証書と一年間の雇用
契約書に署名捺印した宮崎は、その場で女中
頭の雪江に引き渡された。
邸内に同居している姉夫婦の手前、宮崎は
女中達の下働きとして位置付けされている。
勿論、るり子の気の向くまゝに呼び出され
使役されるのだが、その他の時間は、女中達
に顎で使われる哀れな立場だった。
萩原邸には五人の住み込み女中の他に、通
いの運転手と専属の庭師がいる。
住み込みの女中達は、晩の八時以降は自分
達の時間を持てるし、月に四日の休みを交替
で取ることになっている。
しかし、宮崎は、るり子に文字通り二十四
時間勤務を申し渡され、休みも無い。
しかも悪いことに、女中達に例の天国と
地獄<Qームの一件が知れ渡っていて、こと
ごとに軽蔑と嘲笑を浴びせられた。
生来のお嬢様育ちであるるり子は、女中達
の目を一切気にしない。
彼女等の前でも平気で宮崎の顔に跨がり、
例の地獄の接吻≠強いた。
流石に、彼の舌をオナニーに使う時は、寝
室か居間で、人を遠ざけてからにしたが、そ
れでも気分が出るまでは、女中が傍で掃除を
していても気に掛けないのである。
それに、るり子は座位を好んだ。
つまり、宮崎の顔に跨がり、座ったまゝ舌
奉仕を命じ、そのまゝの姿勢で頂点に達する
のである。
しかもアクメの後、今や彼女の第二の性感
帯であるアヌスを彼に舐めさせながら、余韻
を楽しむのだった。
従って、一旦、るり子の尻に顔を敷かれる
と、最低一時間、長い時には延々二時間にも
及ぶ奉仕を要求される。
尻圧のもと、呼吸の確保にも努力を要した
し、長時間の奉仕に唇も痺れ、舌の付根も痛
くなる。
宮崎は、女の意志のまゝにセックスの道具
として使われる悲哀と、屈辱を満喫させられ
ると同時に、心ならずも、日に日にるり子に
対する態度に卑屈さを加えて行くのだった。
萩原邸に住み込んで三ケ月程経った或る日
のことである。
夕食後、その日二度目の奉仕をさせて、男
の顔から尻を上げたるり子は、彼女の体液に
塗れた顔のまゝ床に土下座して就寝の挨拶を
する宮崎に、意外な話を切り出した。
「お前にビッグニュースを伝えるわ。……私
ね、婚約したの。相手はクラスメートの遠山
さん。……私が、天国の接吻を与えた人よ。
彼、今度卒業と同時に就職したんだけど、結
婚は仕事の関係で来年にしたの。……実は、
彼は、昨年から私のセックスフレンドだった
のよ。毎週彼とはデートの後、ラブホテルで
愛しあってたわ。……でも、もう婚約したん
だから、コソコソするのは止めて、これから
はこの家でセックスすることにしたの」
それは将に宮崎にとって、大袈裟に言えば
運命を左右するビッグニュースだった。
るり子が結婚する! そうすれば、宮崎を
オナニーの道具として使う必要も無くなり、
彼はお役ご免で開放される。……それどころ
か、婚約が成立した以上、宮崎は邪魔者であ
る。……うまく行けば、明日からでも自由の
身にして貰えるかも知れない。
宮崎の胸は、途端に、期待と希望で大きく
膨らんだ。
「彼のセックスは激しいの。いつも三回は続
くのよ。……それに彼ったらね、婚約した以
上、週に二回は交渉を持ちたいんですって。
そこで、お前の役割だけど……」
るり子は、足元にひれ伏している宮崎の顔
をジイッと見詰める。
彼は正座のまゝ思わず身を乗り出した。
「お前は今まで、私のオナニー専用だったけ
ど、これからは、私と遠山さんとのセックス
の道具になるのよ。そう、セックス・スレー
ブ、と言った方がいゝわね」
宮崎の顔が蒼白になり、身体が震える。
「……そりゃあ、お前にとって、今までのク
ラスメートの性器を舐めさせられたり、その
ザーメンを口にさせられるのは、辛いでしょ
うよ。……でも、お前は唇も舌も、それに心
も、私に汚された身よ。……どっちみち五十
歩百歩。諦めなさい!」
それは、宮崎の淡い期待を打ち砕く、残酷
極まる宣告だった。
かっての恋がたきの遠山とるり子との、愛
欲のいとなみを目のあたりにさせられるばか
りか、こともあろうに、二人の奴隷として、
セックスの道具にされるのである。
るり子の足元の宮崎の咽喉から、絞り出す
様な嗚咽が洩れた。
しかし今の宮崎には、選択の自由は無い。
るり子の言う様に諦める他はなかった。
そして、その数日後。
昼下りの萩原邸では、今や、るり子の婚約
者として訪問した遠山が、寝室のソファーで
るり子と抱き合っている。
その二人の足元に、哀れにも犬の首輪を嵌
められた宮崎が、四つ這いの姿勢で床に引き
据えられていた。
遠山とヘビーキッスを交しながら、るり子
は、意味ありげに床の宮崎を流し見る。
遠山が、宮崎に向かって、横柄に顎をしゃ
くった。
「オイ、お前の役割を忘れるな! ホラ、覚
えているだろう。地獄のキッスだ!」
るり子は身体を半身にひねって、尻を横に
向け、片手でパンティーを下ろす。
その白い尻丘の間に、宮崎が顔を寄せ、舌
を延ばした。
二人の息遺いが荒くなった頃、るり子の足
が宮崎の身体を蹴って床に仰向きに寝かす。
その身体の上へ、ソファーからずり落ちる
様に、二人が抱き合ったまゝ座り込んだ。
るり子は、尻で宮崎の顔を探り、遠山は彼
の頚の上に腰を据える。
宮崎の顎の上に、ぐにゃりと男の陰嚢が当
り、鼻孔にはるり子の菊座が触れた。
そのまゝ遠山の一物が、宮崎の顔に跨がっ
たるり子のクレバスへスルリと挿入される。
「ホラ、舌を出して! 私達の結合部をお舐
め!……そう、その調子。それを続けて、私
達を天国の気分にするのよ」
るり子が遠山に抱きついたまゝゆっくりと
尻を前後に揺すり始める。と同時に、遠山が
宮崎の顎の上でピストン運動を開始した。
懸命に舌を延ばして、二人の結合部を舐め
る宮崎の唇が、るり子のクレバスから湧き出
る分秘液で濡れる。
それは、宮崎にとって、将に屈辱の極とも
言うべき、地獄の奉仕であった。
やがて、二人の動きが加速され、頂点に達
する。男の放出に伴う律動がピクピクと宮崎
の舌先に伝わり、生臭い匂いが立ち込めた。
遠山のものが萎え、結合が緩むと、二人の
ミックスジュースが、どっと宮崎の口中に流
れ込む。それをゴクリゴクリと咽喉を鳴らし
て飲み込む彼の胸の内は、征服された者の悲
哀に満たされていた。
「アーッ良い気持だわ。……こいつ、私が籖
に細工をして、貴方があの写真を撮ったこと
も知らないで、とうとう地獄に落ちたわね。
……この男をグルーブに入れたのも、始めか
ら、こうして奴隷にする目的だったのに。…
…ウフッ、間抜けな奴!……ホレ、第二ラウ
ンドよ。しっかりお舐め!」
るみ子は、宮崎の顔の上で尻を揺すって催
促する。
無念さに胸を掻きむしられながら舌奉仕を
再開した彼は、今や地獄の底に転落した我身
をはっきりと認識するのだった。
(完)
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1989年4月スレイブ通信11号
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2010/12/05