059-#59汚された面影
阿部譲二作
社長の結婚相手が自分の昔の恋人だと知った男が社長秘書に任命され、夫妻に随行してハワイに旅行する。女は思わぬ再会に驚くが優越感に浸り彼を女中代わりに使う。妻が買物に出かけたあと、社長は妻が心に抱く彼の映像を汚すために彼に演技を強いる。そして、妻に男が部屋で彼女のパンティを舐めている場面を発見させて軽蔑させ便器奴隷に落とす。 |
橋本浩二は朝から憂欝だった。九月も半ば
を過ぎたというのに、やけに蒸し暑い昼下り
である。
ケーエス商事のさして広くもないフロアー
には、総勢約四十人の社員が、すし詰めで仕
事をしていた。
そのせいか、冷房の効きが極めて悪い。
しかも、昨夜出張から帰って来たばかりの
橋本の机の上には、留守中に溜った書類の山
が溢れていた。
橋本には、憂欝の原因が、蒸暑さのせいで
もなければ書類の山のためでもないことは、
良く判っていた。
新婚旅行から帰って来たばかりの、社長の
佐藤啓蔵の土産に添えられていた写真から、
社長の結婚相手が、こともあろうに橋本の昔
の恋人、水元幸子だったことを初めて知った
ためだった。
笑窪が特長の丸顔の幸子は、中々の美人で
もあったし、日本人離れしたプロポーション
を持つグラマーである。
二年前、ふとしたことから喧嘩別れしてい
なければ、今頃は彼の妻の座に納まっている
筈の女であった。
従って、勿論未練が残る。
もう一度、撚りを戻そうと、あちこち捜し
ていた矢先のことだったのである。
幸子の弾力のあるヒップ、ふっくらとした
胸の感触が、未だ生々しく思い出される。
それが、彼といくらも年の違わない社長の
ものになってしまった・・・・・との思いが
橋本の胸を嫉妬でかきむしった。
橋本浩二、二十八才。大学を出てこのケー
エス商事に入ってから、もう六年になる。
生来の気の弱さから、担当の営業業務の成
績は、もうひとつパッとしないが、生真面目
な性格が周囲の信頼を集めていた。
ケーエス商事は、社長の佐藤啓蔵のイニシ
ャルをとって名付けられた個人会社である。
一般雑貨の輸出入を手掛けていて、規模はそ
う大きくないが、社員数約百人を擁し、可成
りの利益を上げていた。
家代々続いた佐藤商店を、父から引き継い
で規模を拡大し、いっぱしの商事会社に衣更
えさせた佐藤啓蔵は、三十才の若年ながら、
中々のやり手である。
仕事の性格上、旅行勝ちで、オフィスの管
理は、概ね、縁戚筋に当る副社長の山崎透に
任せていた。
ところで、この日、橋本浩二の憂欝を更に
エスカレートさせる出来事が、引き続いて起
ったのである。
書類の山に取り組んで、やっとその処理を
終えてホッとした時である。彼は突然、大橋
副社長の部屋へ呼ばれた。
でっぷりと太った赤ら顔の山崎は、黒皮の
ハイバックシートに背を埋めながら、顎をし
ゃくって目の前の椅子を薦めた。
「社長からのオーダーだがね。明日から、君
は社長付の秘書になってもらう。君の上司の
営業課長には言っておいたから、早速、社長
執務室に移ってくれたまえ」
椅子に腰を下ろしかけた橋本は、思わず耳
を疑ぐった。
「社長秘書ですって? 男の私がですか?
そりゃおかしいですよ。第一、社長の秘書に
は、佐山純子がいるじゃないですか!」
「佐山君は、今度、一身上の都合で会社を止
めたんだ。・・・・・それに、秘書が女だと
社長が業務旅行の時に、随行しにくいんだ」
「そんなことはないでしょう。現に佐山純子
は、何度も社長について出張した筈ですよ」
「君ぃ、社長は今度結婚したんだよ。今迄と
は事情が違うことぐらい判るだろう」
「ハハーン。じゃあ社長と佐山純子の間には
何かあったんですね?」
「それは、君の想像に任せるさ。・・・・・
とにかく、明日からは新任務に着いてくれた
まえ。これは業務命令だぞ。いゝな!」
念を押されて、橋本は不満はあったものゝ
とりあえずは、頷かざるをえなかった。
秘書の机が置かれている小部屋は、社長執
務室への通路になっている。佐山純子が昨日
迄座っていたその机は、女子従業員用の小ぶ
りのサイズで、片隅には一輪差しの花瓶が置
いてあった。
翌日、新任務の初日とあって、やゝ緊張し
ながらその小さな秘書の机に座って、社長の
出勤を待つ橋本は、何だか自分がお茶汲みの
女子社員並に降格された様な気分だった。
廊下を通りかゝる女の子達が、物珍しげに
この男性秘書を覗き込んで行くのも、癪の種
である。朝の出勤時間を一時間程過ぎて、漸
く社長の佐藤啓蔵が顔を見せた。
「やあ、君が橋本浩二君か。今日からよろし
く頼むよ。・・・・・アッ、それからね。早
速だが、来週から二週間程、ハワイへ出張す
る予定だ。君も随行して貰うからパスポート
とビザを用意しておきたまえ」
そう背は高い方ではないが、学生時代、ラ
グビーのレギュラー選手だったというだけあ
って、全体にがっしりとした体格である。
社長室のドアを開けながら、後を振り返っ
た佐藤社長は、心なしか声を柔らげて付け加
えた。
「今度の出張にはね、家内を連れて行くから
な。よく面倒をみやってくれたまえ」
週末を前に控えた金曜日とあって、その日
の成田空港は、何組かの団体客で混み合って
いた。早目に来て、荷物のチェックインを済
ませ、ロビーで社長夫妻を待つ橋本は、伸び
上がる様にして、人垣の間から入口のあたり
に気を配る。
暫くして、漸く紫色の派手な衣装の女を伴
った佐藤社長の姿が、目に入った。女は、ま
ぎれもない水元幸子である。
彼の恋人だった頃より、心もち太った様だ
が、腰のくびれたグラマラスな肢体は相変ら
ずで、そのキュートな顔立と共に、周囲の人
目を集めている。
親しげに、佐藤社長に寄り添って腕を組ん
でいる姿は、橋本の胸に新たな嫉妬の炎を燃
え立たせた。
「やあ、君ぃ。早くから御苦労だったなぁ。
・・・・・紹介するよ。これが今度の旅行に
随行してくれる秘書の橋本君だ。・・・・・
橋本君、これが家内の幸子だ」
「橋本です。どうか宜敷くお願いします」
目を大きく見開いて、マジマジと彼を見詰
める幸子の表情には、掛値のない驚きの色が
浮んでいた。
橋本と交際していた頃の幸子は勿論、彼の
勤め先がケーエス商事である事は、充分承知
している。従って、そのケーエス商事の社長
である佐藤啓蔵と結婚した以上、その社員で
ある元恋人の橋本との出会は充分覚悟してい
た筈であった。
しかし、それがこうした形で実現しようと
は、彼女も予想していなかったらしい。
「エッ、エー。・・・・・私こそ、宜敷く」
咽喉に引っ掛かる様なぎごちなさが、声の
調子に現れていた。
「橋本君にはな、お前の世話を充分してくれ
る様に言ってあるんだ。・・・・・だから、
遠慮無く何でも頼むといゝよ」
啓蔵は、目を細めて新妻の方を見詰める。
如何にも可愛いくて仕方がない風情だった。
「アラッ、嬉しいわ。それじゃあ橋本さん、
私の女中代りを勤めて戴けるわね」
幸子は、わざと女中代り≠フ言葉にアク
セントを置く。橋本を見詰める目が、どこと
なく、いたずらっぽい光を帯びていた。
「エー、ま、何でも致しますから・・・・」
橋本は、何とか調子を合わせたものゝ、怒
りが、ぐっと込み上げるのを覚えた。
幾ら社長婦人に成ったとは言え、嘗っての
恋人から、お前を女中代りに使ってやると宣
言されたのである。男としては、耐え難い屈
辱であった。
「それじゃあ早速だけど、私達のこの荷物、
持って下さらない?」
唇を噛み、幾分上気気味の橋本に、幸子は
余裕を持ってニッコリ微笑みかける。
「ハ、ハイ。・・・・・勿論ですとも」
立場の違いからか、幸子の態度には、既に
社長夫人の貫録すら備わり、橋本は圧倒され
る思いだった。
二人のトランクを両手に、みじめな気持で
社長夫妻の後に従う彼の前で、幸子は啓蔵に
寄り掛かる様にして、その豊かなヒップを必
要以上に振って歩く。その後姿は、まるで昔
の恋人である橋本に、
(私は、もう貴方の手の届かない所に居るの
よ。どおお? うらやましい?)
と語り掛けているかの様だった。
ハワイ行きのフライトは、案の定、団体客
で膨れ上がっていた。ぎっしりと詰め込まれ
たエコノミー席の騒雑しさから逃れる様に、
橋本は、ファーストクラスの社長夫妻の所へ
様子を伺いに行った。
「橋本さん、丁度良いところに来たわ。さっ
き搭乗口で団体客に靴を踏まれて、すっかり
汚されちゃったの。降りるまででいゝから、
磨いといて下さらない?」
いきなり彼の目の前に、幸子の手に掴まれ
た白いハイヒールが突付けられた。
「ハー、ハイ。判りました」
社長の手前、素直に返事したものゝ、悔し
さで目の奥がジーンと熱くなる。女の靴を下
げてスゴスゴと引き返すと、トイレの中にこ
もって汚れを落しに掛かった。
やっとのことで黒い汚れは取れたものゝ、
靴墨が無いため、表面が斑らになっている。
止むを得ずそのまゝ持参すると、幸子は一目
見て顔をしかめた。
「駄目じゃないの。こんなのが穿けるとでも
思ってるの?」
彼女の手から、ポンと靴が通路に投げられ
た。周囲の客の目が一斉に集まる。啓蔵はと
言えば、空のカクテルグラスを前に、座席の
背を倒して、早くも高いびきだった。
恥ずかしさに顔を真っ赤にして、通路に四
つ這いになり、横の座席の下に飛び込んだ靴
を拾う。その無様な恰好に、周囲の女客から
クスクス笑いが洩れた。
「靴墨が無ければ、白粉とかコールドクリー
ムでごまかす手があるでしょう。本当にドジ
なんだから!」
幸子の声が、頭から降る。無念さに思わず
靴を持つ手がブルブルと震えた。
見かねたスチュワーデスが、白チョークと
化粧用のクリームを貸してくれたので、何と
か幸子の意に添うことが出来たが、座席に帰
ってからも橋本の胸は、暫くの間、怒りと悔
しさで煮えたぎっていた。
無事にホノルルに到着し、ビーチに面した
豪華なホテルにチェックインした後、疲れを
休める暇も無く、佐藤社長と橋本は出迎えの
商社の担当者とスケジュールの打合せに入っ
た。幸子は商社の手配したガイドの案内で、
早速ショッピングの下見と称して外出する。
来週からの商談の段取りを決めて、商社の
男達が帰った後、佐藤社長と橋本は、亮蔵夫
妻の泊る豪華なスイートルームで、ビールの
グラスを傾け、ホッと一息付いた。
「橋本君、幸子が帰って来る前に、ひとつ、
言っておくことがあるんだ」
亮蔵は、ソファーに身体を預けたまゝ、空
になったグラスをサイドテーブルに置くと、
急に真顔になって橋本の方に向き直った。
「俺が幸子と式を上げる前にな、実は、ある
興信所を使って彼女の身辺を詳細に調べさせ
たんだ。・・・・・すると、一番親しかった
ボーイフレンドとして、橋本君、君の名前が
出て来たのさ」
亮蔵は、橋本の反応を確かめる様に、彼の
目をジーッと見詰めた。
「勿論、二年前に別れたことも判ってるさ。
しかし、幸子の心の中に君の面影が残ってい
ること自体が、俺は我慢出来んのだ」
「・・・・・・・」
「それでだな、君に頼みがあるんだが、幸子
の心の中の君に関する記憶を、消せないまで
も、別な記憶で塗り変えて欲しいんだ」
「記憶を塗り変えるって・・・・・一体、ど
うするんですか?」
不審そうに問い返す橋本に、亮蔵はニヤリ
と笑みを浮べる。
「それはだな、これから二週間の旅行中に、
君は、自分が彼女に徹底的に軽蔑される様に
積極的に演技をして欲しいんだ。判るかね?
・・・・・つまり、彼女の心の中の君と言う
男の映像を、うんと汚してしまうんだ。・・
・・・そう、二度と君に心を移すことが無い
様に、徹底的にな」
「そ、それはひどい!・・・・・第一、そん
なことをしなくたって、彼女は、社長夫人の
名前を笠に着て、僕を女中代りにこき使おう
としているんですよ。僕に心を移すなんて、
とても考えられませんよ」
「それが危ないんだ。見方を変えれば、それ
は、幸子が君に未だ関心を持っている証拠だ
よ。君の注意を引こうとして、君に突っ掛か
って行ってるとも言えるさ」
「でも、僕が演技するなんて・・・・・しか
も、これ以上、彼女の軽蔑を買うなんて真っ
平ですよ。お断りします!」
橋本は、幾分憤然とした調子で、亮蔵を睨
み返した。
「そうか、それじゃ言うがな、君が一年半前
に出した二千万円の欠損を覚えているな」
「あ、あれは、中近東の内戦で、為替が焦げ
付いて・・・・・」
「と言うことになっとるが、あれは、君が競
輪で使った金さ。・・・・・幸子の調べで、
君の名前が上ったので、同じ興信所に頼んで
君の事も洗ってみたんだ。ちゃんと証拠もあ
るんだぞ」
橋本は、がっくり首を垂れた。幸子と別れ
たショックを癒やそうと、競輪にのめり込ん
で損を重ね、心ならずも会社の金に手を付け
たのである。まさかと思っていた事が露見し
て、橋本は一言もなかった。
「どうだ。業務上横領罪で監獄に入ることを
思ったら、幸子の前で演技するくらい、お安
い御用だらう。エー?」
橋本は頂垂れたまゝ、微かに頷く。
「演技と言っても、筋書から科白まで、大体
のところは俺が書いといた。ホレ、これさ。
・・・・・今晩中に良く読んで、しっかりと
覚えておけ。いゝな」
ポンと、ノートが橋本の膝に投げられる。
それを手に、スゴスゴと部屋に帰る橋本の背
に、覆い被せる様に亮蔵の声が響いた。
「いゝか、早速、明日から始めるからな。間
違えるんじゃないぞ!」
翌日は丁度週末で、亮蔵夫妻は土、日曜と
ゆっくり休養を取ることになっている。
朝食後、連れ立って夫妻が出掛けた直後、
亮蔵の筋書に従って、渡されていた合鍵で、
橋本はこっそり二人の部屋に忍び込んだ。
彼の充血した目は、昨夜、一睡もしなかっ
たことを物語っている。橋本は、素早くあた
りを物色し、クロゼットの隅にビニールの袋
に入れて突っ込んである、二人の使用済の下
着を見付けた。
震える手で、そこから幸子のパンティーを
取り出す。裏返して見ると、生理が近いのだ
ろうか、股間の部分がベットリと茶褐色に汚
れて、異臭を放っていた。
傍のソファーに横たわり、思い切って、そ
の部分に顔を当てる。
臭気がツーンと鼻の奥を刺激し、女の強い
性臭に、思わず頭がクラクラした。急いで、
片方の手でズボンのチャックを下して、オナ
ニーに取り掛かる。
その時、部屋のドアのノブが、カチャリと
音を立て、突然、亮蔵夫妻が姿を見せた。
全ては、亮蔵の書いた筋書き通りである。
「カメラを忘れたって、一体どこにお置きに
なったの?」
ツカツカと、早足で部屋に入って来た幸子
は、ソファーの上の橋本を見付けて、一瞬、
ギョッとして立ち竦む。
「は、橋本さん。びっくりするじゃないの!
そんな所で一体、何をしてるの?」
幸子もそうは聞いて見たものゝ、ズボンの
前をはだけた橋本の有様から、やってること
は一目瞭然である。
「オイオイ、その、顔に当てゝる布を見せて
みろ。・・・・・ホラ、それは幸子、お前の
下着じゃないのかい?」
「アラッ、いやだ。私のパンティーだわ!」
亮蔵は、それを橋本から取り上げると、幸
子の目の前にかざして見せた。
「見ろよ。この汚れている所が、唾で濡れて
るぞ。・・・・・橋本! お前、幸子のパン
ティーを舐めながらオナニーしてたんだな」
「まあ、いやらしい! 橋本さん、貴方って
そんな人だったの」
幸子の顔が、激しい軽蔑で歪んだ。同時に
亮蔵が後ろから、こっそり合図を送る。
橋本は、屈辱に震えながら口を切った。
「アノー。ぼ、僕、女性のパンティーの汚れ
た所を見ると、たまらなくなるんです。・・
・・・臭いを嗅いだり、汚れを味わってみた
りして、興奮するんです」
「とんでもない変態だな。・・・・・そうだ
先月、うちの女子社員のロッカー室で、パン
ティー泥棒があったそうだが、それもお前の
仕業だな」
「そ、そうです。女性の汚れたパンティーを
毎晩、嗅いだり舐めたりするのが楽しみで、
とても止められないんです」
床にへたり込んで、二人を見上げながら、
亮蔵の書いた筋書通り演技する橋本は、もう
半ばやけくそだった。
それとは知らぬ幸子は、まるで汚ないもの
でも見る様な表情で橋本を見下ろしている。
そして、たまり兼ねた様に、突然、彼の顔面
にペッと唾を吐き掛けた。
「少しは、恥と言うものを知るといゝわ。ホ
ラ、これでも恥ずかしくないの?」
幸子は、再び口をすぼめて唾を溜めると、
身体を前に屈めて、再び唾を吐き掛ける。
口腔が空になっては唾液が溜まるまで待ち、
まとめて幾度も彼の顔面に唾を飛ばした。
男の顔が、べっとりと唾液で覆われ、それ
が頬に、耳に、咽喉に垂れて来る。幸子の蔑
みの表情が、橋本には、涙と唾液でボーッと
霞んで見えた。
「それだけ軽蔑した貰ったら、少しはこたえ
ただろう。・・・・・奥様に許して戴いて、
そこで顔を洗って来い」
亮蔵の声に救われて、橋本はよろめきなが
ら、大理石張りの豪華なバスルームへ向う。
「洗面所が汚れるわ。そこの便器で顔を洗う
のよ!」
後ろから幸子の声。
止むを得ず、洋式便器に顔を突っ込み、不
潔感を抑えながら顔を洗う。
「貴方、見て。ホラ、まるでオシッコを飲ん
でるみたいだわ」
「本当に飲むかもしれんよ。何しろ、大小便
の付いた女のパンティーを、嗅いだり舐めた
りする変態なんだからな」
「まさかぁー。そこまではしないわよ」
「試してみろよ。賭けてもいゝぜ」
「悪趣味ね。でも、貴方が興味があるなら、
協力して上げてよ。・・・・・・橋本さん、
そこどいて頂戴。そう、顔は上げないで下を
見てるのよ」
幸子は、便器に跨がると、忽ち派手な音を
立てる。彼女の足元で、顔を床に伏せている
橋本の耳に、その放尿の音が、まるで雷の様
に響いた。
「オイ、判ってるな。変態なら変態らしく、
家内の小水を飲んでみろ!」
非情な亮蔵の声が、橋本の決断を促す。
所詮、弱味を握られている身である。諦ら
めが肝腎と、腹をくくって便器の中を覗く。
幸子には、疲れが未だ残っていると見え、
黄色味の勝った汚水が便器を満たしていた。
流石に、胸がむかつく思いである。
「早くしろ! 幸子には、お前の本性を見て
貰って、うんと蔑んで貰うんだな」
それは、将に、橋本に約束の履行を迫って
いる声だった。
どうともなれと、目を瞑って汚水に口を付
ける。ズズズーッとそれを吸い上げ、ゴクリ
と咽喉へ送った。水に薄められているとは言
え、独特の臭味は消えていない。
ひと口飲むと、後はふっ切れた様にゴクン
ゴクンと続けさまに、汚水を胃の腑に送り込
んで行った。
「一寸見て! 本当に飲んでるのよ。・・・
・・汚ないわぁー、とても信じられないわ。
こいつ、最低の男ね!」
異常な光景に興奮気味の幸子の声が、橋本
の耳にも届く。
(アー、これで彼女の心の中の俺の面影は、
完全に泥にまみれてしまったんだなぁ)
寂しさと無念さが織り混じって、目の奥が
ジーンと熱くなる。しかし口の方は、休まず
に汚水を啜り続けていた。
次の日、二人は近くのコースで、ゴルフを
楽しむ予定になっていた。
アメリカのことゝて、プライベートクラブ
以外にはキャデーを置いていない。客は皆、
手引きカートを曳いて用具を運ぶのである。
橋本は、哀れにも二人のキャデー役を仰せ
つかって、二人分のゴルフバッグをカートに
乗せて、後に従う。
昨日のことで、幸子の彼に対する態度は、
すっかり変ってしまっていた。
朝からいきなり橋本!≠ニ呼び捨てにさ
れ、お前≠ニ呼び掛けられる。そして、頭
ごなしに次々と用事を言い付けられた。
亮蔵がシャワーを浴びに行き、橋本と初め
て二人きりになった幸子は、
「お前、変態だったくせに、私には黙ってた
のね。私、二年前、お前と危うく結婚する所
だったのよ。・・・・・許せないわ!」
と吐き出す様に、本音を口にした。
思わず反駁しようとしたが、亮蔵との約束
を思い浮かべて、思い留まる。
それからと言うものは、幸子は、今迄橋本
の本性≠知らずに騙されていたと信じ、
その欝憤を晴らすかの様に、彼をネチネチい
たぶったのである。
手入の良く行き届いた美しいコースを、二
人でスタートしてからも、その態度は変らな
かった。クラブを持って来るのが遅いと言っ
ては罵り、自分がミスショットをすると、気
を散らしたと難癖を付ける。
それは、橋本にとって、昔の恋人に蔑まれ
辱められるみじめさを、身に泌みて味わせら
れる辛い経験だった。口答えひとつ出来ぬ無
念さが、彼のストレスを高め、却ってドジを
やってはその度に、一層、幸子に罵倒される
結果になった。
たまたま広いコースには人影もまばらで、
二人だけのプレイが続く。そして、アウトの
六番あたりに差し掛かった時であった。
「貴方、どこかにトイレないかしら?」
幸子が、突然催してきたとみえて、亮蔵に
話し掛ける。
「うむ、クラブハウスまで戻らなくっちゃ駄
目だな。しかし、こゝからは、生憎一番遠い
距離になるしな」
亮蔵も当惑気味である。しかし、何を思っ
たか、亮蔵は幸子の耳に口を寄せて、何事か
ヒソヒソと囁いた。
幸子の顔に、意地の悪そうな笑が浮かぶ。
そして、後ろに従う橋本の方を振り向いた。
「橋本。お前、私の後を付いておいで!」
彼女は亮蔵と別れて、コースの脇に広がる
木立の方へ向かった。
「こゝでいいわ。その茂みの間に仰向けに寝
るのよ。・・・・・そう、それでいゝわ」
不吉な予感に震えながら地面に横たわった
橋本の顔を大きく跨いだ幸子は、ジッと男の
顔を見下ろした。
「もう判ったでしょう。お前は、私のトイレ
になるのよ。・・・・・昨日は水割りだった
けど、今日はストレート。フフッ、良く味わ
いなさい!」
「アアー、どうか、ゆ、許して下さい。こ、
このビニール袋の中にして戴ければ、ちゃん
と始末して来ますから・・・・・」
橋本は、寝たまゝで、必死にポケットをま
さぐり、袋を取り出す。
「何を寝言いってるの。私は、ビニール袋じ
ゃなくって、お前の胃袋を使うことに決めた
のよ。・・・・・何さ、変態のくせに!」
白いショートスカートの裾からニョッキリ
と、橋本の目の前に聳える二本の肉柱の結合
部には、花模様のパンティーに覆われた幸子
の豊なヒップが覗いて彼を圧倒する。
それが、突然、ぐっと降下して彼の顔面を
捉えた。
「ウフッ、先ず臭いを嗅がせてやるわ。・・
・・・ホラ、お前の好きな女のパンティーの
臭いだよ。ホーラ、ホラホラ」
幸子は橋本の顔の上で、尻臭を彼の鼻孔に
擦り込むかの様に、ゆっくりと尻を揺する。
運動でにじんだ汗が、汚れを燻蒸し、ムッと
する強烈な臭気を橋本の鼻に送り込んだ。
「ム、ムーッ・・・・・」
幸子の尻の下では、くぐもった男の呻き声
が続く。
「さあ、本番よ。口を大きく開けて!・・・
・・一滴でも零したら承知しないわよ」
目の前の尻が浮いたかと思うと、くるりと
パンティーが剥け、白い尻が視野一杯に広が
る。と、その途端に柔かいクレバスが顔面を
覆い、大きく開けた口の周囲にぐっと女の体
重が掛かった。
ポタッポタッと口中に滴が落ちたかと思う
と、チョロチョロと水流が走った。そして、
その勢いが急速に増す。苦い塩味と臭みが、
口中一杯に広がった。
女に、しかも昔の恋人に辱められ、小水ま
で飲まされる。・・・・・その屈辱の味は彼
の咽喉を焼き、胃の腑をえぐった。
水流に呼吸を奪われまいとすれば、必死に
飲干すしかない。ゴクリゴクリと彼の咽喉が
鳴り、胃のあたりが大きく上下する。
何時果てるともなく続いた水流が漸く弱ま
り、飲干す努力から開放されると、途端に、
忘れていた屈辱感がドッと押し寄せて来た。
股の間から辛うじて覗く目に、上から見下
ろす幸子の冷たい蔑みの表情が映る。女の便
器にされていると言う信じられない事実を、
現実のものとして把握した途端、耐え難い悔
しさと無念さで、頭が火の様に燃えた。
「サー、いゝわ。後をちゃんと舌で清めて頂
戴。・・・・・そおよ、ちゃんと出来るじゃ
ないの。フフフ」
顔を圧していた重量がスッと消え、幸子が
茂みを後にする。慌てゝ身を起して後を追う
橋本の前で、何事も無かった様に二人のプレ
イが続行された。
ワンラウンドを終え、クラブハウスに戻っ
た二人は、冷えたビールで咽喉を潤す。
外で、二人のゴルフクラブの手入れをさせ
られている橋本は、それを横目で見ながら、
ゴクリと生唾を飲み込んだ。その冷えたビー
ルの味と、先程橋本が飲まされた生暖かい幸
子の汚水の味との差が、現在の橋本と幸子と
の身分の差を現わしているかの様だった。
ホテルに戻った二人は、早速シャワーを浴
びる。亮蔵に先を譲った幸子は、橋本を呼ん
だ。
「お前、今日のこと忘れちゃ駄目よ。御褒美
に私の汚れたパンティーを上げてもいゝわ。
でもね、今日は、オリジナルを舐めなさい」
何のことか判らずキョトンとする橋本に、
ベッドの横の床に仰向けに寝る様に命じた幸
子は、おもむろにパンティーを脱いで彼の顔
に跨がる。
「パンティーの汚れは、謂わば私の股の汚れ
のコピーよ。だから、これからお前が舐める
のが、そのオリジナル。・・・・・先ず、後
ろの方から始めなさい」
幸子のジットリ湿ったアヌスが彼の唇を捉
える。運動で、分秘が活発に成った為であろ
う、彼の鼻に触れる汗にまみれた幸子のクレ
バスは、強烈な異臭を放っていた。
女に汚れた尻の穴まで舐めさせられる・・
・・・しかし、その屈辱は、先程、既に便器
として使用された橋本にとって、いわば毒皿
の感があった。
しかし、女のアヌスの苦い味は、新たな屈
従を意味する。そして、その後、続いて彼の
唇を覆ったクレバスの秘肉の味は、彼をめく
るめく刺激と興奮の世界へと誘った。
「ウフフ、この男も到頭、幸子の奴隷にされ
た様だな」
何時の間にか、シャワールームから出て来
た亮蔵が、裸で傍に立っている。その直立し
た逞しい肉棒は、彼の欲情の高まりを示して
いた。
亮蔵は、橋本の顔面に跨がる幸子を抱上げ
ると、ベッドの上に寝かせ、覆い被さって、
一気に貫いた。ヒクヒクと腰を痙攣させて、
射精を終ると、又、シャワールームに戻る。
物憂げに身を起した幸子は、ベッドの傍に
横たわったまゝの橋本を見下ろして、ニッと
笑った。そのまゝベッドから滑り落ちる様に
して、彼の顔に跨がる。
「ホーラ、奴隷の御馳走よ。私達のミックス
ジュースを召上がれ!」
彼女の股間から湧き出す、白濁した多量の
ラブジュース。それを飲み下す男の屈辱に歪
む顔が、見下ろす幸子の心に、橋本の新たな
汚された面影≠ニして焼付いて行ったのだ
った。
〔完〕
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1987年10月スレイブ通信5号
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2010/11/22