068-#68情熱のカスタネット(異国の強制舌奉仕)
                阿部譲二作

バルセロナの大学に留学した男が、学費を稼ぐために毎夜フラメンコ舞踊のナイトクラブで働く。そこの踊り子に恋した男は掃除の後で彼女のパンティを顔に当ててオナニーに耽る。それを見つけた彼女は、やがて彼に舌奉仕を要求するようになる。クラスメートに偶然、彼女の友人が居てそれを聞き自分にも舌奉仕を要求、二人の日本人女子学生も加わる。

 ボーッと汽笛の音が夕焼の海に響く。
 広里幸二の乗った貨物船は、今、バルセロナ港の防波堤を出て、中近東経由、日本へ向かう
旅路に着いた所だった。
 約一ケ月の船旅だが、二年の留学生活で所持金を使い果した今の幸二には、航空運賃を払う
余裕は無い。
 デッキの手摺にもたれて、暮れ行く海を、そして遠ざかるバルセロナの街の灯を眺める幸二
の胸には、この街での二年間の波乱に富んだ学生生活の思い出が、走馬灯の様に駈け巡るのだ
った。
 そして、あの美貌のマリアの思い出。……しかし、悲しいことにその面影の代りに浮かぶの
は、あの思うだに口惜しい屈辱の数々。
 ……ただ、暗く揺れる波間にくっきりと浮かぶのは、二年前に希望に満ち溢れてバルセロナ
で生活を始めたあの頃の、生々とした自分の姿だった。                 
 貧しい家の出の広里幸二が、スペインのカタルニア地方の古都、バルセロナの大学院で学ぶ
決心をしたのは、日本の大学の文学部でスペイン語を専攻したためだけではない。
 実は、その学部へ派遣されたスペイン人の講師に、熱心に薦められたからだった。
 情熱の国スペイン。……そこには、若者の夢と、青春を賭けて悔ない未来がある。……そう
語る講師の青い眸には、聞く者を惹き込む炎が燃えていた。
 勿論、幸二にとっては奨学金が目当てで、当面、往きの旅費さえあればよい。
 それに、スペインは物価が安くて生活費が掛からず、アルバイトの口も多い。
 これだけ条件が揃えば、華かなスペイン文化に魅せられた幸二にとって、バルセロナ行きを
ためらう理由は無かった。
 何とか旅費を工面して、バルセロナに乗り込んだ幸二を待ち構えていた最初の挫折は、当て
にしていた奨学金が、直ぐには下りないことだった。
 希望者が多く、一年は待たされると聞いて途方に暮れたが、学生寮で同室になった同じクラ
スのホセから助け船が出た。
 大学からそう遠くないフラメンコ舞踊を見せるナイトクラブで夜働けば、授業料はもとより
生活費も賄える額の収入が得られる。
 そう教えてくれたホセも、実は昨年は奨学金が貰えず、このクラブで働いていた経験者だっ
た。
 しかも、このクラブのオーナーの一人娘、リタが、偶然、バルセロナ大学院の学生で、しか
も、今年から幸二やホセのクラスに編入されて来たのである。
 この街のナイトクラブで働くには、スペイン人でも、身元が余程しっかりしていないと難か
しいのだが、顔見知りになった同級のリタの口きゝと、ホセの推薦で、幸二は早速、この店で
働くことになった。
 口をきいて貰った恩はあるものゝ、幸二はリタに本能的な反発を感じていた。
 それは、多分、豊かな境遇に育った者に自然に備わった高慢さ……それも、貧しい日本人で
ある幸二を、何となく見下げる様な態度に原因があった。
 リタ自身は、スペイン美人の典型で、整い過ぎた顔立ちが、ややきつい印象を与えるものゝ
うるんだ黒い眸が印象的である。
 それに、日本人には無い、腰廻りの豊かな肉付きには、幸二も思わず圧倒されるものがあっ
た。
 バルセロナ大学でのスペイン語での授業は、語学に自信のあった幸二にとっても易しいもの
ではない。しかし、快適な環境と、ホセと言う友人を得て、毎日が新鮮だった。
 しかし、晩のナイトクラブでの慣れない仕事には、流石に、幸二もいささか面くらうことが
多い。
 ひと口にフラメンコ舞踊と言っても、古典的な型を色々とショー風にアレンジして、観光客
向けに工夫したもので、本来の民族舞踊そのものではない。
 しかし、足を踏み鳴らす激しいダイナミックな動きと、嵐の様なカスタネット、嫋々と掻き
鳴らすスパニッシュギターは、伝統の雰囲気をそのまゝ受け継いでいた。
 幸二の勤めたクラブは、比較的小規模の店で、男性のギター奏者が二人、肝腎の女性の踊り
子も四人しか居ない。
 しかし、このチームを纏めているマスターが男性舞踊手兼歌手で、時にはギターも奏でる芸
達者だった。
 四人の踊り子は何れも若くて美人揃い。……その内の二人は姉妹である。
 姉のソフィアが丸顔で、如何にも妖艶な感じを与えるのに較べ、妹のマリアは細面ての可憐
な美女で、若い頃のエリザベステーラーに似た清楚な雰囲気を持っていた。
 実のところ、幸二は、そのクラブでマリアをひと目見た時から、すっかり彼女に魅せられて
しまったのである。
 日が経っにつれ、彼女に対する思いは深まる一方で、そのうち毎夜夢に見るほど、熱が上が
っていた。
 姉妹を含めた四人は、何れも日本人の標準からすれば大柄な方で、ボリュームも豊かだが、
流石に永年激しい踊りのレッスンで鍛えただけあって、贅肉の無い素晴しいプロポーションで
ある。
 このクラブでの広里幸二の仕事は、いわば雑用全般だったが、人手不足のため、当分の間、
舞台裏での踊り子達の世話まで委されることになった。
 舞台に立っている彼女等は、入れ代り立ち代り衣装を替えに楽屋へ飛び込んで来る。
 そこで、用意した次の舞台衣装を素早く身に纏わせ、着付けをさせるのだった。
 大きなクラブなら、専属のベテランの女性着付師が居て、衣装替えから化粧直しまで担当す
るのだが、こゝでは、踊り子達は衣装を脱ぎ捨てると、新しいコスチュームの着付けはもっぱ
ら幸二に委せ、その間に鏡に向かって寸暇を惜しんで顔を直す。
 薄い下着だけになって、幸二に背を向ける踊り子達の汗ばんだ身体からは、若い女性特有の
ムッとする雌の臭いが立ち昇り、幸二を大いに悩ませた。
 踊り子が、再び舞台に飛び出して行くと、手早く床に脱ぎ捨てた衣装を片付け、次の分を用
意する。
 ステージの前半が終ると、10分間の中休みがあって、その間に踊り子達は、汗にまみれた
下着を替えるのだった。
 流石に、その時は幸二は席を外すが、後半が始まると、又、舞台裏で衣装替えの手伝いであ
る。
 舞台がハネて、客や従業員が帰った後は、客席と舞台裏の床掃除が待っている。
 そして、それは、幸二が仕事を始めてから一週間目の夜のことだった。
 店にただひとり残って、人気の無い舞台裏で、黙々と床を拭く幸二のモップの先がつい滑っ
て、隅にあった洗濯篭が倒れ、中にあった踊り子達の下着が床に散乱する。
 激しい踊りで湧き出た汗と分秘物、それに一日の身体の汚れを十分に吸った女達の色とりど
りの下穿きは、男の幸二にとって、頭がクラクラする程の刺激を醸し出した。
 その中に、衣装替えの時に見覚えた恋しいマリアの下穿きを見付けると、幸二は思わず自制
心を失なった。
 人目が無いのを幸い、舞台裏の床に座り込んで、その下穿きを顔に当てる。
 ムッとする女の臭いを深々と吸い込み、それが包んでいた豊満なマリアのヒップを思い出し
ながら、何時の間にか夢中でオナニーに耽っていた。
 大学の寮で文字通りの禁欲生活を送っている幸二にとって、それは唯一の精気の吐け口であ
り、間もなく舞台裏での深夜のオナニーが、彼の楽しい日課に成って行った。
 それからと言うものは、衣装替えの度に、マリアの股に食い込むパンティーを盗み見ては、
期待に胸をときめかせ、思わず生唾を飲むことも暫々である。
 しかし、その楽しみが、或る晩、とうとう露見してしまったのだった。
 何時もの様に、マリアの下穿きを顔に当てて、オナニーに夢中になっていた時である。
 背後から、女のクスクス笑いが聞こえ、幸二はギヨッとして振り返った。
 そこに、当のマリアが立っているのを見て幸二は流石に動転した。
「遠慮無く続けて頂戴。……私の下着がお役に立って幸いだわ」
 冷静なマリアの言葉に、幸二は、恥ずかしさで顔が真っ赤になった。
 でも、まさか続ける訳にはいかない。
 床にへたり込んでモジモジする幸二を面白そうに眺め下ろしながら、マリアは、
「でも、私に無断で使った埋合わせに、私に男の生理をよく見せて頂戴。……そうだわ!その
代りよかったら直かに嗅がせて上げる。……ね、そこに仰向けに寝て!」
 そのマリアの言葉に、弱味のある幸二は逆らえない。……と言うよりも、恥ずかしさと期待
に胸を高鳴らせながら、彼は彼女の前の床に横たわった。
 それでも、流石に両手は、はだけたズボンの前を覆っている。
 その幸二の顔を、やや長めのスカートを穿いたマリアの脚が跨ぎ、彼の足の方を向いて立つ
と、そのまゝゆっくりと腰を下した。
 見上げる幸二の視界の中で、二本の円柱が割れてパンティーに包まれた根元の部分が、急速
に近付いて来る。
 ムッとする馴染みの臭いに生臭さが加わって、パンティーの布地が顔を圧した。
 マリアは、膝を折ってしゃがみ込んだ姿勢で、股間を幸二の顔に当てがい、全体重を掛けな
い様に加減している。
 そして、股間の臭いを擦り込む様に、ゆっくりと腰を前後に揺すった。
 幸二は、恥ずかしさも忘れて、夢中で手を動かし一物を刺激する。
 彼の腰が痙攣し、そそり立った男の物から白い液が噴き出すまで、差程時間は掛からなかっ
た。
 パッと視界が開けたかと思うと、クックックッとおかしそうな笑い声と共に、立ち去るマリ
アの足音がコツコツと響く。
 独り残された幸二は、改めて、恥ずかしさで顔が火の様に火照った。
 しかし、直かにマリアの秘所を嗅がされた刺激は強烈で、快感の記憶が、麻薬の様にいつま
でも残る。
 そして、その翌日。
 再び現れたマリアの前で、幸二は、いそいそとその足元に膝まずき、まるで仔犬の様にその
足頚に頬刷りするや、彼女の足の間に頭を差し込む様にして仰向けに横たわったのである。
これが、毎晩続いて欲しい!
 幸二の願いは叶えられ、皆が帰った後の舞台裏に、マリアは毎晩その姿を見せた。
 しかし、彼女の態度は、少し宛、微妙に変化して来る。
 最初に幸二に示した優しさと好奇心が、毎夜自分の尻の下で果てる幸二を見ている内に侮り
と軽蔑に変ったらしい。
 クラブで働く幸二に対する態度が、めっきり横柄になり、彼を眺める眸には蔑みの色が浮か
んでいた。
 同時に、毎夜、幸二の顔の上に据えられるマリアの股間が、日を追って次第に湿りを帯びて
来る。
 そして、パンティー越しに、彼女のクレバスの柔肉が、より強く幸二の鼻に押し付けられる
様になった。
 丁度、十日目の晩のことである。
 幸二が果てた後、マリアは、何時もの様に腰を上げて立ち去る代りに、彼の顔を擦る様にし
てパンティーを取り去り、股間の柔肉を直かに幸二の唇に押し付けて来た。
「舐めて!……私を良い気持にさせて!」
 それは、既にじっとりと湿りを帯び、強い欲情の香りを放っている。
 幸二にとって、毎夜、自分のオナペットになってくれたマリアに対し、彼女から要求された
お返し≠断る理由はなかった。
 舌を延ばし、マリアのクレバスをなぞる様に丁寧に舐め上げる。
 途端に、ピクリとラビアが反応し、マリアの尻が微かに震えた。
 幸二の舌の動きを迎える様に、彼女の腰がゆっくりと揺れ、やがて、次第に速度を増すと同
時に、ピチャッピチャッと淫靡な音を立てゝ女のクレバスがまともに彼の鼻と口を擦り出す。
 それは幸二の舌を巻き込み、まるで、おろし金の様に彼の顔面を蹂躙した。
 ネバネバした淫液がクレバスに溢れ、鼻を突く強い香りを伴なって、幸二の顔を覆い、口中
に流れ込む。
 アアーッと押し殺した叫びと共に、マリアが頂点を迎え、尻が幸二の顔の上で踊る様に痙攣
した。
 同時に、女の全体重が顔に掛かり、呼吸を奪われた幸二は、思わず身もだえする。
 そのまゝ余韻をたっぷり楽しんだマリアは驚いたことに、一旦尻を上げて方向を変え、今度
は幸二の頭の方を向いて腰を落した。
 そして、彼の鼻の頭にクリトリスを当てがい、再び幸二の舌奉仕を促す。
 今度はマリアの濃く密生したデルタ地帯で目隠しされながら、幸二は、だるさで動きの鈍っ
た舌を再び懸命に動かした。
 こうして、一時間あまり存分に楽しんだマリアは、漸く幸二の顔から尻を外して胸の上に腰
掛け、彼の着ているシャツの裾をたぐり出して、それで自分の股間を拭く。
 まるでパックした様に、一面に粘液で覆われた幸二の顔を見下ろして、マリアはクスッと笑
い、立ち上ると、そのまゝ振り返りもせず出て行った。
 翌晩から、マリアは自分の欲望を剥き出しにして、幸二の舌を酷使した。
 幸二のオナニーは後回しにされ、いきなりパンティーを脱いで、彼の顔に跨がって来るので
ある。
 スペインの女は情熱的だと言うが、マリアの性欲は淡白な日本人とは比較にならない。
 幸二の顔に、執拗に尻を擦り付ける様は、発情した雌そのものだった。
 普通ならこれを前戯として、その後、正常なセックス行為に発展するのだが、マリアの場合
は、あくまでもクリトリスの刺激だけで達しようとする。
 満足した後は、脱ぎ捨てたパンティーを、ポンと幸二の顔に投げ掛けて、さっさと帰って行
った。
 つまり、パンティーを貸してやるから、後は、自分で勝手に慰めろと言うである。
 それでも、幸二は文句も言えず、マリアの淫液にまみれたまゝ、今しがたの舌奉仕を思い起
して手を動かした。
 その内、彼女の尻の下で舌を使いながら、同時にオナニーをすることを覚える。
 こうして、マリアと幸二の奇妙な関係が、幸二の一方的な舌奉仕と言うパターンで定着した
のである。
 カスタネットの音を響かせながら、舞台で腰をくねらせながら踊るマリア。
 舞台裏から、その悩ましい尻の動きを見ている幸二は、自分の顔をその部分にダブらせなが
ら、その夜の舌奉仕を想像し、興奮するのだった。
 昼間のバルセロナ大学院での学生生活は、幸二にとって、新鮮そのものだった。
 夜のアルバイトのお蔭で、経済的な不安も無く授業に集中出来たし、陽気なスペイン人の男
女クラスメート達とも親密になった。
 中でも、学生寮で同室のホセとは、お互いに何でも打明けて話す仲である。
 外国からの留学生も少なからずいて、日本人の女子学生が二人含まれていた。
 名前は、慶子と真弓と言ったが、共に勝気で派手好きな近代娘で、幸二がもしマリアに心を
奪われてなければ、もっと親しくなっていたに違いない。
 二人とも、そこそこの美人で、直ぐにスペイン人のボーイフレンドが出来たが、幸二にも屈
託ない態度で接していた。
 ただ、クラスで女王の様に振舞うリタとは、その後も何となくウマが合わなかった。
 アルバイト先のナイトクラブのオーナーの娘と思えばこそ、いちもく置いて下手に出ている
のに、リタは幸二に対し、あたかも使用人に対する主人の様な態度で臨むのである。
 勿論、幸二とて、リタが口をきいてくれたからこそ職にありつけたわけで、その恩を忘れた
わけではないが、クラスメートの中で明らさまに主人顔をされると、やはり自尊心を傷付けら
れた。
 リタも幸二の反発は気付いていた筈だが、却って面白がって彼をからかうのだった。
 スペインは昔から建築の分野では有名であり、ユニークな建造物が多い。
 特にバルセロナでは、奇才ガウディの残した独特のデザイン建物が有名である。
 バルセロナ大学の学生寮は、そのガウディの弟子が設計したとかで、風格のあるロマネスク
風の建物だった。
 一応、男子寮と女子寮とが分れてはいるが食堂や図書室は共用であり、棟続きで自由に行き
来出来る様になっている。
 授業が終った後、学生達は、食堂の隣にある広いサロンで談笑したり、図書室で勉強したり
する者が多かった。
 週末の金曜日ともなると、誰かの部屋に気の合った者達が集まり、あちこちでパーティが始
まる。
 個人の部屋に集まるのはお喋りが主体で、男同志、女同志が多いが、サロンに続く広いホー
ルでは、ステレオの音楽に合せて、男女入り混ってのダンスパーティーが盛んで、学生達の人
気を集めていた。
 幸二は、夜のアルバイトがあるので、余りパーティーには参加せず、もっぱら図書室でホー
ムワークに励むことが多かった。
 或る日のこと、昼食を終えて食堂から出て来た幸二は、サロンで所在なげに独りで煙草を吸
っているリタに呼び止められた。
 プライベートな話があるから、自分の部屋に来てくれと言うのである。
 たまたまその日は午後の授業が無く、図書室に向かうところだった幸二は、別に疑念も抱か
ず彼女の後に従った。
 リタのいるのは、二階の角にある陽当りの良い一人部屋である。
 ソファーを置いた広い居間が付いているため、女子学生達のパーティーの場所として、良く
利用されていた。
 流石に女の子の部屋らしく細々とした飾り付けがしてあり、艶めかしい雰囲気である。
「そこへ座って。……今、コーヒーを入れるわ」
 リタは、何時に無く愛想が良い。
 何となく落着かぬ気分で、幸二は、窓際のソファーに身を沈めた。
 やがて、リタはデミタス・カップに入れた香ばしい匂いのスペイン風エスプレッソを手に、
幸二の横へ腰を下す。
「私ね、マリアとは仲が良いの。……だって、小学校で同じクラスだったんですもの」
「………………」
「それでね、先週、彼女と会った時に、貴方とのことを聞いちゃったの」
 リタの言葉は、幸二にとって、将に晴天の霹靂だった。
 手に持ったカップが細かく震え、受け皿の上でカタカタと音を立てる。
「そう、マリアは私に洗いざらい話してくれたわ。……彼女が貴方のオナニーに協力した代償
に、毎晩舌奉仕を受けているって。……それで彼女、貴方のこと褒めてたわよ。……フフフ、
とっても舌使いが旨くなったって」
「………………」
「ところで、私、貴方に貸があるわね。……そう、貴方がマリアに会えたのも、この大学の授
業料を収めることが出来るのも、みんな私があのクラブに職を世話したからよ。……だから、
そのお返しに、私にもマリアと同じ様に奉仕して頂戴!」
 リタは、獲物を前に舌なめずりする豹の様に、コーヒーカップ越しにジーッと幸二を見詰め
た。
「じょ、じょうだんじゃない。……ぼ、ぼくはマリアを愛してるから……き、きみと彼女とは
違うんだ」
 突然のリタの申し出に動転した幸二は、しどろもどろだった。
「アラ、貴方がマリアを愛してるなんて知らなかったわ。……でも、マリアは言ってたわよ。
盛りの付いた犬にお情けを掛けてやってるんだって。……その証拠に、貴方、マリアとセック
スしたことは無いでしょう?」
「そ、それは、そうだけど……」
「それ御覧なさい。……貴方のやってることは、正常な男女の愛情の交換じゃ無いわ。……可
哀そうだから黙っていたけど、マリアはね、貴方のことをウンと軽蔑してたわよ。……貴方の
こと、尻の下で蠢く蛆虫だって」
「う、うそだ!……そ、そんな、ひどい!」
 幸二の声は悲鳴に近かった。
愛するマリアが、まさか……まさか……
 心の中で繰返す幸二を、哀れむ様に眺めたリタは、冷たい声音で続ける。
「それじゃ、言うけど、先週からマリアは、ちょっとしたテストを試みてるそうよ。……つま
り、トイレに行った後、拭かずに貴方の顔に跨がってみたんですって。……そしたらどおぉ。
貴方は、夢中でペロペロとその汚れを舐めたんですってね。……それからは毎晩それを繰返し
てるってわけ。……フフフ、何よ、マリアにトイレットペーパー代りに使われてるくせに!…
…貴方は、彼女に蛆虫って呼ばれたって、怒る資格は無いわ!」
そ、そうだったのか!……どうりで、最近、アンモニアの臭いが強いと思ったが……ま、ま
さか……
 幸二は、泣くに泣けない気持だった。
 最初は優しく彼のオナニーを助けてくれたマリアが、こうも変ってしまっていたとは!
「だいたい女性が、愛する男に舌奉仕をせがむ時には、顔の上に跨がったりはしないわ。……
ちゃんとシャワーを浴びて清潔にしてから、ベッドの上に寝て男の舌を受け入れるものよ。…
…それに、愛し合う二人にとって、舌技は、あくまでもその後のセックスを前提にした前戯な
のよ。……貴方みたいに、女性に顔に跨がられて汚れた所を舐めさせられるなんて、最低よ!
……そういう男は、この国では女のセックス奴隷≠ニ言うのよ」
「………………」
「だから貴方は、今や、マリアのセックス奴隷。皆から笑われ、軽蔑される存在よ。……私に
黙っていて欲しかったら、そこに跪いて言うのよ。……リタ様。どうか、マリア様と同じ様に
貴女のセックス奴隷にして下さいってね。クックックッ」
 リタは、勝誇った高慢な表情で、幸二を嘲笑する。
 リタの再度促され、幸二は、目も眩む様な無念さによろめきながら、やっとの思いで、彼女
の前の床に跪いた。
 屈辱の誓いを口にしながら、幸二の頬を、口惜し涙がツーッと流れる。
「それじゃ、早速ここで、お前の舌の具合を試してやるわ。……そこの絨緞の上に仰向けに寝
て、待ってなさい」
 間もなく、トイレを流す音と共に、部屋に戻ったリタは、無造作に幸二の顔を跨ぎ、頭の方
を向いて腰を下す。
 スペイン女の圧倒的なボリュームのヒップが彼の顔スレスレに止まり、ムーッと鼻を突く臭
気と共に、グロテスクな女の股間が視野一杯に広がった。
「マリアと同じ様に、最初はトイレットペーパーの役をするのよ。……ホラ、舌を延ばして!
奇麗に舐め取りなさい」
 ベットリと股間を覆う汚水の滴に舌を這わせ、口中に吸い取りながら、余りの情け無さに、
幸二の頬には、また新たな涙が流れる。
「フフフ、どんな顔して舐めてるの? ホラ上を見上げて御覧」
 黒々と密生したデルタ地帯に沿って、下を覗き込むリタの視線が、幸二の目を捉える。
「アラアラ、また泣いてるのね。……そうだわ、これでお前は、二度と私に対等の口をきけな
くなったのよ。……さぞかし口惜しいでしょうね。フフフ」
 頃合を見てリタの尻が下り、じわりとクレバスが幸二の顔面に押しつけられた。
「舐めて! いいと言うまで、舌を休めちゃダメよ!」
 リタの叱咤で、幸二は懸命に舌を動かす。
 マリアに仕込まれた舌技は、リタにも有効で、間もなくネバネバした淫液が多量に噴き出し
て来た。
 やがて、幸二の顔の上でリタの尻が痙攣し、頂点に達したことを知らせる。
 彼女は尻を後へずらし、幸二の胸へ体重を移すと、彼に膝を立てる様に命じた。
 リタは、身体を後へ倒し彼の膝に背を凭れた姿勢で、余韻を楽しむ。
 幸二の胸から腹にかけて、ぐっとリタの体重が掛かり、女の股の間から覗く彼の顔は、ベッ
タリと淫液に覆われていた。
 リタは煙草をふかしながら、股を広げて両足の踵を幸二の頭の下に差し込む。
 ぐいと彼の頭をこじ上げると、彼女の尻割れに幸二の唇が押し付けられた。
「しばらく私のアスホールを舐めるのよ。……そして、奴隷に落された自分をたっぷりと実感
しなさい!」
 リタが、両足の踵で彼の後頭部をこじる度に、開いた股の間から覗く彼女の菊座が幸二の唇
を蹂躙する。
 リタに促されて、不潔感にさいなまれながら舌の先を菊座に差し入れると、内部に付着して
いた汚物が溶けて、ピリッと刺す様な味と共に臭気が口一杯に広がった。
 女に征服されて、尻の穴を舐め味あわされる屈辱は、幸二の自尊心を破砕し、彼女の言う、
奴隷の身分≠イヤと言う程、彼の脳裏に刻み込んだのだった。
 スペインでの夕食は遅く、八時半にならないと始まらない。
 その代り、昼食を十二時から二時頃まで、時間をたっぷり掛けてとり、その後、四時頃まで
シエスタと称する昼寝をする。
 その間は店も締まり、街はひっそりと静けさに包まれるのだった。
 スペインに押し寄せた近代化の波で、この習慣は少し宛、消えて行く傾向にあったが、カタ
ルニアの旧都であるバルセロナでは、未だに昔のまゝの生活リズムを守る人が多い。
 大学でも、午後の授業の殆どは、四時から七時の時間帯に組まれていた。
 あの日以来、リタはシエスタの前に、毎日幸二の舌奉仕を要求する様になった。
 彼女にとって、それは、快い熟睡を誘う睡眠薬であり、多情なスペイン娘の性のはけ口でも
ある。
 哀れなのは幸二の方だった。
 連日のマリアへの深夜の奉仕に加えて、昼は毎日リタに使われるのである。
 マリアに愛情を抱く幸二にとって、彼女への舌奉仕はそう苦にならなかったし、同時に自分
もオナニーで楽しむことが出来た。
 しかし、リタは、幸二を性の道具として使うだけでなく、奴隷として卑しめ、徹底的な隷属
を強いたのである。
 それにしても、リタから聞かされたマリアの本心は、幸二にとってショックだった。
 優しい愛情で自分に応えてくれているとばかり思っていたのに、実は、彼を軽蔑し、尻の下
で蠢く蛆虫とまでリタに言ったという。
 それが真実である証拠に、最近、幸二の顔に跨がるマリアは、必らずその前にトイレを使っ
たし、その股間は、きまって尿で汚れていた。
 ある夜のこと、幸二の顔の上に据えられたマリアの股間から、何時もと違う異臭……明らか
に強い糞臭……が漂ったのである。
 仰天した幸二は、思わず叫んだ。
「マリア……た、たのむから、トイレの跡を拭いてきてくれないか?……こ、これじゃ、あん
まりだ!」
 その答は、マリアの含み笑いだった。
「クックックッ……判ったのね。……でも、これはリタのアイディアよ。……貴方、毎日リタ
のこゝを舐めてるそうね。それも、舌の先を中に入れて汚れを味わってるそうじゃないの。…
…同じことがリタに出来て、私に出来ない筈は無いでしょう。……私の場合は、舌を差し入れ
ないでも済む様に、始めから周りに汚れを付けておいただけよ。……サー、文句を言わないで
舐めて御覧。リタの味と較べてみるといゝわ。フフフ」
 同時に、マリアの尻が下がり、褐色の糊が付いた菊座が幸二の唇を襲った。
 ム、ムーッと悲鳴に似た呻きが幸二の口から洩れたが、マリアは容赦しない。
 尻を微かに揺すりながら、汚物を幸二の唇に擦り込んで行った。
 その夜の幸二の苦しみを見て、流石に哀れに思ったのか、或いはリタに一時的にそそのかさ
れただけだったのか、マリアは以後は積極的に褐色の糊を幸二に口にさせることはなかった。
 しかし、マリアも次第にリタ同様、幸二を自分が征服した奴隷として扱い、蔑みの態度をエ
スカレートさせてくる。
 こうして、二人の美女に日夜セックス奴隷として奉仕する生活に、幸二が漸く慣れた頃だっ
た。
 シエスタの前に、何時もの様にリタの尻に敷かれて舌奉仕に没頭していた時、部屋の戸に、
ノックの音がした。
 ハッとして全身を硬直させる幸二。
 しかし、リタはそれを予期していたかの様に落着いて、入って来る様に声を掛ける。
 何時もは掛かっている鍵が、今日は外されているらしく、直ぐにドアの開く音がして、複数
の足音が続いた。
 幸二は仰天して逃れ様ともがいたが、彼の顔を圧するリタの尻はビクともしない。
「アラー、やっぱり本当だったのね!」
「いやだぁ、ショックだわー」
 いきなり日本語の会話が降って来て、幸二は二度びっくりする。
「広里幸二さん。……そこに居るのは、本当に広里さんね!」
「リタ、一寸、顔を見せてよ」
 リタが尻を浮かすと、二人の日本人の女子学生が、幸二の顔を覗き込んだ。
 同じクラスの慶子と真弓である。
 リタが予じめ仕組んで二人を引き入れたのは明らかだった。
「広里さんも落ちたもんね……みじめぇ!」
「アラ、すごい。……見てぇ、顔がおつゆでベタベタだわ。クックックッ」
 恥ずかしい所を同国人の女性二人に見られて、幸二は耳まで赤くなった。
「サー、続けるのよ。……フフッ、お前が何時もやってることを、この二人に良く見て貰いな
さい」
 目も眩む思いとは、このことである。
 幸二は、完全に動転して、やけ気味に舌を延ばし、クレバスをなぞった。
 リタは、二人が見易い様に、何時もより尻を浮かし気味にする。
「世の中には、こう言う男も居るのね」
「セックスもさせて貰えずに、ただ舐めるだけなんて、情け無いわねぇ」
 二人は、顔を見合せて頷き合った。
 第三者に見られると、より興奮するのか、リタは何時もより早目に頂点に達する。
 尻を幸二の胸にずらして、リタは二人に声を掛けた。
「貴女達も試してみたら?……私がコーチして上げるわ」
「そうね。……真弓、あなた、先にやってみて……」
「いゝわよ。……じゃ、お先に」
 信じられない展開に思わず耳を疑がう幸二にお構いなく、真弓がパンティーを脱いでスカー
トのまゝ跨がって来た。
「アーッ、ゆ、ゆるしてくれ……ムムーッ」
 幸二の悲鳴も、真弓の尻の下で簡単に押し殺される。
 もがいてみても、二人乗りの自転車さながらに、身体に跨がられた幸二は、二人の女の体重
にひしがれ、逃れるすべが無い。
 リタは、後から真弓の腰を抱き、幸二の顔の上で、ゆっくりと前後に揺すった。
 リタ程の量感は無いが、真弓のヒップは下ぶくれに肉が付き、幸二の顔面にピッタリと吸い
付く。
「ホラ、さぼるんじゃない! しっかり舐めなさい!」
 リタに叱咤されて、舌を動かす幸二。
 やがて、真弓に続いて慶子も幸二の顔を尻に敷く。
 三人の女に、思うがまゝに顔を蹂躙され、一方的に舌奉仕を強制された幸二は、欲望を満足
させた彼女等の前で四つ這いになる様命じられ、散々卑しめられたのだった。
 以来、月に一回は必らず真弓と慶子が参加して、幸二に君臨する様になる。
 毎日、同じクラスで授業を受ける仲ではあったが、人知れず彼女等の軽蔑の視線を浴びる度
に、幸二は弱々しく俯くのだった。
 バルセロナ大学での二年間のマスターコースも、漸くあと数ケ月で終了する頃、意外なニュ
ースがクラス全員を驚ろかせた。
 幸二の親友のホセが、突然、結婚するというのである。それも相手は、こともあろうにマリ
アと聞いて、幸二は開いた口がふさがらなかった。
 そう言えば、幸二の前にホセもあのクラブでアルバイトをしていたのだから、二人が顔見知
りなのは当り前である。
 でも、まさか結婚するとは……
 マリアに想いを掛ける幸二にとっては、頭をガンと殴られる様なショックだった。
 自分の口から婚約を発表し、クラス全員の祝福を受ける嬉しそうなホセを、ひとり離れて見
守る幸二の心は、千々に乱れた。
 手の中の珠を取られた無念さは勿論だったが、マリアと幸二の二人だけの秘密……毎夜の舌
奉仕がホセに知れたらどうしよう……
 しかし、その夜クラブに出勤した幸二は、マリアが結婚のために、昨日限りで突然店を止め
たことを知らされる。
 マリアの抜けた舞台は、幸二にとっては空洞であり、カスタネットも虚ろに響いた。
 気落ちした幸二は、翌日昼のリタへの奉仕も、元気なく、ロボットの様に機械的に舌を動か
すだけである。
 運の悪いことに、その日には慶子と真弓も加わっていた。
 三人の女達に次々と舌奉仕しながら、幸二は、懐しいマリアの面影ならぬクレバスを想い起
していた。
 ふと気が付くと、幸二の顔面には何と四人目の女が跨がっている。
 今迄にもあった様に、てっきりリタが奉仕のアンコールを求めていると合点して舌を動かし
ていた幸二は、女が頂点に達した時の動作で、それが、忘れもしないマリアの股間と気付いた
のだった。
 愕然として身を起した幸二は、そこにマリアだけでなく、彼女との婚約を公表したホセの姿
を発見して仰天する。
 驚愕してポカーンと口を開けた幸二の顔に女達の笑い声が浴びせられた。
 マリア迄が、いやホセも連られて笑い転げている。
 同性のホセにまで、醜態を見られた恥ずかしさで、幸二は顔がカーッと火照った。
「顔を洗ってらっしゃい。……皆のおつゆでベタベタよ。フフフッ」
 穴があれば入りたい心境の幸二は、リタに言われて、慌てゝバスルームに飛び込んだ。
 漸く人心地ついて戻って来た幸二に、リタがニヤニヤ笑いながら解説する。
「ホセはね。マリアが、お前とのことを告白しても信じなかった。……それで、実演して見せ
ることにしたの……」
「………………」
「それでホセは信じてくれたんだけど、未だマリアを許せないんですって。……つまり、女の
大切な所を他の男の舌に曝したのが、心にひっかゝるそうよ。……マリアは、お前を道具とし
て使ったと主張したんだけど、お前がマリアのことを愛していて、マリアの言うなりになった
んじゃないかって……」
 リタの説明で、幸二は、胸の内をさらけ出す気になった。
「そ、そうさ。……ぼ、ぼくはマリアを愛している。……マリアだって、それに応えて、大切
なところを僕の舌に委せてくれたんだ」
「ヘエー、それじゃ私は? それに慶子や真弓はどうなの?……お前は、それも愛情からだっ
て言うの?」
「そ、それは、……それは別だけど、マリアに対する僕の気持に偽りはないさ!」
 幸二の顔には真剣さが滲んでいた。
「困ったわね。……それが本当なら、お前のマリアへの愛情を絶ち切って、ホセを安心させる
しかないわ。……マリア、さっき皆で相談したことを言ってやったら?」
 リタは、振り向いてマリアを見詰めた。
「でも……私、可哀そうで言えないわ。……お願い。貴女から言って」
「マリアがこいつに哀れみを掛けるなんて!……それじゃ、なおさらのこと、さっきの計画を
実行しなくっちゃね」
 リタは、足元にへたり込んでいる幸二に冷たい視線を向けた。
「ホセはね。自分の目の前でマリアがお前に愛想づかしをすることで、自分に対する愛情を証
明して欲しいと言うのよ。……問題は、その愛想づかしのやり方なんだけど……」
 リタの目に、微かに憐れみの色が浮かぶ。
「お前は、今晩から二人のセックスのしる受け≠ノなるの。……スペインでは婚約を発表し
たカップルは、その夜から同衾して心変りの無いことを証明するのよ。……お前は、そのベッ
ドで二人の身体に敷かれて、舌を使うの。……そう、シーツが汚れない様に、舌で二人のジュ
ースを掬って吸うのよ。……勿論、前戯や、終ったあとの後始末も舌と唇で勤めなさい。……
つまり、今迄マリアにして来たことを二人にするのよ」
 リタの説明に驚愕する幸二。
「ま、まさか、……そんな! そんなことして、ど、どうして愛想づかしになるんだ」
「お前、馬鹿じゃない?……二人の性器の汚れを舌で清めさせられるのよ。……勿論、二人と
もわざと汚しておいて、お前にうんとみじめな思いをさせるわ。……それに、フフフ、可哀そ
うだからこれは言わないでおくつもりだったけど、終った後で、お前は、二人のお小水を飲ま
されることになってるのよ。……お前は二人にウンと軽蔑されるし、お前も、そこまで卑しめ
られれば、二人の顔をまともに見られなくなるわ。……まさに、立派な愛想づかしじゃなくっ
て?」
 あまりのことに声も出ない幸二に、蔑みの口調をこめて、リタは言葉を続ける。
「それも、ひと晩のことじゃなくって、お前が帰国するまで毎日続けるの。……それに、その
模様をビデオに撮って、その記憶を永久に保存することにしたのよ。……お前が、これから先
恥ずかしさの余り、二度とこの国の土を踏めない様にね……」
 バルセロナの港の灯が遠く霞んで消えて行くのを、船上から眺める幸二の頭に、二人のし
る受け≠ニして毎晩使われた、あの地獄の様な日々が、そして、朝夕飲まされた二人の汚水の
味が生々しく思い起された。
「そんな所に居たの。……フフフ、きっと昨日までのことを思い出していたんでしょう。……
ホラ、赤くなった。図星だったのね」
 デッキの手摺りに凭れて思いに耽る幸二に後から声を掛けて近付いて来たのは、クラスメー
トの真弓だった。
「慶子がキャビンで待ってるわ。……じゃんけんして敗けちゃったから、今日は彼女が先よ。
……でも私の時に、疲れて舌が動かなくなったなんて言わせないからね」
 汚辱に満ちた過去から目覚めて見れば、そこにもみじめな現実が待っている。
 出口の無い牢獄に閉じ込められた様な気持で、スゴスゴとキャビンに向かう幸二を、真弓の
声が追い掛けた。
「お前がマリアとホセに愛想づかしをされるビデオを、船に乗る前に慶子と見てたけど、すご
いわね。……私達も、ひとつづつコピーを貰って来てるのよ。お前が私達の言うことに逆らえ
ない様にね。……私も慶子も、日本に恋人が居るんだけど、マリアとホセを真似して、早速お
前をしる受け≠ノ使うことにしたの。……楽しみにしてらっしゃい!」
 真弓の言葉に、幸二の後姿が、ショックでグラリとよろめくのだった。
(完)
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1991年4月スレイブ通信19号
マドンナメイト文庫[黒い爪先]に「異国の強制舌奉仕」として収録
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2010/11/09