065-#65隷従への序曲(女の園異聞) 
                阿部譲二作

高校で同級の美貌の女生徒と対立する男が、彼女のカンニングを告げ口し決定的な恨みを受ける。家の商売が傾き病に倒れた父の入院費のため、彼はその女生徒の家の使用人になり彼女の女中代わりにされる。殆どの生徒が女性の薬科大学に彼女と一緒に進学した彼は、女装させられ同じクラスの皆の嬲り物となり、パンティの汚れを舐め女達の便器にされる。

 コツコツと席の間を歩く緩やかな足取りの
靴の音がシンと沈まり返った教室に響く。
 試験監督の教師は、乾いた音を立てて鉛筆
を走らせる生徒達の頭を、そして、その何時
になく真剣な表情を見回しながら、ゆっくり
と歩を運んでいた。
 こゝK市の公立高校では、全校一斉に春の
期末テストの真最中である。
 中でもこの教室でテストを受けている三学
年の生徒達は、明年二月に大学受験を控え、
その顔にこれ迄に無い緊張感を漲ぎらせてい
た。
 教室中央の後列に席を占めた釜本浩一は、
早くも、自分が答案用紙に書き込んだ内容の
最終チェックにかかっている。
 何時もクラスでトップクラスの成績をあげ
ている彼にとって、今度の期末テストは軽い
肩慣らしの様なものだった。
 従って皆よりも仕上りが早い。
 落着いてチェックを終えると、提出を待つ
間に、じっくりと周囲のクラスメート達を観
察する余裕があった。
 その殆どが、未だ懸命に鉛筆を走らせてを
り、彼に微かな優越感を抱かせる。
 フト、浩一の視線が斜め前の立花礼子の後
姿を過った時に、彼は思わずドキッとした。
 丁度、監督の教師が背を見せている隙に、
礼子が隣りの楠本しず子から、小さな紙片を
受け取っていたのである。
 大輪の薔薇の様な派手な容貌と、グラマラ
スな姿態を備えた立花礼子は、クラスの女王
の様な存在だった。
 しかし、その割に学校の成績の方はあまり
パッとせず、常に取り巻きの連中を従えては
高慢な態度をとるので、釜本浩一は何時も苦
々しく思っている。
 不思議なことに、立花礼子の方も、勉強に
ばかり熱を入れる非社交的な釜本浩一のこと
を、極端に嫌っていた。
 要するに、まるで相性の悪い二人だったの
である。
 良く言う様に、薔薇の花には棘がある。
 或る時、立花礼子の辛辣な棘のある口のき
き方にムカッとした釜本浩一が、思わず彼女
の頬を殴ってしまったことがあった。
 それ以来、二人は口もきかぬ仲である。
 人一倍潔癖で正義感が強い浩一にとって、
テストでの不正は絶対許せない憎むべきこと
だった。
 しかも、相手が立花礼子である。
 彼は、一巡して回って来た監督の教師に手
を上げて止めると、そっと耳打ちした。
 教師は、直ちに礼子の答案の下から、所謂
カンニングペーパーを見付け出す。
 テスト終了後、教師に職員室に連行される
彼女は青ざめた顔で浩一を振り返り、恨みを
込めた眼差で彼をキッと睨んだ。
 その悔しさの溢れた顔には、涙を浮かべた
大きな瞳が輝き、凄艶な感じさえ抱かせる。
 原因を作った楠本しず子は、立花礼子の取
巻きの一人だが、まさか、自分がカンニング
ペーパーの作成者だと言いに行くわけにもゆ
かず、ただオロオロするばかりだった。
 幸い礼子は正式な処分こそ免れたものゝ、
散々脂を絞られた挙句、その科目は零点にな
り、改めて追試験を受ける羽目になった。
 この事件で、二人の仲は決定的に悪化し、
彼女は、ことごとに彼に露骨に敵意を見せる
様になる。
 受験準備に追われる高校三年生にとって、
時間の経つのは人一倍早く感じられるものら
しい。アッという間に年が明け、大学入試ま
で後二ケ月を余すのみとなった。
 ところで、この高校のあるK市は、越中の
富山市と並んで昔からの薬どころである。
 市内には薬品問屋が軒を連らねており、薬
の小売店の数も一般都市の倍はあった。
 昔はいざ知らず、今では薬を扱う商売には
薬剤師の免許が必要である。
 以前は薬の原料の殆どを薬草に頼っていた
ため、それを調合する者は調剤師と呼ばれ、
この地方ではもっぱら有力な女性の家内職業
だったのである。
 一方、男は外で、この女性が調剤した薬の
行商をして回る。
 つまり伝統的に製造は女性、販売は男性と
役割が決っていた。
 薬品工業の発達した現代では、調合は医師
に委されることが多く、薬問屋も小売商も、
完成品の販売が主力だが、処方箋を持って来
る客の為に、各店毎に調剤の出来る薬剤師が
必要である。
 その薬剤師も、今でこそ男女の区別は無く
なったものゝ、この地方では、未だに圧倒的
に女性が多かった。
 従って、K市に昔からある薬学教習所が、
戦後、女子薬科専門学校となり、やがて女子
薬科大学になったのも、伝統と言うより時代
の自然な流れであろう。
 ただし、市から公けに予算補助を受けるた
め、数年前から男性にも門戸を開くことにな
り、名称もK市立薬科大学となっていた。
 とは言っても、男子生徒の数は微々たるも
ので、女性が圧倒的に多いのも土地柄と言え
る。
 従って、この地方の男の薬剤師は、その殆
んどが中央の大学卒業者であった。
 釜本浩一の家も御多分に洩れず、薬問屋の
老舗だったが、母が亡くなった直後、大黒柱
の父が軽い脳卒中で倒れ、幸い一命は取りと
めたものゝ半身に麻痺が残り、満足に働けな
くなってしまっている。
 それでも何とか細々と支えて来たのだが、
この年の瀬を越す際に、とうとう不渡りを出
して事実上の倒産状態になってしまった。
 止むをえず、取り引きのある大手の問屋に
身売りして三月下旬に住宅兼用になっている
店を明け渡し、自らはそこに住込みの使用人
として働くことになったのである。
 ところが不運なことに、その店を買ったの
が、あの立花礼子の父だったから、釜本浩一
にとって話は深刻である。
 中央の一流薬大を狙っていた浩一の夢は、
敢えなく潰え、危うく四月から立花家の店員
として働かされる所を、父が立花家の当主、
立花清造に強硬に談じこんで、漸くK市立薬
大に進学することが認められた。
「でもな、本来なら薬問屋の使用人の息子は
大学へ行く身分じゃないんだ。……あくまで
お父さんに免じての特別扱いなんだからな。
それに、K市立薬大には、うちの娘も入る筈
だ。同じ学校に通っていても、身分が違うこ
とを忘れるんじゃないぞ」
 立花清造は、挨拶に来た釜本親子を前にし
て、でっぷり太った身体をソファーに沈めな
がら、浩一に念を押した。
「そりゃ勿論ですとも。……幸い、浩一は今
の高校でもお宅のお嬢さんとは同級で、顔馴
染みの仲です。でも、大学では今迄と違って
ちゃんと主従のけじめをつけさせます」
 浩一の父が横から身を乗り出す様にして、
卑屈な態度で合槌を打つ。
 黙って父の隣りに座っている浩一は、内心
穏やかでなかった。
立花礼子なんかに主人顔されてたまるか!
……そうだ、選択科目を別にして大学では彼
女と顔を合わさない様にすればいゝんだ
 自分に言い聞かせてやゝホッとしたものゝ
前途が思いやられ、気持が沈んだ。
 二月中旬の入学試験も無事終り、三月初め
に発表された合格者リストの中で、釜本浩一
はトップにランクされていた。
 一方、立花礼子やその取り巻の連中、あの
カンニング事件の楠本しず子までが、合格者
の中に名を連ねている。         
 もともと、競争率も低く、地元高校の出身
者は、補欠入学の体裁で何とか救済する慣習
だったから、それも不思議なかった。
 合格者はやはり女性が圧倒的で、総員八十
名の内、男子は僅か三名だった。
 四月一日が土曜のため、入学式は四月三日
に予定されていたが、その前に、釜本浩一に
とって文字通り身を切られる様な辛い日々が
待っていた。
 約束通り、三月下旬に明け渡した彼の店兼
住宅に、立花一家が引越して来たのである。
 浩一達が使用人用に作られた小さな離れに
移った後、明け渡された広い母屋は立花礼子
とその両親達で占められた。
 そして、一人娘の礼子が、早速その我侭振
りを発揮して、父の立花清造を通じて、浩一
に無理難題を言って来たのである。
「なあ、君達親子は、今日から立花家の使用
人だ。……ところが、君のお父さんは身体が
不自由ときている。君も昼間は学校で家に居
ない。……そうすると、使用人としての仕事
は、君が学校から帰ってからやって貰うこと
になるが、いゝな」
 清造の部屋に呼ばれた浩一は、意外な話に
面くらった。
「そこで、君の仕事だがね、この店のことは
今までの私の使用人達が、通いで来てくれる
ことになったので、差し当って不自由ないん
だ。……そこで、実はこれは礼子の要求なん
だが、君に、娘の世話係をやって貰うことに
する。……礼子には今迄専用の女中を付けて
いたんだが、こゝへ引越す前に結婚のため暇
を取ったんだ。君は、だから、言ってみれば
その女中代りという訳さ」
 清造の発言は、浩一にとって、まるで寝耳
に水である。
「ち、父が立花家の使用人になることは聞か
されていましたが、……わ、わたしは大学に
通わせて頂ける約束で……」
「そりゃー君が大学に行くことは認めたさ。
……でも、その費用は私のところから出てる
んだよ」
「そ、それは、父の給料から返す筈で……」
「君ぃ、お父さんは身体が不自由なんだよ。
事実上、働けないんだ。……そんな人に給料
が払えると思うかね?」
「………………」
「それにね。君のお父さんの主治医から聞い
たんだが、最近、お父さんの具合が良くない
だろう。……あれはね。脳血栓が進行してい
るせいだそうだ。ほっておけば、一命にかか
わると言っていたよ」
 最近、父が眩暈がすると言って横になる事
が多く、ひそかに案じていた浩一にとって、
清造の言う主治医の診断はショックだった。
「そ、それじゃ治療をしなくっちゃ……」
「そうさ。明日にでも入院して本格的に療養
させる必要がある。……それには金が掛かる
んだ。しかも、完治する見込みはまず無いか
ら、長期に渡って病院暮しをせにゃならん。
……そこで相談だがね。君が礼子の女中代り
を勤めてくれたら、その費用は全部私が出そ
うじゃないか」
「で、でも……女中代りだなんて……そ、そ
んな屈辱的な!」
「そりゃ辛いだろう。……でもな、君にお父
さんを見殺しには出来るかね?」
 ガックリと首を垂れた浩一の目尻から、涙
がツーっと零れた。
「じゃあ、いゝんだな。……今言った条件で
承知するんだな」
 重ねて念を押す清造の言葉に、浩一は不本
意ながら黙って頷くしかなかった。
 あの、高慢な礼子に、これからは女中代り
に顎で使われるのかと思うと、胸が潰れる思
いである。
 翌日、浩一は父を病院に連れて行き、入院
の手続きをすると、一旦帰って父の身の回り
のものを持って再び病院に戻る。
 病室は、清造の計いで個室が準備されてを
り、その快適さに父は満足気だった。
「じゃあ、父さん。又見舞に来るから、ゆっ
くり静養してくれよな」
 浩一は精一杯の笑顔で父に別れを告げる。
「判った。立花さんにくれぐれも宜しくな」
 何も知らぬ父を後にして、店に戻った浩一
は、早速礼子の部屋に呼ばれた。
 浩一の方が意識して避けていたこともある
が、受験準備や引越のゴタゴタで、この所、
殆ど顔を合せることの無かった二人だった。
 こうして向かい合うと、この数ケ月の運命
のいたずらが二人の立場を根本的に変えてし
まったことが、現実のものとしてヒシヒシと
感じられる。
 つい先週までは浩一の部屋だった広い洋式
の十畳間には、ローズ色の絨緞が一面に敷き
詰められ、ワインカラーのソファーセットが
置かれている。
 深紅のローブを身にまとって長椅子にくつ
ろぐ礼子には、目を見張るばかりの妖艶さに
加えて、この部屋の主にふさわしい貫録が備
わっていた。
 それに引きかえ、彼女の前に直立して頷垂
れたまゝ、上目使いに礼子の表情を窺う浩一
の眼差には、既に召使いとしての卑屈な光が
宿っている。
 沈黙を破って声を掛けたのは、当然のこと
ながら、礼子の方だった。
「お前の身分は判ってるわね。今日からお前
は私の女中。……何でも私の言い付け通りに
従うのよ。……勿論、私には最大級の敬語を
使うこと。いゝわね」
 それは、勝者の立場をはっきり意識した、
まるで高圧的な調子だった。
 先日迄のクラスメートに頭ごなしにきめつ
けられ、お前呼ばわりされても、浩一は言葉
を返すことすら出来ず、黙って頷く。
 それを見て、ゆっくりとソファーから腰を
上げた礼子は、いきなり浩一の頬を平手打ち
にした。
「フフフ、お前、今どうして自分が叩かれた
か判る?」
 黙って首を横に振る浩一の反対側の頬が、
パシッと鳴った。
「舌があるんでしょう、舌が。唖じゃないん
だから、ちゃんと返事をしなさい。……は
い、お嬢様≠チてね。フフッ」
 彼の頭の中に、まるで焼け火箸を突っ込ま
れた様な激しい無念さが込み上げる。
 それを噛みしめる様にして、浩一は咽喉か
ら声を絞り出した。
「ハ、ハイ。……お、お嬢様」
「そう、それでいゝわ。……お前は、自分が
今迄、私にどんなにひどいことをしたか忘れ
ちゃいないわね」
「はい。……お嬢様」
「お前には、これからたっぷりその償いをさ
せるからね。……まず、時間を掛けて、少し
宛、お前を卑しめてやる。そして皆の前で、
お前に赤恥をかゝせてやるわ。……どおお?
楽しみだわねぇ。クックックッ」
 浩一は目の前が暗くなり、立っているのが
やっとだった。
「でもね、安心しなさい。……一度に奈落に
落すんじゃ曲が無いから、ゆっくり時間を掛
けて、楽しみながらお前を辱めてやるわ。…
…一寸刻み五分試し、フフフ、覚悟しておき
なさい」
 それは、鼠をいたぶる猫の態度だった。
 父を人質に取られ、反抗するすべの無いこ
とを充分見透した上での、礼子の冷酷な計算
がそこにある。
 その日は、運良くそのまゝ放免して貰えた
が、将来のことを考えると、浩一の心は不安
で震えていた。
 翌日はK市立薬科大学の入学式である。
 礼子の後に従って校門をくぐった浩一は、
オール女性で占められた新入生席に、肩身の
狭い思いで座っていた。
 後から判ったことだが、この学校の入試に
パスした浩一以外の男子生徒は、掛け持ちで
受験合格した他の大学の方へ移ってしまい、
結果として、今年度は釜本浩一が唯一の男性
となったのである。
 将に、女の中の黒一点であった。
 式の後でクラス分けがあり、四十人宛、二
つの組に分けられたが、浩一は、故意か偶然
か、礼子と同じクラスに入れられた。
 しかも、礼子の取り巻きだった楠本しず子
達や、顔見知りの高校時代のクラスメート達
が、約半数を占めている。
 引き続いて事務局からの説明があり、一年
間は学校側の決めたカリキュラムに従う様、
申し渡された。
 と言うことは、一年生には選択科目は一切
無く、すべて、この同じクラスのメンバーで
授業を受けることになる。
 学校に居る間だけでも、礼子と顔を合わせ
ないことを祈っていた浩一の願いは、無残に
も踏みにじられてしまった。
 その後、市内の洋服屋が廊下に店を拡げ、
制服の販売が始まった。
 浩一は、そこで男子用の制服を探したが見
当らない。結局、男子用は中央の有名市立校
のものを流用しているが、生憎手持ちが無い
とのことだった。
 諦らめて帰ろうとした矢先に、礼子が楠本
しず子と連れだって歩いて来るのにバッタリ
出合った。
 礼子は、芝居っ気たっぷりに彼をしず子に
紹介する。
「こいつが、今度生れ代って私の女中代りに
なった男。どうか宜敷くね。……そうだ、こ
いつには、しず子に対しても敬語を使わせる
わ。……浩一、いゝわね」
「はい、お嬢様」
 少し赤くなりながら素直に答える浩一に、
しず子の無遠慮の笑い声が浴びせられた。
「プーッ、おかしいわー。……釜本君、きみ
は、とうとう礼子の女中にされたのね。……
クックックッ、さぞかし口惜しいでしょうね
……同情するわー」
 礼子もつられて、二人で笑い転げる。
 二人の手から、今買ったばかりの紺の制服
が危うく落ちそうになった。
「アラ、お前、制服は買わなかったの? 費
用はパパが出してくれるんだから、遠慮無く
買いなさい」
 目覚とく問いかける礼子の言葉に、浩一は
品切れでしたと答える。
「そう、じゃあこゝで注文して取り寄せれば
いいわ。申し込んでらっしゃい」
 礼子に言われて引き帰そうとする彼を、し
ず子が押し留めた。
「一寸待って。釜本君、きみは今では礼子の
女中なんだろう。……それなら、女中らしく
女の制服を着りゃいゝじゃないの。フフフ」
 しず子の揶揄する様な調子に、礼子が直ち
に同調する。
「そうだわ。新入生の中でお前だけが男の制
服だなんて、調和が乱れるわ。……お前も、
皆と同じ紺のスカートに、白のブラウスにし
なさい。……きっと似合うわよ」
 礼子は、うろたえる浩一を引張って制服売
場に戻ると、サッサと女子用の制服を彼に押
し付けた。
「そうだわ、体育用の運動着も要るわね。…
…エート、お前に合う黒のブルマーを追加し
なさい。……それでと、お前は胸が無いから
ブラジャーは要らないわね。フフッ」
 強引な礼子の言葉に逆らうことも出来ず、
浩一はニヤニヤ笑う売場の女店員達の視線を
浴びて、恥ずかしさで真赤になった。
 翌朝、生まれて初めてのスカート姿で、礼
子と登校する浩一の姿があった。
 髪型も礼子のアレンジで、ボーィッシュな
ショートカットにまとめられ、女性としても
不自然なく見える。
 折からの春一番の突風に、満開の校門の桜
の古木から、色付いた花弁が生徒達の肩に降
りかゝり、浩一の髪に吹雪が散った。
 その花の色にも増してピンク色に染まった
彼の頬は、内心の羞恥を露わにしていた。
「おかま! 早くおいで。……キョトンとし
て、何してるの?……ホラ、自分のことを呼
ばれてるよ」
 大勢の女性に気押されたのか、不安げに歩
を運ぶ浩一に、礼子が呼び掛けた。
 傍に並んで、こちらを見ている楠本しず子
が、笑いで顔を崩している。
「釜本君……きみの呼び名が決まったのよ。
そう、お釜。……女中らしくて良いわ。……
それに、ホラ、女装の男でおかま≠チてい
るじゃない。……フフフ、今のきみにぴった
りね」
 浩一の耳が、口惜しさで真赤である。
 その朝、クラスミーティングの自己紹介の
席で、浩一は礼子の書いたメモを読み上げさ
せられ、この屈辱的なニックネームを自分の
口から、皆に披露させられていた。
「私は……立花礼子様のお、おとこ女中で…
…おかまと言います。……高校の時に、礼子
様に散々失礼なことをした罰に、こ、これか
らは……毎日、いじめて頂くことになりまし
た。……ど、どうか、皆さんも私を……け、
軽蔑して……い、いじめて下さい」
 浩一の唇は屈辱に青醒め、途切れ途切れの
言葉は、恥ずかしさで震えていた。
 ただでさえ、女の中の黒一点で、注目の的
になっている浩一である。
 最初の登校日に女装して現われ、しかも、
礼子のおとこ女中として、型破りな自己紹介
したのだから、クラスがドット湧くのも無理
無かった。
 呼名がおかまと言うくだりでは、腹を抱え
て笑う者も多く、まぜっかえしの野次が次々
に入り、爆笑に次ぐ爆笑だった。
「なーにヨォ。男のくせに、スカート穿いて
さ。……頼まれなくたって、軽蔑するわよ」
「いいわよぉー。おかまさん!……うんと、
いじめてあげるわよ。まかせといてぇ!」
「第一、女中のくせに、大学に来るなんて生
意気よぉ。……勉強なんかしなくていゝから
私達の用事をしたら? そうだ、生理のタン
ポン買っといで!」
 その日から、浩一は女性特有の陰湿ないじ
めの対象として、クローズアップされること
になった。
 そして、群衆心理とでも言うのだろうか。
 浩一をいじめることで、一同の間に一種の
連帯感が生じ、仲間から疎外されないために
も、浩一を我勝ちにいたぶる風潮がクラスに
漲ったのである。
 勿論、先頭に立ったのは礼子であり、その
取巻きグループの面々だった。
「おかま。お前、そんな格好で男便所へ入っ
たら笑われるよ。……女のトイレを使わして
やるから、その代り、皆の見ている前で犬み
たいに四つ這いになって用を足してごらん。
……そう、片足を上げてね」
 礼子は、ニヤニヤ笑いながら申し渡す。
 それは、召使いにとって逆らうすべの無い
女主人の命令であり、浩一にとっては文字通
り目の眩む様な屈辱を意味していた。
 女子専門校として作られた建物だけに、女
子用トイレは各階にあり、それも、広々とし
たタイル張りの明るい作りになっていて、中
には、鏡を一面に張った洗面台のコーナーも
設けられている。
 それに引き換え、男子用は教室のビルには
無く、可成り離れた別棟の職員室の横に、申
し分け程度の小さなのがあるだけだった。
 休憩時間になって、礼子に伴われて生れて
初めて女子トイレに足を踏み入れた浩一は、
ドヤドヤと入って来た物見高いクラスメート
の前で立ち竦むばかりである。
「ホラ、皆から良く見える様に、この真中の
床の上で、その缶の中に用を足して御覧」
 礼子は、洗面台の下から煙草の吸殻入れ用
の缶を取り出すと、おもむろに、皆に囲まれ
た浩一の足元に置く。
「何してんの? 早く!」
 礼子は、モジモジする浩一を、強い口調で
促すと共に、彼の腰の当りをトンと突いた。
 よろけた所を足を払われ、浩一は、思わず
床に尻持ちをつく。
 空缶を跨いでモゾモゾと四つ這いになった
彼のスカートを、礼子が大きくめくった。
 このところ無理矢理穿かされているピンク
のパンティーが衆目に晒され、見物の女達か
らドッと笑いが弾ける。
 それを、礼子の手がグイと押し下げると、
男にしては肉付きの良い尻が、そしてブラン
と下った男のシンボルが露出した。
 周囲から一部でキヤーッと悲鳴に似た黄色
い声が上ったが、好奇心をそゝられて固唾を
呑んで見守る者が多い。
 浩一は覚悟を決めて、引き下ろされたピン
クのパンティーを足頚に掛けたまゝ、片足を
上げた。
 四つ這いの姿勢で、バランスをとりながら
空缶の上で股を開く。
 その無様な姿に、女達の間でクスクス笑い
が拡がった。
「いい格好よ。……フフフ、まるで、犬そっ
くり!」
 礼子に嘲笑されて、耳まで朱に染めた浩一
は、目を閉じると、半ば自棄気味に股間の空
缶の中へ放尿した。
 パラパラパラと音を立てながら、尿流が錆
びた缶壁を打つ。
 ワーッと女達の歓声が上った。
「おかま、こっちをお向き!」
 礼子の声に振り向くと、パッとフラッシュ
が光った。
 恥ずかしい所を写真に撮られてしまったの
である。
 尻を振って滴を切ると、途端にグッと背中
に重みを感じた。
 気が付くと、礼子が背に跨がっている。
「犬真似の次は、馬になって貰うわ。……サ
ア、歩きなさい!」
 礼子は、男の髪を両手で鷲掴みにすると、
豊かな尻を揺すり、太腿で彼の横腹を絞め付
ける様にして、屈従を促す。
「そうよ。……その調子。……お前は、人間
でいるより、犬や馬の方が良く似合うよ」
 広いタイルの上を何周かさせられた上に、
そのまゝ教室まで這って行かされた。
 礼子のいじめは家へ帰ってからも続く。
 いや、むしろ、礼子の部屋で二人で向かい
合った時の方が、周囲への気兼ね無しに存分
に嬲られたのである。
 礼子の頭の中には、過去の浩一に対する恨
みが未だ残っている。
 それだけに、礼子にいたぶられ、辱められ
て、涙を流して口惜しがる浩一の姿が快感を
呼ぶらしかった。
 礼子は、ソファーに座って、おもむろに足
を組むと、浩一をその前の床に正座させる。
「おかま、お前、未だ私との身分の差を肌で
感じてないから、私にいじめられて口惜しが
るのよ。……私のことを自分とは人種の違う
尊い方だと、心から認識すれば、思いのまゝ
に嬲られてあたりまえだと思うんじゃなくっ
て?……でも、そうなってしまったら、却っ
て面白く無いかもね。フフフ」
「………………」
「お前は、今は人間だけど、その内、人間の
皮を着た下等な動物に仕込んであげるわ。…
…と言うことはね。お前から人間の資格を、
少し宛奪い取って行くってこと。判る?」
「………………」
「どうやら、判らないらしいわね。……でも
段々に判って来るわ。……ソラ、手始めに、
これ、舐めなさい!」
 礼子は、腰を浮かすとスカートの中に手を
入れ、パンティーを脱ぐと、それを浩一の目
の前に突き付けた。
 白い柔かな布地の股間の分に、うっすらと
褐色の泌みが着いている。
「私ね。この所、澱物が多いの。……毎日、
パンティーは変えるんだけど、普通の洗濯機
じゃ、この泌みが奇麗に取れないことが多い
わ。……お前の私に対する服従の証しに、こ
れからは毎日、私のパンティーを奇麗になる
まで舐めさせるからね。……いゝ? わかっ
たわね!」
 礼子の長いまつげに縁どられた黒い大きな
瞳が、キラキラと輝いて浩一を見詰める。
 その美しさに圧倒されながら、浩一は震え
る手で目の前のパンティーを受け取った。
「先ず臭いをお嗅ぎ。……犬が御主人の体臭
を覚える様に、お前は私のパンティーの臭い
そして、その汚れの味を覚えるのよ」
 礼子の凛とした声には、彼女の意思の強さ
が現われている。
 浩一は、おそるおそるパンティーを顔面に
押し当てゝ、深く息を吸った。
 饐えた澱物の臭いが、そして若い女の性臭
が屈辱感を増幅させて、浩一の頭をクラクラ
させる。
 泌みのあたりに唇を当て、その部分を口中
に含み、唾で湿し舌で味わった。
「どおお? おいしい?……フフフ、その味
は、お前の人間失格の第一歩なのよ」
 礼子に、こうして言葉で卑しめられると、
浩一の心に再び口惜しさが込み上げて来る。
 思わず目頭が熱くなった。
 しかし、礼子の言った様に、それは確かに
第一歩、即ち、転落の序の口に過ぎなかった
のである。
 翌日、学校でクラスメートの前で、礼子の
口から、浩一が昨夜パンティーを舐めたこと
を素っぱ抜かれ、彼は、文字通り顔から火が
出る思いだった。
「佐久間君……じゃなかった、おかまさん。
お前、女のパンティーの臭いと味を勉強する
んだったら、礼子のだけじゃ駄目だよ。……
そう、色々な人のを嗅いだり舐めたりして、
場数を踏まなくっちゃ、微妙な違いが判る様
にはならないよ」
 楠本しず子が、ニヤニヤ笑いながら、床の
上に座らされている浩一に話し掛けた。
「私ね。パンティーは、洗わない習慣なの。
そう、使い捨てにするわけ。勿論、紙製じゃ
ないわ。……今穿いてるのは、丁度今日替え
るつもりで、代りを持って来てるのよ。……
どおお? 礼子のと較べてみる?」
 午前の授業が少し早く終り、昼食までの時
間を教室でのお喋りにあてゝいた連中が、面
白がって周囲に集まって来る。
 浩一は、慌てゝ礼子の方を向き、必死の面
持で助け船を求めた。
「お、お嬢様。……私は、お嬢様のだけで…
…ほ、ほんとに充分なんですから……」
 浩一は、内心、楠本しず子のパンティー
なんか、舐めさせられてたまるもんか!≠ニ
叫んでいた。
「しず子の言うのも、もっともだわ。そうね
パンティーを穿き捨てにする人は、このクラ
スにだって何人かいるはずよ。……お前、皆
に頼んで、汚れたパンティーを貰って回りな
さい。そして、それを皆の前で勉強するの。
……フフフ、勿論、臭いと味を覚えるのよ」
 意地悪い礼子の返事は、浩一にとって気の
遠くなる様な屈辱を意味していた。
「それで、決まりね。……さあ、先ず私のを
上げるわ。四日も穿いてたから汚れがひどい
わよ。……でも、お前には丁度いゝわね」
 しず子は、しょがみ込んでパンティーを脱
ぐと、それをわざわざ裏返して、浩一の顔に
押し当てた。
 昨夜の礼子のものとは比較にならぬ程濃厚
な異臭が浩一の鼻孔を襲い、彼は、一瞬気が
遠くなりかける。
 続いて、しず子の指が、その汚れた部分を
彼の口に押し込んだ。
 生臭い異様な味がジーンと口中に拡がり、
あまりの情けなさに、浩一の目には、思わず
涙が滲む。
「アラアラ、こいつ、涙を流して感激してる
わ。フフフッ……コラ、おかま、ちゃんと奇
麗にするんだよ」
 椅子に座ったしず子が、前屈みに浩一の顔
を覗き込んで、嘲笑する。
 周囲の女達もガヤガヤと騒がしくなった。
「ホラァ、口の中でクチャクチャやってるわ
よ。……フケツゥー」
「男のくせに、女のパンティーなんか舐めさ
せられて、恥ずかしくないのかしらね」
「普通の男じゃないわよ。礼子の男女中にさ
れてる位だもの。……変態よ!」
「失礼しちゃうわぁ。こいつ、高校の時は、
私に対等の口をきいてたのよ。……そうだ、
私、パンティーは穿き捨じゃないけど、洗濯
機代りに丁度いゝわ。しず子の次にこいつに
舐めさせて、とっくり泣顔を見てやるわ」
 そして、その日、浩一は哀れにも実に八人
の女達にパンティーを舐めさせられた。
 そして、翌日からもクラスの中で、御用聞
きよろしく、汚れたパンティーを集めにまわ
らされることになったのである。
 毎日、昼食時間の前になると、教室の床に
四つ這いになって、その集めたパンティーを
舐める彼の姿が見られる様になった。
 噂を聞き付けて、他のクラスからも見物に
来る女達も増え、その中には、彼の目の前で
パンティーを脱いで、舐めることを強要する
者もあった。
 パンティーの汚れも様々で、中には経血で
汚れた部分を彼の口中に押し込む者もいた。
 最早、誰も浩一を対等の人間と見る者は無
く、彼は、女達に犬並に扱われる様になった
のである。
 その内、誰が言いだしたのか、パンティー
の臭いをじかに嗅がせたら、きっと面白いと
言うことになった。
 浩一は、床に寝かされ、手足を女達に押さ
えられた状態で、礼子の尻を顔の上に受けさ
せられる。
 顔面を、パンティーに包まれたむっちりし
た尻肉で覆われたまゝ、懸命に息を吸い込む
度に、饐えた尻臭が遠慮無く鼻孔に飛び込ん
で来る。
 暫くすると、他の女が礼子と交替して浩一
の顔を尻に敷いた。
 クラスメートの女達に次々と顔に跨がられ
尻臭を嗅がされる屈辱は、筆舌に表わせぬ程
激しいものである。
 泣くまいとして必死にこらえる浩一の顔が
面白いとの評判が立ち、毎日の様に何人もの
女達の尻が彼の顔を蹂躙する様になった。 
 こうして約一ケ月が経った、ある晩のこと
である。
 礼子に呼ばれて、例のごとくソファーでく
つろぐ彼女の前に正座する浩一に、礼子は、
とんでもないことを言い出したのだった。
「お前ね、毎日、汚れたパンティーを舐めて
るけど、臭いや味の違いが分る様になったか
しら?……フフフ、頷垂れるところを見ると
未だ分らないのね。……それはね、無理ない
の。何故なら、お前はパンティーに付いてる
ミックスした汚れを舐めてるからよ」
「………………」
「つまりね。汚れの中には澱物も、経血も、
そしてオシッコもウンコもあるわ。しかも、
時によって成分が違うわ。……お前はそれを
みんなミックスして舐めてるから、違いが分
らないのよ。……でも、折角みんなが面白が
ってるんだから、あれはあれで続けなさい。
……でもこれからはね、その他に、別々に舐
めさせる訓練を加えることにしたからね」
 礼子の目は、あの、何かを決心した時に見
せる強い輝きに満ちている。
 こんな時には絶対逆らえないことが、今迄
の経験から、浩一にはよく判っていた。
「お前の舌をね、私は自分の思い通りに訓練
したいの。……先ずは味覚ね。私の身体の汚
れをひとつ宛味わって覚えなさい。そうね、
パンティーの汚れの成分は全部よ。……つま
り、さっき言った澱物、経血、オシッコ、そ
れにウンコもよ。……それだけじゃないの。
お前の舌を私のセックスの道具にしたいの。
昔から、私、不眠症の傾向があるのよ。だか
ら、毎晩、睡眠剤代りにオナニーを欠かした
ことがないわ。……今晩から、私の指の代り
に、お前の舌を使うことにするからね。……
フフフ、心配しなくてもいゝのよ。ちゃんと
仕込んでやるからね」
 礼子のひと言ひと言が、浩一の新たな、そ
して目も眩むばかりの屈辱を意味している。
 そんなことが現実になるとは、今の浩一に
は夢想だに出来なかったが、礼子の厳しい顔
付を仰ぎ見て、彼は自分の哀れな運命を覚っ
て身を震わせるのだった。
「さあ、手始めに私の足をお舐め。足の裏と
指の間は私の性感帯のひとつなの。……心を
込めて舌を使いなさい」
 床の上で思わず四つ這いになった浩一の顔
に、薄汚れた礼子の足裏が押し付けられる。
 唇を開いて舌をそこに這わせると、塩辛い
苦味がピリッと舌を刺した。
「汚れは、舐めて吸い取るのよ!」
 礼子の指示が飛ぶ。
 唾で濡れた女の足裏を唇で擦り、汚れをズ
ズッと音を立てゝて吸い込んで行く。
 まるで顔を足拭き雑巾の様に使われる無念
さが、浩一の胸を詰まらせた。
 足指の間には黒ずんだ垢が溜まっていて、
それを舌で掬って口にすると、不潔感で思わ
ず吐気を催しそうになる。
 礼子は、たっぷり時間を掛けて浩一に自分
の両足を丁寧に舐めさせた。       
「その汚れた顔を洗って口を濯いでおいで。
……これからが本番だからね。たっぷり使っ
てやるよ。クックックッ」
 礼子の前から下って、洗面所で鏡に写った
自分の情けない顔を見た時、浩一は、この後
の屈辱を想像しつゝ涙を流した。
 部屋に戻った浩一の髪を鷲掴みにした礼子
は、ソファーに座ったまゝ男の顔をグイと自
分の股間に引き寄せる。
 床に跪いた姿勢で、礼子の部屋着の裾から
顔を引き入れられた浩一の目の前で、黒々と
した女の天然の繊維が露わになっていた。
「舌を一杯に出して……そうそう、そこを下
から上へ向けて舐め上げるのよ。そう、そし
て唇を使って、おつゆを零さない様に吸い取
りなさい」
 礼子の指示通り、ピチャピチャと音を立て
て浩一の舌が女のクレバスを往復する。
「どんな顔して舐めてるか見てやるわ!」
 礼子は、部屋着の裾を割って、自分の股間
に挟まれた浩一の顔をジッと見下ろした。
「どおお? 私のセックスの道具にされて、
口惜しい?……フフッ、恨めしそうな目をし
てるのね。ホラ、こうしてやるわ」
 礼子は、唇をすぼめると口中に唾を溜め、
浩一の顔にそれをペッと吐き掛ける。
「ソラ、私に、自分の顔に唾を掛けられて、
どんな気分? 口惜しいの? みじめなの?
……フフフ、そうなの。……じゃあ、もっと
みじめにしてやるわ。でも、舐めるのを止め
ちゃ駄目よ」
 礼子は、頬を動かして溜めた唾を、再び、
ペッと男の顔に吐き掛けた。
 額から目蓋にかけて、べっとりと礼子の唾
に覆われた浩一の顔が屈辱で歪む。
 続けて、又、ペッと礼子の唾が飛ぶ。
 蔑みに満ちた礼子の目が、浩一の視界の中
で唾でボーッと滲んで行った。
「これが、お前に対する軽蔑のしるしよ。…
…ホラ、もうひとつ……ペッ」
 舌を懸命に動かしながら、浩一の顔は礼子
の唾で覆われて行く。
 やり場の無い激しい口惜しさと無念の思い
が、やがて浩一の心の中で、深い諦めと卑屈
な屈従に変って行くのに、そう時間は掛から
なかった。
 翌朝、礼子の部屋で、浩一は昨夜既に宣告
されていた新しい辱めを受けていた。
 絨緞の上に仰向けに寝た浩一の顔の上に、
礼子の尻が据えられている。
 それは、昨夜の舌奉仕の続きではなく、大
きく開けさせられ彼の口中に、礼子の小水が
注がれる瞬間だった。
「よく味わうのよ。そして零さずに全部飲む
の。……大の方は、あとで用を足してから、
アヌスに付いたのを舐めさせてやるわ。……
ホラ、出るわよ!」
 浩一の舌の上にポタポタと液が滴り、すぐ
にそれは汚水の流れに変る。
 ゴクリゴクリと咽喉を鳴らして飲み干して
行く浩一の全身は、流石に情けなさで、細か
く震えていた。
「二、三日したらメンスが始まるわ。楽しみ
にしてらっしゃい。……そうだ、今日学校で
お前の口から、今度の体験を皆に告白しなさ
い。私は、お嬢様の便器にされました≠チ
てね。きっと又、評判になるわよ。そして、
こう言うの。是非、皆さんのも味わせて下
さい。皆さんの共同便器にして下さい=c…
その時、お前がどんな顔するか、そして皆か
ら、どんなに軽蔑されるか楽しみだわ。……
ソラ、終ったわよ。後をしっかり舐めて清め
なさい。お前の舌はトイレットペーパー代り
なんだからね」
 礼子の尻の下で舌を動かす浩一の咽喉の奥
から、きれぎれに嗚咽が洩れた。
 クラスメートの女達の前で、またもや新た
な生恥を曝すのである。
 こうして自分の人間としての資格が次第に
失われて行く……その思いは、深い悲しみと
なって浩一の胸をむしばみ、嗚咽を何時まで
も続けさせるのだった。
(完)
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1990年1月スレイブ通信14号
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2010/11/01