036-#36転落の道行き(凌辱の孤島)
                阿部譲二作

大学を卒業後入社した男が職場で知り合った女性と恋仲になったが女の親の同意が得られず瀬戸内海の島に駆け落ちする。旅館の特別室に2週間滞在したあと心中を企てるが失敗。女性は行方不明だが、彼は旅館の捜索隊に助けられ、滞在費や捜索費を弁償するために旅館でSM人間便器ショーに出演させられ宿泊の女性や夫婦達に夜の慰み物にされる。

 瀬戸内海の島と言えば、大小を問わず風光
明媚な観光地が多い。
 しかし、交通の便の不自由さが、やはり共
通の悩みの種であった。
 殊にスケールの小さな島では、通い船の数
も限られるため、余程目玉になる様な名物が
無いと、観光事業が成り立たない。
 太田志郎と小山百合子の二人が今回訪れた
島は、観光地としては最近売り出したばかり
の、比較的新しい所だった。
 骨董の蒐集家として知られた資産家の出資
で豪華な旅館が新築され、高価な絵画や置物
をふんだんに飾った美術館風の内装が、そこ
の呼びものに成っている。
 旅館の女中は、すべて本土から選り優りの
奇麗どころを連れて来てをり、色っぽいサー
ビスから、売春まがいの極どいことまでやっ
ているとの噂だった。
 太田志郎は二十四才、地方の大学の修士課
程を終えて、昨年就職したところである。
 入社早々、職場で知り合った小山百合子と
恋仲になり、結婚の約束をしたのだが、彼女
の親の同意が得られず、会社に辞表を提出し
て、二人で出奔して来たのだった。
 所謂、駈け落ち……古風に言うと恋の道行
と言ったところである。
 普通は、若者達がこうして実績≠作っ
てしまえば、その親達もしぶしぶながら二人
の結婚を認めることが多い。
 従って、若い二人にとって、これは、周囲
に対する彼等の決意のデモンストレーション
と言って良かった。
 しかし、太田志郎と小山百合子の場合は、
少し事情が違う。
 先ず、小山百合子は、超一流の上流家庭の
長女で、親の決めた婚約者が居る。
 しかもその婚約者は、小山家にふさわしい
家柄の出で、一流大学卒・大手会社勤務のエ
リートだった。
 その婚約者を小山百合子は特に嫌っていた
訳でも無く、結構仲むつまじくデートをして
いた頃もあったのである。
 だから、彼女が太田志郎のもとに走ったの
は、太田のうぶで情熱的なアプローチもさる
ことながら、心の中に親のお仕着せ≠ナ、
ずるずる結婚することに対する、ためらいと
反発があったからだった。
 一方、太田志郎は地方の出で、両親を幼時
に亡くして貧しい伯父夫婦に育てられ、アル
バイトをしながら大学、それも修士課程まで
終えた頑張り屋である。
 二人の、こうした余りに違い過ぎる家庭環
境、そして婚約者にこだわる小山家の態度、
それ等は、到底、二人の一時的な駈け落ちで
乗り越えられるものではなかった。
 従って、二人の……特に太田志郎の胸には
暗い絶望感が渦巻いている。
 それでも、島に上陸して宿の奥まった一室
に落着いた二人は、どことなくホッとした。
 人里離れた小島で、誰にも知られずに二人
だけの日を過す。……それは何と言っても、
若者達の胸をときめかすロマンチックな響き
があった。
「さあ、ここで何もかも忘れて、一緒に思い
切り楽しもうよ。……僕達、何時も人目を忍
んでコソコソして来た様な気がするんだ」
「いゝわ。ひと休みしたら、この島の探検に
行きましょう。……その後は、浜辺で泳いで
ボートに乗って、……そうだわ、魚釣りも面
白そうだわ」
 見晴しの良い窓から望まれる緑の木立と夏
の青い海、そして広々とした続き部屋の豪華
な調度などが、二人の気分を浮立たせる。
 それから二週間がアッという間に過ぎた。
 新鮮な魚料理にも漸く堪能し、連日の船遊
びにも飽きを覚えてくる。
 宿の方からも、彼等の長引く滞在に、途中
での支払いを求めて来た。
 特別室の宿泊費に船遊び代が嵩み、請求書
には、やたら桁数の多い数字が並んでいる。
 勿論、二人に払える額では無かった。
 もともと、彼女の親の反対で、結ばれる望
みを失った二人は、この島で最後の思い出に
何日かを過した後、心中≠キる積りだった
のである。
 その意味で、二人の行動は、駈け落ち
と言うより、心中を前提にした昔の道行
そのものだった。
 従って、所持金は二人合わせても、ホンの
小遣い程度しか無い。
 覚悟を決めて、最後の一夜を過ごした二人
は、早朝、荷物を残し軽装のまゝ宿をそっと
抜け出した。
 浜に出て、船付場にもやってあるボートを
無断借用して沖に漕ぎ出す。
 折から東の空がしらみ風も凪いで、二人の
行手に広がる鏡の様な海に、少し宛、朝日の
きらめきが映り初めた。
 やがて、無言のまゝ漕ぎ続ける太田志郎の
身体が次第に汗ばみ、連日の船遊びで出来た
掌のまめがヒリヒリし出しす。
 その頃、二人のボートの周囲には、島影ひ
とつ無くなっていた。
「もう、この辺でいゝだろう。……百合子さ
ん、本当に僕と一緒に死んでくれるね?」
 この言葉を、昨夜から太田志郎は何回繰返
したことだろうか。
 ボートのオールを引き上げて居ずまいをた
だした志郎に、百合子の潤んだ瞳が、無言の
承諾を伝えていた。
 旅館の部屋から持ち出した、如何にも高価
そうな幾つかの石の置物を袋に入れて、錘り
の代りに腰に巻き付ける。
 そして、用意の紐で二人の足と身体を、抱
き合ったまゝ、しっかりと結び合わせた。
 ごろりと船縁に転がる様に倒れ掛かった二
人は、唇を合せて、そのまゝ海の中へ身体を
沈める。
 バシャッと水音がして、ボートが反動でぐ
らりと大きく横に揺れ、そのまゝ身を捩る様
に波間に漂って行った。
 それからの時の流れは、一切、太田志郎の
記憶に無い。
 勿論、予定通り死んでいたらそれ迄だった
のだが、幸か不幸か彼は蘇生したのである。
 島のたったひとつの小さな病院、それも、
島の旅館が経営する一種の救急病院のベッド
の上で、太田志郎は意識を取り戻した。
 信じられない思いで周囲を見回す彼に、旅
館から派遣された付添いの女中が、事情を説
明する。
 それに依れば、二人の失踪が判明したのは
あの日の午後になってからで、旅館の二隻の
モーターボートに、土地の漁船まで動員して
捜索の結果、夕刻になって漸く、意識を失っ
たまゝ波間に漂うボートにしがみついていた
太田志郎が発見されたとのことだった。
 勿論、それからの捜索でも、小山百合子は
見付かっていない。
 本土の警察への届出は、彼の意識が戻って
事情が判明するまで保留されていた。
 幸い、水を可成り飲んだものゝ、外傷は無
く、手当てが早かったこともあって、彼の回
復は目覚ましく、数日後には退院してひとま
ず旅館に引き取られた。
 事務所脇の応接室で、旅館の経営者である
おかみと向かい合った太田志郎は、聞かれる
まゝに一切の事情を告白する。
「事情は判ったわ。でも二つ問題があるの。
ひとつは、相手の娘さんがどうなったか。…
…もし亡くなっていたら、貴方は殺人罪に問
われることになるのよ。……もうひとつは、
今度のことで貴方がこの旅館にかけた損害を
どうやって弁償するかってこと」
 小ぶとりの中年のおかみは、脂切った姿態
をソファーに沈めて、ネチネチと続けた。
「最初の問題は、私達が黙っていさえすれば
娘さんの死体が発見されるまで、表に出ない
でしょうね。……でも、今度のことで貴方は
どれだけこの旅館にに損害をかけたか判って
るかしら?」
 おかみは、彼の前に数字をぎっしり書き込
んだメモを差し出した。
「この上の数字が、貴方達の踏み倒した宿泊
代。そしてその次が捜索費用に医療費。……
最後が、貴方達が持ち出した石の置物の代金
よ」
 それは彼にとって将に天文学的な数字だっ
た。特に、骨董品の石の置物は、それだけで
ひと財産とも言える値打ちである。
「聞いた所失業中で、弁済に力になってくれ
る親戚も友人も無さそうだし……貴方、一体
どうやってこのお金を弁償する積りなの?」
「………………」
 黙って頷垂れる彼に、冷たい視線を浴びせ
ながら、おかみは言葉を続けた。
「そおお。弁償の当ては無いのね。……じゃ
あ、警察に突き出すしかないわね。殺人罪も
あるから、貴方、これからの一生を殆ど監獄
で暮すことになりそうね」
「そ、そんな……何とか、何とかなりません
か?……よかった、こゝで何年でも働いて、
きっと弁償しますから……」
 懸命な、彼のすがる様な態度を、おかみは
フンと鼻で笑う。
「あんた、こゝで働いたとして、このお金を
返すのに何年かかると思う? 仮に女中並の
給料として、恐らく一生掛かっても無理ね」
「そこを……そこを何とか。……な、なんで
もしますから……」
 警察に突出されて一生監獄入りかもと思っ
た途端、恐怖が彼の態度を支配し、哀願する
声が震える。
「そうねぇ、何でもするかぁ。……そうだ。
あんた、どうせ一度は死ぬ気になったんだか
ら、思い切って身を落してみる?」
「み、みを落すって……一体……」
「そう、あんたが女だったら女郎に身を落せ
ば済むんだけど、男だから少し面倒ね。……
でも、結局は女のおもちゃに成るってこと。
ただし、普通のおもちゃじゃなくって、人間
であることを放棄して、犬や豚並に奉仕する
のよ。……例えば、女にオシッコを飲めって
言われたらその通りするの。そう、いわば、
完全な女の奴隷ね」
「………………」
「この旅館ではね。客寄せの為にストリップ
ショーをやってるのよ。勿論、内緒でね。…
…でも、最近は女の団体客やグループが増え
てきたので、一度、本土から来てもらって、
一ケ月の間、女が男がいじめるSMショーを
やったことがあるの。それが女性客に受けて
ね、口こみで伝わったとみえて、今だに問い
合せがあるわ。……お前が身を落す気があっ
たら、そのショーを復活出来るし、それに旅
館の専属奴隷として、女の客をとらせれば、
可成りの収入になるしね」
 おかみの口調は次第に熱を帯び、同時に、
彼への呼び掛けも、貴方≠ゥらあんた
そしてお前≠ニ次第に横柄になる。
「客をとるって……一体……」
 不安を顔一杯にみなぎらせながら、志郎は
声を詰まらせて、弱々しく聞いた。
「馬鹿だね。きまってるじゃないか。……客
の夜のおもちゃになるのさ。そりゃあ、女郎
が客を取るのとは違うさ。……そう、女客に
はお前の息子じゃなくって、お前の舌を提供
するんだよ。……フフフ、客によっては、尻
の方も舐めてくれと言うかも知れない。ひと
晩中、女の股に顔を挟まれて、舐め続けさせ
られることもあるさ。……でも、それが出来
ないって言うのなら、これから本土の警察に
出頭して、留置所に入るんだね」
 情けなさで胸が一杯になり、思わず俯いた
太田志郎の目尻からは、ツーッと涙が頬に零
れる。
 しかし、彼にはもう選択の余地の無いこと
が明らかだった。
「心配しなくたっていゝよ。明日から直ぐに
客をとらせようって言うんじゃないんだから
ね。暫くの間、女中達にみっちり仕込んで貰
うんだよ。……それから、SMショーの方だ
けどね。ストリッパーのうちに、こないだ迄
SMクラブで女王様役をやっていた子がいる
んだよ。その子と組んで早速明日から稽古に
入っておくれ。いゝね!」
 おかみは、おろおろする志郎に、高圧的に
命令する。
 そして、彼を女中部屋へ伴なった。
 十二畳の広間を、ふたつぶち抜いて出来た
広い空間に、十六人の女中達が雑居するその
部屋は、彼女等の居間であると同時に、寝室
でもある。
 丁度、昼食時間で人の姿はないが、部屋全
体にムッと女の匂いが立ち込めていて、なん
となく艶めかしい。
 両側の端にある押入は、中が人数分に合わ
せて板で仕切ってあり、布団や衣類が溢れて
いた。
「お前は、今日からこの部屋で寝起するんだ
よ。……女達の部屋に男が入っちゃまずいけ
ど、お前は、こゝで人間の資格を奪われるん
だから、……そう、皆も犬が一匹まぎれ込ん
だと思えばいいさ」
 おかみは、続いて押入の角の掃除道具を入
れてある区画を指す。
「この中にお前のものを入れるといゝよ。…
…どうせ、この部屋の掃除はお前の受け持ち
になるんだから、こゝの道具はお前専用みた
いなもんさ」
 みじめさに打ちひしがれる志郎をうながし
て、おかみは隣りの小部屋に移る。
 そこには、若い女が二人、だらしなく寝転
がってテレビを見ていた。
「紹介するよ。この男が、今度SMショーを
やる奴隷。……そして、この人達は本土から
来たストリッパー、あけみさんにマリさん。
浅草の小屋から骨休めを兼ねて、交替で来て
貰ってるのさ」
 おかみの紹介で、むっくり起上がった女達
は、志郎に無遠慮な眼差を浴びせる。
「ヘー、こいつが、あの心中男ね。それで、
到々、女の奴隷に身を落すって訳かぁ。……
でも、ノーマルな男を変態に仕込むのも面白
いかもね」
 ポッテリと肉の付いた色白の女が、ニヤニ
ヤ笑いながらつぶやいた。
 丸顔の派手な顔立で、瞳が大きく舞台映え
のする美人である。
 隣りで彼を見詰める面長な女も、やゝ日焼
けしているが奇麗な肌で、整った器量をして
いた。
 二人共、ストリッパーだけあって、見事な
プロポーションである。
「お前、女のオシッコ飲んだことある?」
 突然、丸顔の女、あけみが志郎に問い掛け
た。
 あまりの唐突さにとまどいながら、志郎は
大きく首を横に振る。
「SMショーではね。クライマックスで奴隷
にオシッコを飲ませるのよ。……他のプレイ
は段取りさえ決めておけば、別に大して練習
はいらないけど、こればっかしは普段の修行
が要るわ。……舞台で吐き出したり、零した
りしちゃぶちこわしですもんね」
 あけみの言葉に、おかみが大きく頷く。
「そうさね。お前、たった今から、この二人
に飲ませて貰って練習おし。……うまく行け
ば、来月のショーに間に合うよ」
 うすうす覚悟していたとは言え、ショック
に志郎の唇がワナワナと震える。
「で、でも……SMショーの相手はひとりっ
て聞きましたが……」
 志郎は、すがる様な目でおかみの方を振り
返った。
「馬鹿だね、お前は。……女には月の障りっ
てものがあるんだよ。あけみちゃんが都合悪
くなったら、マリちゃんが代理さ。……それ
に、二人に飲ませて貰えば、それだけ練習回
数も増えるじゃないか。……クックックッ、
何なら私のも飲ませようか?」
 おかみの含み笑いに志郎の顔がひき吊る。
 そこで、あけみが身を乗りだした。
「ネ、ネエ。 善は急げって言うじゃない?
私、今少し催してるの。……おかみの前で、
いっちょう、筆卸ろしやろうか?」
 驚きで、腰が抜けた様にへたり込んでいる
志郎の前に、あけみは仁王立ちになると、足
を上げて男の肩を蹴る。
 仰向けにひっくり返った志郎の胸の上に、
でんと尻を据えたあけみは、むっちりした太
股で男の顔を挟み、ジッと見下ろした。
「いゝこと。……一番大事なのは、自分が女
の奴隷だって、はっきり認識すること。毎日
飲まされてれば、味にも慣れるし、奴隷とし
ての卑屈さも身に付くわ。……その内、女に
征服される喜びに目覚めれば、一人前のマゾ
になれるのよ。いゝわね」
 あけみは尻を上げると、パンティーをくる
りとめくり、志郎の顔を跨ぐ。
 プーンと生臭い女の性臭が鼻を突き、頭が
クラクラッとした。
 屈辱に身体を細かく震わせながら、辛うじ
て開いた唇に、女の局部が押し当てられ、じ
わりと掛かる体重が顎を圧して、男の口を更
に開かせる。
「女が最初のセックス経験を忘れない様に、
男奴隷も、生まれて初めて女の便器にされた
時のことを、いつまでも覚えているものよ。
……さあ、少し宛、出して上げるから零さな
い様に飲みなさい!」
 全神経を集中した志郎の口腔に、やがて、
ポタポタと水滴が垂れ、それが急速に急流と
なる。思わず、むせ気味に咽喉を詰め、流れ
が弱まった瞬間に、溜まった汚水をゴクリと
飲み込んだ。
 初めて味わう女の汚水は、無念の思いと共
に、志郎の脳神経にその味を刻み込む。
 あけみは流石に慣れたもので、水流を自在
にコントロールして、時間を掛けながら男の
咽喉に少し宛、汚水を送り込んで行った。
 漸く放尿を終えた彼女は、尻を浮かせて、
今度は志郎に舌で局部を清める様に命じる。
 舌の先が女のクレバスを這い、唇が余滴を
チューッと音を立てゝ吸った。
「いゝわ。初めてにしちゃ上出来よ。……で
も舞台では、お客に見える様にお尻を少し離
して、もっと勢い良く切れ目無しに出すから
ね。それを零さない様に飲むには、もっと練
習が必要よ。……当分の間、私とマリちゃん
の分は、すべて飲ませるからね。頑張って修
行するのよ!」
 それが、太田志郎の汚辱に満ちた奴隷生活
へ転落の幕開きだった。
 あけみが言った様に、女に強制されて初め
て小水を飲まされた経験は、強姦された処女
の心境に似て、太田志郎の脳裏に深く刻み込
まれると同時に、人格喪失への第一歩となっ
たのである。
 しかし、彼には、続いて更に辛い経験が待
ち受けていた。
 この旅館の十六名の女中は、すべて受け持
の最大部屋数が割り当てられていて、満室の
時に初めてフル操業となる。
 と言うことは、シーズンオフには週末を除
いて、各自が時間に可成りの余裕を持つこと
になるが、全員がだらだらと勤務することを
避ける為、半日単位で四名宛が交替で休みを
とる所謂非番$ァがとられていた。
 非番の女中達は、浜辺で肌を焼いたり、泊
り客に誘われて船遊びに興じたりすることも
多いが、今日この頃の様に風が肌寒く感じる
様になると、勢い、女中部屋で寝そべってテ
レビやビデオを見たり、お喋りに時間を費や
すことになる。
 あけみから小水を飲まされた後、隣りの女
中部屋に戻った志郎は、おかみから非番の四
人の女中に引き合わされた。……と言うより
引き渡されたと言った方がよい。
 丁度、暇を持て余していた女達にとって、
志郎は格好のおもちゃ≠ナあった。
「お前、心中しそこなって、こゝでみんなの
奴隷にされるんだってね。……客として泊っ
ていた時は、随分偉そうな口をきいてたじゃ
ないか。これからは最低の身分に落ちるんだ
から、私達には敬語を使うんだよ。……お前
の名前は、エート、太田志郎かぁ。そうだ、
これからはシロー、じゃなくってシロって呼
んでやるよ。フフッ、犬みたいだね」
 たまたま、彼が百合子と泊っていた時に、
客室係りだった女中が、寝そべったまゝ話し
掛けた。
 女達の前で正座してかしこまっている志郎
は、思わず膝の上でこぶしを握りしめる。
 他の三人も、思い思いのくつろいだ姿勢で
彼を囲んで、口々に嬲りにかゝった。
「こいつには、犬の名前がピッタリさ。……
ホラ、おかみが言ってたろう。こゝでみんな
に人間の資格を剥ぎ取って貰えって」
「と言うことはダネ。……犬として扱って、
人間であることを忘れる様に仕込むってこと
ね。……面白ソーッ!」
「でも、おかみの言う様に、うんと卑しめて
人間の資格を奪うって、一寸、難しそうね」
「アラ、ちっとも難しくなんかないわ。……
人間なら、恥ずかしくって、とても出来ない
ことがあるでしょう。それを強制すればいゝ
のよ。……思いっきり辱めて、生恥を曝させ
ればいゝんだわ」
 四人が志郎を肴に、ガヤガヤとやりとりし
ていた時である。
 入口のふすまが開いて、隣室のマリが姿を
見せた。女中達とは勿論顔馴染である。
「ホラ、わざわざ、オシッコを飲ませに来て
やったんだよ。……さあ、そこで仰向けにお
なり!」
 マリは、近付きながら、志郎に向かって横
柄に顎をしゃくる。
「こ、こんな所で……い、いまそちらへ伺い
ますから」
 顔を赤らめてドギマギする志郎を囲んで、
ドッと笑いの渦が起った。
「シロ、お前、マリさんにオシッコ飲まされ
るのかい?」
「ヘエ呆れたぁ。……でも見物だわ。一体、
どんな顔して飲むのかしら?」
 マリは、正座のまゝ身を硬くしている志郎
の後ろに回り、男の髪を鷲掴みにすると、グ
イと後ろに引き倒す。
 そして、彼に起き上がる暇を与えず、すか
さず背後から男の顔に跨がった。
 志郎の足の方を向いた姿勢のまゝ、尻を微
かに浮かすと、マリはスカートの中に手を入
れて、一気にパンティーを引き下ろす。
 ア、アーッと悲鳴に似た志郎の声が、肉の
猿轡の中で、くぐもった呻き声に変った。
「ホラ、ちゃんと口を開けないと、鼻の中に
入るわよ」
 マリは、スカートをたくし上げ、尻を前後
に揺すって、股間で男の口をまさぐる。
 マリの背後に集まった女中達は、豊かな女
の尻から辛うじてはみ出している志郎の目を
覗き込んだ。
「アラー、飲まされる前から、もう涙を出し
てるわ。……だらしないのね」
「ちょっと、ちょっと見てぇ。こいつの鼻の
穴が、マリさんのアヌスにぴったり当たって
るわ。……ホラ、鼻息がスースーしてるぅ。
きっと臭いわよー。フフフ」
 それは、志郎にとって、将に全身が震える
程の屈辱だった。
 女の尻臭を嗅がされながら、小水を飲まさ
れ、しかもそれを女中達に見られ、嘲笑され
るのである。
 やがて、口中にチョロチョロと注がれ始め
た汚水を、ゴクリゴクリと咽喉を鳴らして、
飲み下しながら、余りの情けなさに、志郎の
目は溢れる涙で霞んで行った。
 マリが去ってからの女中部屋の雰囲気は、
明らかに先程迄とガラリと変る。
 それまでは、なんとなく距離を置き、口先
だけで志郎をいたぶっていたのが、マリに辱
しめられる志郎のみじめな姿を目のあたりに
して、彼を見る目がまるで変ったのである。
 フッきれた様に、彼女等は一斉に行動に出
た。軽蔑を露わにして、次々と志郎におぞま
しい行為を強いる。
「シロ、そこに四つ這いになって、私のお尻
を嗅いで御覧! そう、鼻をクンクンさせる
のよ。……ウフフッ、どんな臭い? マリさ
んと較べてどおお? クックックッ、とって
も良い格好よ」
「こんどは、こっちよ。……ホラ、私の足の
裏をお舐め!……アラ、下手ねぇ。くすぐっ
たいじゃないの。馬鹿!」
「シロは犬並なんだから、鼻と舌が効かなく
っちゃね。……ソラ、この汚れたパンティー
を嗅いで臭いを覚えなさい。……そうそう、
後は口の中で舐めて奇麗になるまで味わうの
よ。ウフッ、お前、最低ね!」
 女達に依って、次から次へと志郎に加えら
れる淫靡な辱めは、怒涛の様に彼の理性を押
し流し、彼の心を打ちのめした。
 無我夢中で、女達の言いなりに生恥を曝す
うちに、人間としての自尊心、人格といった
ものが、木端微塵に砕け散って行く。
 夕食は、女中達の給仕をさせられた挙句、
把手のとれた支那鍋に集められた残飯を、皆
の前で四つ這いになって、犬の様に食べさせ
られた。
 幾ら咽喉が乾いても水は一切与えられず、
あけみとマリの小水が、彼に与えられる水分
の全てである。
 その夜、彼の課せられた女中達のセックス
への舌奉仕は、彼女等の志郎征服の総仕上げ
の様なものだった。
 おかしな気を起した時の用心にと、両腕を
後手に縛られ、女の股間に首を挟まれた志郎
は、延々と舌奉仕を強要される。
 男気の無い禁欲生活を余儀無くされていた
女達は、まるで飢えた狼の様に、次々とその
股間で志郎の舌をむさぼったのである。
 と言っても、志郎には一晩の内に十六人も
の女達全員に奉仕する時間も舌力も無い。
 六人目の女の股間で、到々力尽きて深い眠
りに落ちてしまった。
 こうして、地獄の様な一夜が明けた。
 女中達に頭を足蹴にされ、それでも未だ寝
呆け眼の志郎の顔に、あけみが、そして続い
てマリが跨がり、口中に小水を注ぎ込む。
 夜の間にたっぷり体内の分秘物を吸った濃
厚な女の朝尿は、その苦い塩味で繰返し志郎
の咽喉を焼いた。
 女中達の布団を片付け、部屋の掃除が終る
と、女達の汚れたパンティーを手で揉み洗い
させられる。
 それも済んで、ホッとする間も無く、待ち
構えている新手の非番の女中達に、延々と嬲
られるのである。
 あけみとマリは、尿意を催すと、所構わず
志郎を呼び付け、全く人目を気にせず彼の顔
に跨がった。
 女中達も面白がって、時々彼の口に局部を
当てがうのだが、その場になると不思議に出
なくなる。
 やはり、これはプロの二人にまかせること
になり、女中達は、もっぱら彼の舌奉仕を、
それも時には昼間から、楽しむ様になった。
 三週間が過ぎ、訓練の成果を見るために、
志郎を呼んだおかみは、彼のあまりの変り様
に目を見張った。
 ソファーに腰掛けて足を組んだ彼女の前で
自ら進んで四つ這いになった志郎は、最初か
らオドオドした態度で、おかみの無遠慮な視
線を浴びると、途端に伏目になる。
 試しに足をお舐め≠ニ命ずると、汚れた
足裏に顔を押し付け、ピチャピチャと音を立
てゝ、踵から爪先まで丁寧に舐め上げた。
 どんな辱めを受けたか話して御覧≠ニ問
えば、流石に顔を赤くしたものゝ、媚びる様
に、おかみの顔を伺いながら、ポツリポツリ
と報告する。
 その卑屈な態度こそは、将に三週間の間、
女達に嬲り抜かれた末、志郎の内に定着しつ
つある哀れな第二の天性だった。
「それで、オシッコも零さずに飲める様にな
ったんだね。……じゃあ、明日のショーで初
舞台を踏んで貰うよ。丁度、地方の婦人会の
団体からお座敷が掛かったところさ」
 おかみの鶴の一声で、その翌日、旅館の大
広間の舞台裏では、あけみと志郎が出番を待
たされていた。
 大広間には、四十人を越す女の団体客が、
浴衣にくつろいで夕食をとっている。
 ビールや日本酒をかたむけている女性も多
く、座が弾んでいるとみえて、所々で歓声が
上がっていた。
 女性はすべて、三十才代の漁村や農家の主
婦と言った所で、久し振りで家庭を離れて、
団体で息抜きに来た様である。
 日頃、多かれ少かれ肉体労働に従事してい
る人達の常で、アルコールに強く、酔う程に
卑猥な会話や唄が飛び出して来た。
 頃合を見て舞台の幕が開き、司会者が今晩
のメーンイベントであるSMショーが始まる
旨を告げると、ワーッと歓声が上った。
 ピシーッと鞭を床に叩き付ける音と共に、
真っ赤な衣装とブーツに身を包んだあけみが
登場すると、一斉に拍手が起る。
 スポットライトを浴びた彼女は、身をくね
らせながら、手に持った鞭で床を叩き、派手
な音をさせると同時に、手に持った長い鎖を
丁度始まった音楽に合わせて、そろそろと手
元にたぐった。
 舞台の下手から、その鎖に首輪を繋がれた
志郎が、ブリーフ一枚の姿で四つ這いになっ
て現れる。
 観客の間から、またひとしきり盛大な拍手
が巻き起った。
 あけみは、鞭を床で打ち鳴らしながら、舞
台の上で志郎を二、三回ぐるぐると曳き廻し
た後、その背中にどすんと跨がる。
 首の鎖をぐいと引き、赤いブーツで志郎の
太股を蹴ると、男の口から、仕込まれた通り
ヒヒーンと嘶き声が洩れた。
 ドーッと観客が湧く。
 あけみを背に乗せて舞台の上を廻る志郎の
速度が鈍ると、彼女は、身体をひねって男の
尻にピシッと鞭を当てた。
 あけみの尻の下で、ピクリッと志郎の身体
が痙攣し、歩みが速まる。
 三、四回それを繰り返すと、流石に限界で
志郎の手足がもつれ始めた。
 男の背から下り立ったあけみは、志郎のブ
リーフに手を掛けると、一気に引き下ろす。
 ワーッと言うざわめきの中で、露出された
男の股間に、場内の視線が集まった。
 あけみは、四つ這いの志郎の尻を観客の方
に向け、股を大きく開かせた上で、鞭の柄を
使って、ダラリと垂れた男の股間のものを執
拗にまさぐって見せた。
 女の手の動きの中で、ムクムクとそれが肥
大し、硬直する。
 女客の中に、クスクス笑いが広がった。
 途端に音楽が一転して激しいリズムを奏で
始め、照明が赤、青、黄とフラッシュする。
 あけみは、志郎の首の鎖の端をしっかり握
ったまゝ、少し距離を置いて立つと、鞭を大
きく振って床を叩いた。
 ヒューッと鞭が空を切る音に続き、間発入
れずピシーッと舞台の床が鳴る。
 志郎の目に恐怖の色が浮び、床の上で緩ん
でいる鎖を引きずりながら、中腰になって舞
台の上手に逃げ込もうとした。
 途端に、あけみの手中の鎖がピンと張り、
志郎の身体が大きくのけぞる。
 同時に、彼女の手の鞭が空を切り、男の背
に一撃が浴びせられた。
 事前練習の時には手心を加えていたあけみ
が、本番では思い切って鞭を揮ったのだから
たまらない。
 ギャーッと悲鳴が志郎の口から迸り、膝が
ガクンと床に落ちた。
 その全裸の背から尻にかけて、みるみる内
に、赤い線が斜めに浮上がってくる。
 強いビートのきいた音楽に合わせて、あけ
みは、鞭を二度、三度、床に空打ちした。
 志郎は床を這いながら、本気で必死に舞台
中を逃げ廻る。
 その如何にも無様な格好に、女客の間から
失笑が洩れた。
 あけみは、首輪の鎖を緩めたり、引いたり
コントロールして志郎の動きを支配する。
 頃合を見て、もう一発、鞭がうなりを上げ
て男の背に炸裂した。
 ウグーッと呻き声を立てゝのけぞる志郎の
背に、先程の鞭痕と交差して、X形に赤い線
が走る。
「お、お許しを。……ど、どうか……お許し
を……」
 志郎は、思わず、あけみの足元に身を投げ
て懇願する。
 鞭の痕がくっきりついた背中が、ブルブル
震えて、涙声になっていた。
「意気地無しぃ!」
「あんた、それでも男かよ!」
 思わず舞台に引き込まれた観客の間から、
野次が飛ぶ。
 あけみが、すかさずそれに乗って、大袈裟
な身振りで、四つ這いの志郎の股間から、萎
んだ肉塊を摘み上げた。
「オヤオヤ、こんなに小さくなってるわ。…
…これでも男の端くれかしらね。……ホラ、
お前、女の私にいじめられて、口惜しくない
のかい?……そうかい、そんな意気地無しは
こうしてやる!」
 あけみは、足を上げて男の身体を蹴り転が
すと、仰向けにしてその顔の上に跨がった。
「ホラ、お尻の臭いでもお嗅ぎ!……ホラ、
ホラ、ホラッ!」
 あけみが、赤いミニスカートをたくし上げ
ると、ピンクのパンティーに包まれた大きな
尻にスポットライトが当る。
 その尻の下から顎だけ覗かせて、あとは顔
全面をスッポリと女の尻に包まれた哀れな男
に、観客の目が集中した。
 そしてその頭は、あけみの尻の動きにつれ
て、グラグラと揺れる。
 たっぷり尻臭を嗅がせたあけみは、立ち上
がると、芝居がかった仕草で、ゆっくりと男
の顔に素足を乗せた。
「サー、こんどは、私の足の裏をお舐め!…
…そうそう、おいしいかい?……ウフッ、お
前、その舌の使い方は、まるで犬だね。……
犬は犬らしく御主人の身体を舐めるんだよ。
……ソーラ、今度は、お前にふさわしい所を
舐めさせてやる。……ホラッ、私のお尻の穴
をお舐め!」
 観客がシーンと静まり、固唾を飲む中で、
あけみは再び男の顔を跨ぎ、パンティーを押
し下げて、そのアヌスで志郎の唇を塞いだ。
「ホラ、よく舐めて味わうんだよ。……クッ
クックッ、男のくせにだらしないねぇ」
 覚悟していたとは言え、女客の面前での屈
辱に、志郎の目には口惜し涙が光る。
 その時、音楽がひときわ高い激しいリズム
を奏で、それをきっかけに、場面はクライマ
ックスに移った。
「お前もそこ迄落ちたんだ。いっそのこと、
私の便器にして、オシッコを飲ませてやる。
……サー、口を大きく開けるんだよ!」
 急調子のドラムが轟く中で、男の顔の上で
やや尻を浮かせた女の股間にスポットライト
が集まる。
 大きく開けた志郎の口の中に、やがて細い
一条の汚水が、女の股間からライトの光をキ
ラキラと反射しながら落ちて行った。
 志郎の咽喉が大きく動き、ゴクリゴクリと
音を立てながら女の小水を飲み込んで行く。
 観客の間から拍手が起り、それが波の様に
に場内に広がって行った。
 ショーが終って幕が下りた後、床に茫然と
へたり込んだいた志郎はこの後、あけみに首
輪を曳かれて、客席の間を縫いながら女客の
ひとりひとりの前を引き廻された。
 勿論、犬の様に四つ這いで、しかも全裸の
まゝである。
 酔いの回った女達の反応は様々だった。
 興味に駈られた女達は、ニヤニヤ笑いなが
ら彼の股間をまさぐったり、中には、背に跨
がる者まである。
 誰もが、彼を馬や犬なみに扱った。
 軽蔑を露わにして、志郎の顔に唾をかけた
り、鼻の前に素足を突き付け舐める様に命じ
た女もあった。
 そうかと思うと、志郎の前に立ち塞がり、
浴衣の裾をからげて尻を彼の顔の前に突き出
す女がいた。
 あけみは心得て、志郎の首輪を掴み、その
顔を女客の尻に押し付ける。
 ムッとする悪臭を胸一杯吸い込まされて、
志郎は、ひと極、情けなさが身に泌みた。
 女客に散々嬲られた末、漸く開放された志
郎は、休む暇も無く、再び女中達の慰みもの
に戻る。
 こうして、最初の体験を無事に終えた志郎
は、以来、毎週の様にSMショーに出演させ
られた。
 その内、志郎に目を留めた女客から、お座
敷が掛かる様になる。
 つまり、客の部屋に呼ばれて、奉仕させら
れ、改めて嬲られるのである。
 そうこうする内に、彼の舌奉仕の評判を聞
いて、夫婦やアベックの客からも、お呼びが
掛かる様になった。
 事実、毎夜、何人もの女中達の股間で奉仕
させられる彼の舌技は、テクニックと耐久力
共に、長足の進歩を遂げたのである。
 旅先でのアバンチュールを期待するカップ
ルは、夜の慰みものに彼を呼んで、その舌を
二人のセックスの刺激剤に使おうとする。
 この傾向に目を付けたおかみは、早速、志
郎の様々な奉仕の写真集を作り、料金表を付
けて泊り客に積極的に宣伝する様にした。
 そこには、女の股間で彼が舌を動かしてい
る場面から、尻に敷かれてアヌスを舐めてい
る所、果ては、女の股間で小水を飲まされて
いるシーンまで貼ってある。
 SMショーの後で、この写真集を見せられ
た客の中には、決って何人か志郎を座敷に呼
んでその舌を使う者が出る様になった。
 女の団体客の場合は、大抵、何人かの割勘
で志郎を使おうとする。
 そんな時、志郎はひと晩中、次々と顔に跨
がって来る女達に、とことん奉仕させられる
のだった。
 こうして、アッと言う間に一年余の月日が
流れる。
 この頃には、志郎は、SMショーの演技も
すっかり板に付き、ショーの後で客席を引き
回される時も、自ら進んで女客の足を舐め、
尻に顔を当てる様になっていた。
 ショーの相手の女も何人か変り、彼の背中
には鞭の後が黒く、数え切れぬ程何条も付い
ている。
 あけみとマリが始めた、彼女等が志郎に小
水を飲ませる練習≠ヘ、代々引き継がれて
いて、彼はこの一年余、女の小水以外の水分
を取ったことがなかった。
 おかみの始めた志郎の写真集は、この頃に
はビデオがとって代り、迫力のある場面が収
録されている。
 因みに、ビデオではおかみが志郎の相手を
買って出ており、以来、気が向くとおかみは
昼間から志郎の顔を股間に挟む様になった。
 こうした或る日のことである。
 ショーの後で、或る夫婦の座敷が掛かり、
おかみは何時もの様に、全裸の志郎の首を鎖
で曳いて客室に届けに行った。
 控えの間に残された志郎は、客間で夫婦が
食事を終える迄、そこで待機させられる。
 やっと中から声が掛かり、彼は襖を開けて
四つ這いのまゝ中へ入った。
 思ったより若い夫婦で、丁度食事を終えて
食後の果物をとっている。        
 風呂は未だと見えて、男はネクタイを取っ
たワイシャツ姿。
 女はストッキングを脱いで白いブラウスに
ベージュのスカートをつけていた。
「奴隷のシロでございます。お二人の夜の慰
みものにして頂くために参上しました。……
これまで使って頂いた御夫婦は、百組以上、
女性の方は、三百人以上にもなります。……
どうか、お二人で私を思い切り辱め、嬲りも
のにして頂きたく、宜しくお願い致します」
 志郎の口上は、最初から客に軽蔑と安心感
を与える様にと、最近おかみが作ったもので
ある。
 女の方が、突然、クックックッと含み笑い
をしながら、志郎の方へ向き直った。
「未だ判らないの? 志郎さん、私よ。私、
小山百合子よ」
 茫然として、目を見開いたまゝの志郎を見
詰め、百合子は言葉を継ぐ。
「私、生きているのよ。……あの後、通りか
かった漁船に助けられたの。……でも、あな
たも助かったとは、さっきSMショーを見る
まで知らなかったわ」
「………………」
 志郎は、驚きの余り言葉が出ない。
「でも、志郎さん。あなたも落ちたものね。
SMショーの時は、呆れ返って自分の目が信
じられなかったけど、さっき、おかみさんが
届けてくれたあなたのビデオを見て、思わず
吐気がしたわ。……こんな犬畜生みたいな変
態男と、心中までしようとした私は本当に馬
鹿だった。目がさめたわ」
「で、でも……これには、わ、わけが……」
「そりゃあ、色々あったでしょうよ。でも、
現在のあなたは、身も心も汚れ切ってるわ。
それに引きかえ、私はここに居る人と半年前
に結婚して、今は幸せよ。……この人と今、
話したんだけど、私達、こゝに一週間程滞在
することにしたの。その間、あなたを二人で
ずーっと使ってあげる。そして、二度と私と
対等の口がきけない様にしてあげるわ」
「………………」
 志郎は、意外な百合子の言葉に、顔を蒼白
にして唇をワナワナと震わせる。
「私達にどうして欲しいか最初に口上を述べ
たわね。……もう一度、言って御覧なさい」
 それは、志郎にとって残酷な試練だった。
 一年前に、心中までもと思い詰めた最愛の
人の前で、屈辱の口上を再び述べさせられる
のである。
 どもりどもり先程の科白を繰返す志郎の顔
は、恥ずかしさで真っ赤に染まっていた。
「もう一度よ。……そのお二人で私を思い
切り辱め、嬲りものにして頂きたい≠フ所、
あなだが、どんな顔して言うのか、もう一度
よく見たいわ」
 百合子は、ニヤニヤ笑いながら、志郎の顔
を見据える。
 それは、鼠を前にした猫の風情だった。
 やっとの思いで、それを繰返した志郎の顔
は、カーッと火照っている。
「いゝわよ。……お望み通り、うんと辱めて
嬲って上げる。……そうね、手始めにこれを
上げるわ」
 百合子は、スカートの中に手を入れると、
腰を浮かし、パンティーを脱いでそれを志郎
の前にポンと投げた。
「お前、これを鼻に当てて御覧。……今日は
山歩きしたから、たっぷり臭いが泌み付いて
るわよ」
 急に百合子の口調が横柄になり、如何にも
志郎を見下した態度が見える。
 一瞬、グッと無念さが込み上げたものゝ、
弱々しく卑屈に目を伏せると、四つ這いのま
まパンティーを拡げ、その褐色に変色した股
間の部分に顔を当てた。
 ツーンと鼻をつくその異臭も、この一年間
繰返し嗅がされてきたものだったが、これが
百合子のものだと思うと、情けなさがひとし
おである。
「どうしたの。ウフフッ、その汚れたところ
を舐めるんじゃないの?」
 百合子の揶揄する様な声の調子には、最早
昔の恋人に対する、思いやりのかけらだに無
かった。
「オイ、百合子、御覧よ。舐め始めたぜ。…
…フフフ、そら、ピチャピチャ音を立てゝ、
旨そうじゃないか」
 百合子の夫が口を挟む。
 志郎は、やけ気味にその部分を口に含み、
舐めた上、チューッと音を立てゝ吸った。
「まるで犬ね。……浅間しいわぁ」
 百合子は、軽蔑を露わにして立ち上ると、
広縁の藤椅子に座り、煙草に火を付ける。
「ここへ這っておいで。……そう、今度は足
の裏よ。さっきのショーの時より丁寧に舐め
るのよ」
 這い寄る志郎の目の前に、百合子の形ちの
良い足がスーッと伸びる。
 その薄汚れた踵に舌を寄せると、志郎は躊
躇無く舐め始めた。
 志郎にとって、すっかり慣れた筈その行為
も、それが、百合子に対するものと思うと、
胸がキリキリ痛む。
「久し振りで触れた私の肌が、足の裏とはお
気の毒ね。……アラー、うちの犬が舐める感
じと似てるわ。クックックッ」
 彼女の態度には、リラックスした余裕と、
優越感が溢れていた。
「百合子、風呂に入る前に、こいつの舌を使
って一発やろうよ」
 しどけない彼女の姿態に刺激された夫が、
横から声を掛けた。
「いゝわ。汚れた身体の方が、こいつには思
い出になって良いかもね。……ソラ、仰向け
におなり!」
 百合子は、もう一方の足で志郎の胸をトン
と蹴る。
 後ろにひっくり返った志郎の胸の上に、何
時の間にかズボンを脱いだ男が跨がった。
 ニヤニヤ笑いながら、彼の胸の上でゆっく
りプリーフを脱ぐ。
 グニャリと柔かい男のものが、志郎の顎の
上にこぼれた。
 続いて、パンティーを脱いだ百合子が、男
に向い合って志郎の顔面に跨がる。
 ねっとりと湿りを帯びた女の股間が、まと
もに彼の目と鼻を塞いだ。
 どっしりとした女の体重と共に、生臭い臭
気が彼の鼻を突き、志郎に、改めてこれから
いよいよ百合子夫妻に凌辱されるのだとの実
感を与える。
「ソラ、舌を出して、うちの人のジュニアを
元気にしなさい。……そうそう、今度は私の
われ目ちゃん。……フフフ、気分が出るわ。
お前中々上手よ。……いゝこと、私達がイン
サートしている間中、舌で結合部を舐め続け
るのよ」
 百合子は、テキパキと指示を与える。
 志郎の顔の上では、抱き合った二人の会話
が始まった。
「いゝのかい。何だか可哀そうだな。……昔
の恋人に巡り合ったと思ったら、そのセック
スに、奴隷奉仕させられるんだからな」
「それが、今ではこいつにふさわしいのよ。
……考えて御覧なさい。毎日、こいつは旅館
の女達に口や舌を汚されてるのよ。汚れきっ
た雑巾を私達のセックスの汁受け≠ノ使っ
てやるんですもの。もったいない位よ」
 これ程までに百合子に見下げられるとは!
……二人の身体の下で、志郎はとめどなく熱
い涙を零した。
 やがて、二人は濃厚な接吻に移る。
 続いて志郎の唇を擦りながら、硬い怒張が
百合子のクレバスに差し込まれた。
 ゆっくりした周期で、それが出し入れを開
始すると、志郎の顔の上の百合子の尻が前後
に揺れる。
 必死に呼吸を確保しながら、志郎は二つの
肉の接点を懸命に舐め続けた。
 次第に動きが激しくなるに従って、生臭い
粘液が二人の結合部から流れ出し、志郎の咽
喉を焼く。
 やがて、射精に伴う痙攣を頂点として、ひ
とまず二人のセックスが終った。
 暫く余韻を楽しんだあと、男がインサート
を解いて立ち上がる。
 途端に、百合子の膣から愛液が溢れ出し、
志郎の口中に流れ込んだ。
「フフフ、俺達のセックスの汁受けとは良く
言ったもんだな。……ソラ、咽喉をゴクゴク
させて旨そうに飲んでやがる!」
 百合子の夫も、軽蔑し切った口調である。
「サー、後始末をしっかりおやり!……もっ
と強く吸い出すんだよ。……そうそう、慣れ
たもんだね」
 志郎は、舌を膣に差し入れる様にして、粘
液を吸い、唇で肉襞を清める。
 その屈辱の作業は、百合子に言われた様に
これまで何度となく経験したものだった。
 二人は、風呂に入った後、布団の上で再び
抱き合った。
 今度は、志郎は百合子のアヌスを終始吸い
続ける様に命じられる。
 しかも、今度は百合子の後始末だけでなく
その夫の肉棒までしゃぶり清めさせられた。
 その後、未だ満ち足りない百合子は、志郎
の首を股間に挟み、舌奉仕を強いる。
 悪夢の様な一夜が明けて朝になると、二人
は、起き抜けに再度抱き合った。
 志郎の首に跨がって後始末をさせた百合子
は、そのまゝ彼の口中に排尿する。
「お前、私の便器としても合格ね。……舌も
中々役に立つし……どおお? ここで旅館の
女達の慰みものにされてるより、私の家で、
私達夫婦の専用奴隷にならない?……私達、
お金はたっぷりあるから、お前の借金を払っ
て身請けしてやってもいゝのよ」
「………………」
「そうだわ。私としたことが、奴隷の意見を
聞くなんて!……そう、お前の意志はどうで
もいゝわ。お前は私の命令を聞くだけ!……
じゃあ、いゝこと。お前は、これから一生、
私達夫婦の奴隷よ。そうね、セックス奴隷、
兼、便器奴隷だわ。クックックッ」
 それは、志郎にとって、これまで以上の、
新しい転落を意味していた。
 恋人の百合子の奴隷として、そして便器と
しての生活が、これから一生続くのである。
 今更ながら、無念さ、情けなさがミックス
してぐっと胸にこみ上げる一方、深い諦めと
めくるめく陶酔が、改めて志郎の脳裏に渦巻
くのだった。
(完)
----------------------------------------
1989年4月スピリッツ4月号
(スレイブ通信33号に再掲載)
----------------------------------------

2010/10/25