023-#23転落した海外駐在員(汚辱のロングビーチ)
阿部譲二作
叔父の専務に説得されて社長の息子の起こした交通事故の身代わり犯にされた男が、二年の禁固刑を終えて会社に復帰するや、課長から平社員に降格され米国に転勤させられる。駐在員事務所で現地採用のグラマーな若い美人の部下にされた男は、雑用係としてこき使われる。女秘書達にも嬲り者にされたあげく、女達の汚れた尻の穴まで舐めさせられる。 |
成田空港を夕刻に出たジャンボジェット機
は、規則正しいエンジン音を響かせながら、
一路ロスアンジェルスへ向かっている。
機内では夕食のサービスが終って、映画が始
まっていた。
S商事の社員、中島健一は、配られたイヤ
ホーンには手を触れず、スクリーンから目を
反らして、照明を消した暗い空間をぼんやり
見詰めながら、物思いにふけっていた。
その彫りの深い横顔は、三十六才の年齢の割
には、やや老けた感じである。
丁度二年半前の、あの、悲惨な交通事故の
模様が目に浮かんだ。社長の息子が運転する
ベンツの助手席で、うつらうつらしていた中
島の耳へ、突然、あたりを切り裂く様な子供
達の悲鳴が飛び込んで来た。
何時の間にか居眠り運転になっていた車が
ハイキング帰りの子供達の集団の中に、まと
もに突っ込んだのである。
慌てゝ急ブレーキがかけられたが、手遅れ
だった。結局、三人の子供が死亡し、十名以
上が重軽傷を負うと云う大事故になった。
あまりの事に呆然としていた中島は、事の
重大性を十分認識する暇も無く、車の後席に
乗っていた社長と、彼の義父に当たる広岡専
務の二人に説得されて、運転していた社長の
息子の身代りになることを、無理矢理承知さ
せられたのであった。
広岡専務には恩義があった。
常日頃、中島に目を掛けて抜擢してくれたば
かりか、一人娘の麗子の婿に据えて、自分の
片腕として遇してくれたのである。
不幸にも、麗子は結婚三年目で病を得て不帰
の人と成ったが、義父の広岡専務と中島との
仕事の上での結び付きは、変ること無く続い
ていた。
しかし、交通事故の規模は思っていたより
大きく、中島は社長の息子の身代りに、二年
の禁固刑を宣せられ、しかも執行猶予も付か
ず、実刑に服すことになったのである。
一ケ月前に、漸く、長かった刑期を終えて
久し振りに出社した中島を待っていたのは、
ロスアンジェルス支社への転勤命令だった。
彼は思わず耳を疑った。大学の独文科を出て
入社以来、国際部の欧州担当だった中島は、
ドイツ語こそ堪能だったが、英語はからっき
し駄目だったのである。
しかも、課長から主任を通り越して、一気
に平社員へ降格されている。現地での業務も
庶務関係補佐とあり、明らかに雑用係であっ
た。
「三年、いや二年程、死んだつもりで辛抱し
てくれ」
顔色を変えて抗議に来た中島に、広岡専務
は諄々とさとす様に続ける。
「君が社長の息子の身代りだった事は、あの
車に乗っていた我々だけの秘密なんだ。・・
・・・と云う事は、社内的には君は表面上、
会社に莫大な損害を掛けた前科者と云うこと
になるんだ」
「莫大な損失ですって?」
「そうさ。会社のイメージダウンはもとより
のこと、莫大な補償額を請求されたんだ。生
憎、あの車は購入した所で、未だ任意保険の
手続きが済んでいなかったから、殆どが会社
からの持ち出しになった。・・・・・勿論、
社用で運転中の事故だから、君個人の負担に
は成らないがね」
「当り前でしょう。これで、補償金まで請求
されるんだったら、私は何もかもぶちまけて
会社を訴えますよ!」
「だから、会社としては、体面上、君に何等
かの処分を言い渡さざるを得なくなってるん
だ。・・・・・二年後には、私が社長の後を
継ぐ事に内定しているし、ほとぼりも覚める
頃だから、君を本社の幹部にカムバックさせ
るつもりさ。だから、それ迄の間・・・」
「判りました。刑期が二年延びたと思って、
我慢しましょう。まあ、何と言ったって、刑
務所に居るよりは、ましですからね」
「済まん。その代り、二年後にはきっと埋め
合わせをするからな」
一応、納得はしたものゝ、中島の気分は晴
れなかった。親分の身代りで刑期を務め上げ
たやくざが、出所後直ちに組の幹部に抜擢さ
れる、ありふれたストーリーを我身にダブら
せて見たが、これから二年の@お預けAは、
何と言っても永かった。
もうひとつ、中島を憂欝にしているのは、
現在S商事のニューヨーク支店長をしている
のが、元彼の同僚で、とりわけ仲の悪かった
曽我雅夫だったことである。
勿論、中島の赴任先はニューヨークと反対側
の西海岸にあるロスアンジェルスで、飛行機
でも五時間近くかかる距離にある。
しかし、同じアメリカの中のことゆえ、顔を
合せる機会もあるであろう。平社員に降格さ
れたみじめな姿を見られるのは、何と言って
も辛かった。・・・・・いや、問題は曽我雅
夫自身よりも、その妻である佐知子だった。
かっては中島の恋人であり、結婚の約束ま
でしながら、広岡専務の娘婿になる為、一方
的に彼が捨てた女である。
もし・・・・・もし、彼女に今度の事を知ら
れたら、どんな仕返しをされるかと思うと、
空恐ろしかった。
飛行機の横揺れが急に激しくなって、突然
機内アナウンスが流れる。
「当機は只今、気流の悪い所を通過してをり
ます。皆様には、お座席のベルトをしっかり
お締め下さる様に、お願い申し上げます」
ハッと現実の世界に引き戻された中島は、
慌てゝ横のシートベルトをまさぐった。
・・・・・・・
ロスアンジェルス空港の広い国際線到着ロ
ビーは、ひと握りの出迎えの人達を除くと、
案外閑散としている。
当然、出迎えを期待していた中島は、あた
りにそれらしい人も見付からず、軽い困惑を
覚えて佇んでいた。
「中島さん・・・・・ですね?」
背中から声を掛けられて振り返ると、大き
なサングラスを掛け、派手な色のスーツを着
た日本人の女が立っていた。
年の頃は二十五、六であろうか、大柄なボ
リュームのあるグラマーで、顔も、張りのあ
る黒い目に官能的な赤い唇が印象的である。
多少、ツンと澄ました冷い所があるが、中々
の美人だった。
「私が中島ですが・・・・・」
「S商事ロス事務所の樋口圭子です。三年前
にこちらの大学を出て入社して以来、ずーっ
と庶務を担当しているんですよ。・・・・・
じゃあ、アパートまで送りますから、今日は
ゆっくり休養して時差を取って下さい」
樋口圭子の運転するムスタングは、フリー
ウエィを一路北上し、ロスの衛星都市のひと
つであるサンタモニカ市に入った。
海岸沿いの目抜通りに沿って、オフィスビル
やホテルが立ち並んでいる。
S商事の事務所のあるビルの裏手には、グ
リーンに囲まれた住宅地が拡がっていた。
その中程に、二階建てのモーテル風の建物が
ある。ワンベッドルームの独身者向けのアパ
ートだが、広い居間にキッチン、バス、トイ
レ完備の、独りで住むには贅沢とも思える程
ゆったりした間取だった。家具や台所用品も
備え付けで、所謂、ファーニッシュド(家具
付き)アパートメントである。
樋口圭子は、その裏手のパーキングレーン
に車を止めた。
「ここよ、あなたのアパートは。オフィス迄
歩いて行けるし、スーパーマーケットもその
途中にあるわ。車を買う迄の生活に、不自由
はない筈よ。・・・・・ハイ、これがキー」
車のトランクから旅行鞄を取り出し、建物
に入りかけた中島の背に、車の中から圭子の
声が追いかけて来た。
「ショールダーバッグを忘れてるわよ」
「あゝ、それ、君が部屋迄持って来てくれ。
見た通り、両手が塞がってるんだ」
空港でもそうだったが、出迎えに来たくせ
に、一切、荷物の運搬を手を貸そうとしない
彼女の態度に、いささかムカッとしていた彼
は、ぶらっきぼうに答えると、サッサと中へ
入って行った。
キーに刻まれた部屋番号は、二階の一番奥
だった。ドアを開けたまゝ、荷物を運び込ん
で、居間のソファーに腰を下すと、旅の疲れ
がどっと出て来た。
バタンとドアがやゝ激しい音を立てゝ閉ま
り、樋口圭子が彼のショールダーを持って近
付いて来た。
「御苦労さん。そこへ置いといてくれ」
中島は顎をしゃくって、傍の机を差す。
途端に、激しい平手打が彼の頬に炸裂した。
事態が良く飲み込めず、キョトンとする彼の
前に、圭子が立ちはだかった。
「上司に向かって、その態度はなに!」
「じょ、上司だって?」
「そうよ。私はあなたの上司よ。あなたは、
これからは私の下で働くのよ。・・・・・・
辞令を見たんでしょう。あなたの仕事は、庶
務関係補佐、つまり、私の補佐なのよ」
圭子の高飛車な言葉に、中島健一の顔は、
みるみる真っ赤になった。
〔こ、こんな若い女の下で働くなんて・・・
・・畜生! いったいどうなってるんだ!〕
中島は思わず心の中で呟いた。
「明日、オフィスで言うつもりだったんだけ
ど、私達の間の言葉使いを、この際決めて置
きたいの。・・・・・私には、これからは常
に敬語を使うこと。そして私のことは、職場
では@チーフAって呼んで頂戴。プライベー
トの時は、@樋口さんAで良いわ。あなたの
ことは、これからは@お前Aか@中島Aって
呼び捨てにするわ。いいわね」
有無を言わせぬ高圧的な態度である。
ソファーに座った中島を上から見下ろす圭子
の整った顔には、はっきりと、自分の目下の
者に対する優越感が溢れていた。
力無く頷く中島の頬に、再び圭子の平手打
が見舞った。
「言ったでしょう。上司に返事する時は、は
っきりと敬語で答えるのよ」
無念の思いが、ぐっと彼の胸元に込み上げ
る。悔しさに目の奥がジーンと熱く成った。
「お前、明日は、朝八時迄に出勤しなさい。
オフィスは九時からだけど、皆の来る前に掃
除をするのよ。判った?」
「はい、わ、判りました」
思わず中島の声が震える。明日からこんな
小娘に、毎日、顎で使われるのかと思うと、
情けなさに目がくらむ思いだった。
ニンマリと笑みを浮かべて、くるりと背を
見せて立去る圭子の大きなヒップが、中島を
嘲笑うかの様に左右に揺れている。
〔刑期が二年延長されたと思って、我慢する
んだ!〕
中島は、呪文を唱える様に、滅入り込んだ
心の中で繰返していた。
翌日、時差のせいで早朝に目が覚めた彼は
眠れぬまゝに、未だ薄暗い海岸を散歩した。
熱帯を思わせる闊葉樹の並木道が、ビーチの
直ぐ上で風にざわめいている。サンタモニカ
の白い砂に打寄せる大きな波が、中島の心に
異郷でのほのかな旅愁を誘った。
近くのスナックバーで、馴れない英語に悩
まされながら、殆ど手真似で何とか朝食にあ
りつく。その後、腹ごなしに、今度は目抜き
のショッピング街をぶらつき、オフィスに着
いた時は、言われていた八時に未だ五分を余
していた。
ロックされたドアの前で佇んでいると、コ
ツコツとヒールの音を響かせながら、圭子の
姿が現われた。昨日と変って、グレイと黒で
統一したシックな服装である。
大柄な彼女は、ハイヒールを穿くと中島と背
丈も殆ど変らない。キリッと引き締まった顔
で、近付きながら中島をひたと見据えた。
思わず圧倒されて、
「お、お早うございます」
と言ってしまって、彼は心の中で、
〔しまった!〕
と舌打する。
「お早う」
圭子は大様に頷くと、バッグの中からキー
を取り出した。
「これは、お前用に作った合鍵よ。明日から
は、ひとりで先に来て、お掃除しなさい」
事務所は、入口に来客受付用の机がある外
は、多くの小間に分割されていて、それぞれ
が個室を持つレイアウトである。
応接室と大小二つの会議室の横の窓際に、樋
口圭子の机が置かれ、その前にそれぞれタイ
プを備えた秘書用の机が三つ、壁に沿って並
んでいた。
「いいこと、ここで働いている男性は、所長
さんを含めて五人。すべて日本人で、皆個室
を持っているわ。私の部下はアメリカ人の秘
書三人と受付の女の子が一人。それに、お前
よ。・・・・・お前は一番新米なんだから、
先輩の女の子達には、ちゃんと敬意を払って
服従するのよ。いいわね」
それから約一時間、圭子の指図のまゝに、
皆の机の上を拭き、灰皿を清める。コーヒー
カップや湯飲み茶碗を片付け、湯沸かし場の
流しで洗わされた。
幸い床掃除は、外部の業者が夜のうちに済ま
してある。
湯が沸き、コーヒーの用意が出来る頃、ボ
ツボツ皆が出勤して来た。
所長の大久保は、昔中島と同じ国際部だっ
たが、仕事上の関係は無く、単に顔見知りだ
ったと言うに過ぎない。
三十半ばではあったが、中島より確か二つ年
下の筈である。しかし、圭子に連れられて挨
拶に行った中島に向かっては、いかにも尊大
な態度だった。
「君も、自分の不始末で刑務所まで行ったん
だから、首にされて当然なんだ。それを、お
情けで会社に置いて貰えるのは、広岡専務の
おかげだぞ。しかし、こゝでは会社に迷惑を
かけた償いに、懲罰勤務に服して貰う。・・
・・・君は樋口圭子の部下として、彼女の命
令には絶対服従するんだ。いいな!」
「懲罰勤務?・・・・・・それは初耳です。
そ、そんな辞令は受取っていません!」
中島は懸命に抗議した。
「そりゃ、辞令には書いてないさ。それは君
の身柄を引受けた曽我ニューヨーク支店長の
判断だ。このロス事務所は曽我さんの指揮下
にあるんだからな」
中島は、漸く自分の迂闊さに気付いた。
やはり、昔の同僚の曽我の差し金だったので
ある。そして、その背後には、恐らく、あの
佐知子が居るに違いなかった。
しょげ返った中島は、圭子に連れられて、
次々と他の社員達の所へ挨拶に回る。
皆、自分よりずっと若い連中だった。
三人のセクレタリー達、バーバラ、コニー
それにフィリス、そして受付のジェニーは、
圭子の流暢な英語の紹介に頷き、物珍しそう
に彼をジロジロ眺めた。
「今、お前のこと、何て紹介したか判る?
フフッ、お前は、みんなのサーバントとして
働くと言ったのよ」
「サーバントって?」
怪訝な顔の中島に、圭子は露骨に軽蔑の色
を見せた。
「馬鹿ね、召使いよ。みんなに命令されて、
雑用をするのよ。それから、彼女達からのお
前の呼び名はケンにしたからね」
やがて、あちこちの机で電話のベルが鳴り
始め、タイプが音を立て出すと、オフィスは
一斉に活気付く。
てきぱきと書類の整理を始めた圭子の前に、
中島はおずおずと進み出た。
「どうしたの? 何か用?」
「あのお・・・・・私の机は・・・」
「ウフッ、言うのを、すっかり忘れてたわ。
あのね、お前の机は無いの。雑用係に机は要
らないのよ。・・・・・そおね、用の無い時
は、そこの壁の前に立っていなさい」
圭子は、ニヤニヤ笑みを浮べながら、顎を
しゃくって横手の壁を指した。
余りの扱いに、中島の頭にカーッと怒りがこ
み上げる。しかし、それをぐっと押さえて、
壁の前に立ったが、所在無さと恥ずかしさに
思わず顔の赤らむ思いだった。
丁度、立った場所が、三人のセクレタリー
達の正面である。彼女達の中島を見る視線に
は、明らかに軽蔑の色が浮かんでいた。
「クックッ、まるで、お前、小学校の生徒が
教室で立たされている様に見えるわよ。・・
・・・でも、お前の今の身分には、ピッタリ
お似合よ」
圭子の、からかう様な意地の悪い言葉に、
中島の顔は屈辱と悔しさで紅潮する。
しかし、下手に逆らって首にでもされては、
カムバックの夢もそれまでである。
中島としては、どんな仕打を受け様と、耐え
忍ぶしかなかった。
「ヘイ、ケン! ブリングミー、コーヒー」
大柄なバーバラが、横柄に顎をしゃくる。
みじめさが、ぐっと込み上げたが、スゴスゴ
と湯沸かし場へ行って、コーヒーをカップに
入れて持参する。
「サンクス」
バーバラはタイプの手を休めず、チラッと
目で机の上を指す。そこへカップを置くと、
すかさずフィリスが声を掛けた。
「ケン! ミー、ツー」
自分にも持って来いと言うのである。
同じことなら、一諸に言ってくれたら良いの
にと、中島は内心穏やかでなかった。
フィリスにコーヒーを持参すると、今度は
コニーが、待ってましたとばかり、自分の分
をオーダーする。中島は漸く自分が彼女等に
良い様に嬲られているのに気が付いた。
圭子がおかしそうに口を出す。
「お前、仏頂面は止めなさい! ちゃんと召
使いらしく、愛想笑いを浮かべるのよ。・・
・・・それと、命令された時は、きちんと返
事をすること。英語ではね@イエス ミスA
と言えばいいの。判ったわね」
「ハイ、判りました」
「そう、その調子よ。上司に対する敬意を、
受け答えに現わす様にしなさい。・・・・・
それはそうと、私にもコーヒーよ。受付けの
ジェニーにもね」
こうして、掃除とコーヒーの給仕に始まっ
た一日は、中島にとって、曾て経験したこと
の無い屈辱的なものだった。
昼時になると、社員は連れ立って地下のレ
ストランやカフェテリアへ行く。しかし、圭
子は、中島にオフィスの留守番を命じた。
「皆が出払うと不用心だからね。お前はドア
の所に立っておいで。お前の食べる分は持っ
て帰ってやるよ」
そして、外出した圭子は、小一時間程して
やっと、セクレタリー達と賑やかにしゃべり
ながら戻って来た。
そして、手に下げた袋を中島に差し出した。
「ホラ、お前のために持って帰った食物よ。
中身は私達の食べ残しだから、お金は要らな
いわ。こちらではね、食べ残しを犬にやるか
らって持って帰る人が多いのよ。だから、レ
ストランでも心得てて、ドギーバッグって言
うと、ちゃんと詰めてくれるの。・・・・・
もっとも、お前みたいな召使いが犬の代りに
食べるとは思ってないから、このレストラン
では、頼むと豚の飼料用の罐に捨てた他の客
の残飯も、混ぜてくれるのよ」
圭子は、いたずらっぽい目で、中島の反応
を窺う。唇を微かに震わせながら、黙って受
取ろうとした中島の頬に、ピシッと彼女の平
手打が走った。
「お礼が聞こえないわよ! お前、未だ自分
の身分が判ってないのね。いゝわ、こっちへ
おいで!」
圭子は、自分の机の前に中島を連れて来る
と、紙袋を床の上に置いてビリッと裂き、中
身をさらけ出した。
こま切れの肉や、色とりどりの野菜の切れ端
が、サラダのドレッシングや唾液で、ぬめぬ
めと光っている。歯形の付いたパン切れに、
ケチャップで赤く染まったマカロニが巻き付
き、見た目に不潔感を誘った。
「さあ、こゝで、四つ這いになって食べるの
よ。もともと犬用に持って帰ったんだから、
お前も食べている間は、犬にお成り!」
中島は辛うじて自分を制して、圭子の足元
で四つ這いに成ったものゝ、全身の血が逆流
する思いだった。
不潔感をこらえて、目の前の残飯に顔を寄せ
る。しかし、いったん口を付けると、やけ気
味に、ガツガツと飲み込む様にむさぼった。
空腹だったこともあるが、一刻も早く食べ終
って、この屈辱から開放されたい思いが、見
た目に浅間しい食べ振りとなった。
「ヘーイ、ルック! ケン イズ イーティ
ング ライク ドッグ」
(見て! 健が犬の様に食べてるわよ!)
コニーが、大声で仲間を呼んだ。
「オー、ジャスト ライク ア ピッグ!」
(まるで、豚よ!)
バーバラも呆れ顔である。
「どんな顔して食べてるのか、見て上げる」
圭子が、いきなり、中島の髪をむずと掴む
と、ぐいっと顔を仰向けさせる。
口の周りに食べ糟を付けた顔が、皆の視線の
下でくしゃっと涙に歪んだ。
「フフッ、情けない顔してる! どおお、お
いしい? そうだ、私がお味を付けて上げる
わね」
圭子は、頬をすぼめると、唾をたっぷり溜
めて、中島の目の前の残飯の上に、ペッと吐
き掛けた。そして、中島の髪を掴んだ手で、
その上へ彼の顔を押し付ける。
「ウウッ、ウッ、ウッ、ウーッ、ウーッ」
彼の口から洩れた呻き声が、長く尾を引く
嗚咽に変る。しかし、漸く諦めの念が彼の心
に拡がったのであろう、やがて、再びピチャ
ピチャと舌を鳴らして、圭子の唾混じりの残
飯を食べ始める音が響いた。
中島の屈服を目のあたりにして、圭子は思わ
ずニヤリとする。
驕慢さをその表情に漲らせて、圭子は足を
上げ、ハイヒールを彼の後頭部に載せた。
セクレタリー達のクスクス笑いが、漣の様に
拡がる。
女の靴に頭を踏み付けられたまゝ、残飯を
咽喉に運ぶ中島の目からは、悔し涙がポタポ
タと皿の上に落ちる。食べ終って皆の前に、
みじめな顔をさらした時の彼の目は、まるで
兎の目の様に真っ赤だった。
午後も、女達から次々と、様々な雑用が命
じられる。英語が未だ十分聞き取れない中島
は、命令を聞き違えてヘマを繰返した。
すっかり中島を馬鹿にし切った女達は、圭子
を真似て、面白半分にヘマの度に、彼の頬を
平手打にし始めた。
その度に、圭子は彼女等を止めるどころか、
笑いながら、解説を加えた。
「バカね、バーバーラは灰皿を持って来いと
言ったのよ。それをライターを持って行くか
ら叩かれたんじゃないの。フフフ」
といった調子である。
そうかと思えば、コーヒーブレーク(中休
み)の時に、コニーがニヤニヤ笑いながら、
何やら早口で中島に問いかけるのに、訳も判
らず、「イエス」と答えると、ワッと笑いが
はじけた。
「クックックッ、お前はコニーが@女に命令
されたら尻の穴でも舐めるのかAと聞いたの
にイエスと答えたのよ。皆にいい笑い者にさ
れたってわけ」
圭子の説明で、漸く如何に自分が彼女等に
蔑まれているかを、初めて悟る始末だった。
退社時間が近くなると、圭子はバッグを手
に、顎をしゃくって中島について来いと命じ
る。しかし、彼は圭子が女子トイレに入って
行くのを見て、思わず足を止めた。
「ついて来るのよ。こゝはうちの会社専用な
んだから、大丈夫よ。さ、早く!」
ドアを半開にして、圭子がいらだたしそう
に叫ぶ。女子トイレの中は広々として、片側
に鏡張りの化粧台を兼ねた洗面所が設けてあ
った。
「ここに四つ這いに成って、私の椅子になる
のよ!」
圭子はショックを隠せない中島の顔を眺め
て、ニンマリする。
ペタンと、両手両膝を冷たいタイルの上に付
いて、四つ這いになった中島の背に、女の肉
付きの良い尻が、じわっと重みを掛けた。
時間が経つにつれ、その重さの感覚は次第に
度合を増し、中島の手首と膝に、痛みに似た
だるさを拡げる。一方、圭子は悠々と化粧に
余念がなかった。
その内、セクレタリー達が、一人、二人と
入って来て、化粧台が満員に成った。
皆、圭子の人間椅子にされている中島を見て
大仰な驚きの声を上げ、笑い出す。そして、
しかめっ面で重みに耐える彼の顔を覗き込ん
では、又、笑い転げた。
やっとのことで、圭子の化粧が終り、背か
ら重みが消える。しかし、ホッとしたのも束
の間だった。
「メイ アイ ユース ヒム?」
(私も彼を使っていい?)
隣で口紅を塗っていたコニーが、圭子に聞
く。彼女が頷くや途端に、中島の背には、ま
たしても重圧がかかった。しかも今度は大柄
のヤンキー女である。
五分も経たぬ間に、限界が来た。
突然、がっくり肘が折れて、中島の身体は前
のめりにひしゃげた。背中のコニーは、たま
らず横向けに転げ落ちる。
悪いことに、その拍子に手に持った口紅が、
彼女の白いスカートに、べっとりと赤い染を
付けた。
みるみるコニーの顔が怒りで紅潮する。
「ユー、フール!」(このバカ!)
身を起したコニーは、中島を一喝し、傍で
見守っていた圭子を振り向いた。
「キャン アイ パニッシュ ヒム?」
(彼を罰していいですか?)
「イエス」
圭子は、ゆっくりと頷く。
「ヘイ、ケン! キス マイ アス!」
(健、私の尻の穴にキスしなさい!)
圭子が、ニヤニヤ笑いながら通訳した。
四つ這いのまま、余りのことに呆然としてい
る中島を、コニーは足を上げて蹴り倒すと、
仰向けに転がった彼の胸の上に腰を据える。
中島が抵抗しないことを確めて、尻を浮かし
パンティーをずらした。
半ば観念した彼の表情を覗き込みながら、
ニヤリとすると、そのまゝ腰をずらして、そ
のいやらしい程大きな尻で中島の顔を覆う。
外人特有の強烈な体臭が、むせる様な尻臭と
ミックスしてツーンと鼻を刺した。
気も狂わんばかりの悔しさと情けなさが、
胸を一杯に満たし、涙腺を刺激する。
「ヘイ! キス アンド リック」
(さあ、キスして、そして舐めるのよ!)
じっとりと湿ったその括約筋で、彼の唇を
しっかりと捉えると、コニーは催促する様に
尻を揺すって彼の唇を蹂躙する。
無念さをこらえて、彼は唇の上の粘膜に舌
を当てた。そこに付着していた腐敗した排泄
物の糟が、ピリッとする酸性の刺激を舌先に
与えながら、じわじわと口中に侵入する。
それは、文字通り汚辱と屈従の味であった。
皆の見守る中で、たっぷりと中島に尻の穴を
舐めさせたコニーは、可成り経って、漸く彼
の顔から腰を上げた。
口をだらしなく半開にして、とろんとした
目で横たわる中島の顔を、上からじっと見下
ろしたコニーは、軽蔑を露わにして、ペッと
ばかり彼の顔面に唾を吐きかける。
ハッと我を取り戻した中島は、慌てゝ手を
後ろに突いて身を起した。鼻の上のコニーの
唾が、そのはずみでツーッと流れて、汚れの
泌み込んだ唇に達する。
その無様な有様に、周囲の女達からいっせ
いに嘲笑が浴せられた。
こうして初まった中島のアメリカ生活は、
交通事故後の刑務所での日々と較べものにな
らぬ程、辛く屈辱に満ちたものだった。
こんなことなら、アメリカくんだりまで来る
んじゃなかったと臍を噛んだが、もう手遅れ
である。
最初の日のこうした出来事で、中島をすっ
かり馬鹿にし切ったセクレタリー達は、それ
以来、横柄な態度で、彼をまるで奴隷の様に
追い使った。
昼の食事は、初日以来毎日、彼女等の持ち
帰る残飯を、犬の様に四つ這いで食べさせら
れる。慣れるに従って、抵抗感こそ薄れて来
たものゝ、女達の足元で、彼女等の軽蔑の視
線を浴びながらの昼食は、その度に彼の屈辱
感とみじめさとを新たにした。
ヘマの度に、彼女等に平手打にされるされ
るのは相変らずだったが、失敗の度合によっ
ては、もっと厳しい罰が用意されていた。
つまり、女子トイレでコニーにされた様に、
彼女等の尻の穴を舐めさせられるのである。
流石に、これには中島も反発した。
しかし、その度に圭子が上司風を吹かせて、
彼の抵抗を封じてしまう。
このオフィスで勤務を始めて二週間も経たぬ
間に、中島は女達全員に次々とアヌスを味わ
される羽目になったのである。
しかし、流石にヤンキー娘は其々に個性的
である。中島に、その屈辱の行為を強いるス
タイルも様々だった。
バーバラは、彼を応接室に連れ込んで、ソフ
ァーに身を沈めながら、股間に彼の頭を挟み
込んで、たっぷり時間を掛けて汚れたアヌス
を舐めさせる。ジェニーは中島を床に正座さ
せておいて、その前で尻を捲くり、彼の顔に
尻の割れ目を押し付けた。
フィリスは、片足を椅子に掛けて股を拡げ、
中島の髪を掴んでスカートの中に、彼の頭を
引き込んだ。
肉を常食とするせいだろうか、彼女等の股
間の臭気は、それぞれ異なってはいるが、い
ずれも強烈で彼の頭をクラクラさせた。
こうした屈辱を繰返し強いられる内に、中
島の彼女等に対する態度は、目に見えて卑屈
に成って行った。
アメリカの会社は、大小を問わず土、日曜
は休日である。中島も最初の週末は、予想外
にみじめな勤務のショックで、遠出する気に
もならず、アパートの室内を整理したり、近
くの商店街で日用品をショッピングしたりし
て過ごした。
二回目の週末を翌日に控えた、次の金曜日
のことである。退社時間を前にして、中島は
何時もの様に女子トイレで、圭子の椅子にさ
れていた。毎日のことなので、手足が慣れた
せいか多少耐久力がついて来て、辛さも最初
の頃と較べると大分ましである。
圭子は、化粧の手を休めずに、尻の下の彼
に話し掛けた。
「お前、明日の土曜日は、朝から私のアパー
トに来るのよ。一日中、掃除と洗濯に使って
やるからね」
「で、でも、週末は勤務外ですから・・・」
「勤務外だから、どうだって言うの? その
位、上司にサービスしたっていいでしょう。
それとも、私にもっといじめられたいの?」
「い、いゝえ。それじゃ、伺います」
「@それじゃAとは何よ! お前、心掛けが
悪いわよ。犬だって、主人に呼ばれたら、尻
尾を振ってとんで来るわ。お前みたいな身分
の男は犬並みなんだから、喜んで来なくっち
ゃ駄目よ。・・・・・ホラ、返事は?」
「は、はい。喜んで伺います」
口ではそう答えたものゝ、圭子に犬並みと
蔑まれた上に、週末までプライベートな用事
にこき使われるのかと思うと、ぐっと悔しさ
が込み上げた。
翌日、教えられた通りにバスに乗り、地図
を頼りに圭子のアパートを訪れた。
一人暮しにしては贅沢な間取りで、広いリ
ビングルームに続いて、書斎コーナーつきの
ベッドルームがあり、バスルームには別に独
立したシャワーコーナーも設けてある。
しかし、暫く掃除をしてないと見えて、あち
こち汚れが目立っていた。
「お前、パンツひとつになりなさい。そして
バスルームから始めるのよ。ドアの内側や壁
の上の方も忘れずに汚れを落すこと。それが
終ったら、そこに置いてある篭の中の汚れも
のを洗うのよ。最初に手で十分揉み洗いして
から、洗濯機に入れる様にするんだよ」
圭子は中島に指示を与えると、自分はリビ
ングルームのソファーに横になってテレビを
見ている。言われた通りに、掃除に取りかか
ったものゝ、慣れない仕事で意外に時間が掛
かった。
バスルームのタイルをやっとのことで磨き
終えて、汚れものの篭を開けると、ムッと饐
えた臭いがあたりに拡がった。
色とりどりのパンティーやブラジャーそれに
ソックスが目に眩しい。何週間分だろうか、
可成りの量だった。
ふと、つまみ上げたパンティーの股間のあた
りが、ドキッとする程汚れている。
長い間禁欲生活を続けて来た中島に取って、
それは、あまりにも刺激的だった。
思わず、彼はそれを顔に当てゝ大きく息を吸
い込んだ。ツーンと女の性臭が鼻の奥を刺激
し、頭がクラクラッとする。
それは、この二週間、繰返し嗅がされたヤン
キー女達の強烈な股臭とは異なり、男心をそ
そる甘酸っぱい女性ホルモンの香りだった。
〔これが、あの高慢な圭子の秘密の臭いか〕
中島は、しばし、めくるめく想いに浸る。
「クックックッ、そんなに、その臭いが気に
入ったの?」
突然、彼の後で圭子の声がした。
別室でテレビを見ているとばかり思っていた
彼女が、何時の間にか背後に立っていたので
ある。
「アッ、す、すみません・・・・・」
中島は、振り返るなり、圭子の足元にひれ
伏して額を床に擦り付けた。
「フフッ、漸く、身分をわきまえる様になっ
たわね。・・・・・私の許しも得ないで、い
やらしい真似をした罰は覚悟している様ね。
・・・・・サーッてと、どうしようかなぁ。
そうだわ。お前、その中のパンティーを全部
お前の口の中で清めなさい。汚れを全部舌で
吸い取るのよ。・・・・・ウフッ、最初はこ
れがいいわ。我ながら、ひどい汚れだこと。
サー、私の目の前で始めて御覧」
圭子は、一番汚れのひどいパンティーを摘
まみ上げると、足元の彼に口を開けさせ、そ
の中に押し込む。
そして、もうひとつ別のパンティーの股間の
汚れた部分を彼の鼻に押し当てた。
「ホーラ、こうすれば、臭いと味を同時に覚
えられるわ。・・・・・どおーぉ? おいし
い? 臭いは気に入った?・・・・・お前は
本当にいやらしい奴だこと!」
答えの代りに、クチャクチャと口の中でパ
ンティーをしゃぶる音が響く。
こうして、十枚余りのパンティーの汚れが
次々と彼の口中に吸い取られて行った。
洗濯の次は、各部屋の掃除である。
フーバー製バッグ付の絨緞用の掃除機で、部
屋の隅々まで清める。続いて台所の床を磨き
にかかった時には、そろそろ正午が近い。
突然、玄関のベルが鳴った。
ハッとソファーの上で身を起した圭子は、
心当りがあるらしく、やや慌て気味に中島を
促して、ベッドルームの戸棚に隠れる様に命
じた。所謂、ウオークイン・クロゼットと呼
ばれる広い衣装戸棚である。日本で言えば納
戸に相当するスペースだった。
扉を閉めて、玄関に出て行った圭子の足音
が、再びパタパタと早足で戻って来て、中島
の靴が投げ込まれた。
やがて、玄関で若い男の声がした。明らか
にアメリカ人の英語である。
圭子の英語も同様に流暢だった。二人の会話
が陽気に絡み合いながら、寝室の隣のリビン
グルームに移って行く。
壁ひとつ隔てた戸棚の中からは、二人の会話
は手に取る様に聞こえるが、残念ながら中島
の英語力では歯が立たない。
しかし、声の調子から、二人は可成り親しい
間柄ととれた。
会話を続けながら、台所で冷蔵庫の戸が開
く音がして、続いてジャーッといためものを
している気配である。暫くすると、賑やかに
食事が始まった。
笑い声を混えた会話の調子から、圭子の浮き
浮きした気分が、壁越しに伝わってくる。
中島の腹がグーッと鳴った。
ゆっくり時間を掛けた昼食の後、ソファー
でくつろいだ二人は、コーヒーカップにスプ
ーンの音をさせながら、会話を続けた。
圭子のはしゃいだ声が突然途絶え、そのま
ま静寂の中でソファーの軋みが微かに続く。
明らかに二人が抱き合ってキスを交している
気配だった。
やがて、二人の足音が、あらあらしく寝室
の中にもつれ込んで来た。中島は思わず身体
を固くしたが、二人はそのまゝベッドの上に
身体を投げる。
激しい圭子のあえぎ声に、男の荒々しい呼
吸が絡み、ベッドが激しく揺れる気配が戸棚
の中まで伝わって来た。
中島の身体も、我知らず熱くなっている。
圭子の声のピッチが次第に高まり、一連の
悲鳴に似た小さな叫声が響いた。
やがて訪れた静寂の中で、男の身繕いする
気配に混じって、圭子のもの憂げな鼻声がす
る。男のソフトな応答の声と共に、キスの音
がして男が出て行った。
玄関のスチール製のドアがカタンと音を立
てて閉まると、圭子の声がした。
「お前、出ておいで!」
戸棚の中でへたり込んでいた中島は、立ち
上がってそろそろと外へ出た。
ベッドの上には、乱れた毛布で身体を覆った
圭子が横たわっている。傍の床には、脱ぎ捨
てた衣類が散らばっていた。
「お前、その裾からもぐっておいで」
圭子が中島に向かって顎をしゃくった。
一瞬、真意が掴めずキョトンとする中島に、
圭子は〔早く!〕と目で促す。
恐る恐るベッドの裾に近付いた彼は、毛布を
持ち上げて頭を差し入れ、そろそろと身をも
ぐらせた。
「フフフ、そこでストップよ」
圭子は、中島の頭が腰のあたりに来たとこ
ろで、彼の髪を掴み、足を開くと彼の顔を股
間に挟み込んだ。
プーンと生臭い刺激臭が鼻を突き、ぬるっと
した粘液が唇を濡らす。中島は思わず呻き声
を洩らした。
「さあ、私達の愛し合った跡を、お前の舌と
唇で清めなさい。・・・・・さ、早くしない
とシーツが汚れるわよ」
それは、彼の男としての誇りを完全に粉砕
する残酷な命令だった。
しかし、この二週間、職場で圭子にいじめ抜
かれた経験が、彼から圭子の命令に反抗する
気力を奪い去っていた。
口を開くと、彼女のクレバスからその生暖か
い粘液をすすり込む。女の分泌液に男の精液
がミックスされて、彼の口中に生臭い屈辱の
味を拡げた。
圭子は彼の髪から手を離すと、太股の付根
に両手を当てがって、ぐっとクレバスを開く
様にする。途端に、膣に溜っていた液がどっ
と溢れ出した。それをズズーッと音を立てゝ
吸い込みながら、余りのみじめさに彼は胸の
潰れる思いだった。
「ホラッ、舌を使うのよ。そして、私をもう
一度満足させなさい!」
圭子は太股の内側で、男の両頬を催促する
様にピタピタと叩いた。その余りにも馬鹿に
し切った態度に、彼も一瞬カッとしたものゝ
直ぐ無気力な諦めがそれを冷やす。
男の舌が、ラビアの内側をかき分ける様にし
て弱々しく上下し始めると、圭子は男の屈服
を敏感に感じ取って内心ニンマリした。
〔フフッ、とうとう征服してやったわ。舌の
動きも悪くなさそうだから、ついでに、私の
セックス奴隷に仕込んでやろうかしら〕
心の中で呟くと、圭子は再び男の髪を掴み
無言で舌の強さの指示を与える。
顔を、強く股間に押し当てた時は〔もっと強
く〕引き離す様にした時は〔もっと弱く〕と
云った調子である。
従順に反応する男の舌に、圭子は満足気に目
を閉じると、それを自在にコントロールしな
がら頂点へと登り詰めて行った。
それから可成時間が経って、リビングルー
ムのソファーで煙草を吸う圭子の足元に、四
つ這いになって残飯を食べる中島の姿があっ
た。もう時計は午後三時を回り、漸く与えら
れた遅い昼食だった。
「お前の舌は中々素質があるわよ。これから
も必ず週末に使ってやるからね。・・・・・
フフッ、犬みたいに尻尾を振って、舌で御主
人様の御機嫌を取るんだよ」
圭子は、足元の中島の頭の上にスリッパを
穿いた足を載せる。後頭部に女の足を受けて
残飯を頬ばる中島には、その重みを通じて圭
子の驕慢さと、彼への蔑みが伝わって来た。
一時間を越すクニリングスを強制されて、舌
の付根が充血し、鈍い痛みさえ感じられる。
これからも、毎週あゝやって使われるのかと
思うと、情けなさに涙が零れた。
それから約一ケ月後、中島は所長の大久保
の部屋へ呼ばれた。勿論、上司である圭子も
付き添っている。
「君も樋口君に仕込まれて、大分慣れて来た
様だな。週末には、彼女のアパートへ掃除に
通っているそうじゃないか」
「は、はい・・・・・」
「そこで相談だが、俺達駐在員の家庭では、
毎週一回、ホームヘルパーを雇って家の掃除
をして貰ってるんだ。しかし、最近の経費節
減の方針で、今月から、その費用が会社から
出なくなったんだよ。・・・・・もう、判っ
ただろう。君は、オフィスの仕事は午前中だ
けでいいから、昼食後は毎日、各家庭の掃除
をして貰うことにする。いいな」
「で、でも、それは、その、プライベートな
ものじゃありませんか。私の勤務はオフィス
だけで・・・・・」
「何を言ってるんだ。これは所長命令だぞ!
・・・・・それに、会社の費用を節減するん
だから、立派な仕事さ。オフィスで女のケツ
の穴を舐めてるより、ずっと会社の役に立つ
さ。ワッハッハ」
所長の大久保は、真っ赤になって頂垂れる
中島を見て大笑いした。
翌日、中島は残飯の昼食を終えると、圭子
に伴われて所長の自宅を訪れた。
家は、白いコロニアル・スタイルの二階建
てである。その優美な南部風の造りが、広い
グリーンの芝生に囲まれて陽に映えていた。
玄関のポーチの周りには花壇が設けられ、色
とりどりの花が鮮やかである。
広い居間には、大久保夫人の他に四人の社
員の夫人達が集まっていた。
中島は圭子に伴われて、中央のソファーにく
つろいでいる五人の夫人達の前に進んだ。
「中島、お前はそこの床に正座して、皆さん
に御挨拶なさい。ちゃんと頭を床に擦り付け
てお辞儀するのよ」
初対面の女達の前で、圭子にズケズケと命
令され、彼女等の蔑みの視線を受ける。
それも、彼より若い女達に対し、屈辱的な挨
拶を強制されるのである。
床に平伏する中島の肩が、悔しさに細かく震
えるのも無理なかった。
「この男、昔は課長だったんですってね。今
は、あなたの言うままの様だけど、私達の命
令にちゃんと従うかしら?」
大久保夫人は、いささか心配そうである。
その、ふっくらした上品な感じの表情が中々
魅力的だった。
「御心配は要りませんわ。大事なのは、常に
この男に、自分の身分を思い知らせておくこ
とですの」
圭子は自信たっぷりに答える。
「でも、それを、どうやって?」
「この男を皆さんの手で、完全に征服してや
るんです。宜しかったら、私が見本を見せま
しょうか?」
「面白いわ! 是非、やって見せてよ」
横手の方に座っている活発そうな若い夫人
が、勢いよく発言した。スラリとした目の大
きい美人である。
「じゃあ、御覧になって。・・・・・お前、
覚悟なさい。奥様方の前で、私の辱めを受け
るのよ」
圭子は、床に正座している中島の髪を掴ん
で後へ引き倒す。不意をつかれて、仰向けに
転がった彼の胸の上に圭子が跨がった。
彼の目を見下ろす彼女の視線が、そして胸を
圧する女の尻の重みが、あのオフィスの女子
トイレでのコニーの辱めを思い起させた。
「これから何をされるか判った? フフフ、
さあ、皆さんにお前の正体を見て頂くのよ」
それは、まるで満座の中で女が強姦される
情景に匹敵していた。
夫人達の食い入る様な好奇の視線を痛い程
感じ、これから強制される屈辱の行為を念頭
にして、彼はカーッと血が頭に上るのを覚え
た。
予期した様に圭子の尻がグイッと前に移動
し、パンティーがめくられると同時に、ポッ
テリした女の尻が彼の顔を覆う。女の強い性
臭が鼻を付くのと、じっとり湿ったアヌスが
彼の唇を捉えるのと殆ど同時だった。
「サァー、お舐め! よく味わうんだよ」
圭子のスカートの裾から微かに覗いている
中島の顎がモゴモゴ動く。それを見詰める夫
人達の瞳に、抑えられぬ好奇心と激しい軽蔑
の色が浮かんだ。
「それじゃ、次は口を大きく開けて・・・・
そうよ、そのまゝじっとしているのよ」
圭子の尻が後方にずらされ、顎にぐっと重
みがかかる。
鼻孔からの呼吸がやや楽になった。
その時、ポタポタと彼の口中に生暖かい液体
が滴下する。ハッとして顔を横へ振ろうとし
たが、女の太股がしっかり彼の頭を挟んで固
定している。
その内、液の量が増すと同時に、何とも言え
ぬ臭気が鼻孔へ抜けた。
やっと圭子が口中に放尿してことに気付い
て、頭が火の様に燃える。しかし口に溢れる
液体を吐き出すことも出来ず、危うくむせそ
うになって漸くゴクリと咽喉を鳴らして飲み
込んだ。途端に勢いを増した水流に、ゴクリ
ゴクリと続けて咽喉が鳴る。
「ちょっと、見て! この男、圭子さんのオ
シッコを飲んでるわよ」
周りで見ている夫人達の間から、素頓狂な
上ずった声が響く。
初めてのめくるめく経験に、夢中で飲み続け
る中島にはその声も耳に入らない。
漸く水流が止まって初めて我を取り戻した。
「後を、しっかり舐めて清めなさい!」
圭子の尻が少し浮き、男の唇の上に局部を
擦り付ける様にゆっくりと揺れる。
チューッと残った滴を吸う音が如何にも淫靡
に響いた。
「まあ、随分情けない男だこと。とても人間
とは思えないわ。こいつなら、気兼ねなくこ
き使ってやれそうだわ」
漸く圭子の尻から開放されて、起き上った
中島を見下ろしながら、大久保夫人が蔑みを
露わにして呟く。
「ホラ、お前、奥様にこき使って頂く前に、
辱めをお願いするんだよ。サ、早く!」
圭子が、足で彼の背中をこずいた。
「お、お願いです。ど、どうか辱めを・・・
・・」
ピクッと身体を震わせた中島は、大久保夫
人の足先に額を擦りつけんばかりにして平伏
し、咽喉から哀れな声を絞り出した。
「圭子さん、私もやって見ようかしら?」
「奥様、お願い致しますわ。・・・・・サー
お前、ボヤボヤしないで、仰向けになりなさ
い!」
ゴロリと転がった彼の顔面が、今度は大久
保夫人のスベスベした白い尻に捉えられる。
「アラ、何だか、くすぐったい様な変な気持
だわ。こんな経験、私、初めて!・・・・・
でも、こいつ、私の小水をちゃんと飲むかし
ら?・・・・・ちょっと、口を大きく開けて
ごらん。そう、そうよ・・・・・じゃあ、行
くわよ!」
夫人の尻の下で、中島は思わず緊張した。
しかし、肝腎の汚水は一向に落ちて来ない。
「アラ、どうしたのかしら? 出そうなのに
出ないの。・・・・・やはり、心理的なもの
かしら?・・・・・でも、ウフッ、その代り
にオナラが出そう。圭子さん、どうしたら良
いかしら?」
圭子は、大久保夫人の耳に口を寄せて、何
やら小声で囁いた。フフッと笑う声と共に、
夫人の尻が目の前で揺れて再び急降下する。
アヌスが彼の鼻孔に押し当てられた途端に、
ブスッと低い音がして、夥しい量のガスが彼
の鼻腔から咽喉の奥に注入された。
ツーンと、悪臭が彼の脳神経を直撃する。
彼の背筋が電気をかけた様にピリピリッと震
えた。
「ウッ、ウーッ」
苦しげな呻き声が男の口から洩れる。周囲
の夫人達から一斉にクスクス笑いが起った。
残った臭気をたっぷり吸わされた後、夫人の
尻がスッと目の前から去ったが、屈辱の涙が
溢れた彼の目は焦点すら定まらない。
「私、次にやらせて頂戴!」
横手の活発な若夫人が、積極的に買って出
た。やゝスリムな体形ながら、肉付きの良い
ヒップが、茫然と横たわる中島の顔の上に重
ねられる。
どうしたことか、鼻がひん曲る程の異臭で
あった。女は、尻をゆっくりと小刻みに揺ら
せて、アヌスで繰返し彼の唇を蹂躙する。
そして、命ぜられるまゝに口を開けた彼の口
腔を、今度は紛れもない小水が直撃した。
苦みの混った塩味、それに臭味が加わって、
しつこい吐気を催す様な汚水だった。
さらに、終った跡を清める際に、ついでに
クレバス全体を念入りに舐めさせられた。
生理が近いせいか、ベットリと付着した澱物
の汚れを吸い取ると、独特の酸味が彼の口腔
一杯に拡がる。重なる屈辱に麻痺しかけた彼
の羞恥心も、流石に再び呼び覚まされ、新た
な涙を誘うのだった。
残りの三人の夫人達も、異常な情景に刺激
され、常に無く大胆になって、次々に中島の
顔面に跨がる。
ただし、心理面の抵抗無しに小水を彼の咽喉
に送り込んだのは、先程の若夫人に続いて、
一人だけ、それもチョロチョロと小量が断続
して注がれたにすぎなかった。
しかし、それぞれに汚れたアヌスのおぞま
しい臭気と味は、中島にみじめな屈従の諦め
を与え、一方、夫人達にとって、尻の下でう
ごめく男の舌の感覚は、中島を徹底的に軽蔑
し、彼を奴隷として扱う格好のオリエンテー
ションとなった。
その日以来、彼は、五人の夫人達の家を、
それぞれ週に一回、巡回することを義務付け
られた。つまり平日の午後は、必ず誰かの家
で、奴隷としてこき使われることになったの
である。しかも、週末は、依然として圭子の
アパートでの奉仕が課せられている。
広い家の掃除に、そして洗濯に、へとへと
になる迄働かされたあげく、足や腰のマッサ
ージまでさせられる。・・・・・・そして、
その内、彼の圭子への舌奉仕の模様が、どこ
からともなく欲求不満気味の夫人達に伝わっ
た。当然の成行として、彼女等も、自分達の
セックスの快楽の為に、彼の舌を使う様にな
る。・・・・・こうして、中島の毎日は、以
前にも増して、汚辱に満ち満ちたものとなっ
て行った。
こうして、一年の月日がまるで流れる様に
過ぎた。そして、とうとう彼にとって決定的
とも言える転落の日が訪れたのである。
その日の朝、彼は久し振りに、所長の大久
保の部屋へ呼ばれた。
「どうかね、元気でやってるかね?・・・・
・・所で、急な話だが、ニューヨーク支店長
の曽我さんが、君を直ぐあちらへ寄越してく
れと言って来たんだ。・・・・・つまり、君
は今日付けで、ニューヨークへ転勤すること
になったんだ」
思わず彼の顔はパッと明るくなった。
〔しめた! これで、今の屈辱の生活から脱
出できる。あと一年、ニューヨークで頑張れ
ば東京に戻れるんだ!〕
中島の頭には、例えこれからのニューヨー
クでの勤務がどんなに辛いものであっても、
現在の汚辱に較べれば、ものの数ではない様
に思えたのである。
「君も、折角、女達の役に立つ様になったこ
とだし、我々としては誠に残念だが、社命と
あれば止むをえない。マア、元気でやって行
きたまえ」
譬えに良く言う様に、まるで足元から鳥が
飛び立つ様な慌しさであった。
その日の内に荷物をまとめてアパートを引き
払う。空港近くのホテルに一泊して、早朝の
ニューヨーク行きのフライトに文字通り飛び
乗った彼は、機内でシートに収まると、漸く
人心地がついた気がした。
そして、初めてニューヨークでのこれからの
生活に思いを派せた。
先程、空港迄見送りに来てくれた圭子の言
葉が耳に蘇る。
〔お前は、そんなに嬉しそうにしてるけど、
今にきっと、ここでの生活に戻りたいと思う
様になるわよ。フフフ〕
その不吉な予言めいた言葉が、浮々する彼
の心を暗くした。
そして、もうひとつの懸念は、ニューヨーク
に居る佐知子・・・・・今では曽我支店長の
令夫人である。
広岡専務の娘、麗子との結婚の為に恋人だっ
た佐知子を捨てた罪の意識が、未だ中島の心
の奥に残っている。
恐らく佐知子の方でも忘れてはいまい。恨み
に思っているに違いなかった。
あれこれ考えている内に、何時の間にか時
間が経つ。四時間余のノンストップの飛行を
終えて、機体がニューヨークのラガーディア
空港に着陸した時には、彼の気分はすっかり
重くなっていた。
空港の広い手荷物受取り場は、幾つかのフ
ライトが続けて到着した為、ごったがえして
いる。漸く出て来たトランクを片手に、アラ
イバルのロビーの中央で佇んだ彼は、思わず
目を疑った。
支店長の曽我とその妻の佐知子が、目の前
に立っていたのである。
今の彼の様な立場の社員の出迎えに、わざわ
ざ支店長が自ら来ること自体が異例だった。
しかも、佐知子が同伴しているとは・・・・
・・明らかに、これは彼女の計画したことに
違いなかった。
「久し振りだな、中島君。まずは転任、御苦
労さん。・・・・・ところで、佐知子の顔は
忘れてないだろうな。・・・・・君の今度の
転任も、実のところは佐知子の願いを叶えた
結果なんだ」
曽我の言葉は、中島の推測をぴったり裏書
きしていた。しかし、曽我の次の言葉は、彼
の夢にも思い至らぬ新事実だったのである。
「一年前に、君がロスに赴任した時に、実は
佐知子は君を此処へ移してくれと主張したん
だ。しかし、当時は、君の後立ての広岡専務
が健在だったから、僕としても踏み切れなか
った」
「と、・・・・・と言うことは、広岡専務の
身に何か・・・・・」
中島の胸に、突然、不安の黒い雲が湧く。
「その通りさ。君は知らんだろうが、一昨日
社長親子と広岡専務の乗った車がトラックと
衝突して、三人共即死したんだ。社としては
緊急事態なので、とりあえず鈴木副社長が社
長代理で事後処理に当っている状態さ」
それは、中島にとって、正に世界がひっく
り返った様なものだった。
後立ての広岡専務が亡くなっては、彼のカム
バックは夢と消える。しかも、社長親子も亡
くなったとすれば、三年前の事故で、中島が
社長の息子の身代りになった事実を証明して
くれる者は、誰もいなくなった訳である。
曽我夫妻の後を、トランクを下げて従う中島
の足取りは、哀れにもよろめいていた。
曽我の運転するキャデラックは、高層ビル
の林立するマンハッタン島の夜景を左に見て
ヨンカース地区の高級住宅区に向かう。
三十分程して、木立と広い芝生に囲まれた、
豪華な邸宅に着いた。
玄関を入った所で、中島は、早速、裸にさ
せられた上に、佐知子に後手に手錠を掛けら
れ、犬の首輪を穿められてしまった。
来る途中、薄々覚悟していたとはいえ、久し
振りで会った昔の恋人の手で、みじめな格好
にされる情けなさは、又ひとしおである。
大きなシャンデリアの輝く居間の絨緞の上
に正座させられた中島は、直ぐ前のソファー
に腰掛けた佐知子と向い合った。
十年余の歳月は、佐知子の整った顔立ちに溢
れていたあの初々しい魅力を、熟成した美し
さに変えていた。姿態もめっきり豊満さを加
えている。
「中島さん、本当に久し振りだわね。ロスの
樋口圭子から、あなたの有様は毎月報告を受
けていたわ。・・・・・そう、私、昔の恨み
は決して忘れてないわ。そして、その復讐に
あなたを圭子の手で辱めさせていたの。・・
・・・でも、もうその必要もないわ。これか
らは、あなた・・・・・じゃない、お前を、
私の手で存分に辱めてやる」
「・・・・・・・」
「お前が、これからどんな目に会うか想像は
付くわね。お前は永久に私の奴隷、それも最
低の便器奴隷になるのよ。覚悟おし!」
佐知子は、ニヤニヤ笑いながら彼を押倒し
ゆっくりと顔に跨がる。じっくり時間を掛け
て小水を飲ませた後、おもむろに尻をずらし
て、彼の口にアヌスを被せた。
「これこそ、十年間待ちに待った瞬間だわ。
圭子には、良く言っておいたから、お前はこ
れを初めて味わう筈よ。・・・・・・サー、
地獄へ落ちなさい。フフフ」
彼の口中に、異臭を放つ固体が次々と排泄
される。それを呻きながら飲み込む中島の目
には、彼の表情を覗き込む佐知子の蔑みを湛
えた顔が、そして、復讐の喜びに輝く女の瞳
が夜空の星の様に輝いて見えた。
(完)
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1986年12月スピリッツ12月号
(スレイブ通信30号に再掲載)
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2010/10/15