#17転落の新任教師(豚にされた新米教師)
                阿部譲二

田舎町の女子高校に赴任してきた新任教師が不良グループに手を焼く。厳しい態度で立ち向かったものの、放課後に体育館に連れ込まれ、女生徒達に嬲り者にされる。小水まで飲まされた彼は、その時撮られた写真を盾に授業中皆の前で辱められ、豚奴隷として全員のアナルを舐め清めさせられる。
果ては、皆の前で不良グループに次々と小水を飲まされる。

 ここは、とある田舎町、抜けるほど晴れ上がった四月初めの月曜日である。
 佐久間良平、ニ十三歳。
 大学の教育学部で教師の資格を取得して、勇躍この町の女子高校に赴任してきたところだった。
 田舎町といっても、人口は優に十万を越える規模で、むしろ地方都市と呼んだ方がよいかも知れない。もともと、農産物の集積並びに出荷の中心地として発達して来たところだが、河口に位置して交通の便のよいところから、大企業の分工場の進出が相次ぎ、発展の一途を辿ってきた。
 佐久間良平はもちろん最初からこの町を赴任先として選んだ訳ではなく、中央の学校を志望したのだが、よほどのコネがない限り卒業ほやほやの新米教師にその可能性はない。
 しかも、国許に不幸があったため四月の新学期の開始日に数日遅れての赴任であった。
 しかし思ったより賑わいを見せる町のたたずまいに、足取りも軽くなる思いだった。
 目的地の女子高校の門をくぐると、良平はその設備の充実ぶりに目を瞠った。
 デラックスな体育館に室内プール、そしてグラウンドも整備され広々としている。さすが、お仕着せの公立一辺倒にあきたらず、この町の有力者達が、子弟のために拠金して作った自慢の私立女子高校だけの事はあった。
 折しも午後の授業が始まったところで、校庭には体育授業中の女生徒の一団がショートパンツ姿のピチピチした姿態を躍動させている。
 男ばかりの兄弟の中で育った若い良平にとって、それは何となく眩しい光景だった。
 早速、教員室に顔を出して着任した旨を届け出ると、まず中年の教頭に連れられて校長のところへ挨拶に行かされた。
「やあ、君が佐久間良平君か。待っていたんだよ。このところ人手不足でね、特にここは女性教員が多いので、若い男の教員は貴重品扱いさ。まあ君も、落ち着いたら大いにバリバリやってくれたまえ」
 頭の禿げ上がった、いかにも人の良さそうな校長は、思いのほか歓迎してくれた。
 教員室は校庭に面した明るい大部屋で、良平に与えられた席はその中程である。授業中で閑散としているが、何となく雰囲気がなまめかしく、席に残っている数人もほとんどが女性教員だった。
 後で判った事だが、三十人の教員のうち二十五人が女性、残る五人のうち四人が中年男性で、残る一人は良平の二年年上だが、これもどうした事か病気休職中との事で姿を見せない。結局、二十歳代の男というと、良平ただ一人という有様で、まるで女護ヶ島に入ったようなものだった。
 彼の席の隣りで調べ物に熱中していた若い女性が、彼の姿を見て立ち上がった。
「佐久間さんね。お待ちしてましたわ。私、川島朋子、二年の英語を担当しています。よろしくお願いしますわ」
 丸顔の体格のよい女性で、目鼻立ちのはっきりした、なかなか魅力的な美人である。
「こちらこそ、よろしく……私は数学が専門ですが、まだ新米ですので……とにかく……いろいろ教えて下ださい」
 良平は、ややどぎまぎして挨拶を返した。
 その後、教頭から、いろいろと注意事項を聞き良平の担当が二年生の数学と知らされた。
 五つのクラスに対し各々、週四時間づつ、計二十時間の授業を受け持つ事になる。
「それとね。佐久間君、君には二年五組のクラス主任を担当して貰う事にしている。普通は新任の教師がクラス主任を受け持つ事は稀なんだが、何しろ人手不足なのに加えて、このクラスには札付きの不良が集まっていて、女性教師では手におえないんだ」
「不良って……いったい、どんな連中なんですか?」
「教師の言うことに、いちいち反抗するし、煙草は吸う、どぎつい化粧やパーマで登校してきて注意すると食ってかかる始末さ。中心になっているのは二、三人だが、取巻きを入れると今や十人くらいに膨れ上がっている。一般の生徒達も腫れ物に触るようにビクビクしているんだ」
「でも、家庭で両親から補導して貰えないんですかね」
「それが、まともな家庭じゃない子が多いんだ。しかも、やくざっぽい男がボーイフレンドについていたり、家族に風俗営業関係者がいたりでね。ホトホト弱り切っているんだ」
「といって、私がどうこう出来るとも思えませんが……なんとか努力してみましょう」
 良平は自信なげに弱々しく答えた。
 午後の授業の終りを告げるベルが鳴り響くと、これまでの静けさを打ち破るようにあちこちで一斉に騒音が巻き起こった。
 帰宅の途につくセーラー服の列が正門に向かって延びると同時に、残ってクラブ活動に参加する生徒達がグラウンドに、そして体育館へと飛び出していった。
 教員室も授業を終えて帰ってきた教師達で急に活気づく。全員が揃ったところで教頭が良平を紹介し彼が簡単に挨拶すると、いっせいに拍手が起こつた。
「それじゃ、佐久間良平君の歓迎会は、また改めて企画する事として、何か皆さんの方から質問はありませんか……? では今日のところはこれで……」
 解散を告げようとした教頭に、横から質問の手を上げた女性がいた。彼の隣りの席にいた川島朋子である。
「あの……私が今、担当しているバレー部の部長ですけど、佐久間さんにお願い出来ませんでしょうか? 今学期から二年五組の例の連中が入部してきて困ってるんです」
「と、とんでもない。ぼ、僕はバレーどころかスポーツは一切駄目なんです……とても、お引受け出来ません」
 意外な川島朋子の申し出に、良平はいささかとまどいながら断わるのに構一杯だった。
「いや、それは名案かもしれんな。佐久間君は二年五組の担当だから、あの連中を抑える事が出来るだろう……なあーに、コーチじゃないんだから、バレーが出来なくたって構う事はない。それに川島先生にも副部長という事で協力して貰えばいいだろう。佐久間君、じゃあ、お願いしましたよ」
 教頭の一方的な裁定で、良平は、とうとうバレー部の部長にされてしまつた。
 その後、川島朋子が元バレー選手と聞いてやや安心したものの、例の不良グループを抑える自信は全くなく、漠然とした不安が消えぬままだった。
 翌日、佐久間良平の初授業の日である。
 臨時に招集された朝礼で全校生徒に招介された良平は、若い女性のムーッとする人いきれに圧倒されながらも、懸命に挨拶した。
 一旦、教員室に戻ってから、川島朋子と連れ立って最初の授業に赴く。
 二年一組の教室の前で立ち止まって大きく息を吸い込む彼の背中を、朋子が優しく叩き、「しっかりね」とささやいて隣りの教室に入っていった。
 ドアを開けて中へ入ると、「起立!」とリンとした声が響く。教壇に上がって見渡すと真面目そうな顔が並んでいてホッとする。
 まだどことなく幼さの残る一年生と異なり、二年生ともなると、もう成熟した女性のムードが漂い、場慣れのしない良平は必要以上に異性を意識させられた。
 しかし、いったん授業に入ると彼もようやく自分のペースを取り戻し、生徒の理解の度合いを計りながら、授業内容の説明に熱中していった。
 二時間通しの授業を終え教員室へ戻ると、休む暇もなく次のクラスが控えている。
 やっと昼休みになって、出前の蕎麦をすすっていると、川島朋子が戻ってきた。ドスンと椅子に腰掛けると、手製の弁当を拡げながら、やや興奮気味に良平に話しかける。
「佐久間さん、あの連中、何とかして頂かないと、とても私の手に負えませんわ」
「あの連中って、例の不良グループの事ですか?」
「もちろんよ! さっきも授業中、私語は止めなさいって注意したら、わざと声を大きくしておしゃべりするのよ。にらんだらにらみ返すし、そばへ寄ったら飛びかかってきそうだし……本当にどうしようもないわ」
「でも、僕が言って、聞いてくれればいいんだが……」
「男の先生から一度ピシャッと言って貰えば聞くんじゃないかしら……佐久間さん、確か明日の朝、最初の授業が二年五組でしょう。……その時の連中の態度を見て、土曜のホームルームの時にでも、改めて厳重に注意して項けません?」
「えー、まあー……」
 なま返事の良平をもどかしげに眺めていた朋子は、ハッと思いついた様子で、
「そうだわ、佐久間さんはバレー部の部長だったわね。あの連中いつも練習さぼっているけど土曜の一斉練習の時は出てくるはずよ。ねえ、その時、二人でうんとしぼってやりましょうよ」
 初出勤の一日はアッという間に過ぎたが、宿舎に帰った良平はさすがにぐったりして、どこへも出かける気にならない。
 今まで、ほとんど女性に縁のない生活を送っていた良平にとって、女に囲まれて過ごした一日は全く初めての経験だった。
 しかも、札付きの不良グループの補導まで押し付けられ、教育者としての第一歩を踏み出したばかりの良平にとって、これからどうやって行けばよいのか五里霧中である。
 しかし、彼に親しみを示して何かと構ってくれる川島朋子のキリッとした端正な横顔を想い起こすと、彼の人生にも何か明るい光が射してきたようで、心が浮き立つ思いだった。
 翌日、彼の受持ちである二年五租の授業が始まった。朋子から得た予備知識では、入口寄りの列の前の方に例の不良グループのメンバーが集まっているはずだった。
 名簿を続み上げ、出欠を取りながら一人一人、顔と名前を確認していく。
 葉山京子、杉本早苗、そして吉本いずみの三人がリーダー格としてマークされており、派手な化粧と大きくウェーブをかけたヘアスタイルで際立っていたが、他の取巻きの連中とそうでない生徒とは外観上区別が付き難かった。
 葉山京子はハーフかと思われるょうなエキゾチックな顔立ちで、まつ毛の長い黒目勝ちな大きな瞳といい、濃いルージュを塗った肉感的な唇といい、遠目にもハッとするような美形だった。杉本早苗は切れ長なひと重瞼の目が特徴の、色白でやや面長な日本的な美人である。
 二人共、大柄でそのグラマーな姿態は高校生離れしていた。
 吉本いずみは二人に比べるとやや小柄で目立たないが、整った顔立ちのむしろキュートなタイプのくせに、どことなく底意地の悪そうな雰囲気を漂わせている。
 初めからクラス全体が何となくざわついていて、先が思いやられたが、果たして授業が始まってものの十分と経たぬうちに変化が起こった。前列の葉山京子が両手を上げて大きな欠伸をしたかと思うと、くるりと後ろを向いて、杉本早苗とおしゃべりを始めたのである。
 良平はチョークを持った手を休めて、チラッとそちらを眺めたが、そしらぬふりで授業を進めた。彼としては、葉山京子一派の挑発に乗るのはかえって先方の思う壷であり、徹底的に無視するに限ると考えていた。
 しかし、良平はその考えが甘かった事をすぐ思い知らされた。
 おしゃベりの輪がどんどん拡がり、教室内が騒然としてきたのである。
 さすがにたまりかねた良平が、
「みんな、静かにしなさい! おしゃべりをしたい者は教室の外へ出るんだ」
 と強い調子で注意すると、一旦は静まったものの、しばらくすると、またやかましくなる。これが二、三回繰り返されるうちに、良平も我慢し切れなくなってきた。
「うるさい!」
 と怒鳴ると同時に、仕掛人の葉山京子のところへツカツカと歩み寄った。
「君、おしゃべりを止めないか! 皆に迷惑をかけて一体どういうつもりなんだ」
 詰問された京子は、ゆっくりと彼の方を振り向いた。
「あら、先生、おしゃべりは私だけじゃないわ。それに皆に迷惑なんかかけてないわ……ねえーみんな、そうでしょー」
 京子は皆に向かって賛同を求める。
「そうよー」
 すかさず黄色い声の合唱が返ってきた。
 クラスぐるみで自分を嘲弄していると感じて良平は頭にカーッと血が昇るのを覚えた。
「少なくとも僕は迷惑だな。授業の邪魔をするんだったら、すぐ外へ出て貰おう!」
「私だけじゃないって言ってるでしょう。第一あんたの授業なんか、誰も聞いちゃいないわよ……みんなに聞いて貰えるようにするにはどうすればいいか、少しは自分で反省してみたらどうなの?」
 その小憎らしい態度に、良平は思わず我を忘れかけた。右手のこぶしがブルブル震え、京子の頬を殴り付けたい気持を抑えるのがやっとだった。
「京子。こいつ、あんたを殴る気だよ」
 傍から杉本早苗が口を出す。
「殴りたかったら殴ればいいさ。生徒に手を上げてクビになった先公は、ゴマンといるからね」
「校長を呼んできてやろうか?」
 吉本いずみがニヤニヤ笑いながら、けしかけるようにあおる。
 無念の思いが良平の胸に込み上げたが、クビのひと言がのぼせた彼の頭に水を浴びせる結果となった。
 くるりと彼女等に背を向けて、スゴスゴと教壇に戻る良平の後ろから、
「ふん、臆病者!」
「私達の勝ちね。ぎまー見ろだわ」
 と、彼女達の声が良平の胸をかきむしる。
 目の奥が熱くなるのをこらえて授業を続けたが、彼をもう舐め切った生徒達は真面目に聞こうとせず、ざわつきが治まらぬまま二時間がたった。
 敗北感にうちひしがれて教員室に戻り、川島朋子が不審気に問いかけるのを適当にごまかして、逃げるように次のクラスへと席を立った。
 次の日の昼休みのことである。
 彼の隣りで食事を終えた朋子が、彼の方へ向き直った。
「聞いたわよ。昨日の二年五組でのあなたの態度。お話にならない弱腰ですっかり舐められたっていうじゃない……佐久間さんって見損なったわ」
 朋子のキラキラ光る瞳が良平を見据え、なじるような言い回しにも彼女の失望と怒りが込められていた。
 好意を寄せる女性の期待に応えられなかった不甲斐なさが彼の胸を刺したが、何とも答えようがなく黙って俯くしかなかった。
「じゃあ本当だったのね。生徒の間では、あなたのニックネームが〃腰抜け〃と決まったそうよ。口惜しくないの?」
「で、でも……こんなケースは初めてなもんで……」
 朋子の前でうなだれてつぶやくさまは、ちょうど教師に怒られてあやまる生徒さながらだった。
「そお、じゃあ私も、あなたを当てにしない事にするわ……せいぜい生徒達に馬鹿にされるといいわ」
 黙りこくった良平を眺める朋子の目に、軽蔑の色がはっきりと現れていた。
 この高校では土曜日は、もちろん半どんだが、この日は午前中の前半が運動部の一斉練習、後半がクラスごとのホームルーム集会になっている。運動部に入っていない者でも、この日だけはどこかの部に仮部員の資格で参加して練習に汗を流すのである。
 良平も名前だけはバレー部の部長という肩書きになっているので、トレーニングウェアに身を固め、朝から副部長の川島朋子と体育館での練習に参加した。
 学生時代に病気をした事もあってスポーツに縁のなかった良平は、バレーのルールさえさだかでなく、ただうろうろするばかりである。
 結局、副部長の川島朋子が釆配を揮って二面のコートで練習試合をする事になった。
 偶然、人数が四チーム分きっちりで審判役を朋子とコーチの相沢道子が務めると良平一人だけあまることになる。
「いいわ。部長さんは、そこの観客席で見ていて頂戴」
 彼は朋子の言葉に甘えて片側に設けられた立派な観覧用のシートに腰を下ろした。
 ここには、バスケットボール専用の練習用コートが別館として付属しているので、広い体育館はバレー部の占有である。
 試合が始まってみると、例の不良グループもゲームに熱中し、静手な振舞いも影をひそめている。
 葉山京子や杉本早苗のグラマーな姿態が、そして吉本いずみのバネのある動きが彼の視線を捉えた。
 ゲームが始まって最初のコートチェンジの時である。葉山京子が突然、「タイム」と叫んで良平のところへ駈け寄ってきた。
「部長さん。そんなところに座っていないで、少しはゲームに協力して頂戴!」
「協力って一体、何をすればいいんだ?」
「あちらのコートの後ろの方にいて、こぼれたボールを拾ってくれればいいのよ。そのくらいなら出来るでしょう?」
 頼み方が少しぞんざいなのが気にかかったが、一人だけ疎外されている寂しさを感じていた時だけに、気軽に引受けてしまった。
 コートのはるか後ろに立った良平を見て、審判台の朋子は不審気に京子に聞いた。
「あなた、佐久間先生に何を頼んだの?」
「部長のくせにポケーッとしているからボール拾いを命じてやったのよ」
 周囲からクスクス笑いが起こる。
「命じただなんて……それにボール拾いなんか佐久間先生よく承知したわね」
「あの腰抜け先生、私がおどかせば何でも言う事聞くわよ。一体、本当にオチンチンが付いているのかしらねーえ、フフフ」
 どっと笑い声が起こったが、良平には自分が笑い者にされている事など判る由もない。
「呆れた! じや、ほっておきましょう」
 朋子も苦笑いするばかりだった。
 二面のコートでゲームが再開され、ホイッスルの音が、そして生徒達の元気な掛け声があたりにこだまする。
 そのうち、アタックのこぼれ球が彼の方に転がってきた。
「ボヤボヤしてないで、すぐこっちへ返すのよ!」
 葉山京子の叱るような声にとまどいながら、彼はボールに追い付き拾い上げると、京子の方へ懸命に投げた……と云うより投げたつもりだった。
 ボールは大きく横へ反れ、無人の観覧席を転々とする。良平はあわてて再びボールを追い今度は慎重に投げ返した。しかしボールは今度は途中で観覧席の椅子に当り、大きくはずんで壁際へ転がる。見守る一同の中からどっと笑いがはじけた。
「どうしたの! ボールひとつ投げられなくて、あんたそれでもバレー部の部長なの?」
 京子に揶揄されて良平は真っ赤になってボールの後を追う。
「ぐずぐずしないで! ホラ、もっと早く走るのよ……ほんとドジったらありゃしない」
 杉本早苗が悪乗りして良平をなじった。
 恥ずかしさに目の眩む思いの良平は、すっかり自信をなくし、今度はボールを床に転がして返した。
「おうおう、今度は老人クラブでゲートボールの練習かい?」
 吉本いずみの嘲りに、再びどつと笑い声。
 川島朋子も皆を制止するどころか、あまりに不様な彼の動作に笑い転げている。
 皆の笑い者にされる屈辱に何か言い返そうとはするのだが、良平の唇はワナワナと震えるばかりで声にならない。
 ピーッと川島朋子の鳴らす笛で再びゲームが始まった。と、またこぼれ球が良平の方へ転がる。へっぴり腰でボールを追ったが、足がもつれて尻餅をついてしまった。
「しっかりしてね。腰抜けさん!」
 葉山京子の嘲笑うような野次に、良平は目の眩む思いだった。  やっとの思いで良平の手から力ない球が一同のところへ返ると、息もつかせずもう一方のコートからのボールが壁に当ってはねる。 部員の女生徒達の黄色い声に野次られながら、球拾いに右往左往する良平の姿は不様の限りだった。  やっと運動部の一斉練習の時間が終って開放され、ホッとして体育館を出る良平の背に朋子の腹立たしげな声が突き刺さった。 「佐久間さん、随分、恥をかかされたわね。
生徒に腰抜け呼ばわりされて、こき使われるなんて教師の権威も台無しじゃないの。……大体、球拾いなんて練習をさぼった新入部員が罰代りにやらされる役よ。それを、こともあろうに京子に命令されて引受けるなんて……舐められるのも当り前ね」
 うなだれて一言もない良平だった。
 しかし、引き続き担当クラスである二年五組のホームルーム集会に臨んだ良平は、さすがにこれ以上、甘く見られぬよう厳しい態度を取ろうと心に決めていた。
「皆さん、静かに! 私の言う事が聞けないのなら、こっちにも覚悟があるぞ!」
 ホームルームが始まっても依然としておしゃべりを止めない京子達に最後の警告を投げかけた後、彼は不意に教壇から駆け下り、その不良グループの中に割って入って片端からピシッピシッと頬を叩いて回ったのである。
 舐め切っていた良平の反撃にあって不意を突かれた形の京子らの一派は、一瞬ポカンとして静まり返った。  すかさず良平は彼女等に発言の間を与えぬように、来週の行事予定や学校側からの伝達事項を一方的にまくし立てる。  とくに、これから〔毎週一回三十分のテストを行い結果を公表する〕という良平の新提案を皆に討議させたのが図に当り、全員が議論に熱中したため、不良グループ一派の坑議は完全に出番を失ってしまう結果となった。
 京子達の口惜しそうな顔を尻目に教員室に引き上げた良平は、川島朋子に得々として戦果を報告した。
「結局、クラス全体が一部の不良グループに引きずられて同調するから彼女等が増長するのさ。皆の興味が集中するようなテーマを次次と持ち出してやれば、不良グループは孤立して消滅するしかないんだ」
「でも、京子達はきっと黙っていないわよ。佐久間さんも用心して頂戴」
 朋子は、その美しい眉根を寄せて心配する。
「大丈夫さ。来週のクラスでも先手を打って彼女等を完全に抑え込んで見せるよ」
 良平は朝の不名誉を何とか挽回できた嬉しさで有項天だった。
 明日の日曜日を控えて、土曜日の午後の校内は生徒達も早々に姿を消し、広い校庭も閑散としている。
 四月中は運動部の強化練習も休みで、生徒達の課外活動もメンバーの入れ替え時期のため、まだ軌道に乗っていなかった。
 教員室では四、五名が居残っていたが、それも二時過ぎになるとポツリポツリと帰途に付き出し、とうとう来週の試験間題作成に没頭していた良平が最後になった。
「佐久間君、じゃ、あとの戸締まりを頼んだよ。それから、教室と体育館を念のため見回っておいてくれたまえ」
 教頭がそう言い残して立ち去ると、急に、広い校内で一人だけ静寂に包まれている自分が意識され、良平もとうとう腰を上げた。
 教室を型通り見て回ったあと、体育館に入った時である。
 バラバラッと背後から駈け寄る足音がして振り向いた時には良平は数人の女生徒達に取囲まれていた。
 それが葉山京子を始めとする不良グループである事が判ると、良平もさすがに身体を固くした。
 外に杉本早苗と吉本いずみ、それに取巻きの常連三名を加えて総勢六名である。
「何だ、君達は。今頃ここで何をしているんだ?」
 身を擦り寄せるように近づいた若い女の体臭にいささか気圧されながら、良平は一応、平静を装って詰問した。しかし幾分上ずったその声の調子には、不意を突かれた狼狽がはっきり現れれている。
「もちろん、先生を待っていたのよ。さっきのおとしまえをつけて貰おうと思ってね」
 京子が頬にゾッとするような冷たい笑いを浮かべながら応じた。
 そのエキゾチックな美しい顔が幾分、上気して凄艶な印象を与える。
「随分待たせたわね。でもその甲斐あって、こうして先生と水入らずで会えたって訳」
 早苗が大きくウエーブした髪のほつれをかき上げながら続けた。そうしたちょっとした仕草にも、成熟した女の色気が漂う生徒である。
「話なら教員室にきたまえ。こんなところで待ち伏せするなんて卑怯じゃないか」
 良平は内心の動揺を彼女等に悟られぬように、抑えるので精一杯である。
「あら、私達は別に先生とお話がしたいんじゃないのよ。それに教員室には誰も居ないんだから、ここと同じで助けを呼ぶ訳にはいかなくってよ」
 京子の声の調子には、鼠を前にしていたぶる猫の余裕と冷酷さがあった。
 と、いずみが横から良平の腕を掴む。
「判ったでしょう。私達はここで先生にヤキ
入れるのよ」
 いずみのキュートなえくぼが途端に冷酷な
頬の引き吊りに見えてくる。
「おとなしくすれば、怪我をさせないように
なぶってやるからね……さあ、こっちへおい
で」
 いずみに腕を掴まれたまま良平は体育館の
一角にあるロッカールームに連れ込まれた。
「フフフ、先生、震えているのね。やっぱり
腰抜けだったのね。そうでしょう?」
 いずみが、ニヤニヤ笑いながら意地悪く話
しかける。
 広いロッカールームには高窓から差し込む
陽光が溢れ、奥にはタイル張りのシャワールームが見える。
 呆然と立ちすくむ良平の前に、京子が立ち
はだかった。
 上背のある彼女の光沢のある大きな瞳が真
正面から彼を見つめる。
「さあ、諦めて私達の言うなりになるのよ。
逆らったりすると痛い目を見るからね」
「君達、一体私に何をするつもりなんだ。…
…生徒の分際で先生に向かって失礼な事をすると承知しないぞ!」
良平としては精一杯の抗議だったが、声の震えは隠しようがない。
 京子は、薄笑いを浮かべて皆の方を振り返った。
「ねえ、みんな。聞いた? 生徒の分際です
って。……笑っちゃうわね」
 そして、良平の方へ向き直る。
「そう言うからには、自分は一段高い身分だ
と思ってるらしいわね。でもね、たった今か
ら先生は、うんと低い身分に転落するのよ。
……フフフ、教えて上げましょうか? あの
人間の排泄物を口にする動物がいるでしょう。そうよ、豚……ブ、タ、よ……先生はこれか
ら私達の排泄物を食べて豚になるのよ。……どおお? 驚いた?」
 思ってもみなかった京子達のたくらみに、
頭をガンと殴られたようなショックを受け、
呆然とする良平に、早苗が追打ちを掛ける。
「京子の言った意味が判る? 先生はこれか
ら私達の排泄物、つまり唾や痰やオシッコ、
それに、フフフ、うんこを口にするのよ……
おやおや、あんまりびっくりして声が出ない
らしいわね」
 続いて、いずみもここぞと良平の耳元に口
を寄せて毒気のある言葉を吹き込む。
「そして豚になった先生は、もう二度と私達
と対等の口は聞けなくなるのよ。だってそう
でしょう、豚の分際で人間にたてつく訳には
いかないもんね。だから私達の言いなり、つ
まり豚奴隷になるのよ……どおお? 口惜し
いでしょう」
 良平は全身の血が逆流するのを覚えた。
(こいつ等の言うなりになってたまるか。何
としても、この場を逃れなくっては!)
 彼はさっと身を翻すと、ロッカールームの
ドアに突進した。ノブを回しても手ごたえが
なく、押せど引けどアルミ製の頑丈なドアは
ビクともしない。
「どうなさったの?……この鍵が欲しいの?……でも、お生憎さま!」
 部屋のキイが京子のかざす手の中でブラブ
ラ揺れていた。
「往生際が悪いわね。諦めて裸になるのよ!
豚にする前に、皆でなぶりものにしてやるんだから。……ソラ、ぐずぐずしないで!」
 早苗が、じれったそうに命令する。
 追い詰められた良平は、ドアを背に女達に
向き直った。
「おやおや、この先生、私達には歯向う気だよ。……腰抜けのくせに、私達六人を相手にして勝てるとでも思っているのかしら」
 勝負はあっけなくついた。
 およそスポーツに縁がなく基礎体力に欠ける良平は、女達によってたかって押し倒され、
簡単に組み伏せられてしまったのである。
 無理やり衣服を剥ぎ取られ、素っ裸にされた良平は女達の前で、哀れにも犬のように四つん這いにさせられた。
「ホラ! チンチンして見せて御覧。犬そっくりにできたら、豚にするのを勘弁してやるかも知れないよ」
 京子の言葉を信じた訳ではなかった。
 しかし彼にとって、この後の汚辱への転落の回避に微かな望みを繋ぐには、彼女等の命令に素直に従うしかなかった。
 股間のものを気にしながら、良平は身を起こしてしゃがみ込み、両腕を曲げ、手首を前に垂らしてチンチンの姿勢を取った。
 その珍妙な格好に一同がプッと噴き出し、たちまち爆笑が渦巻いた。
「ついでに、犬のように鳴いてごらん!」
 いずみが命令する。
「ワン、ウーッ、ワン」
 良平の弱々しい犬鳴きが、かえって真に迫っていて、また新たな笑いが起こった。
 生徒である女性達の手で、存分になぶられ恥を晒す屈辱に、良平の頭には血が昇り目が眩んだ。
 しかし時折り光るフラッシュ、そして微かなジーッという音に、初めて女達が彼の犬真似を写真に撮り、またビデオカメラに収めているのに気がついた。
「今度は三遍廻ってワンと言ってごらん……そうそう、良くできたわね。まるで、犬そっくり!」
 早苗も京子に負けじと彼をいたぶった。
「ああ、おかしかった。こうなっては先生の権威も台無しね……でも、本物の犬に比べると、もうひとつ物足らなかったと思うけど、みんなどう思う?」
 京子が皆の賛意を求める。
 皆がうなずくのを見て、満足気に良平に宜言した。
「お気の毒さま! 全員一致で先生の犬真似は落選よ……という事は、先生には可哀そうだけど、豚になって貰うって事ね」
 最後の望みの糸も切れ、良平は四つん這いのままがっくりと首を落とす。
 結局、彼女等の筋書通りになぶられる羽目になり、無念の思いが胸を掻きむしった。
「さあ、口を大きく開けて私達の排泄物を受ける用意をなさい……あらあら、先生、この期に及んで私達に背く気なの?」
 良平は口を固く結んで拒絶の構えである。
「こんな哀れな格好にされて、いまだ反抗できるのかしら? ほら、これはどうだい?……ソーラ、こんなにされて、恥ずかしくないのかい?」
 早苗が四つん這いの良平の顔に自分の汚れた靴の底を押し当て、ぐいぐいと踏みにじる。
 同時に後ろへ回ったいずみが、良平の裸の尻の間に靴の先を割り込ませ、彼の男の物をチョンチョンと突ついた。
 いずみの足の動きに合せて、ぶらぶら揺れる良平の縮み上がったシンボルに、一同の笑いが爆発した。
 良平の顔に紅が差し、首筋まで真っ赤になる。
「こんな事もあろうかと、こちらにはちゃんと用意があるんだよ」
 依然として唇を閉じたままの彼を冷たく見下ろしながら、京子はおもむろに横手のロッカーから大きなプラスチックのじょうごを取り出した。
 京子が顎をしゃくると、良平は女達に両脇を掴まれて後手に縛られてしまった。
 早苗に鼻を摘ままれ、息苦しさに思わず口を開いた隙に、京子が、すかさずじょうごを差し込む。
「ほーら、判ったでしょう。これで先生も抵抗できないわね」
 京子はさらに粘着テープで、じょうごをしっかりと彼の顔面に固定した。
「じゃあ、筆おろしといくわよー」
 彼女は口をすぼめて口中にたっぶりと唾を溜めると、ペッとばかりにじょうごの中へ吐き込んだ。皆の前に跪いた姿勢のままで髪を後ろから鷲掴みにされ、上を向かされた良平の咽喉に、ねっとりとした京子の唾がゆっくりと吸い込まれていく。
 無念さに歪む良平の顔と勝ち狩った京子の表情とが、鮮やかな対照を見せた。
 続いて早苗といずみが、そして残りの三人が次々と京子にならって、じょうごに唾を吐き込む。中には黄色の痰の塊まで混じって、いかにも汚物らしさが強調されていた。
 縛られた手をねじりながら、屈辱に身もだえする良平の表情を薄笑いを浮かべた女達の顔が上から覗き込む。
「さあ、次はいよいよ本番。今度の幕は生徒達に便器にされる先生とござーい」
 いずみのおどけた節回しに、鎮まりかけた一同が再びどっと湧く。
 良平はじょうごをくわえたまま、京子の前の床に正座させられた。背中で縛られた手がしびれ、感覚が薄れていくと同時に、彼の羞恥心もこの異常な事態に麻痺したようで、反抗の気力が半ば失われている。
 京子はスカートをたくし上げパンティを下ろすと、正座のまま首を反らしている良平の顔を大きく跨いだ。
 意外に濃い股間の繋みがチラッと彼の目の前をよぎったが、すぐにじょうごの縁の蔭に隠れてしまう。
 スカートがふわりと頭からかぶさり、一瞬暗闇の中に閉じ込められた。
 しかし、股間にぴったりとじょぅごを当てると京子は、良平の頭を覆っているスカートをたくし上げ、彼の目が据から覗くようにした。
「フフッ、こうすると先生の表情がよく判るわ。どんな顔して私のオシッコを飲むか、よく見てあげる!」
 京子の大きな瞳が上から威圧するように良平を見下ろし、外の女達も頭を寄せて周囲から彼の表情を覗き込んだ。
 突然、予告なしにチョロチョロと暖かい汚水が咽喉に流れ込む。
 彼は本能的に咽喉を塞ぎ、汚水をじょうごから吹き返そうとしたが、それも塩っぽく生臭い汚水を口中に充満させただけだった。
 量を増す流れにたまらずゴクリと彼の咽喉が鳴る。いったん胃の腑に汚水が送り込まれると、もうふっきれたようにゴクリゴクリと続けざまに飲み込んでいった。
「飲んだ……とうとう、こいつ飲んだわ!」
「私達の勝ちね。これで、こいつも私達の思うままだわ」
「でも、こんな汚いものをよく飲めるわねえ……フフフ、もともとブタの素質があったのかしら?」
「ね、ねえ見て! こいつ涙流してるわよ。やっぱり人並みに口惜しいんだわ」
 女達の嘲りの中で、ツーと無念の涙が良平の頬を伝った。
「さあ、交代して! 今度は私よ」
 早苗が京子に代って、じょうごに股間を当てがった。
「ちょっと待って」
 と、京子の声。彼女はニヤニヤ笑いながら股間を拭ったティッシュを、良平の鼻とじょうごの縁の問に挟み込んだ。
「ホラ、こうすれば私の匂いを嗅ぎながら早苗のを味わえるわ……クックックッ我ながら名案だわね」  早苗の汚水はひとしお苦く、味が濃い。  ただ、量が少なかったのがせめてもの救いだった。
 三人目のいずみの番になると、さすがに胃がふくれ、彼の飲みこむピッチも遅れ勝ちになってきた。
「じゃあ、ここでちょっと休想しましょう。でもその間に、こいつに私達の臭い匂いをたっぶり嗅がしてやるのよ」
 京子は良平の口からじょうごを外すと、無造作に彼の肩を蹴る。仰向けに転がった彼の顔の上に、パンティに包まれた豊満なヒップをどつかりと据えた。
 少し尻を浮かして彼の鼻孔にアヌスの部分を当てがい、再び腰を落とす。  良平の顔面に重圧が加わり、尻の割れ目に添って辛うじて空気を吸い込むと、パンティ越しにすえた尻臭が遠慮なく鼻孔に侵入してきた。ムッとするその強烈な臭気に、彼の咽喉から思わずうめき声が流れる。
 良平の顔を尻に敷いた京子は満足気に表情を緩めると、周囲に思い思いに腰を下ろした女達と、たわいないおしゃべりを始めた。
 しばらくすると早苗が京子に代って良平を尻に敷く。彼女は時折り彼の顔の上で尻を左右にすっては良平の呻き声を誘って楽しんだ。
 次のいずみは逆向きに跨がると、股間を彼の鼻に擦り付けるようにして辱める。  頃合いを見て再び、じょうごが彼の口に差し込まれ、残りの三人分の汚水が次々と彼の咽喉に注ざ込まれた。
「これで、お前は二度と私達に逆らえなくなったわね。さあ、そこでもう一度、四つん這いになって奴隷の誓いを言ってごらん!」
 縄を解かれたものの、両腕共しびれ切って手首から先の感覚がまるでない。
 裸のまま四つん這いの姿勢で彼女等の言うがままに屈辱的な誓いを繰り返させられた。「さあ、最後に豚らしくブーブー鳴いて歩いて御覧! そうそう、もっとお尻を振って。……なかなか上手だよ。その調子!」
 なぶり抜かれて、ようやく開放された時には、もう陽が西に落ちて夕闇がしのび寄ってきていた。
 一人取り残され、薄暗いロッカールームの床の上で、良平は、しばらく呆然とへたり込んだままだった。時折りこみ上げる臭いゲップにも我が身に刻まれた数々の辱めの烙印が思い起こされこれからの行末が案じられた。 
 週末の日曜日、一日中、宿舎で悶々として過ごした良平は、月曜の朝の出勤の途でも足取りが重かった。
「佐久間さーん。待って!」
 宿舎を出てすぐのところで、後ろから駈けるようにして追いついてきたのは同僚の川島朋子である。息をはずませ、上気した美しい顔が良平にはまぶしく映った。
「お早うございます。佐久間さんと通勤の道が同じだなんて偶然ね。よかったら、これから帰りも時々、御一緒しません?」
「こちらからもお願いしますよ。何しろこの町では誰も知り合いがいないもんですから」
「あら、よろしかったら、あちこち御案内してもよくってよ……でも、狭い町だからすぐ人目について噂の的になるかもね」
「かまいませんよ。いや、朋子さんさえよかったら……少なくとも僕は平気ですから」
 爽やかな四月の朝風が二人を駈け抜けていき、柔らかな陽光があたりの町並を包む。
 良平は、一昨日のもやもやがパーッと晴れて、浮き立つような気分である。
「ところで佐久間さんの今朝の授業は二年五組でしたわね。先週の調子でビシビシやって頂きたいわ。あの不良グループがおとなしくなったら、私の授業もやり易くなるわ」
 何も知らぬ朋子の言葉に、良平のふくらんだ気分はスーッとしぼんでいった。
 その三十分後、二年五組の出欠薄を片手に教員室を出る良平の足取りは、まるで鉛の靴を履いたかのようにのろのろしていた。
「佐久間さん、頑張ってね!」
 川島朋子の言葉が背に重く響く。
 教室の戸を開けると、果たして恐れていた事が現実となっていた。
 席についている者はわずかで、ほとんどの生徒があちこちに固まっておしゃべりしている。しかも、入ってきた彼に気づいても、チラリと横目に見るだけで席に戻ろうともしないのである。
「みんな何をしているんだ。早く席につきなさい!」
 良平の言葉も完全に無視されたばかりか、何人かがニヤニヤ笑いながら黒坂を指差す。ふと、そちらを振り向いた良平は思わず声を失った。
 黒坂には一面に〔豚の分際をわきまえよ〕と大書きしてあり、その横にじょうごをくわえてスカートの中へ頭を突っ込んでいる男の漫画が描かれていた。良平にとって頭をガンと殴られたようなショックだったが、さらに追打ちを掛けるようにテープレコーダーから彼自身の取ずかしい誓いの言葉が流れ出してきた。真っ赤になって教壇に立ちすくむ良平を、全員が嘲りと軽蔑の眼差しで見詰める。
「どうしたの。早く裸になってそこに四つん這いになりなさい。皆にお前の奴隷ぶりを見て貰うのよ」
 京子の声である。良平は全身に震えが走るのを感じた。こともあろうに、教室で全員の目の前で生徒達になぶられる……思っただけでも気が狂いそうになる屈辱だった。
「皆が見てる写真に見覚えがあるでしょう?フフフ、先日のお前の情けない姿がそこにあるのよ……そこで、ひとつ条件があるの。お前がここでおとなしく皆の前で恥をさらせばこの事は絶対、他に口外しない事を全員で約束するわ……でも、私達の言う通りにしなければ、この写真が学校中にバラ撒かれるのよ。クックックッ、さあ、どうしましょう?」
 揶揄するような京子の言葉に良平の顔は、ますます赤味を加えた。しかし事実上、選択の余地は与えられていない。全校内に写真が公表される事は良平にとって論外だった。
 といってここで京子達のなぶりものになるのも耐え難い屈辱である事に変りはない。
 迷った末、おずおずと教壇の上で服を脱ぎ始めた良平に生徒全員の目が集まった。
「パンツも取るのよ。そしてフリチンになりなさい!」
 どっと笑いが巻き起こる中で、首筋まで赤くなった良平はついに丸裸になる。
「四つん這いになるのよ! 犬や豚のようにね。そうそう、それじゃ、この写真のようにチンチンして御覧!」
 六人の女達の前での屈辱が今度は全生徒の前で、そして巻き起こる爆笑の中で繰り返されたのである。
 一段落したところで、吉本いずみが四つん這いの良平に近づくと、どこから持ってきたのか鎖の付いた犬の首輪を彼にはめた。
 そのまま彼の背中に跨がると、裸の尻を手に持った定規でピシリピシリと打ち据える。
「さあ、歩くのよ! ぐずぐずしないで……さ、早く!」
 いずみを背に乗せて教壇を降りた良平は、机の間の通路を引き回された上、葉山京子の前に引き据えられた。京子は良平の顎の下に靴の先を当て、ぐいと顔を上向きにする。
 涙にまみれた良平の顔が哀れだったが、同情する者もいない。
「ホラ、豚奴隷! 何がしたいんだい?…… エッ? 聞こえないよ」
 京子は身を屈めて良平の口許に耳を寄せ、何やらもっともらしくうなずいて見せる。
「そうかいそうかい、判ったよ。皆に頼んでみてやるからね! それにしても、お前は本当に豚になり切ったんだねえ」
 京子は身を起こすと、局囲に集まった生徒達にさもおかしそうに説明した。
 こいつね。この前、私達のお尻の下に顔を敷かれて臭いを嗅がされてから、すっかり女性のお尻に興味を抱いたんですって……それがね、今度はお尻を舐めたいんですって。それも汚れたお尻のアナを味わいたいんだって……こいつ先生のくせにド変態なんだから!」
 再び身を屈めた京子は、今の身に覚えのない言葉に仰天している彼の耳の側で、小声で早口にささやく。
「いいこと。私の言った事を皆の前で認めるのよ。写真をバラ撤かれたくなかったらね」
 そして皆の方を振り向いた。
「こいつ自分の口からお願いするそうよ。聞いてやって頂戴……ホラ、皆待ってるわよ。
みんなの前へ行って、早く言っておしまい」
 首の鎖がいずみの手でグイと引かれ、良平は皆の輪の中に引き出された。
 先程からの屈辱を上回る刺激で、今や良平の頭の中はすっかり混乱し切っている。
「あ、あの……皆さんの……お、お尻を……どうか……舐めさせて下さい」
 やっとの思いで言い終ると、一同の間に微かなどよめきが起こり、軽蔑の視線が彼の上に突き刺さった。
「ホラ、こっちへ舐めにおいで! お前の豚になった姿をみんなでうんと笑ってやるよ」
 京子が自分の席から手招きした。
 座ったまま両足を折って椅子の上へあげ、開いた股間がスカートの裾から覗いている。
 半ばめくられたパンティが辛うじて繁みを覆いながら折曲げた太腿にまとわりついている下で、フランスパンのような白い双球がそしてピンク色のアヌスが息づいていた。
「よく豚におへそを舐められるって言うけどお尻を舐められる気分もオツなものかもね」
 京子はいずみに手渡された鎖を引き、近寄ってきた良平の髪を鷲掴みにすると、彼の顔面を股間にピタリと押しつけた。
 そのムッとする強い性臭が良平の脳をしびれさせ、羞恥心を失った彼は京子のアヌスに唇を当てる。ピリッと舌を刺す苦味と、ねっとりした分泌液が固く結んだ唇にまとわり付き、不潔感をそそった。
 京子が片足を上げて良平の後頭部にかかとを当て、彼の首をグイと股間に引き寄せる。
「たまらず良平の唇が割れてアヌスの苦味が口中一杯に拡がった。あとはやけ気味に菊座を舐め、そして吸う。こうして良平の抵抗が崩されると、京子は満足気な含み笑いを洩らし、それがまた彼の屈辱感を倍加していく。
 たっぷり汚れを吸わせた後、京子は彼の背に跨がって、席に戻った生徒達を一人づつ巡回し始めた。そして良平に、そのおぞましい行為を繰り返すよう強制する。
 生徒達はさすがに気味悪がって、ためらう者がほとんどだったが、京子は巧みな脅迫まがいの説得で皆を協力させた。
「こいつが今日の事を学校に訴え出たら、皆共犯と見なされるのよ。恥ずかしくて人に言えないような目に遇わせておけば大丈夫……協力出来ない人はもう私達の仲間じゃないんだから、こいつと同じように裸になって貰おうかしらね……ホレ、豚、お前からも舐めさせて下さいってお願いするんだよ!」
 京子に頭を蹴られ、良平は絞り出すように先程の恥ずかしい願いを操り返す。
 渋々、開かれた股間におずおずと首を寄せる良平の後頭部を背に跨がった京子の足がグイと押し、顔面を汚れた局部に押し付けた。
 四十人を越す女性徒全員のアヌスを一人一人舐め清めていく汚辱に満ちた行為は、文字通り良平の人格を奪い取り、犬や豚のレベルに転落さすに十分な異常な体倹である。
 しかも、中には自ら進んで良平の顔を股間に挟み込み、舐め作業中にガスを放出する生徒もあり、その残酷な辱めに良平はほとんど失神せんばかりだった。全員を回り終った後で、教壇の上に仰向けに寝かされた良平の顔の上に、おもむろに京子が跨がった。
「じょうごなしで直接飲めるように、今から仕込んでやるからね。それに……フフフ、大の方もだよ……そして完全に豚になったところで、お前の仲良しのあの川島朋子先生に、お前の正体を、見て貰うといいわ……そうだ、いい考えがあるわ! 軽蔑されついでに、あの先生にもこれと同じ豚の奉仕をお前からお願いするのよ……いいかい、これは命令だよ!」
 良平の口にぴったり当てられた局部から、汚水が少しずつ流れ出してくる。
 周囲に集まった生徒達のざわめきを耳にしながら咽喉をごくりごくりと鳴らして汚水を飲み下していくうちに、奈落の底に転落していく我が身がはっきり意識された。
 そして近い将来、川島朋子の尻に敷かれて便器にされている自分の姿を目に浮かべつつ倒錯しためくるめく陶酔の中で屈辱の奉仕を続けるのだった。
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1985年10月スピリッツ10月号
(スレイブ通信46号に再掲載)
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2010/08/21