#69仕組まれた陥穽 
                阿部譲二

単身赴任の男が交際雑誌を通じて女性と知り合いラブホテルのSMルームへ入る。壁に取り付けられた拘束具に交代で手足を入れてふざけている内に、男は女に自由を奪われる。女は電話で亭主を呼び入れ彼の恥ずかしい写真を撮影する。
二人は子供が欲しいが夫の精子が少ないため人一倍セックスに励む要があり、彼は二人のセックス奴隷に落とされる。

機械販売に勤める戸倉健作が、この地方
の支店に赴任を命じられたのは、今から丁度
半年前、三十五才の誕生日を迎えた日のこと
だった。
 東京本社で十二年を過し、営業主任のポス
トから中々脱皮出来ずに些か焦っていた戸倉
健作にとって、地方の支店とは言え、本社の
課長格に相当する営業部長の地位はまんざら
ではなかった。
 しかし、勿論問題もあった。
 やっとのことで持家を手に入れ、都会に生
活の基盤を築いていた彼の家族、妻と二人の
子供達は、不便な地方へ移ることに難色を示
し、結局、彼が単身赴任することになったの
である。
 しかも、赴任先との距離が遠いため、週末
ごとに帰宅するわけにもいかず、せいぜい月
一回の本社への出張時に家へ戻って、家族と
顔を合わせるのがせきの山だった。
 赴任先では、単身者用の社宅が利用出来る
こととなり、1DKの最小サイズながらバス
にトイレそれに電話も完備していて、一応、
快適な環境が整っている。
 しかし、御多分に洩れず自炊するのが面倒
で、勢い、毎日の食事は店屋もので済ますこ
とが多かった。
 それにも増して困ったのが、有りあまる余
暇の過し方である。
 とりたてて趣味も無く、ゴルフはもとより
およそスポーツと言うものに縁の無い戸倉健
作にとって、家族抜きの週末の時間を有効に
過す手段が無い。
 そんな彼が、或る時、本屋の片隅で見付け
たのが、所謂、交際雑誌だった。
 見ただけで、胸がドキッとする様なカラー
写真に添えられた様々なメッセージが、彼の
興味をそそる。
 頁をめくると、突然、全裸に近い下着姿の
若い女性が彼の目に飛び込んだ。
 その、露わに写った豊満な下肢は、彼にゴ
クリと生唾を飲ませるほど、煽情的である。
 「当方、二十代後半のOLですが、結婚を
前提とせずに交際して頂ける三十才代のサラ
リーマン男性を求めます。週末を共に過し、
大人の交際の出来る方であれば結構です」
 写真の脇に添えられた文章も、彼の好奇心
をそそった。
 明らかにセックス・パートナーを求める呼
び掛けである。
 弾む胸を抑えながらその本を掴み、値段も
見ずにレジに一万円札を差し出すと、釣銭を
確認せずにポケットへねじこみ、アパートへ
急いだ。
 ワクワクしながら、巻末の通信用紙にペン
を走らせる。
「当方は、単身赴任の三十代の男性。週末の
時間を持て余しているので、是非共、貴女と
の交際をお願いします」
 指定通り、二重封筒に入れて写真と切手を
同封すると、少しでも先方に早く着く様にと
の気持から、ワザワザ郵便局まで行って投函
した。
 それからというものは、毎日の様に、期待
に胸をときめかせながら、帰宅してはメール
を見る。……その繰返しだった。
 しかし、二週間が経ち、三週間が経っても
一向に返事が来ない。
 そろそろ諦めかけていた時だった。
 帰宅した彼がフト見ると、鉄扉の郵便受に
ピンク色の封筒が入っていたのである。
 封筒を引っ繰り返して見知らぬ女性からの
その手紙が、自分宛であることを確めると、
彼は震える手で封を切った。
 折り畳んだ便箋の間から、ハラリと同封の
写真が落ちる。
 若々しい細面てのキリッとした女の顔写真
だった。
「お手紙、頂きました。一度お会い致し度く
来月の第一土曜日の午後一時、XX駅の南口
の改札口を出た所にある喫茶店までおいで下
さい。目印に、週刊誌をテーブルの上に置い
てお待ち下さい」
 如何にも、それは用件のみ記した簡単過ぎ
る程の文面だったが、戸倉健作は、天にも昇
る心地だった。
 それから、当日までの日の経つのが長かっ
たこと!
 その土曜日は、昼の食事もそこそこに、指
定の喫茶店で入口の見える所に陣取り、ドキ
ドキしながらコーヒーを啜る。
 ところが、指定の時間を十五分過ぎても、
それらしい女性は入って来ない。
 いささか、焦りに似た気持に駈られだした
時、突然後から女の声がした。
「失礼ですが、戸倉さんですか。……私、お
手紙を差し上げた関谷恵子です」
 振り向くと、濃い色のサングラスを掛けた
女が立っていた。
 フレアーの紺のスカートに包まれた豊かな
腰を、彼の向いの席にゆっくりと下ろした女
の全身から、フワリと香水の香りが漂う。
 サングラスを外すと、丸顔に濃い眉の女の
黒い眸が、戸倉をジッと見詰めていた。
 カールした髪型が良く似合う派手な顔立の
美人である。
 年の頃は、そう、三十そこそこといった感
じだった。
「御免なさい。……手紙に入れてあった写真
は、私のお友達のものなの。……さっきから
貴方のことを観察させて頂いてましたのよ。
……ちゃんとした、誠実そうな方だし、宜し
かったら、お付合いさせて頂けません?」
 女は、手を上げてコーヒーを頼む。
 戸倉健作の方は、意表を突いた女の態度に
すっかり圧倒される思いだった。
 それから約一時間、二人の話は、お互いの
趣味や仕事、そして境遇など、差し障りの無
い範囲で次々と弾んでいった。
 頃合を見て、女が声を低めて囁く。
「宜しかったら、これから近くのホテルで休
みません?」
 余りにも事が期待通りに運んだので、戸倉
は、思わず喜びで顔を輝やかせた。
 外へ出ると、女は早速、親しげに男の腕に
手を絡めてくる。
 駅前の細い露地を伝って入って行くと、そ
の周辺には、ケバケバしい看板のラブホテル
が軒を連ねていた。
 その内で煉瓦作りの洋館風の一軒を選んだ
彼女は、気後れしてもたつく戸倉を尻目に、
先に立って入り、フロントで部屋を選ぶ。
 エレベーターで階上へ上がり、鍵を持った
彼女の導くまゝに奥の特別室へ入った。
 部屋の中は思ったより豪華な作りで、ベッ
ドルームに続いて広い居間があり、その一角
の壁には真っ赤なロープや鞭が掛けてあり、
壁に埋め込んだ幾つかの金具の先には、夫々
手錠や足錠が鎖でぶら下がっいる。
「さっきフロントで言ってたけど、この部屋
は、SMプレーも出来るんですって。……き
っと、あれがそうなのね」
 恵子は、壁の鎖や道具類を見てビックリし
ている戸倉に、物知り顔で説明する。
「す、すると、君は、その方の趣味が……」
「いやだわ、そんなつもりじゃないの。……
でも、私、経験は無いけど、興味はあるの。
……ねえ、あとで、真似ごとでいいから試し
てみましょうよ」
 居間の机の上に用意された菓子をつまみ、
ポットの湯で彼女のいれてくれた茶を啜り、
浴衣姿でくつろぐ戸倉の前で、恵子は服を脱
いで黒のスリップ一枚になった。
 細くくびれた腰の下に繋がる、量感のある
形の良いヒップが、彼に、雑誌に出ていたあ
の写真を思い出させる。
 途端に、彼の股間が熱くなった。
「先に風呂へ入れよ。……僕も後から行くか
らね……」
 彼の声を後ろに聞いて、恵子は壁に近付き
ロープや鞭に手を触れてみる。
 そして、両手を広げて壁から下がっている
手錠に手首を入れ、彼に声を掛けた。
「ホラ、こうすると、牢屋に繋がれた囚人み
たい。……ね、貴方も、こっちへいらっしゃ
いな。……ここで、私を鞭で打つ真似をして
見せて!」
 明るい声でふざけてみせる恵子につられて
戸倉も壁の方へ歩み寄った。
 壁に掛けられた鞭を手に取ってみると意外
に重量感がある。
 それで恵子を打つ真似をしてみせると、彼
女は大袈裟に悲鳴を上げ、身体をくねらせて
見せて、はしゃいだ。
「今度は貴方よ。……ホラ、ここへ手首を入
れて……そう、こっちに足首を入れるのよ」
 浴衣を脱いでパンツ一枚になった戸倉は、
面白半分、壁に鎖で固定された手錠と足錠に
それぞれ手足を入れてみる。
 戸倉健作が、壁に大の字に、はり付けにな
った恰好で、恵子は、その手錠と足錠の輪に
付いている夫々のネジを締めた。
「ホラ、これで身動きが出来ないでしょう?
……ネ、動いてみて?」
 戸倉が身を揺すってみても、手足は輪から
抜けず、完全に拘束されている。
「サー、今度は鞭よ。……いいこと、覚悟し
てよ!」
 恵子は、鞭を振り上げると、床めがけて振
り下ろして、ピシッと大きな音を立てた。
 戸倉も、これに合わせて、派手に呻いてみ
せる。
 ひとしきりふざけると、恵子は何を思った
か、戸倉をそのままにして、電話のところへ
行った。
 そこの電話機はコードレスになっていて、
受話器を手に持って戻って来た恵子は、戸倉
の前に椅子を引きずってきて据えると、腰を
下ろして、電話の相手と話し始めた。
「オイオイ、電話を掛けるなら、これを先に
外してくれよ」
 その声の方へチラッと目をやった恵子は、
彼を全く無視したまゝ電話の会話を続ける。
「モシモシ、聞こえる?……そう、私よ。…
…いま例の部屋よ。……そう、彼は壁にはり
つけになってるわ。……大丈夫、身動き出来
ないことは確かめてあるの。だから、もう今
すぐに来てもいいわよ。……判った。じゃあ
待ってるわ」
 恵子の会話に耳を澄ませていた戸倉は、流
石に顔色を変えた。
「き、きみは、誰と話してるんだ?……は、
はやく、この手錠と足錠を外してくれ!」
 戸倉が、叫びながら身もだえすると、鎖が
カチャカチャと音を立てる。
「うるさいわね。……やっぱり、これがいる
様ね」
 恵子は、壁の横に掛かっていた黒い革製の
猿轡を取ると、それを戸倉の口に回して固定
する。
 革の臭いがムーッと鼻孔を覆い、口に当た
る部分が彼の声を完全に押し殺した。
(だ、だまされたのか?……でも、な、なん
のために?)
 戸倉の頭に、不安の黒い塊りが渦巻いた。
 恵子は、電話機をもとに戻すと、完全に自
由を奪われて壁にはりつけにされた戸倉の前
で、椅子にもたれて煙草をふかす。
 あたかも、猟師が捉えた獲物を吟味する様
に、ジロジロとパンツ一枚の戸倉健作の身体
を眺めまわしていたが、何を思ったか、ツイ
と片足を上げてスリッパのまま、男の股間を
まさぐった。
「フフフッ、しぼんでるじゃないの。……さ
っきは元気だったくせにね。……ソラ、これ
でどおお?」
 恵子は、スリッパを脱ぎ、素足の先で彼の
パンツを引き下げ、露出した一物を足指でな
ぶる。
「いま電話で話してたのは、私の夫よ。……
さっきの喫茶店でも、私と一緒にいたわ。…
…もうじき、ここへ現われるわ」
「…………………」
「私達ね、子供が欲しいの。……病院でみて
貰ったら、主人は精子が少いタイプだから、
人一倍セックスに励まないとチャンスが無い
んですって」
 その間にも、恵子の足指は休むことなく彼
の股間で動き続ける。
「それでね、私達のセックスのサポートをす
る人を探してるの。……つまり、私達の身体
の下で、二人の結合部を舌で刺激してくれた
り、主人のものが萎えたら口に含んで固くし
てくれる人。……勿論、私のジュースがたっ
ぷり出る様に、私の割れ目も舌で舐めて貰う
わ。……貴方、その役をやって下さらない?
……アラアラ、貴方のジュニアーが元気にな
って来たわよ」
 戸倉の意志とは無関係に、女の足指に嬲ら
れた肉棒が、吃立し始めたのである。
「私達は貧乏だから、お礼は差し上げられな
いけど、もし貴方が、SM雑誌によくある、
ソラ、あのマゾの素質があれば、そんな行為
自体が貴方の喜びになるはずよ。……アラ、
首を振ってる。……そう、貴方はSMに関心
が無いって言ってたわね。……でも、心配御
無用。こうして、私に嬲られて、チャンと立
つんですもの。素質充分よ。……私達でしっ
かり仕込んで、筋金入りのマゾにして上げる
わ。楽しみにしてらっしゃい。フフフ」
 恵子の話は、戸倉を文字通り仰天させた。
 他人の夫婦のセックスに舌や唇で奉仕する
役など、聞くだにオゾましさが先に立つ。
 ましてや、マゾに仕込まれるなんて、想像
外であり、マッピラだった。
 懸命に首を振って拒否の意志を表明したも
のゝ、身体の自由を奪われた上に、猿轡まで
された身である。
 恵子に一方的に嘲笑されて、身をもだえ、
口惜し涙を流すばかりだった。
 その時、ドアのチャイムが鳴る。
 恵子に迎えられて入って来たのは、全く見
知らぬ若い男だった。
 先程の電話の男、恵子の夫に違いない。
 手に大きな鞄を下げている。
「順調に行ってる様だな。……俺達の目的は
話したのかい。……そうか、じゃあ諦めて貰
うんだな。……俺達は、別に悪いことをして
いるわけじゃない。あんたに危害を加える様
なことは一切しないから安心するんだな」
 男は、途中から自然に戸倉健作の方へ話し
掛ける形ちになった。
「ただ、俺達に協力して貰えないと、どんな
ことになるか、充分認識して貰うからな」
 男は、鞄を開けて写真機と、大型のビデオ
カメラを取り出した。
 続いて照明用のランプスタンドを出して組
立てる。
 三脚にビデオカメラをセットし照明を調整
し終ると、恵子と二人で近寄って来た。
「暴れないでおとなしくしていてくれよな。
……俺達も、成可くあんたに痛い目をみせな
い様にしたいんでね」
 男はガッシリとした体格で、上背もあり、
健作が争っても、とても勝てる相手ではなさ
そうである。
 しかも恵子が傍で健作の腕を抑えている。
 半ば諦めた彼は、男の為すまゝに壁から手
足を外され、今度は革手錠で後手に拘束され
た。両足も縛られて完全に自由を奪われる。
 そのまゝ、床に転がされた所を、恵子が握
る写真機のフラッシュが捉えた。
 同時に、男の操作するビデオカメラがジー
ッと微かな音を立てて作動する。
 そこで、恵子が戸倉の傍に寄り、踵で蹴っ
て仰向けにすると、彼の足の方を向いてゆっ
くりとその顔に跨がった。……猿轡を嵌めた
健作の顔が歪む。
 パンティーを脱いだ白桃の様な尻が、戸倉
の顔面を撫でて、湿ったクレバスの臭いを擦
り込んだ。
 暫くして、やっと猿轡が外されたが、口の
周囲が痺れ、叫ぶ気力を無くした戸倉は、も
う恵子の為すがまゝである。
 恵子は向きを変えて頭の方を向き、両膝を
広げて、黒い陰りに縁どられた股間をビデオ
カメラの前に惜しげもなく曝しながら、股間
を開き、その部分を戸倉の唇に押付けた。
「ムムーッ……ウーム、ムムー………」
 男のくぐもった悲鳴が、恵子の柔肉で覆わ
れた唇からキレギレに洩れる。
 それは苦痛からと言うよりも、女に征服さ
れる男の屈辱と無念さからの声だった。
 それから二時間余もの間、写真機のフラッ
シュとビデオカメラの作動音の中で、戸倉は
生まれて初めて、女に嬲られる悲哀をたっぷ
り味わされたのである。
 二人が連れ立って去り、ひとりホテルの部
屋に残された戸倉は、余りのことにショック
で茫然としていた。
騙された!=@            
 思わず心の中で叫ぶ。
 うますぎる話には裏があると言うが、初対
面の女の甘い誘いに乗った自分が悔まれた。
 それに、男が撮った写真やビデオがどう使
われるのか、不安が胸にこみ上げてくる。
 男の口にした悪いことをしてるのじゃな
いし、危害を加えるつもりはない≠ニの言葉
を思い出すと、やや気が軽くなったが、何れ
にせよ、このまゝ何事もなく無事にすむとは
思えなかった。
 それから一週間ほど経って、戸倉のアパー
トに小包みが届いた。
 差出人には心当りが無く、悪い予感に怯え
ながら震える手で開封する。
 果して、中には、先日のホテルでの写真と
ビデオが入っていた。
 ビデオを再生してみて、戸倉は改めて頭に
カーッと血の上る思いを味わった。
 女の股間に顔を敷かれて、屈辱に呻く自分
の姿、鞭打たれなが四つ這いで女の足裏を舐
める情けない我が身、そして、女に命じられ
るまゝに犬真似をし、チンチンをしたり犬鳴
きまでさせられている有様は、思わず目を覆
いたくなるほどだった。
 しかも、どの場面も、彼の顔がハッキリと
大写しにされている。
 同封されている何枚かの大きく引延ばされ
た写真の方も同様だった。
 あの時の数々の屈辱を新たに思い起して、
戸倉は、無念さに全身を震わせていた。
 写真と一緒に一通の封書が入っているのに
気付き、開封する。
 読んで行く内に、戸倉健作の顔から血の気
が失せていった。
先日は、大変失礼致しました。……所で、
同封のビデオは御想像通りコピーです。オリ
ジナルは、写真のネガと共に当方で保管して
をります。……と言うことは、貴方が私達の
お願いを聞いて下さらない場合は、これを、
貴方の勤務先や、御家族のところへ送らせて
頂きます
 一見、丁寧な文章ながら、その内容は一種
の脅迫であり、彼は、頭をガンと殴られた思
いだった。
お願いというのは、あの時にも申し上げた
様に、私達のセックスのサポート役を貴方に
やって頂だきたいのです。……やりかたは、
あの時、お話し致しましたわね。……そう、
簡単に言うと、貴方の舌と唇で私達の性器を
マッサージする役です。……こんなやり方で
貴方に強制したくはなかったのですが、私達
の子供を欲しがる気持を察して、協力して下
さるものと信じています。
 そして、次の週末の土曜日の同時刻に、
また例の場所でお待ちしている≠ニ結んであ
った。
 金目当てのゆすりでないことが救いではあ
ったが、無理矢理、夫婦の夜の営みに奉仕さ
せられると思うと、無念だった。
 しかし、先日、恵子から受けた辱めが、写
真やビデオに記録されてるとあっては、どう
しようもない。
 下手にあがけば、家庭を壊し、会社にもい
たたまれなくなることは明らかだった。
 その次の土曜日の指定の時刻に、例の喫茶
店に赴く戸倉の足どりは、鉛の靴を穿いた様
に重かった。
 奥のブースには、先日の恵子夫妻が待ち受
けていて、彼を見てニヤニヤ笑う。
 戸倉健作の方は、先日二人から受けた辱め
を思い浮かべると、怒りが先に立って、思わ
ず顔がこわばった。
「人を、だ、だますなんて、……ひ、ひどい
じゃないか!」
 二人の前の席に座ると、戸倉は、低い声で
怒りをぶつけた。
「アラ、この人ったら、未だ自分の立場が、
良く判っていないようね」
 恵子は、戸倉を全く無視して、横の夫に話
し掛ける。
「そうだな。……俺達の機嫌を損なえば、あ
の恥ずかしい写真やビデオが明るみに出るっ
ていうのにな」
「そう、もうちゃんとコピーを荷造りして、
宛名まで書いてあるのよ。……K機械販売の
ここの支店長宛と、本社の人事部長、それに
戸倉夫人宛の分までね。……何時でも発送出
来るわ」
 恵子は、落着き払って合槌を打つ。
 何時の間にか、彼の勤務先から、郷里の家
の住所まで調べられていたのである。
「ちょ、ちょっと待って下さい。……そ、そ
んな勝手なことをされては困る。……第一、
そんなことをしたら、警察に訴えますよ!」
「ホー、警察にね。……誰が見たって、あれ
は単なるポルノ写真だし、ビデオだって販売
してるわけじゃないんだからね。……恥の上
塗りをして困るのは、どちらの方かな?」
 恵子の夫は、煙草の煙をくゆらせながら、
呟くように応じる。
 戸倉健作は、言葉を失って俯いた。
「判ったわね。……諦めて、私達の奉仕役を
勤めて頂戴。……それも、たった今からよ」
 恵子に促されて、スゴスゴと二人の後に従
う戸倉は、すっかり、しょげ返っている。
 恵子夫妻の家は、そこから差程遠くない露
地裏のアパートにあった。
 3DKの間取りだが、思ったよりゆったり
した広さだった。
 奥の八畳の絨緞を敷いた洋間が寝室になっ
ていて、大きなダブルベッドが置いてある。
 傍にはソファーが配置されていた。
 家具やカーテンの色は茶系統に統一されて
いたが、絨緞や寝具は赤を基調としたデザイ
ンで、如何にも夫婦の寝室らしい雰囲気を醸
し出している。
「直ぐに、着物を脱いでパンツひとつになる
のよ。……主人は、今朝出張から帰って来た
ところで催しているんですって。フフフ」
 戸倉は、恵子に言われるまゝに裸になって
ベッドの前の床に正座した。
 毛足の長いシャギータイプの絨緞は、フカ
フカとして座布団を敷いているようである。
 その前で、恵子夫妻も着ているものを取り
全裸になってソファーにくつろいだ。
「私、ちょっと、シャワーを浴びて来るわ。
……昨夜は帰りが遅くて、お風呂に入ってな
いの」
「折角、その気になってるんだ。……先に、
一発やってからにしろよ」
「でも、こいつが可哀そうよ。……随分汚れ
てるもの」
 何時の間にか、恵子の口調が横柄になり、
戸倉をこいつ≠ニ蔑んで呼ぶ。
「いいさ。どうせ俺達の言いなりになるしか
ないんだ。……今から甘やかせることはない
ぜ」
「そうね。……第一、今日の態度を反省させ
なくっちゃ。……フフフ、罰として、汚れた
所を舐めさせることにするわ」
 恵子はベッドの裾に腰掛けると、膝を開い
て両足をベッドの上へあげ、戸倉の目の前で
股間を大きく開いた。
「サ、舐めて頂戴。……汚れを奇麗にして、
私の気分を高めるのよ」
 膝立ちでにじり寄って、その部分に顔を寄
せた戸倉は、プンとくる異臭に思わず顔をそ
むける。
「横を向くんじゃないの! ソラ、こっち、
ここよ!」
 恵子の手が、上から戸倉の髪を掴み、男の
顔を股間にグイと引き寄せた。
 グニャリと柔肉が彼の唇を覆い、酸性の性
臭が鼻を突く。
 不潔感を必死で抑えながら、舌をクレバス
に這わせて、おそるそる舐め始めた。
「もっと強く! そんなんじゃ、汚れが取れ
ないわよ。……そうそう、唾で汚れを溶かし
て飲み込むの。……どおお? どんな味? 
クックックッ」
 小水の臭いのするねっとりした澁味のある
分秘物が舌先に掬われて彼の口中に入る。
「判った? それが女の恥垢よ。……さっき
みたいな失礼な口をきいた罰に、良くそれを
味わいなさい!」
 恵子にこうまで言われると、戸倉の胸に、
カーッと無念さが込み上げて来る。
「ついでに、お前のケツの穴を舐めせたらど
うだ。……何時もバックにも性感帯があるっ
て言ってたじゃないか」
 ソファーで横から眺めていた亭主が横から
口を挟む。
「そうね。でも、可哀そう。……ネエ、主人
がああ言ってるんだけど、お前どうする?…
…そう、イヤなの。……貴方、勘弁してやり
ましょうよ。こいつ、目に涙を溜めてるわ」
「イヤ、最初が肝腎だ。……どんなことでも
命令通りにするくせを付けるんだ」
「アラアラ、しょうがないわね。……じゃあ
こゝ舐めて頂戴。……アラッいやなの?……
でも、言うことをきかないと、どうなるか判
ってるんでしょう?……いいわ、諦めさせて
上げる」
 恵子は、股間の戸倉の頭を両手で掴むと、
彼の顔を下へずらし、自分のアヌスに唇を当
てさせる。
「ソラ、ここよ。……そう、舌を出して!…
…その先を尖らせて中へ差し込んで御覧。…
…そうよ、もっと深くね」
 恵子は、両手で自分の尻割れをグイと広げ
おまけに指を添えてアヌスを開いた。
 男の舌先が中へと吸い込まれる。
 直腸に付着していた糞粕が舌の先に絡み、
ピリッとした苦みが戸倉の味覚に伝わって、
不潔感と屈辱感を刺激した。
 思わず、咽喉の奥から嗚咽が洩れる。
「オーオー、口惜しいのかい? それとも情
けないのかい? 大の男が女の尻の穴の中ま
で舐めさせられてるんですものね。……でも
私はそこが感じるの。……抜いちゃダメよ。
そこで舌を動かしてサービスしなさい。……
本に書いてあったけど、ソレって、アニリン
グスって言うそうよ」
 恵子は、両足の踵を彼の後頭部に引掛け、
リズミカルに力を入れたり、緩めたりして、
男の舌先をアヌスから出し入れさせる。
 無念さを必死で堪えながら舌を動かすと、
上のクレバスから流れ出て来た分秘液が、ネ
ットリと舌の付根にまつわり、唇を伝って彼
の口中に入った。
「もうその辺でいいだろう。……これからが
俺の出番だぞ」
 亭主はソファーから立ち上がると、ベッド
に近付く。
「ホラ、奥様の大事な所へ入れるもんだ。…
…奇麗に汚れを吸い取るんだぞ」
 漸く女の股間から解放された戸倉健作は、
今度は、男の股間に顔を引き寄せられ、固く
なった怒張を口に差し入れられた。
 小水と粘液にまみれた肉棒を、舐め清める
作業を強制されたのである。
 そのあと、戸倉はベッドの上で、仰向けの
姿勢で逆さに寝かされる。
 その身体の上へ、まず、恵子が背を乗せて
横たわった。
 女が俯伏せになれば、所謂シックスナイン
の体位だが、この場合は、男の首が女の尻に
敷かれ、股間から顔が覗いている。
 その上から、更に亭主が覆い被さったので
ある。
「いいか、舌を伸ばして俺達の結合部をしっ
かり舐めるんだぞ」
「そうよ、そして、お汁を口で受けなさい」
 二人の声に続き、彼の顔を擦らんばかりの
近さで、男の肉棒が恵子の襞肉にスッポリと
吸い込まれる。
 そして、彼の鼻のあたりには、男の陰嚢が
グニャリと当たった。
 直ぐにピストン運動が始まる。
 懸命に舌を伸ばし、二人の結合部を舐め続
ける彼の額をピタッピタッと陰嚢が叩いた。
 やがて、二人の分秘液が独特の臭気を伴っ
て彼の舌を伝い、口の中に広がる。
 それは、戸倉健作にとって、生れて初めて
経験する気の狂うほどみじめな役割だった。
 そして、それは、永遠に続くかと思われる
時間の長さだった。
 やっと、男の身体がのけぞり、女の身体の
重しが戸倉の胸の上で痙攣する。
 そして、彼の舌と唇は、男の怒張が脈を打
って、恵子の膣に精液を注入している動きを
感じ取っていた。
 そして、二人のミックスジュースが、結合
部から溢れ、女の尻割れを伝って彼の口中に
流れ込む。
 男が身を起し結合を解くと、その量がドッ
ト増し、臭いの強いドロドロした分秘液が、
彼の口から胃の腑を満たして行った。
 夫婦のセックスの汁受け……まさに、それ
は口舌に尽くし難い屈辱である。
 恵子は、気だるげに身を起し、膣孔で彼の
口をピッタリと覆う。
「吸うのよ。……舌を差し入れて! そう、
そうすると良く出るでしょう」
 恵子の言う通り、彼の舌の先から新たな液
がドロリと咽喉に流れ込む。
 ゴクリと咽喉が鳴り、あまりの屈辱に新た
な涙が目尻を伝った。
 しかし、それで全てが終ったわけではなか
った。
 二人は、小休止後、再び身体を絡ませる。
 今度は、男が彼の胸に前向きに座り、彼の
顔に跨がった恵子のバギナに挿入する。
 座位のままのセックスであった。
 三回目は、立膝をして仰臥した恵子の太腿
のあたりに、横から首を差し入れた体勢で、
正常位でセックスする二人の結合部や恵子の
アヌスを舐め続けさせられた。
 数時間後、ヘトヘトになって床にへたり込
んだ戸倉の横で、ソファーに腰掛けた二人が
何やら話し合っている。
「でも、それはあんまりよ。……こいつだっ
て人間よ。……いくら何でも、そこまでやる
ことはないと思うわ」
「さっき俺が言った様に、何事も最初が肝腎
なんだ。……こいつが二度と俺達に逆らえな
い様に徹底的に仕込むんだ」
「貴方がそんなに言うなら、可哀そうだけど
やってみるわね」
 何のことか判らぬまゝに、キョトンとして
いる彼に近寄った恵子は、足を上げて彼の肩
を蹴る。
 不意をつかれて仰向けに転がった彼の胸に
跨がった恵子は、打ちひしがれた男の顔を、
ジーッと見下ろした。
「これからすることはね、予定外のことなの
よ。……私は、本当は、そこまでする気は無
いんだけど、主人がきかないの。……我慢な
さい。……サ、口を開けて!」
 屈辱に痺れ思考力を無くした彼は、言われ
るまゝに素直に口を開ける。
 腰を浮かして、その唇に股間の局部を押し
付けた恵子は、彼の目を見つめながら、ゆっ
くりと放尿した。
「飲むのよ、ボンヤリしないで!」
 恵子の叱咤する声で、ハッと我れに返った
戸倉健作は、口中に注がれる汚水を、ゴクリ
ゴクリと飲み干していた。
 傍に来て、彼の顔を覗き込んだ亭主が声を
掛ける。
「どうだ、女のションベンの味は?」
 自分の行為を改めて意識させられた彼の胸
に、途端にグッと口惜しさが込み上げた。
「この味に慣れる様に努力しなさい。……こ
れからは毎週、週末にお前を使うけど、その
度にお前は私の便器になるのよ。……オシッ
コだけじゃないわ。少し宛、時間を掛けて、
大の方も口にさせるわ。……これで、お前は
二度と私達に逆らえない。……永久に私達の
しも奴隷≠ノなるのよ!」
 恵子の宣託が、その尻の下で汚水を飲み続
ける彼の耳に雷鳴の様に響き、巧妙に仕組ま
れた陥穽に落ちた我身の情けなさを増幅して
いったのだった。
(完)
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1993年1月スレイブ通信26号
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2010/08/11