072-#72屈辱M病棟 
阿部譲二作

ナースマン志望の男が看護学校に入るがそこは女の園で彼は女達の虐めに会う。学費に困ってインターネットで見たセックスパーティのアシスト役に応募するが、それはパーティの男女の股間に舌奉仕する役だった。現場実習で病院に配属されるが、そこではドクターになった幼馴染の女性に使われ、パーティの件が露見しその女性に罰として便器にされる

インターネットの罠

「ダメだといったらダメだ。男の癖に看護婦になりたいなんて、お前は何を考えてるんだ。……三年も浪人していくら嫌気がさしているといっても、受験を諦めて就職するというなら分かるが、看護婦の学校に入りたいとは正気の沙汰じゃないぞ」
「おかしいのは父さんの方だよ。今時の看護学校は男だって受け入れるんだ。……第一、僕のなりたいのは看護婦じゃない、看護士、つまり今流行のナースマンさ。最近ニュースやテレビドラマでも取り上げられてる結構格好いい職業なんだ」
「そりゃ、男の看護婦ってことじゃないか。病人の世話がしたかったら、隣の友子さんのように医者になりゃいい。好きこんで女の職場に飛び込んだってろくなことにならんぞ」
「僕だってこれまで医学部めざして頑張ってたんだ。……でも、現役から一発で合格した友ちゃんとはもう三年も差がついちゃったし、正直言って自信をなくしたんだ」
……………………
パソコンの前で頬杖をついて物思いにふけっていた立花史郎の脳裏に、以前父と交わした会話が昨日のことのようによみがえっていた。
母が亡くなった後、男手ひとつで一人息子の史郎を育ててくれた父も、あの会話の翌年に突然病死してしまう。
親戚のところに身を寄せ、志望通りに看護学校へ入学したものの学費が続かず休学。
それでもなんとか奨学金を貰えることになって復学したが生活は苦しかった。
それに当然のことながら、クラスの殆どが女性という現実は彼に心理的なプレッシャーを与えたようで、あせる割りには成績もぱっとしない。気晴らしに身近な女性達からガールフレンドを選ぶ気にもならなかった。
ふと、パソコンの画面に目をもどすと、そこには人気の高い出会い系の掲示板が開かれている。史郎が憂さ晴らしに毎晩訪れるインターネットのサイトがそこにあった。
パートナーを求めるメッセージの羅列に食傷した史郎は、横のメニュー欄をクリックしパーティのタブを押す。そこは殆どがセックスパーティの案内や会員の勧誘である。
なにげなく眺めているうちに、その中のひとつに史郎の目がとまった。シティホテルのスィートルームでのスワップパーティの案内だが、珍しく若い単独男性の募集をしている。
しかも謝礼付きだった。
この種のパーティは通常カップル限定で単独の男女は受け入れないのが普通である。
このところ生活費の足しにとパートの働き口を捜していた史郎は、興味に駆られて、ふと、記載のメールアドレス宛に問い合わせをしてみる気になった。
翌日、返事のメールが入った。
驚いたことに、パーティでのアシスト役の仕事をするだけでかなりの額の報酬を支払うとあった。詳細は面接時に説明とある。
迷った末に史郎が面接に応じる決心をした心の底には、報酬のほかに、女性に囲まれた学生生活で鬱積した性への好奇心が潜んでいたことは否めなかった。
指定されたホテルのロビーで出会ったのはどことなくやくざっぽい雰囲気の髭面の中年男で、自らパーティの主催者と名乗った。
「パーティを成功させる秘訣は女性を満足させることさ。男は新しい女と寝て射精すりゃ一応満たされる。しかし、女は違う。相手の男の女扱いが下手だったら不満が残るもんだ。そこで、女を百パーセント満足させるためにアシスト役が必要なんだ」
「で、でも、僕は……セックスの経験は……」
「経験より若い耐久性さ! それも舌のな」
「舌ですって?」
「そうさ。挿入は相手の男がするのさ。アシスト役はそれに舌で協力して女を満足させる。わかったかな」
「で、でも……」
「やり方は、ちゃんと指導するから心配しなくともいい。だが、こちらも、どこの誰ともわからない者を使うわけにも行かないんだ。何か身分を証明するものを見せてくれ。……なに、秘密は絶対に守るから信用してくれ」
 史郎がしぶしぶ差し出した学生証を手に取ると、男は仲間に見せるからと席を外した。
5分もかからぬうちに男は若い女を伴って戻ってきて史郎にパートナーだと紹介した。
スタイルのよい目鼻立ちのはっきりした女で思わず周囲が振り返るほどの美人である。
史郎は、なにか圧倒される思いだったが、一方、かすかに胸のときめきを覚えた。
採用すると決まったら通知するからと言われて立ち去る史郎を見送りながら、彼の背で、二人はにんまりと笑みを浮かべて互いに顔を見合わせる。
「よさそうなのが罠にかかったわね」
低く女が呟くと、男は満足げに頷いた。

クラスメートの虐め

「立花君、遅刻の罰に今日はトイレ掃除よ!」
 クラス委員の林真佐子が、頭ごなしにきめつける。ムッとして言い返そうとした史郎の前にパラパラッと数人が立ちはだかった。
真佐子の取り巻きの女生徒達である。
 第一時限の授業が終わって廊下に出た史郎を囲むように立ちはだかった。
「君が教室の変更を連絡してくれなかったせいで遅れたんじゃないか。ひどいよ」
 史郎が弱々しい声で抗議する。
「でも、遅刻は遅刻よ。クラス全員で決めたことは守って貰うわよ!」
 なにせ、三十人のクラスで二十七人までが女性である。史郎を含め三人の男子生徒のうち一人は休学、もう一人は病気を理由に姿をみせない。
 看護婦という女性専有の職場に割り込んで来た物好きな男性として、史郎はクラス全員から異端視されてしまっていた。
 従って、ことごとに苛めの対象とされる。今回も明らかに真佐子の仕組んだ罠だった。
放課後、広い女子トイレの中で黙々と床にモップを掛ける史郎は、出入りする女生徒達の笑いものにされた。
「男のくせに、女のトイレでお掃除なんて、最低ね!」
「でも、嬉しそうだわ。きっと変態よ」
「君ぃ。それでもおチンチンついてるの?」 
調子に乗った一人が笑いながら木の枝で彼の股間を突いた。
「な、何をするんだ!」
「ワーッ、怒った、怒った」
 気色ばんだ史郎を囲んで囃し立てる。
「アラ、こいつ、あそこが膨らんでるわ」
「いやだ、勃起してるのよ。いやらしい!」
 ムッとする女の臭いがトイレの臭気に混ざり、もやもやした気分になっていたところを
刺激されたのである。自分の意思に反して股間が硬くなったのも無理からぬ事態だった。
顔を赤らめ、女達に背を向けてモップでタイルを擦る史郎の目に悔し涙がにじんだ。
翌日の昼休み。キャンパスの片隅で史郎は真佐子達に囲まれていた。
「君ぃ、昨日女子トイレで一体何を考えて掃除してたの? あちこち覗き込んで股の間を膨らませていたって評判よ」
「妄想ばっかりしているから、そうなるのよ。痴漢もいいとこだわ。恥ずかしくないの?」
「私達が事務所に言いつけたら、即、退学になるわよ。それでもいいの?」
 女達は、口々に彼をチクチクといたぶる。
それでも黙って俯いている史郎を見ると、弱いもの虐めの興味をますます募らせていった。
 無抵抗の相手を見ると、なおさら虐めたくなる集団心理である。
「私達で、こいつに焼きを入れてやろうよ」
「そうだそうだ。退学したくなかったら、素直に私達の言うとおりになるんだよ」
 その時、午後の授業開始のベルが鳴った。
 ノックアウト寸前でゴングに救われた思いで、史郎は素早く教室への人の流れに逃げ込んだ。
 しかし、この件は、それでは済まなかった。たとえどんな理不尽な理由でも、こじ付けでも、女達は史郎を表立って虐める機会を逃がしはしなかった。
 週末休みの前の金曜日の午後、人気の無いロッカールームに連れ込まれた史郎は、真佐子とそのグループの女達に集団リンチされたのである。
 クラスの名誉を傷つけた男に同級生として罰を与え、思い知らせるという名目だった。
 素裸で四つん這いにされた史郎は、股間の一物の根元を紐で括られてロッカールームの中を引き回された。
 次いで、六人を数える女達のパンティを次々と重ねて頭に被せられる。股間の部分が鼻と口を覆うようにあてがわれると、ムッとする異臭が鼻を突き、股間の一物がみるみるうちにそそり立った。
 ワッと女達の笑いがはじける。
 最後は、仰向けに寝かされた史郎の顔の上に女達が順番に跨り、男の唇に次々と汚れたアナルが当てがわれた。
「しっかり吸い付いて味わいなさい。 そうそう、舌の先を穴の中に入れて! 汚れを舐めて清めてちょうだい」
 女達の尻の穴を舐めさせられる屈辱は、史郎の男としての誇りを砕き思考力を奪った。
 言われるまゝに菊座を吸い、ピリッと舌を刺激する汚れが口の中に広がると、頭の中が真っ白になり、悔し涙が目尻から流れ落ちた。

屈辱のアシスト役

 クラスメートの女達に散々辱められて以来、史郎のクラスでの地位は急落した。
女達の視線に蔑みがこもり、お前は私のお尻の穴まで舐めたんだよ≠ニ言外に囁かれている気がして、史郎の態度は卑屈を極めた。
授業中も最後列で小さくなっていたし、休憩時間中は女達に横柄に雑用を言いつけられたり腰を揉まされたりする。彼女等に家来というよりまるで奴隷のように扱われた。
 二学年に進級した春の日のことである。
 帰宅した史郎へ突然の電話だった。
 すっかり忘れていたが、一ヶ月前に会ったパーティの主催者からである。アシスト役として採用するのでこの週末にトレーニングを受けて欲しいというのだった。
 丁度授業料を納めたところで懐がさびしく少しでも収入につながると思うと断れない。
 それにクラスでの女達の虐めで憂鬱な毎日を過ごしている史郎にとって、少しでも気分転換になるかもとの期待もあった。
 指定されたトレーニングの場所は主催者の男の自宅だった。ドアを開けたのは先日彼にパートナーとして紹介された若い女である。
 どうやら二人は同棲しているらしい。
「俺達が練習台になってやるから、しっかり覚えるんだぞ。いいか、まず挿入前の前戯だ。男が相手の女を気に入ってればほっといても問題ない。しかし、気に入らない相手と組まされた男はどうしても前戯がおざなりになる。気持ちが萎えてなかなか勃起しないこともあるんだ。……そこで、アシスタント役のお前の出番だ」
「………………」
「初めての相手と事を始める時にはたいていは抱き合って唇を合わせる。その間に男の手が女の乳房や股間をまさぐるのが普通だ。この時男のものがまだぐんにゃりしてたら、気乗りしてない証拠さ。ここで女が気を利かして男のものをくわえてフェラすればうまくいくんだが、初めての男だと抵抗がある女がいる。俺があらかじめその点を聞き出しておくから、お前はそんな場合に足元からそっと声を掛けるんだ」
「な、なんて言うんです?」
「決まってるじゃないか。お手伝いさせて下さいと断って男のものを咥えるんだ」
「私がですか?」
「そうさ、フェラのテクニックは俺の女が後で教えるからマスターしておいてくれ。……
それから次が本番だ。嵌め舐め≠フ希望者は大抵女だ」
「嵌め舐めですって?」
「そうさ、挿入時の結合部舐めのことさ。もっとも、結合部に限らずクリやアナルを舐めてくれという客もある。これには挿入の体位が関係するから、あとは実習に移ろう」
 男は裸になって六畳間に敷いた布団の上で女と抱き合って見せた。
「まづ、カップルが正上位の挿入の時のお前のポジショニングだ。」
 男の指示に従って史郎は二人の横手にまわった。仰向けに寝て足を広げた女の上に男が
のしかかる体位である。そこで女が足の膝を立て、出来た空間に横から史郎が頭を差し入れる。女のアナルのあたりに横から顔を当てがうとその上から男の股間が覆いかぶさり目の前で挿入が行われた。
 しかし、男はそこで挿入を中止して次の体位に移った。
 今度は史郎が仰向けに布団の上に寝た後、女がその身体の上に仰向けに横たわる。ただし、頭と足を逆に寝るので女の股間から史郎の顔が覗いている。その更に上に男が覆いかぶさる体位で、二人分の体重がもろに掛かる。
「挿入中に女のアナルを舐める時はこれでいいんだが、女がクリを舐めて欲しい時はワンワンスタイルの挿入をして貰って、お前がその下に入るんだ。そら、やってみろ」
 史郎は、四つん這いになった女の身体の下にシックスナインの形で身体を滑り込ませて女のクリトリスに舌をあてがった。そこに男が後ろから史郎の鼻を一物でこするようにして挿入する。額の上にぐにゃりとした陰嚢が載っている。
「この態位で一発やるからな。しっかり舐めるんだぞ」
 男の腰が前後に揺れピストン運動が始まる。
 女の膣からねっとりした陰液が流れ出して史郎の唇を濡らした。舌先を伸ばしてクリの周辺から膣に出入りする肉棒のあたりまでを懸命に舐め続けた。
「いくぞ!」
 男の動きが激しくなり、それにつれて女の肉襞が史郎の唇に押し付けられる。と、急に動きが止まってヒクヒクとかすかな肉の痙攣が伝わってきた。肉棒をくわえ込んだ膣孔の縁から白い液がジワッと湧き出してくる。
「こぼさない様に全部口で受けろよ!」
 肉棒が史郎の額の上を滑りながら引き抜かれると、ドッとばかりに膣孔から白濁したねっとりとした液が溢れ出して来た。
 慌てて舌と唇を使って液を吸い取る。
 ズズズッと音がして生臭い液体が彼の口中を満たした。ゴクンと喉がなった。
「クククッ、こいつ飲んでるわよ」
「見こみ通りだ。こいつは素質があるぜ」
女の蔑むような声音に続いて二人の笑い声が聞こえた。途端に、ドッと激しい屈辱感が押し寄せて来る。
 女は膣孔を史郎の口にあてがったまま身体を起こして顔の上に跨った。女の体重が顔面を圧しピンク色の菊座が彼の鼻腔に当たって呼吸ごとに異臭がツンと鼻の奥を刺激する。
「舌の先を穴の中に入れるのよ。そうそう、そのまま吸ってごらん」
 ドロッとした粘液が口中に広がった。ゴクリと飲み干すとすぐ後からまた流れ込む。
 暫くして流れが途絶えた頃、女の尻がゆっくりと前後に揺れ始めた。クリと膣口が彼の唇を蹂躙し、ピチャッピチャッと隠微な音を立てる。腰が揺れる度にじっとりと湿った菊座が史郎の鼻腔に擦り付けられた。
「ホラ、しっかり舌を使えよ。パーティの時はこうしてみんなに使われるんだからな」
 男の声が女のいきみ声に混じって耳に入った。そのうち女の腰の動きが激しさを増し、内股を微かに痙攣させて止まる。
 暫く史郎の顔の上で余韻を楽しんだ女はやっと尻を持ち上げ、ニヤニヤしながら股の下の史郎の顔を覗き込んだ。
「まあまあ、お汁が一杯だこと」
 紅潮した史郎の顔の全面をべっとりと陰液が覆い、女の股間まで糸を引いている。
「合格だな。来週から、早速アシスト役としてパーティに出てもらうからな」

見習い看護婦修行

 二年間の学校生活を終えると、全員が現場で実習生として一年間の見習い訓練を受けることになっている。
 クラスのメンバーもばらばらになって、あちこちの病院に数名づつ配属されるのである。
 史郎はこの看護学校を主管している公立病院で勤務するよう指示された。
 クラスメートの陰湿な虐めからやっと開放される期待で胸を弾ませていた史郎は、同じ勤務先に林真佐子も配属されていることを知ってがっかりした。
 あのいまわしいリンチの首謀者でもあり、あれ以来焼きを入れる≠ニの名目で彼女のグループに何度もいたぶられてきたのである。
 顔に跨られてアナルを舐めさせられる屈辱を何度も繰り返して経験させられている。
 配属先での職場が遠くなるように祈っていた甲斐もなく、真佐子と同じナースステーション勤務となってしまった。
 史郎と真佐子を含め四人の見習い看護婦達の所属は内科病棟である。そこの中央ナースステーションにはロッカールームとナース専用のトイレが設けられていた。
 すぐに問題になったのは史郎のロッカーだった。まさか男の看護士がナースステーションに勤務する時代が来るとは誰も考えてない。
 やむを得ずトイレの入り口にある掃除道具入れが彼のロッカーを兼用することになった。
 看護士用の白衣も用意されていない。まさかドクター用のものを使うわけにもいかず、これも、とりあえず看護婦用のものが与えられた。
男の身でスカート付きの白衣を着せられた史郎は、気恥ずかしさが先に立ってどうにも落ち着かない。早速、看護婦達の好奇の視線を浴び、ことごとにからかわれた。
「アラ、よく似合うわよ。でも、ちょっと変態っぽいかな」
「あんた、これでどっちのトイレに入るの?」
「男の患者さんに、お尻でも触られたらどうするの? フフフ」
 午後になると、チーフナースに付き添われて関係先に挨拶に回った。
 受付や事務所の職員達に顔を合わせた後、ドクター達の個室をまわる。夜勤の宿直医を除き内科病棟だけで十人からの医師がいた。
 何人目かの個室の名札に高木友子≠ニあるのを見て史郎はハッとした。彼が三浪の末諦めた大学の医学部に現役で入学した、あの幼馴染の友子と同姓同名である。
 まさか、との気持ちがあったが、ドアを開けて入ると果たして彼女だった。
 チーフナースの後ろに隠れるように従った史郎を見つけた友子は目を丸くした。
「史郎さん、貴方なの?……何、その格好は? スカートなんか穿いちゃって。プーッ……もっとよく見せて。クククッ」
 友子は思わず噴き出し、そのまま笑い転げんばかりだった。
「友ちゃん、お久しぶり。……えーと、今日から……こちらにお世話になる……立花史郎です。よろしくぅ」
 顔を赤くした史郎は、気を取り直して他の三人と一緒に深々と頭を下げる。何と言っても病院のドクターといえば、看護士にとって雲の上の人だったのである。
「分かったわ。立花君は看護士になったんだったわね。……しっかりやって頂戴」
 ようやく笑いを収めた友子は挨拶を返した。
 その日の午後、史郎は改めて友子の部屋に呼ばれた。久しぶりで一対一で会う幼馴染の友子と気の置けない会話が出来ると喜んでいた史郎は、いきなりその期待を裏切られた。
「立花君、そこで立ったままよく聞いてちょうだい。……この病院ではね、看護婦がドクターに気安い口をきいてもらうと困るの」
「ぼ、僕は看護婦じゃなくって看護士だ」
「同じことよ。どっちも英語じゃナースって呼ばれるわ。だから、これからも私にはちゃんと敬語を使って頂戴」
「で、でも二人きりの時は……」
「二人きりだって同じこと。私達は今じゃ身分が違うのよ。……そう言われても分からないかも知れないから、私が、身に沁みて分かるようにトレーニングして上げる」
「…………………」
「明日から、勤務の間に、お前に私の身の回りの世話をさせるわ。靴磨きに、この部屋の床掃除、それと、私の腰も揉んでもらうわ」
 急に、お前と呼ばれたばかりか、思いもかけぬ冷たい仕打ちに史郎は言葉を失った。
「あ、それから、昔、受験の前にお前が私にくれた手紙を覚えている? ホラ、これよ。中身は覚えているでしょう? 二人とも合格して医者になったら将来結婚してくれと書いてあるわ。お前は落伍したんだからこれは無効だわね。ホラ、こうして返してやるわ」
 友子は、手許の黄ばんだ封筒から中の手紙を取り出し、顔に当てると音を立てて洟をかんだ。丸めてポンと床に投げる。
「ソラ、犬のように四つん這いになってその手紙を咥えてごらん」
 これまで度重なる看護学校のクラスでの虐めや、パーティの主催者カップルからの辱めを経験しているうちに、女性の命令に自然と卑屈に反応する習性が史郎の心に根付いてしまっていたのかもしれない。
 彼は、言われるままに四つん這いになって丸めた手紙を口に咥えたのである。
「口の中に入れて……味わって……そして食べちゃいなさい!」
 友子あてに昔書いた恋文で洟をかまれて、それを四つん這いで食べさせられる……そんな屈辱にも甘んじて耐えられる事自体、史郎にも不思議だった。
 塩っぽいドロッとした友子の洟汁をクチャクチャ音を立てて味わう男。それを見下ろす友子の目は、激しい蔑みで満たされていた。

セックスパーティの慰みもの

 例のパーティ主催者カップルにトレーニングを受けて以来、史郎のもとには毎週のように呼び出しが掛かるようになった。
 週末の土曜日の晩には定例のスワップパーティが、ホテルのスイートルームを借り切って開催される。出席者は多い時で十組を超えるし、少ない時でも最低五組が確保される。それ以下だとパーティそのものがキャンセルになる仕組みだった。
アシスト役は、結局史郎一人しかいないので出席者の殆どを相手にする重労働だった。
 奉仕を希望する男性・女性は足に赤いゴム輪を嵌める決まりになっていて、大抵、男性の約三割、女性の約八割が希望する。
 男性の場合、史郎のフェラでも勃起しないケースが時々あるが、女性の場合は百パーセント満足する、というより満足するまで史郎の顔を股間から離さなかった。
 最初の顔合わせから相手選びが終わると、成立したカップルは思い思いに部屋の空いている空間で抱き合い愛撫しあう。この段階から史郎の出番が始まるのである。
 足首の赤いゴム輪を目で追って、抱き合っているカップルの股間に首を入れる。そして、ぐにゃりとした一物を咥えるのである。
 勃起したとたんに次のカップルへと移動する。そして全員の挿入が始まると、今度は女性の足首のゴム輪を見ては結合部や女性のクリに舌を這わせる。
 しかし一番辛いのは、セックスの終わった女性の股間に顔を敷かれて男の精液を吸い取らされる作業だった。
 殆どの女性がピルを服用していて、中出しが普通だったからたまらない。夕食抜きで胃を空にしておかないと支障が出るほどの量だった。
 ひとわたりセックスが一段落すると、全員が部屋の片隅に設けられたスナックテーブルの周りに集まって暫く休憩する。
 その間に次の相手を物色して第二ラウンドが始まるのである。
 史郎は、哀れにも、その休憩の間も、未だ満足し足りない女性の尻に顔を敷かれ、繰り返しその股間で唇や舌を蹂躙され続けていた。
 第三ラウンドが終わると漸くお開きになって全員が帰るが、史郎には未だ仕事が残っている。皆の世話でセックスに参加していない主催者のカップルにたっぷりと奉仕させられるのだった。
 月に四回ないし五回、それも殆どが週末の土曜日だったが、史郎の舌が酷使される状態が続いた。その割には史郎の報酬はたいした額ではない。参加カップルから取る高額の会費の殆どは主催者のカップルの懐に入るのだった。
 たまりかねた史郎は報酬のアップを申し入れたが話が付かない。遂に史郎はきっぱりとアシスト役を辞める旨通告して、彼らと縁を切ったのである。

転落のエピローグ

 丁度、実習勤務の方が忙しくなってきて、週末も交代で出勤の割り当てが回ってきた。
 史郎がパーティのアシスト役を止めたのはよい潮時だったのである。
 しかし、ナースステーションでの勤務は楽なものではなかった。それに、史郎の仕事には友子の部屋で彼女にこき使われる時間が加わっている。
 彼女への昔の恋文を屈辱的な仕打ちでつき返されて以来、史郎は友子の所謂、身分を認識させるためのトレーニング≠毎日のように強要されていた。
 彼女の前で四つん這いになって床を拭く史郎に、友子は心がこもってないと難癖をつけて頭を靴先でこづく。そして、掃除が終わると決まって腰や脚のマッサージをやらされた。
 しかし、史郎にとって所謂初恋の人である友子のそばにいられるだけで心が満たされた。
一方、友子の方も、足元にじゃれ付く子犬のように自分を慕う史郎を、蔑みながらも哀れに思うこともあった。
ところが、ある日、そうした関係を一挙に変えてしまう様な事態が発生したのである。
 レントゲン撮影の実習のため、放射線科で一週間の訓練を受けて内科に戻ってきた日のことである。
 久しぶりで友子の部屋の掃除に訪れた史郎の前に、彼女はポンと分厚い封筒を投げてよこした。中から出てきた写真を広げて見る史郎の手がブルブルと震える。
 例のパーティでアシスト役を勤めている彼の無様な姿がカメラに捉えられている。それも、精液にまみれた女の股間に舌を這わせているところや、カップルの結合部に顔を押し当てている場面が彼の表情のアップと共にはっきりと写し出されているでは無いか。
 アシスト役を一方的に止めた際、パーティの主催者の男が、覚えてろよ!≠ニ怒りに震える声で叫んだのを思い出していた。史郎に止められた腹いせにパーティで撮った写真を送りつけて来たに違いなかった。
「お前がこんな変態だったなんて! 私、この写真を見て吐き気がしたわ。……あんまり驚いたんで、お前と同級だった林真佐子にお前のことを問い詰めてみたの。そしたら二度びっくり。お前ったら、学校の女子トイレでいやらしいまねをして真佐子達に懲らしめられたんですって。その時に、お前ったら自分から志願して罰としてみんなのお尻の穴を舐めたそうね。……それも、その後何回も繰り返したそうじゃないの」
「そ、それは違う。自分から志願したなんて、そ、そんな……」
「じゃあ、このいやらしい写真は何? お前、よくこんなところを舐められるわね。いやらしい! お前なんか、即刻首よ!」
「そ、それは許してください。な、なんでもしますから……」
 友子の前の床に土下座して嘆願する史郎の姿は哀れをとどめた。
「じゃあ、事務所に言うのは勘弁してやるけど、このままじゃ済まさないわよ。私がお前にふさわしい罰をあたえてやるわ」
 女の足が史郎の肩先を蹴り、床に転がる男の胸を友子の靴が踏みつけた。そのまま彼女は史郎の顔を跨いで腰を下ろす。
「こうされるのが好きなんだろう? このヘンタイ! お前をね、今日から私の便器にしてやる。ホラ、しっかり飲むのよ!」
 友子の白いパンティが目の前をよぎり、黒々としたグロテスクな股間が彼の顔面を捉えた。諦めて開いた口に彼女の柔肉が押し付けられ、ちょろちょろと汚水が注がれる。
 かって恋文を送った相手に辱められ、便器にまで落とされた悲哀を心に噛み締めながら、ゴクリゴクリと彼女の小水を飲み下す史郎の頭になぜか甘い陶酔感がよぎるのだった。


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2002年4月女王様バイブル6号
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2010/08/01