#56責め苦の庭にて(汚辱の生贄) 「生贄の汚辱姉弟」
                阿部譲二

投機に手を出して破産した不動産会社社長の姉弟が、父親の窮状を救うため昔の使用人夫婦の家で召使にされる。姉はその家の二人の息子に毎日犯され、弟はそこの娘に嬲られ女友達を交えて辱められる。隙をみて逃亡を計るが、それが罠で、捕らえられた二人には苛酷な運命が待っていた。姉は使用人達の性奴隷にされ、弟は娘や女中達の便器に落とされる。

「ただいまぁー」
 若い女の良く透る明るい声が、泉家の玄関
で響いた。               
 この家の長女、泉麗子、二十一才、女子短
大生、道で出合った人が思わずハッとする程
の美貌である。
「誰も居ないのぉ?」
 廊下を辿る足音が、トントンと二階に上っ
て行く。
「何だ、お父様いらっしたのね・・・・・」
 書斎のドアを覗き込んだ麗子は、机に向か
っている父の清蔵の、いつになく不機嫌そう
な顔を見て、フッと言葉を飲んだ。
「お帰り、早かったな。・・・・・信彦から
さっき電話でな、テニスの練習で遅くなるそ
うだ」
 小鬢に白いものが目立つ、この家の当主、
泉清蔵は五十才。
 親から受け継いだ泉不動産の社長だが、最
近、投機に手を出して失敗、莫大な借金をか
ゝえて金繰りに追われている。      
 妻を二年前に亡くして、娘の麗子と、高校
三年の息子、信彦との三人暮しだった。
 この地方では指折りの旧家で、先祖伝来の
土地、山林をバックに、泉不動産を起したの
が、清蔵の亡父の代であった。
 それが、僅か二代目で破綻を起したのも、
所詮は個人企業の底の浅さが、近頃の揺れ動
く経済に翻弄されての結果とも言えた。
「じゃあ、私、これから夕食のお買物に行っ
て来ます」
 麗子が出て行った後、清蔵はボンヤリと窓
外に目を移した。遅咲きの八重桜が、庭の新
緑に鮮かな彩りを添えている。
 突然、電話のベルが鳴った。
泉不動産の債権の大部分を握っている松下建
設の社長、松下昌平の特長のあるダミ声が、
受話器から流れ出て来た。
「先日、こちらで肩代りしたお宅の手形の分
を、今月中に支払って貰えなければ、そちら
の物件を差押えさせて貰いますからな。・・
・・・私も昔、そちらでお世話になった義理
があるから、今迄待ってたんですぜ」
「ま、まってくれ。今月末と云えば、明後日
じゃないですか。・・・・・今、この家や土
地を差し押さえられたら、私達は住む所が無
くなるんだ。お願いだ・・・・・せめて、来
月末迄猶予して貰えませんか? 頼みます」
 清蔵の訴えに答えは無く、カチャリと電話
の切れる音が耳に無情に響いた。
 松下昌平は、昔、泉家に代々使用人として
仕えていた、昔流に云えば家来筋に当る男で
ある。清蔵とは、たまたま同年だったが、子
供の頃からの遊び友達、と云うより使用人の
息子として清蔵に家来の様に扱われていた。
 それが、長じてからは、泉家の女中と結婚
して泉不動産の番頭格として経理を担当する
様になり、その内、独立して松下建設を起し
たのである。
 商才に恵まれていたと見えて、めきめき業
績を上げ、今ではこの地方随一の建設会社と
して羽振りをきかせていた。
 子供が、男二人、女一人の計三人居り、ひ
とり娘の敬子は偶然、泉家の信彦と同じ高校
で同学年、クラスこそ違うものゝ、テニス部
で信彦とは毎日顔を合わせている。
 敬子の上に、茂雄、徹男とそれぞれ二十五
と二十三才の男の子がいるが、両名とも高校
卒業後、すぐに父の建設会社に入って家業を
手伝っている。
 松下昌平が泉家を飛び出して独立したのも
元とは言えば、夫婦共々泉家の使用人として
永年仕えて来た境遇にあきたらなくなっての
ことで、親代々子飼いの身でありながら、泉
家に対する恩義は毛程にも感じていない。
 それどころか、清蔵と、ことごとに衝突し
て、到頭、泉家を追い出されと言った方が、
当たっているかも知れなかった。
 その泉、松下両家のわだかまりが、次の世
代に持ち越されたのだろうか、不思議に両家
の子供達の間にもトラブルが絶えなかった。
 麗子の高校生時代に、その美貌に魅せられ
た松下家の二人の息子達がラブレターを寄越
したり、しっこく付き纏ったりして、清蔵が
どなりこみに行った事件がある。
 そして最近では、泉信彦と松下敬子が高校
の同じテニス部ながら、お互いに反目し合っ
て口もきかない不仲だった。
 経済的な面では、前述の様に今や両家の立
場は全く逆転している。じり貧の家業を立て
直そうと、清蔵の打った手は、ことごとく裏
目に出て、赤字は嵩むばかりだった。
 焦った清蔵は、遂に商品相場に手を出し、
莫大な負債を背負ってしまう。この折、清蔵
が乱発した泉不動産名義の手形を割り引いて
収集し、その負債の大部分を肩代りしたのが
松下建設だった。
 松下昌平の意図は伺い知るすべもなかった
が、旧主の泉家への永年の恨みを晴らすため
とも、或いは泉家の所有する最後の不動産で
ある広大な土地付の家屋敷を我がものにする
ためとも、取り沙汰されていた。
 その日の晩、家族三人で夕食を終えた後、
清蔵は改まった態度で、娘の麗子と息子の信
彦に、今直面している窮状を説明した。
 薄々感付いてはいたものゝ、二人にとって
初めて知る予想外の莫大な負債額に、両名共
声を失っていた。
 それも、たとえ今住んでいる家屋敷をそっ
くり処分したとしても、その十分の一にも満
たない額とあっては、父同様途方に暮れるば
かりである。
 親子共々、不安な一夜を過ごした翌朝、清
蔵は、既に先週人手に渡った会社の事務所の
鍵を買手に引き渡すため、重い腰を上げた。
 がっくり肩を落して家を出る清蔵の後姿に
は心労に押し潰された男のやつれが目立ち、
見送る麗子と信彦の胸をしめつける。
 そして間もなく、二人は父親の後を追う様
にして、連れ立って外出した。
思い余った二人は、昨夜相談の上、父に内緒
で松下昌平を訪れることにしたのである。
 松下家は、ここからそう遠くない小高い丘
の中腹にある。新しく造成した高台に建てた
広壮な邸宅だった。
 若い二人を迎えた松下昌平は、別に意外そ
うな顔も見せず、見晴らしの良い豪華な応接
室へ彼等を招じ入れた。
高い天井にはシャンデリアが輝き、壁際には
絵画や彫刻が並んでいる。
「二人共、久し振りだね。今日はお父さんに
言われて来たのかね?」
 赤ら顔で恰幅のよい昌平は、何となく中年
の事業家特有の、あのねちっこい脂切ったム
ードを持っている。
女中の運んで来た茶菓子に目もくれず、コチ
コチに身を堅くして緊張気味の若い二人に向
かって、その気分を解きほぐす様に柔かく声
を掛けた。
「違います。父には内緒ですの。・・・・・
実は、お願いがあって・・・・・」
 口ごもる麗子の後を受けて、信彦が身を乗
り出して言葉を継いだ。
「お願いです。・・・・・父の借金の返済を
もう少し待って下さい」
 昌平は、おもむろに煙草に火を着けると、
革張りのソファーに背を沈める。
「それで、私が待ったとしたら、お父さんは
返すあてが出来るのかね?」
「・・・・・・・」
 黙りこんだ二人を前に、煙草の煙をフーッ
と吐き出すと、昌平はさとす様に続けた。
「君達のお父さんはね、実は、借金を抱えて
いるだけじゃないんだよ。君達の前だから言
うけれど、泉さんは商品取引で無理を重ねた
挙句、不正まで働いてしまったんだ。・・・
・・つまり、証拠金を積まずに相場を張った
んだ。これは明らかな商法違反だから、事が
表沙汰になれば、あの人は監獄行きさ。・・
・・・それに、もうひとつ悪いことには、麗
子さん、あなたもこの件に絡んでるんだ」
「エッ、私が? どうして?」
「泉さんは、今年度から、麗子さんを泉建設
の監査役に登録している」
「それは、名前だけ貸してくれって、父が・
・・・・」
「名前だけと言っても、法律では通らないん
だよ。・・・・・会社の名前で泉さんが不正
を働いた場合、監査役も共同責任をとらされ
ることになる」
「そ、そうすると、姉も、父と一所に監獄へ
・・・・・」
 信彦が言いかけて、思わず言葉を飲む。
「気の毒だけど、そう云うことになるな。し
かし、それは、あくまでも事が表に出たらの
話だよ。・・・・・今の所、私がその筋に働
きかけて、押さえてあるがね」
「それじゃ、松下さんが、父と私を救ってい
ただいてるんですか?」
 憂を含んだ麗子の顔は、傍目にもゾッとす
る程美しい。
昌平は、気押され気味のムードを振り払う様
に、ゆっくり間を取って、二本目の煙草に火
を着けた。
「別に救おうとしてる訳じゃないさ。泉さん
には、恨みこそあれ、恩義なんか一切無いん
だからね」
「でも、松下さんは、昔、泉家に奉公されて
いたと聞きましたけど・・・・・」
「そりゃ、奉公はしていましたよ。でも、そ
れはずーっと昔のことで、それに泉清蔵さん
には、子供の頃から随分いじめららたもんで
したよ。いつも、大きくなったらきっと仕返
しをしてやるって、子供心に誓ったものさ。
だからね、借金を取り立てゝ、丸裸にしてか
ら監獄に送ってやる積りなんだ。返済出来な
い分は業務上横領の形になるから、まあ、金
額も多いことだし、しっかり十五年はくらい
込むだろうさ。・・・・・麗子さん、あんた
は共同従犯だから、五年位で出られるかも知
れんな」
「そ、そんなむごい! 父さんだけでなく、
姉さんまでも巻添えにするなんて・・・・・
な、なんとか考え直して下さい。お、おねが
いです!」
 信彦の訴えは真剣そのものだった。
「私は、どうなっても良いわ。父を監獄に入
れるのは、何とか許して下さい。・・・・・
私の身体で済むことでしたら・・・・・」
「ね、ねえさん、何を馬鹿なこと言うんだ。
僕を、僕を使って下さい。ど、どんなことで
もしますから・・・・・」
 二人の悲痛な叫びにも、昌平は一向に心を
動かされた模様は無かった。
むしろ、二人の狼狽振りを楽しむ様に薄笑い
さえ浮べている。
 しかし目の方は、むっちりと成熟した麗子
の身体を、舐める様にねめ回していた。
(そうだ。この女を俺のものにするのも悪く
ないな。それに、この若僧も一生飼い殺しに
して、こき使ってやるか)
 昌平は心の中で呟く。
やがて頃合を見て、ふと思い着いた様なジェ
スチャーで、改めて二人を見詰め直した。
「もし、もしだな、私がお父さんを救ったと
したら、あんた達、私の言うことを何でも聞
くんだな。・・・・・間違いないな?」
 黙って頷く二人を満足そうに眺めると、昌
平は思い着くまゝに条件を切り出した。
「そうさな。それじゃ二人は、たった今から
この家の奉公人として、働いて貰う。それも
普通の奉公人じゃない。なにせ莫大な借金に
代る奉公なんだから、どんな命令にも従って
貰う。・・・・・そう、期間はとりあえず十
年ってとこにしておこう。・・・・・その代
り、お父さんは告訴されない様に、私が取り
計らって上げる。そして、君達がこゝで奉公
している間、松下建設の北海道支社で働いて
貰うことにしよう。勿論、それで、私への借
金は、すべて棒引きってことにする。十年後
には、晴れて親子水入らずで再出発出来るん
だ。・・・・・これで、どうかな?」
 二人は、思わずお互いに顔を見合せた。
自分達が、この家に奉公することで、父の窮
状が救われ、借金も十年で棒引きにして貰え
る・・・・・松下昌平が、どんな下心を持っ
ているにせよ、選択の道は他に無い。・・・
・・若い二人には、そう思えたのである。
「それでしたら、何とか、お受け出来そうで
すわ。じゃあ、帰って早速、父と相談してか
ら、お返事しますので・・・・・」
 その麗子の返事を、昌平の言葉が遮った。
「ダメダメ、帰って返事を持ってくるんじゃ
この話は、無かったことにしてくれ。・・・
・・私も気が変るかも知れないし、第一、私
の気まぐれで莫大な金を使う訳だから、社員
や家族の者が、必ず反対するにきまってる。
お前達が今の瞬間から、奉公を始めて実績を
作ってしまうんじゃなきゃ、お断りさ!」
「でも、父がどう言うかは別にしても、私達
の荷物を取ってこなければ・・・・・」
 麗子も信彦も、昌平の強引な態度に当惑気
味だった。
「荷物なんか、後から誰かに取ってこさせる
さ。今君達が帰ってみろ、お父さんは反対す
るに決まってるさ。そしたら、残された道は
恐らく一家心中しかあるまい。よく考えるん
だな」
 昌平の言うのも、もっともだった。子供達
に犠牲を払わせて黙っている父ではない。
それは、誰よりも二人が良く知っていた。
「じゃあ、お言葉に従うとして、松下さんの
約束が守られると言う証明は戴けますの?」
「勿論さ。今、ここに弁護士を呼んで公式な
書類を作らせるよ。それでいゝかな?」
 頷く二人を横目で見ながら、昌平は電話の
受話器を取り上げる。
 そして、弁護士が到着する迄の小一時間の
間、麗子と信彦は二人だけで応接間に取り残
された。
「姉さん、これで良いのかね?・・・・・・
お父さんは救われるにしても、姉さんは女だ
し、大丈夫かなぁ。まさか、あいつの慰みも
のになるんじゃないだろうな」
「どうなっても私は平気よ。それに、あの男
だって、奥さんの居るこの家で、まさか私に
手出しはしないわよ。・・・・・それより、
信ちゃんの方はいいの? 学校へは行けなく
なるし、きっと皆にこき使われるわよ。あの
信ちゃんの嫌っていた敬子にだって、いじめ
られるでしょうし・・・・・」
 お互いに不安に駈られながらも、相手の身
を案じ合う。それは追い詰められた二羽の小
鳥が、身を寄せ合って来たるべき嵐に備え様
としている姿だった。
 そして、その嵐が、二人の身をズタズタに
切り裂こうとしているのも、神ならぬ身の知
る由もない。
 やがて、玄関に車の音がして、昌平が初老
の弁護士を伴って入って来た。
出された名刺を見ると、駅前に事務所を開い
ている、この地方では可成り名の売れた弁護
士である。
或いは騙されるのではと疑心暗鬼に駈られて
いた二人に、それは、ささやかな安堵の念を
もたらした。
 松下昌平の口述するまゝに、先程彼が述べ
た内容通りの公正証書が、弁護士の手で作ら
れる。三人がそれぞれ確認した上で、昌平に
続いて麗子と信彦が署名した。
最後に弁護士が立合人として連署し、手続き
を終える。
「さあ、これで気が済んだろう。証書は役所
に登録されて保管されるんだから安心しろ」
 昌平は、弁護士を送り出すと、入れ代りに
女中頭の松代を呼び入れた。
 丸顔の、でっぷり太った三十半ばの女で、
十人並の器量ではあるが、いかにも抜目無さ
そうな目付と厚い唇が、何となく下卑た品の
無い感じを人に与える。
「お松、これが泉建設の娘と息子だ。父親の
借金の代償に、たった今からこの家で使用人
として働くことになったから、お前が責任を
持ってしっかり仕込んでくれ。いいな。・・
・・・わしは、これから、こいつ等の親父に
話を付けに行って来るからな」
 立上がった昌平は、部屋を出ると松代を手
招きして、小声で囁いた。
「いゝか、こいつ等の親の泉清蔵にはな、俺
は子供時代から、奴隷の様にこき使われたん
だ。この二人には、その償いをたっぷりさせ
てやるんだからな。うんと卑しめ、辱めてや
れ。いゝな。普通の使用人じゃなくって、身
も心も文字通り最低の召使いの身分に落すん
だぞ。・・・・・それから、逃げられない様
に何時も見張っていろ」
 昌平の言葉に大きく頷くと、松代は部屋の
二人に声を掛けた。
「お前達、私の後に付いておいで。みんなに
紹介してやるからね。・・・・・ホラ、ぼや
ぼやするんじゃないよ!」
 松下家は、丘の中腹を切り開き、金にあか
せて建てた豪華な邸宅である。成金趣味と言
えばそれまでだが、至る所にけばけばしく贅
を尽してあった。
 母屋は松下家の家族が占め、続く別棟には
住み込みの女中達、それに松下建設の社員連
中が寝泊りしている。社員と言っても土建業
の常で、松下昌平を親分と仰ぐ、柄の悪い、
やくざな若い衆達だった。
 麗子と信彦は松代に連れられて、まず、台
所に続く控えの間で、賑やかに昼食をとって
いる女中達に引き合わされた。
 こゝの女中達は、母屋の松下家の家族達に
仕えると同時に、別棟に起居している十名を
越える社員達の世話が仕事で、松代を入れて
総勢七名だった。
 如何にも良家の子女らしい上品な物腰の麗
子と信彦は、がさつなこゝの雰囲気の中では
全く場違いな存在に映る。そんな二人に、女
中達の好奇の視線が一斉に集まった。
「この二人はね、旦那様への借金のかたに、
今日から、こゝで働くことになったんだよ。
でも、普通の奉公人じゃなくって、十年間無
給で牛や馬みたいにこき使われるんだから、
まあ奴隷みたいなもんさ。皆でたっぷりしご
いてやっておくれ。・・・・・ホラ! お前
達。そこに土下座して、皆にお願いするんだ
よ。どうか、私達を最低の召使いとして仕込
んで下さいってね。フフフ」
 それは、松下家で彼等が出合う数々の屈辱
に満ちた経験の、ほんの初まりだった。
 松代にせかされて、板の間に平伏した二人
は、額を床に擦り付けてけて、女中達に挨拶
をさせられる。
 口写しに強いられた最低の召使い≠フ言
葉に、赤くなって口ごもる二人を、たまり兼
ねた松代は頭ごなしに怒鳴りつけた。
女中達の間にクスクス笑いが拡がり、その中
のひとりが、おかしそうに声を掛ける。
「ウフッ、いい格好だよ。望み通り仕込んで
やるから、私達にはちゃんと敬語を使って、
命令に服従するんだよ。判ったかい。・・・
・・そら、お前達、お昼は未だなんだろ? 
仲良く、そこで私達の残飯をお上り! クッ
クックッ」
 女中達に嘲笑されて、流石に勝気な麗子も
唇を噛む。信彦に至っては、悔しさにブルブ
ルと身体を震わせていた。
 その日の午後は、二人共、女中達に次から
次へと雑用に追い使われた。
 麗子は、彼女等の食事の跡片付けや下着の
洗濯を、そして信彦は、便所掃除の後、女中
達の肩や腰のマッサージをやらされた。
 夕刻になると先ず、この家の娘の敬子が、
続いて仕事を終えた息子達、茂雄と徹男が帰
宅して来る。皆、麗子と信彦のことを聞き付
け、好奇心に駈られて、覗きに来た。
 便所の床に這いつくばってタイルを拭く信
彦を、敬子は目を丸くして眺めた。
「呆れたわぁ、泉君。あんた、学校を止めて
今日から、この家の使用人に成り下ったんで
すって?・・・・・それじゃ、私の専用の召
使いにして上げようか。どおお? ウフフ、
面白いわぁ」
 足元で黙って俯いている信彦を、無遠慮に
ジロジロと眺める敬子の態度は、さながら鼠
をいたぶる猫の様だった。
 茂雄と徹男は、連れ立って、洗濯場で下着
の汚れを揉み洗いしている麗子に近ずいた。
「やあ、麗ちゃん、久し振りだね。これから
毎日会えるなんて、素敵だな。・・・・・・
あ、そうだ、俺のパンツも洗ってくれよ」
 茂雄は、わざとこれ見よがしにズボンを取
り、汚れたブリーフを脱ぐと、目を背ける麗
子の顔にいきなりそれを押し付けた。
 不意を突かれて、臭い匂いを存分に嗅がさ
れた麗子は、思わず前屈みになってウーッと
呻く。その形の良いふっくらした尻を、徹男
の手がスカートの上から素早く撫で回した。
「や、やめて! やめて下さい」
 洗濯場の隅に飛びのいた麗子は、怒りに燃
えた目で二人をキッと睨む。紅潮した頬に堅
く結んだ唇の端が微かな震えを伝えていた。
「何でえ、えらそうにしやがって! お前は
今日からこの家の使用人なんだぜ。御主人様
である俺達に、楯突いて見ろ。唯じゃ済まな
いぜ」
「そうさ、何を気取ってやがるんだ。ケツを
一寸触られたぐらいでさ! 今に、俺達の前
に自分からケツを曝して、どうか触って下さ
いませって言わして見せるぜ」
 茂雄と徹男は、いまいましげに毒付いた。
双子の様に良く似た兄弟だが、兄の茂雄がひ
と回り身体も大きい割には気が弱く、弟の徹
男は兄より素走っこく抜目なかった。
 共に学校嫌いで、高校を出ると直ぐに父の
会社に入り、建設現場で働いている。
始終、気の荒い連中を相手にしている為か、
両者共がさつな品の悪さが身に着いていた。
 二人が去った後、洗濯を続ける麗子の胸は
たった今味わされた屈辱で波立っている。
奉公人の身で、表立って抵抗出来ない立場が
情なく、思わずポロッと涙が零れた。
 その晩、夕食の後、広い居間でソファーに
くつろぐ松下家の家族の前で、麗子と信彦は
改めて奉公人としての挨拶を命じられた。
それも、居間の床に正座させられ、まるで罪
人の様な取り扱いである。
「お前達の親父にはな、今日、充分話を付け
て来たから安心しろ。なーに、たった十年間
死んだ気になって奉公するだけで、莫大な借
金が棒引きになるんだ。・・・・・それに、
お前の親父も、松下建設の北海道支所の従業
員として使ってやることにしたんだ。今頃は
うちの若い者に付添われて、北海道行きの飛
行機の中さ」
 松下昌平の話に、麗子と信彦は思わずお互
いに顔を見合わせた。父の屈服は予測してい
たが、まさか直ちに北海道へ連れて行かれる
とは、全く予想外である。
 親と子の間を今や、遥かな距離が隔てゝし
まい、これから十年もの間、お互いに会うこ
とも出来ぬかと思うと、二人の胸は締め付け
られる様だった。
「あなた、それより、さっきの話を申し渡し
てやったらどうですの」
 昌平に寄り添う様にして長椅子の上で足を
崩し、煙草をふかしていた妻の幸江が、昌平
をせかす様に促した。
昔、泉家の女中をしていたと云うだけに、品
の無い、ぼってりと肥えた中年の女である。
どこと云って特長の無い顔立ちだが、厚い唇
と細い目が肉感的で、如何にも好き者そうな
印象だった。
「そうだな。・・・・・今、食事の時に家族
で話し会ったんだが、お前達は、女中達の指
図で家の雑用をやって貰うだけじゃなく、余
分な仕事を引受けて欲しいんだ。・・・・・
会社で言えば兼任、軍隊で言えば所謂、特別
任務だな」
 昌平は、やゝ反り身になって、フーッと煙
草をくゆらしながら続ける。顔には何時の間
にかニヤニヤ笑いが漂っていた。
「それはだな、お前達は、この家の奉公人で
あると同時に、うちの子供達のペットになっ
て貰う。・・・・・つまりだな、麗子はうち
の息子達のペットとして奉仕すること。そし
て信彦は、敬子のペットとして仕込んで貰う
んだ。いゝか、これは、この家の主人として
の、わしからの命令だぞ」
 麗子と信彦の顔がサーッと青ざめる。
「ひ、ひどいわ! そ、そんなこと、契約違
反だわ!」
 悲鳴にも似た麗子の叫びだった。
「忘れたのか? お前達は普通の奉公人じゃ
ないってことを。契約書にだって、ちゃんと
書いてあるさ。どんな命令にも従うってな」
 昌平の言葉に、麗子は思わず唇を噛む。
信彦もたまり兼ねて声を震わせた抗議した。
「契約書なんて関係ないさ! 僕は女のペッ
トになんか、死んでも成るもんか」
「そんな理屈は通らんぞ。ちゃんと、お前達
も署名してるんだからな。お前も、いゝかげ
んに諦めて、敬子に可愛がって貰うんだな」
 昌平がぽんと冷たく突放す。傍らの敬子も
黙っていない。
「何さ、偉そうに! 知ってるわよ、女中達
の前で土下座して、最低の召使いに仕込んで
下さいって、頼んだそうじゃないの。・・・
・・私の方は頼まれなくても、お前を最低の
ペット奴隷に仕込んでやるわよ。・・・・・
ソーラ、顔が赤くなった! フフッ」
 敬子に言われて見れば、それももっともだ
った。しかし、それは、女中頭の松代に初め
て頭ごなしに命令され、雰囲気に飲まれての
ことで、言葉の上だけの屈従のつもりだった
のである。
 昌平が、わざとらしくポンと手を打った。
「こりゃ傑作だ、ペット奴隷か。・・・・・
成程、この二人にぴったりだな。俺が、こい
つ等の父親にされた事を、何倍かにして返し
てやれる訳だ。・・・・・親の因果が子に報
いってやつさ。ワーハッハッ」
 そこへ席を外していた茂雄が、何やら手に
して戻って来た。
「ホラ、前にこゝで飼っていた犬の首輪と鎖
だよ。そこの雌犬と雄犬に丁度二組あるぜ。
・・・・・そら、徹男、雄犬の方を頼む。手
錠もあるからな」
 茂雄から徹男に渡された手錠が、カチャリ
と音を立て、信彦の両手を背中で拘束する。
徹男の手で、無理矢理、敬子の前に跪かされ
た彼は、頬に冷たい薄笑いを浮かべた彼女の
手で、犬の首輪を穿められた。
 勝ち誇った女の蔑みの視線を受けて、信彦
の顔が屈辱と無念さに歪む。生き物の様に信
彦の首に巻き付いた冷たい革の輪は、敬子の
ペット奴隷に転落した彼の身分を象徴するか
の様だった。
 一方、茂雄は麗子の髪をむずと掴むと、低
い悲鳴を上げて懸命に抵抗する彼女を、その
まゝずるずると引きずって行く。
そして、敬子と反対側のソファーに腰を据え
ると、その前に麗子の身体を引き据えた。
うつ伏せになって男の膝元に倒れ込んだ彼女
の首を、茂雄はぐいと上向きにする。
 豊かな黒髪が乱れ、キッと結んだ赤い唇に
紅潮した頬、そして形の良い眉の下に怒りに
燃える大きな瞳が輝き、凄艶な姿である。
それは、まるで、美しい大輪の牡丹が、心無
い無頼の徒に手折られる光景を連想させた。
 昌平夫妻は、横手の長椅子に身を委ねて、
ニヤニヤ笑いを浮かべて眺めている。
 茂雄は、片手で麗子の髪を掴んだまゝ、も
う一方の手で、鎖付の革の首輪を彼女の喉に
巻き付ける。そして、首の締め加減を調節し
た後、自分では外せぬ様に小さな南京錠でし
っかりと固定してしまった。
「ソラ、そのまゝ四つ這いに成るんだ!・・
・・・そうだ、中々良い格好だぞ。ウフフッ
・・・・・所で、お前、その邪魔なスカート
は脱いでしまえよ」
 四つ這いのまゝ首を垂れ、じっと身を堅く
している麗子の背に、後向きに跨がった茂雄
は、いきなり女のスカートをめくり上げた。
 アーッと悲鳴を上げながらも、男の体重を
両腕と両膝でやっとのことで支えている悲し
さ、身動きが出来ない。
 ピンクの艶やかなパンティーに包まれた形
の良いヒップが、皆の視線の下に曝される。
茂雄はニンマリと笑みを受かべて、その双球
をゆっくりと掌で撫で回した。
 麗子の顔が真っ赤に染まる。
「ア、アーッ、止めて! お願い!」
 茂雄の手が、尻の割れ目をまさぐる様に股
の奥へ進むと、流石に耐え兼ねた麗子が悲鳴
を上げた。
「フフフ、恥ずかしいか?・・・・・ホレ、
これはどうだ?」
 男の指が、尚も執拗に股間にまつわり付き
果てはパンティーの裾から侵入して秘肉に触
れる。
「イヤーッ!」
 叫び声と共に、尻が小刻みにブルブルと震
えた。
「オイ、兄貴、独りでずるいぞ。俺にも触ら
せろよ!」
 徹男が、向い側のソファーから立上って、
近寄って来るなり、パンティーを一気に引き
下るす。
「キャーッ」
 悲鳴のオクターブが上り、震えが麗子の全
身に走った。委細構わず、茂雄の手が、四つ
這いの彼女の膝をぐっと押し拡げる。
途端に徹男の手がスルッと股間に入り込み、
指先がクレバスをなぞった。
「ウーッ・・・・・クーッ、堪忍してぇ!」
 涙声の嘆願も、いたずらに二人の男達の耳
を楽しますだけである。
 女のクレバスを、徹男の指の玩弄に委ねた
茂雄は、麗子の背に跨がったまゝ、尻割れを
ぐっと押し開いた。そこには、ピンク色のア
ヌスの蕾が、まるで息付いているかの様にピ
クピクと痙攣している。
 茂雄は、指にたっぷり唾をつけると、その
中にぐっと指を差入れた。
「ヒィーッ、そんなこと・・・・・や、やめ
て!」
 麗子の動転する様を、まるで楽しむかの様
に眺めながら、茂雄の指はゆっくりと揺動し
つゝ、やがてすっぽりと根元迄、女のアヌス
に吸い込まれた。
「やめろぉー、お前達。・・・・・ね、ねえ
さーん!」
 首輪の鎖を敬子の手に握られ、彼女の足元
に引き据えられている信彦が、たまり兼ねて
叫ぶ。
「うるさい奴だな。・・・・・ホラ、これで
も舐めてろ!」
 麗子の背から降りて、信彦に近ずいた茂雄
が、今迄麗子のアヌスを蹂躙していた指を、
信彦の口中に差し込んだ。
「一寸でも噛んだら、二人共、ぶっ殺すぞ!
ホラ、しゃぶるんだ。・・・・・どうだ、お
前の大切な姉さんのケツの穴の味は? ハッ
ハッハッ」
 一同がつられて爆笑する。信彦は悔しさに
耳まで紅潮し、目が涙でボーッと霞んだ。
思わず、口の中の茂雄の指を、噛み切りたい
衝動に駈られる。
しかし、自分はともかく、姉や父にまで仕返
しされるに違いないと思うと、あがらう気持
も萎え、ホロ苦いその味を噛みしめるのだっ
た。
「ドレ、俺も触らせ貰おうかな」
 立上って、麗子に近づこうとした昌平の腕
を、妻の幸江が掴んだ。
「あなたは駄目よ。若い者に委せるの。・・
・・・茂雄も徹男も、あとは、あんた達の部
屋で続けなさい。こゝじゃ、お父さんの目の
毒よ」
 麗子が、二人の男達に引きずられる様にし
て部屋から姿を消すと、今度は信彦が敬子に
首の鎖を曳かれて、よろめきながら部屋の中
央に歩み出る。
 そこで後ろへ回った敬子が、トンと腰を蹴
ると、信彦は後手錠のまゝ前のめりに床に転
がった。
 思わず起き上ろうとする男の背に、後向に
跨がった敬子は、おもむろに信彦の腰のベル
トを外し、ズボンを脱がしにかゝった。
「アラアラ、今度は男のストリップなのね」
 幸江が、おかしそうに声を掛ける。
信彦は懸命に抵抗しようとするが、自由を奪
われた身の悲しさ、とうとう敬子の手でブリ
ーフまで取られ、下半身を裸に剥かれてしま
った。
 立上った敬子が、信彦の身体を仰向けに転
がす。ぐにゃりと萎えたまゝの股間の一物が
皆の視線の下に曝された。
「コーヒーを、お持ちしました」
 部屋の外から、女中の声がする。
「入ってもいゝわよ」          
 幸江に言われて、ドアを開けた女中は、部
屋の中の光景に目を見張った。敬子が鎖を手
にしたまゝ、そちらを振り向く。
「びっくりしなくてもいゝわ。こいつを私の
奴隷として仕込んでるのよ。コーヒーはそこ
へ置いて、細い紐を直ぐに持って来て頂戴。
・・・・・それから、手の開いてる者は見に
来る様に言って。・・・・・みんなの見てい
る前で、こいつに、たっぷり恥をかゝやるん
だから」
 やがて届けられた細紐の端で、敬子は信彦
の一物の根元を括り、背中の手錠を外して、
四つ這いに成る様に命じた。
「ホラ、みんなの方に、お尻を向けて御覧。
・・・・・股をもっと開くのよ。・・・・・
そうそう、それでいゝわ」
 背後に回った敬子は、紐をツンツンと軽く
引く。すると股間の一物が、ブラブラと前後
に揺れた。ドアのあたりで固まって見物して
いた女中達の間から、クスクス笑いが起る。
信彦の口から、微かな呻き声が洩れた。
 敬子は、首輪の鎖と股間の紐とを巧みに操
って、信彦を、四つ這いのまゝ部屋の中を曳
き回し始める。
「いゝ格好だこと! 本当に犬そっくりよ。
・・・・・ホラ、犬の様に鳴いてお見せ! 
アラ、お前、私の言うことがきけないの? 
じゃあ、これでどおお?」
 股間の紐が突然強く引かれ、鋭い痛みが否
応無しに信彦に屈服を促した。
弱々しく(ワ、ワン)と犬鳴きをする。
「落第よ、もう一度。今度はチンチンしなが
ら鳴いて御覧!」
 身体を起し、跪いたまゝ手を前に垂らして
犬鳴きを繰り返すと、その珍妙さに見物の間
からドッと笑いが弾ける。
「フフフ、いゝわよ。御褒美上げるから口を
お開け!」
 敬子は笑いながら、男の大きく開けた口中
にペッと唾を吐き込んだ。
信彦の顔が屈辱に歪む。
「今度は女中達にも唾を貰うんだよ。・・・
・・ソラ、こっちへ来い!」
 再び股間の紐がぐいと引かれ、激しい苦痛
が信彦の全身に走る。
それは、信彦にとって生れて初めてのおぞま
しい体験だった。
女達の前に跪いて口を開け、唾を乞わされる
のである。嘲笑を露に浮かべた女中達は、口
中にたっぷり唾を溜め、勢いよく信彦の咽喉
目がけて、それを吐き込む。
 塩辛い痰を含む唾も混って、それは次々と
彼の口腔に、ねっとりとまつわり着いた。
「どおお? 女の痰壷にされた感想は。・・
・・・恥ずかしい? それとも、情けない?
・・・・・アラアラ、涙が出て来たわよ。悔
し涙かしらね。ウフフフ」
 敬子に嘲られて、怒りで全身が小刻みに震
える。しかし、股間に残る痛みの感覚が、信
彦に反抗の気力を失わせていた。
 一方、今迄長椅子でコーヒーを飲みながら
見物していた昌平夫婦が、ゆっくりと立上っ
た。
「情け無い男だな。女に嬲られて、挙句の果
ては、奴隷にされるとはな」
 昌平の言葉に、幸江も合槌を打つ。
「本当ね。敬子も続きは、自分の部屋でおや
り。・・・・・でも、こいつも一応男のはし
くれなんだから、手錠をしっかり穿めておい
た方がいゝよ。じゃあ、又明日ね」
 昌平と幸江は、寝室に向かう途中、茂雄の
部屋の前を通る。そして、中から洩れる激し
い喘ぎ声に、思わず顔を見合わせてニヤリと
笑みを浮かべたのだった。
 一方、部屋の中では、裸にされた麗子が、
茂雄と徹男の兄弟に辱めを受けている最中で
ある。
 ベッドの上で四つ這いにされた麗子は、哀
れにも徹男の股間のものを口に含まされ、同
時に茂雄に後から犯されていた。
茂雄のピストン運動が、彼女の身体を前後に
揺すり、同じリズムで徹男の肉棒が女の口腔
の奥に差し込まれる。
 スタンドの淡い照明の中で、麗子の苦しげ
な顔の表情が次第に恍惚としたエクスタシー
の色を加えていた。
 茂雄の動きが一段と激しさを加え、ペタッ
ペタッと音を立てゝ男の太股が女の尻に叩き
つけられる。そして、やがて茂雄が背をのけ
ぞらせる様にして果てると、今度は徹男が待
ち兼ねた様に麗子の尻を抱いた。
 茂雄は女の髪を掴んで、今果てたばかりの
肉塊を彼女の口に押し込む。
再び、単調なピストン運動が開始され、延々
と何時果てるともなく続くのだった。
 その頃敬子の部屋では、再び後手錠を穿め
られた信彦が、椅子に座った敬子の前に跪か
され、女の足を舐めさせられていた。
「ホラ、もっと舌の先に力をこめて、その唇
も使って、足の裏の汚れを吸い取るんだよ。
・・・・・そう、指の間も丁寧におやり」
 首輪の鎖がピンと引かれた状態で、信彦の
顔面に押し当てられた女の足の裏が、彼の顔
を蹂躙する。
彼女の汚れた足裏は、苦みを含んだ塩辛い味
を、信彦の口中一杯に拡げた。
「フフフ、判った? 奴隷の身分が。・・・
・・そろそろ、とどめを刺してやるわ」
 敬子は鎖を放すと同時に、ぐんと足裏に力
を込めて、信彦を仰向けに倒した。
一瞬、背中に手錠が押し付けられ、痛みに顔
をしかめる。
敬子は、信彦の顔を両足の踝で挟み、顔を跨
いだ姿勢でじっと男の顔を見下ろした。
「奴隷犬はね、御主人の匂いを覚えるのよ。
・・・・・お前にふさわしいのは、私のお尻
の臭い。フフフ、たっぷり嗅がせてやるわ」
 白いパンティーに包まれた大きな尻が、ス
ーッと、信彦の目の前に降りて来て止った。
尻の割目に食い込んでいた部分が、帯状に褐
色に染まっている。
「いゝこと? まづ、後ろの方の臭いを覚え
るのよ。前の方は、いずれお前が奴隷に成り
切ってからにするわ」
 敬子は、手にしていたリモコンでテレビの
スイッチを入れると、おもむろに尻を落す。
そして腰を微かに動かして調節し、ぐっと体
重を掛ける。
 両頬に女の尻丘の重みが、じわっと拡がる
と同時に、饐えた尻臭がパンティー越しに鼻
の奥を突き、思わずウッと呻き声が出た。
「お前は、これから毎日、この臭いを嗅いで
覚えるんだよ。それも、他の女の臭いとの違
いを嗅ぎ分けられる様にお成り。・・・・・
そうね、一ケ月、時間をやるわ。その間にせ
いぜいこの家の女中達のお尻も嗅がして貰っ
て違いを覚えるんだよ。一ケ月後にテストを
して合格しなければ、罰として私のオシッコ
を飲ませるわ。いゝわね!」
 それは、信彦にとって考えるだにおぞまし
い命令だった。敬子の尻臭を毎日嗅がされる
屈辱に加えて、女中達の尻も嗅がされる・・
・・・いや、自分から進んで嗅がせて貰うの
である。そして一ケ月間で、その違いが覚え
られねば、彼女の小水を飲むという新たな辱
めを受けねばならない。
 すっかり打ちのめされた信彦の鼻孔には、
呼吸の度毎に、あの独特の悪臭が遠慮なく侵
入して来る。
 その呼吸も、顔にのしかゝる彼女の体重で
決して楽ではなく、力を込めて吸う必要があ
った。丁度深呼吸の要領で、必然的に臭いも
深く吸い込まれる道理である。
 その度に、敬子の尻臭が屈辱感とダブって
信彦の脳裏に焼き付けられて行った。
 敬子はと言えば、尻に当たる生暖かい男の
呼吸に、征服感を満足させられつゝ、テレビ
の番組に見入っている。
こうして、一時間余も尻に敷かれた後、やっ
と敬子の尻が僅かに浮き、彼女の顔が覗き込
む。
「まあまあ、顔が真赤ね。少しはこたえた?
さあ、寝る前に奴隷のキスをするのよ。・・
・・・どこへだって? まさか奴隷が御主人
様の唇にキス出来るわけないでしょう。・・
・・・そう、お前が今迄嗅いでいたアヌスへ
よ。ホラ!」
 パンティーが目の前で尻の部分だけめくら
れ、現れた茶褐色の蕾みが信彦の唇に押し付
けられる。
「お前、映画のキスシーンを見たことあるだ
ろう。あの要領で、しっかりお吸い! これ
こそ、お前にふさわしい奴隷の味よ」
 信彦は、まるで頭の奥に焼ごてを当てられ
た様なショックに呻いた。
敬子の蕾みが繰返し彼の唇をにじり、酸味と
澁味の混った、その屈辱の味を注ぎ込んだの
だった。
 漸く解放された信彦は、手錠姿のまゝ首の
鎖を曳かれ、下半身裸のまゝトイレの横の物
置に閉じ込められる。
黴臭い三畳程の広さの内部には、掃除道具や
段ボール函に入った古着等が雑然と散らばっ
ていた。
 隅の方の棚に古い毛布を見付け、口と足を
使って床に拡げ、横になったものゝ、先程迄
の数々の辱めが次々と思い出されて、眠るど
ころではない。
しかも、背中で両手を拘束している手錠のた
めに、寝返りもまゝならなかった。
 しかし、昼間の疲れで漸くウトウトしかけ
た頃、ガチャガチャと戸の錠を外す音がして
ドヤドヤと人が侵入して来た。
 パッと灯りが点けられ、二人の兄弟に抱き
かゝえられる様にして入って来たのは、全裸
の姉の麗子だった。
「お、お願い。洗面所で汚れを清めさせて頂
戴」
「そのまゝ俺達の匂いを付けて寝ろよ。奴隷
のくせに、贅沢言うんじゃないぜ」
 嘆願する麗子を茂雄が冷たく突放す。
「おい、兄貴、良いことがあるぜ。そこに寝
ている雄犬に、あとを清めさせようぜ。・・
・・・フッフッフッ」
 何のことか意味が取れずにいる信彦の顔の
上に、二人は麗子を無理矢理跨がらせた。
「ア、イヤッー・・・・・堪忍して!」
 麗子が悲鳴を上げる。
それより驚いたのは信彦の方だった。
突然、顔の上に姉の股間が覆い被さって来た
のである。しかも、それは異臭を放つネバネ
バした液で、べったり覆われていた。
「オイ、お前の姉さんにはな、俺達が今迄か
かって、三発宛ぶち込んでやったんだ。・・
・・・たっぷり、俺達のジュースが溜ってい
る筈だぜ。しっかり吸って清めてやるんだ。
・・・・・もし、少しでも零したら、お前の
大事な所を踏み潰してやるぜ!」
 茂雄のドスの効いた声に、信彦の背筋に冷
たいものが走った。反射的に、顔に押し付け
られたクレバスを夢中で吸う。
と、堰を切った様に膣の中から、生暖かい多
量の液がズズーッと音を立てゝ、信彦の口中
に吸い込まれて行った。
 青臭い晒粉の様な、しつこい味である。
プンと尿の臭いが混るのは、恐らく犯された
ショックで失禁したあとなのであろう。
信彦は、何も考えない様に自分に言い聞かせ
ながら、汚辱の液を吸い続けた。
「信ちゃん、ごめんね」
 姉の声が啜り泣きに混って聞こえた。
たった一人の姉を二人の男に散々もてあそば
れ、犯されたあとを吸わされている。・・・
・・その、しいたげられたシチュエーション
は、彼を無力感と敗北感のとりこにし、一切
の気力を喪失させる。
 諦めが怒りを中和し、あとにはやりきれな
い屈辱感のみが残った。
「フン、意気地ない野郎だな。うまそうに吸
ってやがる・・・・・オイ、これからはな、
お前をティッシュ代りに使ってやるから、俺
達がこの女を可愛がる時は何時も、そうやっ
て股倉にくらいついていろ。ヒッヒッヒッ」
 その晩は物置の中で、傷口を舐め合う二匹
の仔犬の様に、いたわり合って過ごした姉弟
は、何時しか泥の様な眠りに落込んでいた。
 しかし、早朝に叩き起された二人は、女中
達に命令されるまゝに、家事に雑用にと追い
立てられた。
 衣服を身にまとうことは許されたものゝ、
首輪はそのまゝで、鎖は引きずらぬ様に腰に
巻き付けてある。
信彦も手錠は外して貰えたが、何時でも穿め
られる様に、腰の後に下げさせられた。
 松下家の朝は早い。
別棟に寝起きしている松下建設の社員達は、
朝の七時には朝食を済ませ、それぞれ各自、
工事中の担当現場へと出勤して行く。
 丁度、土曜日に給料日が重なり、明日の休
日を控えて、どの顔も明るさに溢れていた。
十数名の社員で満員の食堂では、陽気なムー
ドが漂い、皆の席を縫う様にして給仕に回る
麗子にも、次々と軽口が飛ぶ。
「オイ、ねえちゃん。昨夜はこゝの若大将達
に、たっぷり可愛がって貰ったんだってな。
今度は俺達に付合ってくれよな」
「飛び切りの器量良しじゃねえか。それに、
いゝケツしてやがるぜ、この女!」
 膳を手にして席の間を通り抜ける麗子に、
何本かの男の手が延びて、尻をまさぐった。
中には、調子に乗って、麗子の腰に抱き付き
スカートの下に手を入れ、パンティーの裾か
ら指を割り込ませる男すらいる。
 彼等は、すべて建設現場で人夫達を相手に
している、柄の悪い連中である。
麗子に同情するどころか、ギラギラ脂切った
目で、彼女の身体をもの欲しげに眺める狼の
群だった。
 これ迄の麗子だったら、悲鳴を上げて逃げ
出していた所である。
しかし、昨夜の凌辱は、彼女の心をすっかり
捨鉢にしてしまっていた。
美しい眉根を寄せ、身体を男達のなぶるに委
せて、おぞましさをこらえながら給仕を続け
る姿は、凄艶ですらあった。
 一方、信彦は、女中頭の松代の指示で、出
勤する松下家の家族の靴を磨かされていた。
 昌平と二人の息子が一団となって家を出た
後、暫くして、軽やかな足取りで、敬子が鞄
を手にして玄関に現れた。
土間にしゃがみ込んで敬子の靴を磨いている
信彦を、上から見下ろしてニヤリとする。
「昨夜のレッスンは身に泌みた? 今夜も続
きをやるわよ。楽しみにしておいで。・・・
・・ウフフッ」
「・・・・・・・」
 チラッと上を振り仰いだものゝ、汚いもの
でも見る様な敬子の蔑みの視線に出合うと、
恥ずかしさが先に立って思わずおもてを伏せ
てしまう。
「出掛けるわよ。靴を穿かせなさい!」
 上りかまちに降り立った敬子の足が、スー
ッと目の前に伸びる。信彦は土間に膝を付い
て、今磨き終ったばかりのローヒールの靴の
片方を、捧げ持つ様な形でその足先に当てが
い、ぐっと押し被せた。
 その途端、片足で立っている敬子のバラン
スが崩れ、前屈みになった身体を支える手が
信彦の頭を捉える。
そのまゝ髪を鷲掴みにした敬子は、傍らに置
かれたもう一方の靴に足を差し入れながら、
ぐいと男の顔を上方へ捩じ向かせた。
「ドジ! 転ぶ所だったじゃないの。・・・
・・罰よ。ソラッ!」
 敬子は頬をすぼめると、ペッと信彦の顔に
唾を吐き掛ける。と、同時に、片足を上げて
男の顔を踏みにじった。
顔中に飛散した唾が、女の靴底に泌み着いた
汚れを溶かし、信彦の顔面を薄黒く染める。
そして、ザラッとした砂粒が、彼の目と唇に
擦り込まれた。
(ウウッ)と呻く男の髪から手を引いた敬子
は、そのまゝグンと彼の顔を蹴り放した。
 無様に土間に転がる信彦を尻目に、クック
ックッと含み笑いの余韻を後に残し、コツコ
ツと足音が門を出て行く。
地面から身を起す信彦の赤くなった目から、
流石に悔し涙がポタポタと土間を濡らした。
 九時頃になって、漸く麗子と信彦に朝食が
当てがわれる。
台所の隅で、女中達の残飯に、これも残りも
のゝ味噌汁を掛けた椀を前に顔を合わせた姉
弟は、無言のまゝじっと目でお互いをいたわ
り合った。
 二人を襲った嵐は、僅か一昼夜の間に彼等
の運命を転落の淵へと追いやり、汚辱にまみ
れた生贄として、二人を松下家の祭壇の前に
差し出したのである。
 絶望にひしがれた二人は、交わす言葉も無
く、たヾ黙々と空腹を満たす。
「未だ食べているのかい? グズだね。・・
・・・さ、食べ終ったら、サッサと仕事に戻
るんだよ」
 松代の非情な声が二人を追い立てた。
そして、麗子は台所のあと片付けに、信彦は
便所と風呂場の掃除にかゝる。
それぞれ、監督役の女中が付き添って、口喧
しく指図した。
女中達にしてみれば、丁度良い息抜きであ
る。普段、主人達に逆の立場で使われている
我身の欝憤を晴らすかの様に、麗子と信彦を
ネチネチといたぶるのだった。
 幸江が遅い朝食の後、買物に出かけると、
それと入れ違いに、昌平が勤務先から書類を
取りに戻って来た。
 帰って来たついでに、昼食を食べて行くと
言い出し、麗子が書斎に食膳を運ばされた。
そのまゝ麗子を給仕にはべらし、昌平は上機
嫌である。
「なあ、お前もこうなったら覚悟を決めて、
この家の者の言いなりになるんだな。・・・
・・その方がお前達二人の為、そして、お前
達の親父の為にもなるんだぞ。・・・・・判
ったか? 判ったら、こっちへ来い」
 食事を終えた昌平は、横で膳部を片付けて
いる麗子の腕を掴み、ぐっと引き寄せる。
「アッ、許して!」
 悲鳴を上げて抵抗しても、そこは男の力で
ある。麗子の身体は、とうとう脂切った昌平
の腕の中に抱き込まれてしまう。
「ホー、良い身体してるじゃないか。・・・
・・昨夜は、この柔かい所で息子達を、サゾ
楽しませたんだろうな。・・・・・ソラ、こ
うすると感じるかな?」
 膝の上に抱えた女のぽってりした腰の下に
片手を入れると、その股間を指でまさぐる。
同時に、もう一方の手で麗子の口を抑え、女
の悲鳴を殺した。
 昌平の膝の上で身もだえする麗子の美しい
顔がおぞましさで歪み、全身に痙攣が走る。
 男の手が、女のスカートを下ろし、パンテ
ィーを脱がしに掛かると、昌平の手で覆われ
た麗子の口から呻き声が洩れた。
 下半身を裸にされた麗子が、ソファーに仰
向けに押し倒されると、昌平の分厚い唇が麗
子の口に被さる。
彼女の太股が押し拡げられ、もどかしげにズ
ボンを下ろした男の股間に吃立した肉棒が、
一気に侵入して来た。
 麗子の抵抗もそれ迄だった。諦めて、ぐっ
たりと力の抜けた女体を、昌平はむさぼる様
に嬲り抜く。直ぐに燃焼し尽くす若者と違っ
て、ネットリした中年の愛撫が続いた。
長いピストン運動の末、漸く果てる迄、昌平
は色々な体位で麗子を責め立てたのである。
 満足した昌平が出て行った後、麗子は身ず
くろいをして台所へ戻った。
「何だい、旦那様までたらし込んでさ。いや
らしいったらありゃしない。・・・・・まる
で盛りの付いた雌犬だね。・・・・・ホラ、
腰がふらついてるよ。お楽しみはそれ迄にし
て、直ぐ仕事にお掛かり。先ず、こゝの掃除
をやって貰うからね」
 毒気を含んだ松代の言葉に追い立てられ、
麗子は涙をこらえて、台所の床を拭いた。
「ただいまぁー。お友達が一緒よ!」
 明るい女の声が玄関で響く。敬子だった。
「今日わー」
「おじゃましまーす」
 賑やかな雰囲気が、どっと侵入して来た。
「応接間を使うわよ。冷たい物、お願いね」
 奥に向かって声を掛けると、敬子は友人達
を玄関脇の応接間へ招じ入れた。
高校の女子テニス部の同僚三人を、学校帰り
に連れて来たのである。
 毎週、土曜の午後はクラブ活動の時間で、
本来ならば学校のテニスコートで練習がある
のだが、生憎、コートは修理中。
それで、仲良しの三人を家のコートへ誘った
のである。
 松下家の広い庭の一角には、テニス好きの
兄達と敬子のために作られた、立派なテニス
コートがあった。
 もともと山の中腹を切り開いて作った敷地
だけに、周囲を人家で囲まれた息の詰まる様
な感じは一切無く、広々とした自然と見晴ら
しに恵まれた土地である。
しかも家業が建設業だけに、こうした施設は
お手のものだった。
「飲物を、お持ちしました」
 応接間の外で、オズオズと男の声がした。
「お入り・・・・・」
 敬子が、いたずらっぽい目付きで一同を見
渡し、ドアに向かって声を掛ける。
 ゆっくりと開いた扉の蔭から、盆を捧げた
信彦の姿が覗いた。そして、目を伏せたまゝ
部屋に入り、テーブルの上に飲物を配る。
 同じ高校のテニス部で、先週迄一諸に練習
していた女の子達が、今のみじめな自分の姿
を注視している。・・・・・そう思うと、信
彦は緊張と恥ずかしさで、思わず微かに手が
震えた。
「そこに座って、皆に御挨拶して御覧!」
 ソファーにくつろいだ敬子は、顎をしゃく
ってテーブル横の床を指す。如何にも高飛車
な態度だった。
もじもじと立すくむ信彦に、敬子のかん高い
声が追打をかける。
「何してんの。・・・・・何さ、奴隷のくせ
に! お前の新しい身分を見て貰うんだよ」
 途端に、どっと悔しさが込み上げる。
信彦は、唇をぐっと噛み締めながら、それで
も言われるまゝに床に膝を着いた。
ソファーに座った女達に向かって正座したも
のゝ、流石にうつむいたまゝである。
「泉君、顔を上げなさいよ。・・・・・アラ
アラ、それ犬の首輪じゃない。ウフッ、鎖ま
で付いてるのね。あなた、敬子さんの奴隷犬
にされたんですって?」
「男のくせに女の奴隷にされるなんて、情け
ないわね。悔しくないの?」
「ネ、ネエ、泉君。きみ、敬子さんのお尻を
ペロペロ舐めたんだって? 本当に最低ね!
・・・・・ところで、そこは、どんな味だっ
たの? 苦かった、それとも酸っぱかった?
クックックッ」
 三人の女達が、面白半分に次々と浴せ掛け
る残酷な言葉は、信彦の屈辱感を次第に増幅
して行く。彼は、女達の前で、まるで針の筵
に座らされている心境だった。
「御挨拶はどうしたの? そうだ、お前は首
輪を穿めた奴隷犬なんだから、挨拶代りに皆
さんの足を舐めて回るといゝわ。・・・・・
ソラ、私が見本を示して上げる!」
 ソファーに座ったまゝの敬子の素足が、彼
の目の前にスーッと延びる。
 昨夜の敬子の部屋での足舐めの屈辱が脳裏
をよぎると同時に、捨て鉢な気持が湧く。
それに、今更、抵抗してみた所で奴隷の身分
が変る筈もなかった。
 信彦は、前の床に手を付くと、四つ這いに
なって、目の前の鼠色に薄汚れた敬子の足裏
に唇を寄せる。そして、そこへやけ気味に舌
を這わせた。
「ウワーッ、舐めてるぅ! まるで、本当の
犬だわ!」
「泉くーん、良い格好だわ。お似合よ!」
「ヒヤーッ、おいしい? 私達のも舐めさせ
て上げるから、味を較べて見たらどう?」
 女達は口々に、嬌声を上げる。
そして、争う様に信彦の顔に素足を当てがっ
て、次々と足舐めを強いた。
 それから暫くして、午後の日差しを一杯に
受けた松下家のテニスコートでは、若い女性
達の賑やかなさざめきが溢れていた。
 ラケットを手にした敬子等、四人の女達は
それぞれ、元気に声を掛け合って練習に余念
がない。コート一杯に若い肉体が躍動し、む
せる様な青春の息吹が満ちていた。
 信彦はというと、哀れにも四つ這いの状態
でネットの片隅に鎖で繋がれている。
 その周りに、ひと息入れるためコーラの瓶
を片手に女達が集まって来た。
「泉君、退屈してる? 私の椅子にして上げ
るわ」
 一人が信彦の背にドンと腰を下す。
「私も、お付合いするわ」
 その隣りにもう一人が尻を割り込ませた。
二人の体重を受けて、信彦の両膝と両腕に、
ぐっと圧力が掛かる。
 敬子がコーラを飲みながら近付いて来た。
「椅子にされてどんな気持だい? お前はも
うテニスはさせて貰えないんだからね」
 敬子は、ニヤニヤ笑いながら彼の顔を覗き
込む。
「アラー、当然よ。犬がテニスするなんて聞
いたことがないわ。・・・・・それより、私
達のお尻に背中を敷いて貰えるなんて、光栄
でしょう? ホラ、どうなの?」
 信彦の背中の上で、女がわざと尻をグラグ
ラ揺する。次第に増して感じられて来た重味
に、懸命に耐えていた彼は、たまらず前のめ
りに潰れてしまった。
「アッ、危ないじゃないの!」
 背中の二人は慌てゝ飛び降りる。
「こいつ、奴隷のくせに、お客様に怪我させ
る積りなのかい。・・・・・いゝわ、罰とし
てこれからボール拾いをするのよ。それも、
四つ這いでね。拾ったボールは口でくわえて
運んで来ること。いゝね!」
 敬子の命令は、信彦に新たな屈辱の行為を
強いるものだった。テニス部員として、彼女
等をコーチしたこともある身が、今やボール
拾い、それも四つ這いの犬として使われるの
である。
「ホーラ、あっちに行ったわよ。早くとっと
いで!」
「泉君、四つ這いで走る格好は珍妙だわよ。
でも、もっと早く走れないの? ソラッ、も
っとお尻を振って!」
「ボールを落しちゃ駄目じゃないの。しっか
りくわえるよ。・・・・・プッ、傑作な格好
ね。今度、写真をとってやるわ」
 彼女等のこぼれ球を、右に左に追いかける
信彦に、容赦ない女達の声が飛ぶ。
 悔しさに目が眩み、ボールを見失うことも
しばしばだった。
 一時間近くもボール拾いをやらされて、漸
く許された時には、信彦はもうクタクタだっ
た。掌は擦り傷だらけになり、両膝は血が滲
んでいる。
 存分にテニスを楽しんだ女達は、シャワー
ルームへ移動した。信彦も首の鎖を曳かれて
四つ這いで彼女等の後に従う。
 更衣室は男女共用で、ひとつしかない。
「この薄汚い雄犬はどうするの? 人間並に
シャワーを使わすの?」
「勿論、ノーよ。でも、私達もシャワーを浴
びる前に、こいつに奴隷教育をしてやるの。
協力してね」
 敬子は友人達に断った後、戸口でへたり込
んでいる信彦を促した。
「サァ、昨夜の続きよ。御主人様の臭いを嗅
ぎなさい!」
 信彦の顔が、激しい屈辱で歪む。
首輪を曳かれて、ズルズルと更衣室の中央に
引き込まれた挙句、敬子に足蹴にされて仰向
けに寝かされた。
「昨晩より、きっと臭いが強いわよ」
 敬子は信彦の顔を跨ぐと、腰を屈めて男の
顔面を尻で覆う。
汗でじっとり濡れたパンティー越しに、強烈
な尻臭が信彦の鼻孔に侵入した。
「ム、ムーッ」
 予想外の刺激に、彼は敬子の尻の下で呻く
と同時に四肢を痙攣させる。
 暫くの間存分に嗅がされた後、パンティー
が半分ずらされ、塩っぽいアヌスが彼の唇に
押し当てられた。
「ソラ、奴隷の接吻よ。みんなの前で恥ずか
しい?・・・・・そう、その調子。しっかり
お吸い!」
 無念の思いが再び信彦の脳裏を駈け巡る。
その内やっと、敬子の尻が浮き、涙で霞む彼
の視野から消えたかと思うと、それは再びパ
ンティーに包まれて落下して来て、彼の顔を
下に敷いた。
不思議にも、それは最初の時にも勝る強烈な
臭いを放っている。
「泉君、どおぉ? 敬子さんの臭いと、私の
との違いが判る? 後で、味見もさせて上げ
るわよ。クックックッ」
 頭の上から降って来た声で、信彦は初めて
今自分の顔の上に座っているのが、敬子では
ないことを覚った。そう、敬子の友達が悪乗
りして、彼の顔に跨がったのである。
 しかし、もうこの時には、度重なる屈辱が
彼の反発心を麻痺させ、諦めと従順さを植え
付けていた。
「きみぃ、敬子さんのお尻の臭いを覚えて、
女中達のと嗅ぎ分けるんですって? ウフッ
面白いじゃないの。・・・・・学校で勉強し
ているより、ずーっと君にふさわしいわよ」
「私達も参加して教えて上げる。・・・・・
君は、違いが判る最低の男に成るのよ。クッ
クックッ、アーおかしい!」
 女達は面白がって、敬子に倣い、次々と彼
の顔面を蹂躙する。激しい運動で身体から分
泌された汗と女性ホルモン、そして、それが
燻蒸された股間の臭いは、パンティー越しと
は言え、信彦が瞬間気を失う程強烈だった。
 やがて女達に嬲り抜かれて、ぐったりした
信彦は、裸にされてシャワールームのタイル
の上に寝かされる。女達は、ヒソヒソと話し
合いながら衣服を脱ぎ、彼の身体を囲んで立
った。
「お待ちどうさま。私達から君へのスペッシ
ャル・シャワーよ」
 彼女等の股間から一斉に小水が放出され、
信彦の顔に、そして身体に降り注ぐ。
立上がる元気も無く、生暖かく臭いシャワー
の中でもがく信彦の耳の奥に、女達の笑い声
が何時迄も響いていた。
 それから、一ケ月が過ぎた。
それは、麗子と信彦の二人にとっては、一年
にも相当する辛い月日である。
 麗子は、初日以来、毎夜きまって茂雄と徹
男の二人に何回も犯された。
 信彦は、これも毎夜、敬子の尻に顔を敷か
れ、散々嬲られた後、茂雄の部屋へ行き、そ
こで、二人の男に犯された姉の股間を吸い清
めさせられた。
 又、週に一回乃至二回、昌平が会社から昼
間帰宅して来て、書斎で麗子を犯すのも、半
ば恒例になっていた。
 女中達は、麗子と信彦を完全に馬鹿にし切
って、頭ごなしに命令する。
 とりわけ、信彦は傍目にも哀れを止めた。
敬子に命じられるまゝに、仕事の合間を見て
は、オズオズと女中達に尻臭を嗅がせてくれ
と頼む。そして、願いを叶えて貰えはするも
のゝ、その度に変態扱いされ、皆の笑い者に
された。
 夜は、例の物置に閉じ込められ、鍵を掛け
られるので、逃亡は不可能だった。もっとも
二人にとって、逃げても行く当てすら無かっ
たのである。
 明日で丁度一ケ月目を迎えるという日の、
前夜のことであった。
何時もの様に、一連の屈辱の行為を終えて、
やっとの思いで物置の中へ転がり込む。
 ぐったりと疲れ切った身体を毛布にくるん
だ二人は、襲って来る睡魔に逆らってその日
初めての会話を交した。
「姉さん、身体は大丈夫かい? 生理が未だ
完全に終っていないって言うのに、容赦しな
いんだから・・・・・あいつ等は、最低のけ
だものさ!」
「私は平気よ。どうせ汚れた身体ですもの。
でも、信ちゃんまで、その汚れを吸わされる
なんて、むごいわ」
「僕だって、毎日、敬子に汚されてるんだ。
姉さんの様に、肉体を犯されるんじゃないけ
ど、精神を犯され卑しめられるんだから、人
格を破壊される様なものさ。情けないけど、
この頃、敬子に尻を突き付けられると、圧倒
されて身体が震えるんだ」
「私は逆よ。男達に犯されるのが最初は恐か
ったけど、今では平気。それにこの頃、私、
犯されながら感じる様になって来たの。・・
・・・それより、信ちゃん。敬子さんのテス
トって、いよいよ明日なんじゃないの?」
「ウーン、そうなんだ。明日女中達の前で、
敬子の尻の臭いを覚えたかどうか、テストさ
れるんだ」
「そして、テストに落ちたら、敬子さんのオ
シッコを飲まされるんですって?・・・・・
どうなの? 自信あるの?」
「それが、・・・・・女中達のも嗅がせて貰
ってるんだけど・・・・・仲々、区別がつか
ないんだ」
「私、信ちゃんが、女中達に笑われながら、
スカートの中に首を突っ込んで、お尻の臭い
を嗅いでいるのを見るの辛かったわ。まるで
盛りのついた雄犬ですもんね。あんなことま
でして・・・・・私だったら舌を噛んで自殺
するわ」
「きっと僕は意気地無しなんだ。・・・・・
姉さん。このまゝでは、明日僕は敬子の便器
にされる。・・・・・アーァ、何とかならな
いかなぁ」
「でもぅ、私が代ってあげるわけにもいかな
いわ。意気地無しなら、意気地無しらしく、
いさぎよく、敬子のオシッコを飲んだらどう
なの?」
「そ、そんな残酷な!・・・・・姉さん、ひ
どいよ。・・・・・それに、飲まされるのは
一回じゃなくって、お尻の臭いを覚えるまで
毎日飲まされるんだ」
 頼みの麗子にまで見放されて、信彦の語調
は震えを帯びる。
 麗子はと云えば、内心、男のくせに毎日お
となしく敬子に嬲りものにされている弟に、
愛想を尽かしていた。
 二人の間に、何となくしらけたムードが漂
う。
その時、物置のドアが微かに軋む音がした。
そっと起き上って調べに行った信彦が、戻っ
て来るなり、窓を向いて横になっている麗子
の身体を強く揺する。
「ね、ねえさん。・・・・・か、かぎが・・
・・・開いてる・・・・・」
 信彦の声は、興奮でうわずっていた。
何時も、必ず固くロックされているドアが、
どうしたはずみなのか、半開になっていたの
である。
 麗子は、衝動的に跳ね起きた。
「に、にげよう。信ちゃん・・・・・一諸に
逃げよう」
 麗子の声も、かすれている。
「姉さん、でも、逃げるって・・・・・何処
へ?」
「何処でもいいわ・・・・・こゝは地獄よ。
こんな所に十年も居られると思う?」
 そっと身じまいをした二人は、足音を忍ば
せながら廊下へ出た。
午前零時を過ぎて、使用人達も寝静まったと
見え、物音ひとつしない。
 台所の戸の鍵を中から外し、音を立てぬ様
にゆっくりと押し開ける。
戸外に忍び出た二人の顔に、ひやりとしめっ
ぽい夜気が触れた。
 松下家の広大な敷地の周囲には、その境界
に沿って高い塀が回らせてある。
敷地の一角には、建築資材置場があり、その
隣りの広い駐車場には、乗用車やトラックが
数台駐車してあった。
 大きな鉄格子の門の横に、木製の潜り戸が
設けてある。そのノブの上のロックを外して
手前に開いた途端、けたゝましいブザーの音
が、あたりに鳴り響いた。
盗難防止装置が付けてあったのである。
 思わず立ちすくんだ二人は、別棟の灯りが
パッとついて、中から何人かが出てくる気配
に、慌てゝ門の外へ走り出た。
山の中腹を切り開いた土地だけに、道路は砂
利で覆われた下りの一本道である。あり合わ
せのサンダルを突っかけて出て来た二人にと
って、早く走ることは不可能だった。
 見る間に、追手の男達との距離が縮まり、
途中からサンダルを脱ぎ捨てゝ裸足で走った
甲斐もなく、二人は間もなく囚れの身となっ
てしまった。
「ふてえ野郎共だ、逃げだすなんて!」
「明日になったら、皆でたっぷりお仕置きし
てやるからな」
 別棟に泊っている追手の社員達は、口々に
のゝしりながら手荒く二人をこづき、引きず
る様にして連れ戻すと、元の物置に閉じ込め
鍵を掛けた。
 そして・・・・・翌日、朝早くたゝき起さ
れた二人は、未だ寝巻姿の昌平の前に引き出
された。
「お前達、昨晩、こゝから逃げ出そうとした
そうだな。・・・・・十年契約を忘れたわけ
じゃあるまいが、つい辛さに耐え兼ねて、と
云った所だろう。・・・・・だが、こんなこ
とを二度としない様に、身にこたえる仕置き
を受けさせてやる。覚悟は良いな!」
 昌平の命令で、二人は別棟の食堂の隣りに
ある畳敷きの部屋に連れ込まれた。
 そして、昨夜麗子と信彦を捉えた連中を含
め、約十名の泊り込みの社員達が、二人を取
り囲む。
麗子のむっちりとした身体を見詰める男達の
ギラギラした目は、野獣そのものだった。
「オイ、社長の命令だ。先ず俺達がこの女を
たっぷり仕置してやるんだ。いゝな」
「合点だ。・・・・・それにしてもうまく行
ったな。鍵を外しておいて、わざと逃がして
から掴まえる。そして、お仕置。・・・・・
すべて計算通りじゃねえかよ」
「でも、俺のアイディアなんだから、約束通
り一番にやらせて貰うぜ」
 全ては彼等の企みだったのである。
無念さに歯を食いしばる麗子に、無遠慮な男
達の手が伸びて衣服を剥ぎ取って行く。
白い肌が、そして豊満な下肢が露わにされ、
皆がゴクンと生唾を飲んだ。
 最初の男が、覆い被さる様にのしかゝると
乳房を掴みながら麗子の口を吸う。眉根を寄
せて耐える彼女の表情が、挿入された途端に
緩んだ。男の腰が激しく動き、アッと云う間
に放出してしまう。
「オイ、お前の出番だ。いつもやってる様に
跡を清めな!」
 部屋の隅にうずくまっている信彦が、男達
の手で引きずり出され、顔を麗子の股間に押
し付けられる。ドロッと湧き出した男の粘液
を吸う信彦の目から涙が溢れた。
 二人目、三人目そして四人目と次々に男達
が挿入して射精を果す。その度に、信彦の舌
と唇が麗子の股間を這い、ズズーッと音を立
てゝ精液を吸い上げた。
 麗子の口から、次第に喘ぎ声が洩れ始め、
同時に信彦の舌に、薄い酸味を帯びた女の淫
液の味が、はっきりと識別される様になる。
最後の男が彼女の身体を離れた時には、彼女
の股間のみならず、全身から甘酸っぱい香り
が立昇っていた。
「オイ、お嬢さんと女中達が、さっきから、
お前をお待ち兼ねだぜ。早く行ってお仕置を
して貰うんだな。俺達は、もうワンラウンド
させて貰うからな」
 部屋の中央で、ぐったりと死んだ様に横た
わっている姉を残して、信彦は外で待ってい
た女中頭の松代の後に従う。
 別棟の端にある広い共同浴場の中で、敬子
と女中達が彼を待ち設けていた。
洗い場のタイルの上に、裸で仰向けに寝かさ
れた信彦は、これからのお仕置の内容を、は
っきりと悟っていた。
 彼を嬲り抜いて、意気地無しの奴隷に転落
させた、あの憎い敬子に、これから小水を飲
まされるのである。
 それは、今しがた社員達に輪姦された姉同
様、松下家への生贄として彼が新しい汚辱に
まみれることを意味していた。
「フフフ、覚悟している様ね。お前は今日か
ら私の便器になるのよ。先ずオシッコから仕
込んでやるわ。でも、その内、ウンコの方も
食べさせるわよ。・・・・・それも、私のだ
けじゃなくって、女中達のも味わって違いを
覚えるのよ。この一ケ月、お前は私や女中の
お尻を嗅いで、鼻を訓練したでしょう。それ
と同じ様に今度は舌を鍛えるの。それも、た
っぷり時間を掛けてね。そう、お前の奉公の
期間は、あと九年と十一ケ月残っているわ。
その間中、たっぷり味わいなさい。クックッ
クッ」
 それは、信彦の予想を遥かに越えた残酷な
命令だった。これからの長い年月を、敬子や
女中達の便器として過すのかと思うと、無念
さと情けなさで、気も狂わんばかりの思いが
胸を突上げる。
「サァー、行くわよ!」
 高らかに宣言する敬子の声に続いて、信彦
の口にぴったり押し当られた女のクレバスか
ら、チョロチョロと汚水が彼の口中に注がれ
る。そして、それは次第に勢いを増して行っ
た。ゴクリゴクリと飲み下す、その咽喉越し
に臭みの強い独特な尿の味が広がった。
「アラーッ、こいつ、お嬢様のオシッコ、お
いしそうに飲んでる!」
「スター誕生≠カゃなくって人間便器誕
生≠セわぁ」
 女中達の間から、爆笑が湧き起った。
敬子の尻の下で汚水を飲み続ける信彦の耳に
その女達の嘲笑が繰返しこだまする。
気の遠くなる様な屈辱に痺れた頭に、諦めと
絶望感が広がり、同時に、不思議なことに、
めくるめく陶酔感が突き上げて来た。
「ワーッ、いやらしい! この男、興奮して
るわよ」
 女中達のざわめきが、再び嘲笑に変る。
そして、キャーッと云う女達の嬌声の中で、
信彦は、その股間から熱いほとばしりを噴出
させていたのだった。
(完)
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1988年春フォトスナイパー4号
(スレイブ通信22号に再掲載)
マドンナメイト文庫[半獣の拘束具]に「生贄の汚辱姉弟」として収録
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2010/07/18