#40地獄に転落した男(前半)
阿部譲二
敗戦時に中国に居た新婚早々の男が、進撃中のソ連軍から逃れ、中国人の女中の兄の家にかくまって貰う。ところが女中の兄はソ連軍の追及を避けるため彼の新妻を自分の嫁として入籍したい、それも見せ掛けだけでなく正式な妻としたいと要求した。泣く泣く承諾した男は妻を諦めるために二人の初夜のベッドでセックスの汁受けにされ妻の便器にされる。 |
朝鮮半島の北、即ち、現在の中国の北東部には、昔から蒙古と呼ばれていた沃地が広がって
いる。
石炭等の天然資源に富み、嘗ってはこれに目を付けた日本の後押しで、こゝに満州国が設立
され、多くの日本人が現地の日系会社の社員として、或は農林業関係の移民として渡航して行
った。
しかし第二次世界大戦での日本の敗北で、夢は敢えなく潰え、終戦の直前にソ満国境を越え
て怒涛の如く侵入して来たソ連軍は、満州駐留の日本軍を打ち破ると、勢いに乗って満州全土
を席捲した。
逃げ遅れた在留邦人が塗炭の苦しみを舐めたのは言うまでも無く、殺戮や婦女暴行が横行し
たと言う。
その後、中国共産党の台頭で、この地は中国の支配下に戻ったが、帰国の機会を逸して結局
現地に住み付いた日本人の数も相当あった。
又、引揚げ時に離れ離れになったり、両親から現地に置き去りにされた子供達が、成人して
家族や親戚を探しに団体で日本を訪れる光景は、近年すっかりお馴染みになっている。
そうした団体の一つに、或る時、中国孤児にしては老け過ぎの男が混っていた。
年の頃は六十代後半、顔の皺に辛酸を舐めた年月の痕が刻まれ、両足首が悪いため歩行が出
来ず、日本で支給された車椅子に乗っている。
名前は屋代澄夫、終戦当時二十三歳で、足を怪我したため帰国出来ず、北満の田舎に逃げ延
びて暮していたとのことだった。
興味を持った或る週刊誌の若い女性記者が、執拗な質問を繰り返した結果、漸く、この男の
何とも悲惨な運命が明らかになったのである。
当時、新婚早々だった屋代澄夫は、進撃して来るソ連軍から逃れて、妻の啓子の里の家で、
それ迄使っていた女中の兄の家に、夫婦共々隠まってもらうことゝとなった。
場所は都心から可成り離れた郊外だが、とても絶対安全とは言えず、その後に予想される厳
しいソ連軍の追求を避けるためには、現地人の籍に入ることがどうしても必要だった。
たまたま独身だった女中の兄は、屋代澄夫の妻、啓子を自分の嫁として入籍することを要求
した。
それも見せかけだけでなく、傍目にも魅力に溢れた美人の啓子を、正式に自分の妻としたい
と言うのである。
最初は憤然として拒絶した屋代も、二人の生命が危険に曝されるとあっては、泣く泣く承諾
せざるを得ず、結局、世間には自分は啓子の兄と偽って同じ家に同居することゝなった。
更に不幸なことには、彼は悪化した足のため歩行が出来ず、家の中も、四つ這いで動き回る
始末で、自分の食いぶちも稼げぬため、啓子夫婦とその女中だった妹の使用人として働くこと
になった。
美しい妻を奪われた上に、その同じ家で昨日までの妻や、その女中だった小娘に、召使いと
して毎日顎でこき使われる情けなさ、切なさは例え様がなかったと言う。
以上が屋代澄夫の過去の来歴、所謂シチュエーションの概要だが、女性記者との一問一答が
詳細に亘って進むに従って、更に驚くべき悲惨な彼の生活が次第に明らかになって行った。
将に、それは地獄への転落と言う表現がぴったりであり、その余りの悲惨さの故に、女性記
者が記事として公表することを諦めたのも頷ける内容だった。
以下は、録音テープのA面とB面に収められたホテルの一室に於ける、女性記者、小泉佐知
子と屋代澄夫との会話の全貌である。
…………………………
「じゃあこれから、今迄伺がった貴方の来歴に付いて、私の質問に答える形で結構ですから、
更に詳細を話して頂きます。……では、最初に貴方の足の怪我から」
「は、はい。……それは、私達の新婚旅行の途中で偶然出合ったアクシデントだったのです。
……挙式の直後に訪れた彼女の生理のために、折角の初夜をキスだけで過した私達でしたが、
三日目になってそれも漸く収まり、私は、今夜こそはと期待に胸を膨らませて、彼女と共に、
その日の宿に急いでいました。……ところが、ホテルの前の道を荷物を両手に横断していた時
に窪みに足をとられて前のめりに転んでしまいました。……そこへ、軍用トラックがスピード
を上げて通りかゝり、私の両足首を轢いてしまったのです」
「まあ、大変な目に合ったんですね!……それで、奥さんの方は?」
「彼女は、先を歩いていたので無事でした。……気を失なった私が目覚めると、そこはハルピ
ン市の病院で、両足首がギブスで固められ、ズキズキと痛みが伝わって来ます。……何でも足
首の関節が骨折していて、全治六ケ月の重症だったのです」
「それが、終戦の年の春だったんですのね」
「ええ。……三ケ月の入院期間中、啓子は里から連れて来た女中と交替で、ずっと付添ってく
れました」
「奥さんとは、見合結婚だったのですか?」
「いゝえ、私が見染めて強引に口説いたんです。……当時、私が暮していた満州のハルピン市
には、五万人からの日本人が住みついていましたが、私が勤めていた満州鉄道の社員寮が市の
高級住宅街にあり、通勤の途中で毎日の様に出合った彼女と、何時しか親しく口をきく様にな
ったのです」
「奥さんも、お勤めだったんですの?」
「いゝえ、彼女は家事の傍ら、中国語の学校に通っていました。……この地で母親を数年前に
亡くし、軍医をしている父親との二人暮しだったのです。……父親が仕事の性格上、家を明け
ることが多く、中国人の女中を雇っていました」
「結婚後は、奥さんの家に移ったのですね?」
「いゝえ。……たまたま、父親の所属師団が変って北満地区に転勤になったもんで、彼女は、
家を引き払い、私と市内の借家に住むことにしました。……その時に、里で使っていた中国人
の女中を連れて来たのです」
「女中付きのお嫁さんだったんですね。……羨しいわ」
「現地の中国人の給料は極端に安かったので、中国人の使用人を置いている日本人家庭は可成
り多かったと思います。……私達の女中は名前を陳麗花といって十六才、現地の日本の小学校
を出ていて、日本語も達者ですし、器量も良く、背は低いが中々のグラマーでした」
「でも、奥さんはそれ以上の美人だったのでしょう?」
「勿論、比較にはなりません。……啓子は、道で出合った人が思わず振返る程の色白の美人で
プロポーションも抜群。……その、くびれたウエストから外人並の豊かなヒップにかけての線
は、後から見た男が生唾を呑む程、それは見事なものでした」
「じゃあ、勿論、婚前セックスはあったのでしょう?」
「私達の時代は、そんな習慣は全くありません。……むしろ、ふしだらな行為として爪弾きさ
れます」
「アラアラ、それじゃ奥さんの突然の生理と貴方の足の怪我とで、それは随分と長い間お預け
となってしまった訳ですわね。……フフフ、可哀そう!」
「そう、長い長い間……と言うより永久にと言うべきでしょう。……私の足の怪我が直らない
内に、生木を裂く様に、啓子をよその男に奪われてしまったのですから」
「悲劇だわ!……ねえ、そこの所を詳しく説明して」
「退院して自宅療養をする様になって、約一ケ月後のことでした。……突然、北満の日本軍が
ソ連軍の攻撃を受け、不可侵条約を破棄したソ連軍が、国境を越えて満州国内に進攻して来た
のです。……敗れて投降した日本兵はシベリアへ送られて強制労働、民間の日本人も婦女子は
無差別に暴行を受け、男は殺されるかシベリア送りになる。……その噂が事実として確認され
るや、在留日本人の間にはパニックが拡がり、一斉に大規模な避難が始まりました」
「私も話に聞いたことがありますわ。……交通機関が麻痺して、みんな徒歩で何百里もの距離
を逃げたんですってね」
「ええ。……足手まといになる幼児や病人の大部分は、現地に置去りにされました。……未だ
あと二ケ月はギブスのとれない私は身動きがとれません。……啓子には私に構わず逃げる様に
言ったのですが、彼女もそこまでは踏み切れず、結局、郊外の女中の里の家に隠まって貰うこ
とになったのです」
「そこまでは、どうやって行ったんですの?」
「当時、自転車の後に付けるリヤカーと呼ばれる荷車が普及しており、私はその上に乗せられ
て、啓子と女中の陳麗花がそれを押し、一日がかりで漸くたどり付いた次第です。……女中の
里と言っても片田舎の寒村で、彼女の両親は既に亡く、独身の兄が独りで住んでいるだけなの
で、余分の部屋があると言うのだけが魅力でした」
「それじゃあ、お二人共、文字通り着のみ着のまゝの状態だったのでしょうね」
「その通りです。……でも、これで命だけは助かったとホッとしました。しかし、実際には、
それからが大変だったのです。……私達が隠まわれていることは、近所の人達には直ぐ分って
しまいます。ソ連軍への密告を防ぐには、どうしても村に入籍してそこの住民として登録しな
ければなりません。……そして、入籍には村人との縁結びが必要でした」
「じゃあ、養子縁組なんかは出来なかったのですか?」
「未成年でなければ無理でした。……結論として結婚が唯一の手段だったのです。従って、私
と啓子が夫婦のままで居られる余地は全くありませんでした。……麗花の兄の陳英徳は、私と
同年の仲々ハンサムな青年で村役場に勤めており、啓子を見るなりいたく気に入ってしまった
のです。……彼の日本語は片言ですが、啓子の方が中国語に堪能なので、コミュニケーション
には不自由ありません。……到着した翌日には、早くも啓子を自分の嫁にくれと言い出したの
です。私はショックを受けて言下に断わりました。……でも、冷静に周囲の情勢を考えると、
それ以外に方法が無いことがよく判ります。……そこで、何とか世間体を繕う名前だけの夫婦
にしてくれと土下座して頼んだのですが、啓子に惚れ込んだ陳はウンと言いません。……ひと
晩、啓子と手を取り合って泣き明し、翌朝、陳英徳に承諾の返事をした時には、将に断腸の思
いでした」
「それで、村人の手前、貴方は啓子さんの兄と言うことになったのですね」
「はい。……そして、早くもその数日後に、陳英徳と啓子との結婚式が挙げられたのです。式
は啓子の希望で町の教会から牧師を呼んで行なわれ、私も、そこに啓子の兄として参列させら
れました。……近所の人から借りた白いウエディングドレスが良く似合い、啓子の美しさは、
将に抜群でした。……針の蓆とは良く言ったものです。私は目を真っ赤にして陳と腕を組んだ
啓子を見詰め続けていました。……そして二人が、牧師の前で熱いキスを交した時は、思わず
全身が震えました」
「やっぱり、啓子さんを諦め切れなかったんですね」
「その通りです。……しかも悪いことに、私のその思いが陳英徳と啓子には筒抜けでした。陳
は、その思いを何とか絶ち切らせ様と、新妻の啓子に協力を強いて、次々と私にむごい仕打を
重ねました」
「と言うと、具体的にどんな仕打をされたんですか?」
「結婚式が終って身内だけになると、陳英徳は私と啓子に向かって、なんと、離婚式を要求し
たのです」
「離婚式ですって?」
「ええ、離婚式と言うのは中国語の直訳で、結婚式の様な儀式ではなく、二人が離婚を納得し
実感するための手続きと言った様なものです。……日本式に言えば、お互いに、相手に対する
愛情を消し去る様な愛想尽かしの行為をして、精神的に二度と愛し合えぬ様にする……と言え
ば判って貰えるでしょうか」
「……さっぱり判りませんわ」
「私達の場合、陳は、啓子に、私を思いきり辱めさせることにより、私の愛情を屈従に変え、
一方、私がその辱めを甘受する姿を見ることで、啓子の愛情を侮蔑に変え様としたのです」
「具体的に説明して貰えません?」
「口にするのも辛いことなんですが……よろしい、話しましょう。……でもその前に、満州の
現地人の生活について説明する必要があります。……都会は別にして、田舎では水の便が悪く
て水道も普及していません。私達の住みついた村でも、電気はきているものゝ水道は無く、飲
料水も可成り離れた谷川で汲んで運んで来るのです。……従ってどの家にも風呂が無く、屋根
の上に雨水を溜める桶を置いて、週に一回これで布を濡らし身体を拭いたり、洗濯したりしま
す」
「マア、週に一回じゃ身体が臭くなりません?」
「そのとおりです。下着も一週間着たきりですから、汚れもひどく、おまけに紙不足のため、
トイレの後は藁で拭くので汚れが残り、下穿きは異様な臭いがします。……トイレと言えば、
勿論水洗では無く、しかも、家から離れた所に溜壷が埋めてあるだけで、みんな各部屋に置い
た小さな壷の中に用を足すのです」
「アラァー、私なんか、とても暮せないわ!」
「そこで、話を元に戻しましょう。……陳は、結婚初夜の晩、夫婦の寝室に私を呼び、床入り
前の啓子の股間を私の舌で清める様に要求したのです」
「ウワー、奥さん、長い間お風呂に入ってなかったんでしょう?……それが、所謂、離婚式な
のね」
「ええ。でも、それはホンの序の口だったのです。……流石に驚いて、私のために許しを乞う
啓子を何とか説得した陳は、彼女の手で私の首に犬の首輪を嵌めさせました。……言い忘れま
したが、私の足首は未だギブスで固定されていて、立つことが出来ず四つ這いの姿勢です。…
…陳は、下着姿の啓子と抱き合ったまゝベッドの端に腰掛け、彼女の両足を自分の胴に回しま
した。……パンティーに包まれた啓子の豊かな尻が、四つ這いの私の顔に向かって陳の膝の上
で大きく拡がります。……陳は、そこで、膝の間を通して手に持った私の首輪の鎖を、少し宛
たぐり始めました。……私の首が彼の膝の間に引き寄せられるにつれて、私の頭が次第に啓子
の尻に近付きます。……そして、遂に私の顔がピッタリと彼女の尻割れに密着しました」
「ウワーッ、みじめ! きっと臭かったでしょうね」
「パンティー越しに嗅がされた啓子の尻臭は、今でも忘れられない程強烈な異臭でした。……
十日間も身体を清める機会の無かった彼女の股間は、汚れ放題に汚れていたのです。思わず頭
がクラクラッとして気が遠くなる様な気がし、同時に、屈辱で目に涙が溢れました」
「可哀そうに! ほかの男と抱き合った奥さんのお尻を嗅がされるなんて!」
「たっぷり時間を置いた後、陳の手が啓子のパンティーのゴムに掛かり、自分の膝の上でそれ
をグイと引き下げました。……白い布が私の顔を擦りながら通過した後、彼女のむっちりした
尻肉がジカに顔に密着します。……そして……あの……」
「どうしたの? 涙なんか溜めて。……そうか、その時のことを、目のあたりに思い出してる
のね」
「そして、彼女の茶色の括約筋で少し盛り上った菊座が私の唇に当たりました。……その時で
す、陳が中国語で出した命令を啓子が日本語で復唱したのは。……(私達が上の口でキスをし
ている間、お前はそこにキスをするのよ!)……通訳しただけとは言え、啓子の口から出たの
は、きつい調子のむごい命令でした」
「本当にむごい! そうやって、貴方は奥さんのアヌスにキスさせられたって訳ね」
「そこは、ねっとりした糊で覆われていて、唇を当てるとピリッとした苦味が口の中に拡がり
ました。……しかも、二人がヘビーキッスに没頭すると、啓子の太股が微かによじれ、同時に
彼女のアヌスが私の唇の上で息付く様に蠢きます。……彼女が男とのキスで、次第に官能をか
き立てられて行くさまが私の唇の上に写し出されているのでした。……その度に彼女のアヌス
の中から絞り出される苦い液がジワジワと私の口中を汚して行きます。その時の口惜しさ、情
けなさは、とても、口で言い表わせる様なものではありませんでした」
「判るわー。……奥さんが感じを出して行くのを、貴方は、これ以上無い屈辱的な形で知らさ
れたんですものね」
「長い長い時間でした。……でも、実際には三十分位のものだったかも知れません。……その
後、陳は私の首の鎖を緩め、啓子の身体を裏返しにして股を開かせ、座ったまゝ後から抱きか
かえる様な形で、膝に乗せました。……そして、パンティーを完全に脱がせると、再び私の首
の鎖を引いたのです。……私の顔は、今度は、肉襞で覆われた女のクレバスに密着しました」
「今度は、きっとクンニをさせられたのね!」
「そうです。……でも、その前に、彼女の股間を舌で念入りに清めさせられました。……その
後、延々と小一時間もの間、舌奉仕を命じられました。……そんな私を見下ろす彼女の視線が
ゾッとする程冷たく、蔑みの色を湛えていたのを覚えています。……それから、あの瞬間がや
って来たのです。……陳が身体を後ろに寝かせて、膝の上の啓子を、後ろ向きのまゝ自分の下
腹まで引き上げました。……すると、どうでしょう。……彼女の背に隠れていた逞しい肉棒が
ニョッキリ現れて、私の唇をかすめながら、そのまゝ肉襞の中に吸い込まれて行くではありま
せんか。……その瞬間、啓子が、アアーッと叫び声を上げたのが、今だに耳の奥に残っていま
す」
「自分の唇の上で奥さんを犯されたって訳ね。……そう言えば、貴方自身は未だ奥さんとセッ
クスしてなかったわね。……すると、お預けをくっていた御馳走を、目の前で他の男に攫われ
たってことになるわね。……マアー、さぞ無念だったでしょうね」
「その通りです。……しかも、ゆっくりとした上下動を繰り返す結合部を、舌で舐める様に命
じられたのです。……あんなみじめな思いをさせられたのは、生れて初めてでした。……そし
て、二人が同時に腰を痙攣させて、頂点に達した後、鎖を強く引かれて啓子の局部に押し付け
た私の唇を擦りながら、肉棒が引き抜かれます。……そして、そこからドッと流れ出したミッ
クスジュース。……その時、(零さない様に吸って!)と啓子が叫んだのです。陳の中国語の
命令は耳に入らなかったので、啓子が自分の意思で私に命令したのかも知れません。……しか
し、その時はそんなことを考える余裕も無く、夢中で命令に反応しました。……ズズーッと音
を立てゝ液を吸い込みながら、味わう暇も無く胃の中に送り込みます。ゴクリゴクリと咽喉が
鳴り、夥しい量のジュースが私の食道を通って行きました」
「いやだぁ、私、気持が悪くなってきたわ。……とても人間のやれることじゃないわね」
「でも、私としては仕方無かったのです。……その後、啓子の股間を舐め清める私の髪を陳の
手がグッと掴みました。そして、そのまゝ私の唇を自分の肉棒に重ねたのです。……咽喉の奥
まで突っ込まれた憎い男のものを、舐め清める情けない私の顔を、横から啓子の目が覗き込ん
でいました。……そして、私の錯覚でしょうか。その目が笑っている様に見えたのです。……
啓子に嘲笑されている? 私の胸に黒い疑いの渦が巻き起ります。……その時、偶然にも私の
口腔で陳の肉棒が躍り、断続的にスペルマが咽喉の奥に射出されたのです。……反射的に咽喉
が大きく動き、それを呑み下しました。……その瞬間、クックックッと女の含み笑いが、雷の
様に私の耳を打ちました。……もう間違いありません。啓子がみじめな私を笑っている! 私
の目は涙で霞みました。……陳の笑い声が、勝ち誇った様に響いて啓子の笑いに和し、私は思
わず気が遠くなる程の無念さに沈みました」
「仕方無いわ、奥さんに笑われたって。……だって、そんなおぞましい経験に耐える男なんて
軽蔑するしかなかったのよ」
「そうだったのですか……その後、すっかり態度の変った啓子は、陳に言われるまゝ私の顔に
自分のパンティーを投げ、朝までに舐め清めておく様に命じました。……そして、あろうこと
か、……陳の汚れたブリーフまで、(これもよ!)と言いながらニヤニヤ笑って私の顔に押し
付けたのです」
「プーッ……アラ、御免なさい。……みじめさもそこ迄行くと漫画チックだわ。……でもね、
陳さんの要求した離婚式は見事効を奏したじゃないの」
「残念ながら、そうなんです。……でも啓子の辱めは、その後、更にエスカレートして続いた
のです」
「判ったわ。ネエ、一寸、こゝでひと休みしましょう。……ねえ、私、咽喉が乾いたの。ルー
ムサービスで飲物でも取るわ」
…………………………
録音テープのA面はこゝで終っている。
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1990年1月スピリッツ1,2月号
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2010/08/03