#29転落の虜囚(屈辱の囚人)
                阿部譲二

新妻の希望でイスラエルで挙式することになった男が現地でパスポートをすり替えられ日本赤軍テロとみなされて逮捕投獄される。女性兵士の駐屯所で洗脳されることになった彼に様々な屈辱が待っていた。一年後に駐屯所へ現れたのはかっての新妻で日本赤軍の恋人を伴っていた。罠に掛けられたことを悟った男は二人のセックスに舌で奉仕させられる。

 イランの首都、テヘランを昼頃に出発した
マクドナルド・ダグラスDC9は、熊蜂が唸
る様なジェット音を響かせながら、イスラエ
ル共和国目指して飛行を続けていた。
「ねえ、私、少し眠っていゝかしら?」
 恭子が隣の座席の俊一に囁いた。機内食の
ワインで、その美しい顔がほんのりと薔薇色
に火照っている。
「いゝさ。着陸前には起して上げるから、ゆ
っくり寝るといゝよ」
 優しく答える男は、遠山俊一、二十六才。
現在、K大学の法学部ドクターコースに在籍
している。
 女の方は佐藤恭子、二十四才。K大学の総
務部に勤務する事務員である。
 しかし、そのグラマーな姿態と彫りの深い
美貌は学内でも注目の的で、俊一が熱を上げ
たのも無理なかった。
 誰が見ても、まず新婚のカップルと映るが
実は、二人は未だ式を挙げていない。
 恭子のたっての願いで、海外でこっそり式
を挙げて既成事実を作ってから、日本で披露
宴の運びにすれば、彼女の親族の干渉を避け
られると云うのである。何しろ、彼女には親
の決めた婚約者が郷里におり、俊一との結婚
はとても周囲の賛同を得られない情勢にある
とのことだった。
 それにしても、俊一がこれ迄、何度熱心に
アプローチしても剣もホロロだった恭子が、
或日突然、急に手の平を返す様に、俊一のプ
ロポーズに首を縦に振ったのである。
 有頂天になった俊一が、深く詮索もせずに
恭子の願いを受入れて、二人だけの海外での
挙式に同意したのも、結局は惚れた弱味のせ
いだった。
 ハワイかロスでとの俊一の提案に、恭子は
彼が思いも掛けなかった中近東を、強く主張
した。
「私ね、昔、アラビアンナイトを愛読したこ
とがあるの。アラブの国って神秘的なロマン
に満ちているわ。OOそれに私、誰もが行く
平凡な所はいやなの」
「でも、あそこは回教国だぜ。それに、局地
戦争が続いていて、物騒じゃないか」
 しかし、俊一の懸念も恭子には通じない。
「アラ、大きな都会だったらキリスト教の教
会ぐらい幾らだってあるわ。OOそうだわ、
テヘランにしましょう。あそこなら私の知合
がいるの。戦争も全く影響ないそうよ」
 こんなやりとりの末、二人がイラン航空で
日本を離れたのは、七月の始めに大学が夏休
みに入った直後のことだった。
 所が、テヘランに到着してみると、恭子の
知合と称する男からのメッセージで、急な
用件でイスラエルのエルサレムへ立つ。結婚
式のアレンジはそこでやっておくから、フラ
イトを乗り継いでエルサレムまで来てくれ
とある。
 恭子の手前、平静を装ってエルサレム行き
の飛行機に乗り込んだものゝ、俊一の胸には
漠然とした不安が湧き出していた。
 しかし、寄り添う様に彼に身を寄せて来る
恭子の美しい笑顔を見ると、一遍に気が晴れ
たし、彼女の豊満な身体の温もりに触れる度
に、晴れて禁断の木の実をむさぼる時の情景
を想像しては、股間に熱いものを感ずるのだ
った。
 エルサレムの空港には、あちこちに軍服を
纏った兵士が警備に付いていて、ピリッと張
りつめた雰囲気が漂っていた。カービン銃を
肩に掛けた男達に混って、可成りの数の女の
兵士が目を惹いたが、イスラエルでは男女共
平等に兵役の義務があることを聞くと合点が
いった。
 税関を出た所で、二人に再びメッセージが
渡される。例の男からで、ホテルの名前が記
されてあり、空港へ行けなくなったのでそこ
で待っているとあった。
 ダウンタウンまで可成りの距離をタクシー
で飛ばし、チェックインした時はもう夕闇が
立ち込めている。しかし、男は未だ姿を見せ
なかった。
 部屋に落着いてホッとした時、ドアをノッ
クして、ルームサービスのボーイが入って来
た。手にした盆の上には、アイスペールの中
に冷した白ワインのボトルと、グラスが二つ
並んでいる。
 添えられた封筒の中には、急用で迎えに行
けなかったことを詫び、明朝ホテルのロビー
に来ると書いたメモが入っていた。
「何だ、またすっぽかしか。OOでも、折角
だから二人で乾杯といこうじゃないか」
 俊一はワインのコルクを抜くと、テーブル
の上に置いた二つの大振りのグラスをなみな
みと満たす。
 ピンクの部屋着に着替えて、彼の前に座っ
た恭子の姿は、シェード越しの淡い照明の中
で、目を見張る様な艶やかさだった。
 グッと生唾を飲み込む思いで、俊一はグラ
スを上げる。恭子の白い指が支えるグラスの
縁に、カチッと音をさせて軽く触れると、あ
と、おもむろにグラスを傾けた。
 もともと酒好きの部類に入る俊一は、目を
つぶって、咽喉越しに芳醇な味覚を楽しむ様
に一気に盃を空けた。
「アレッ、君は飲まないの?」
 空のグラスをテーブルに戻した俊一は、恭
子がワインに殆ど口をつけてないのに気がつ
いた。
「さっき飛行機の中でいただいたら、クラク
ラとしたの。きっとひどく疲れてるんだわ。
後で寝る前に戴きます。OOそれより、私、
お先にシャワーを浴びるわ。貴方、ワインを
飲みながら、先にベッドで待ってらしてね。
いゝわね?」
 小首をかしげる様にして、意味ありげに、
ニッコリ微笑む恭子の仕草からは、零れる様
なお色気が漂った。
 ザーッと響くシャワーの音を聞きながら、
ベッドに俯けに寝添べって二杯目のワインを
味わう俊一の目には、恭子のグラマラスな裸
身が浮び、股間の分身が熱く硬直するのを感
じていた。
 突然、瞼が鉛の様に重く感じ、グラスを横
に置いてごろっと仰向けになった俊一は、そ
のまゝ深い眠りに引き込まれて行く。
 何時間眠っただろうか。何やら大きな物音
にフッと我に返った俊一は、誰かが、部屋の
ドアを割れる様に激しく叩いているのに気付
いた。
 どう言う訳か頭が割れる様に痛く、全身が
だるい。やっとの思いで起き上がってドアを
開ける。途端にドヤドヤと軍服を着た兵士達
が、銃を手に数名闖入して来た。
 蒼白に成って茫然と立ち竦む俊一に、将校
らしい男が書類を片手に早口で質問をする。
アラビヤ語らしいが勿論さっぱり判らない。
 キョトンとしていると、今度は英語で話し
掛けて来た。これなら俊一も多少は理解出来
るが、訛りがひどくて、もうひとつはっきり
しない。
 沈黙を守り続けていると、通訳の女性が呼
ばれた。
「貴方は、黒沢貞雄と言う名前の日本赤軍の
兵士ですね?」
 通訳の女性の口から、最初の質問が投げ掛
けられた。ちゃんとした日本語だが、アクセ
ントが少しおかしい。どうやら、中国人か韓
国人の様である。
 相手が人違いをしているらしいと判って、
俊一はやゝ落着きを取り戻した。
「とんでもない。私の名前は遠山俊一で、K
大学の学生ですよ」
「それなら、パスポートを見せてください」
 言われて、クロゼットの中の上着からパス
ポートを取り出して相手に手渡した。
 その時、ふと、同室の恭子の姿が見えない
のに気付き、バスルームを覗いたがからっぽ
である。しかも、恭子のトランクや衣類も無
くなっていた。
「あなたはやっぱり黒沢貞雄だ。嘘を言って
はいけません」
 将校と頭を寄せて俊一のパスポートを見て
いた通訳の女性が、顔を上げて鋭い口調でな
じった。
「何を言ってるんだ。そのパスポートを良く
見てくれ!」
 語気を強めて抗議する俊一の前に突きつけ
られたパスポートには、驚いたことに黒沢貞
雄と署名してある。しかし、写真はまぎれも
なく俊一のものだった。
 思わず目を疑って頁を繰ると、色々な国の
出入国の印が、何枚にもわたって一面にベタ
ベタ押してある。明らかに、これは他人のも
のだった。
「こ、これは違う。何かの間違いだ!」
 俊一は、慌てゝ上着のポケットを探って、
震える手で名刺入れを取り出した。
 しかし中に入っていたのは、日本赤軍アラ
ブ支部所属の肩書が付いた黒沢貞雄のカード
である。
 上着をひっくり返して見たが、それは自分
のものに違いなかった。
 するとこれは、誰かが意図的に彼を陥し入
れるために仕組んだことになる。俊一は改め
て背筋に冷たいものが走った。
「あなたには、テロ行為の犯人として逮捕状
が出ています。本部まで連行しますので、手
を前に出して下さい」
 俊一の手首には、鈍い光を放つ手錠がカチ
ャリと音を立てゝ喰い込んだ。
 トンと背中を突かれてよろけながら廊下に
出ると、あちこちの部屋から物見高い人の顔
が覗いている。
 ホテルの前から、いかめしい装甲車に乗せ
られて本部に着くと、そのまゝ格子の嵌った
留置所の一室に入れられてしまった。
 手錠は外してもらえたが、先行きどうなる
のか不安が一杯である。取調べの時に何とか
申し開きをしようと色々考えてみたが、さっ
ぱりその気配も無く、放置されたまゝ数日が
過ぎた。
 留置所に入れられて、丁度五日目の朝のこ
とである。
 例の将校が通訳の女性を伴って現れた。
「あなたの刑が決まりましたので、お伝えし
ます」
 俊一は思わず耳を疑がった。
「な、なんですって? 取り調べはしないん
ですか?OOぼ、ぼくは人違いなんだ。OO
こゝには、日本の領事館があるでしょう? 
そこへ連絡して、直ぐに人をよこしてもらっ
て下さい!」
「日本領事館へは、とっくに連絡しました。
そこでは、日本赤軍のトラブルには、一切関
知しないそうです」
「べ、弁護士を寄越してくれ! 僕は裁判を
受ける権利がある。OO僕は罠に嵌められた
んだ」
「この国では、テロ犯人は正式の裁判を受け
る資格はありません。法廷が書類に基いて、
略式裁判で刑を決定するのです」
「で、でも私は控訴します!」
「あなたは死刑ではありませんから、控訴は
出来ません。どんな場合でも、一応書面によ
る訴えは受付けますが、刑の執行はそれと無
関係に進められます」
 この数日間、考え抜いての手段が、ことご
とく冷たく否定され、俊一はがっくりと頂垂
れた。
「そ、それでOOど、どんな刑ですか?OO
私は一体どうなるんですか?」
「あなたは、人格を剥奪されて、五年間強制
労働に服すことになります。その間に徹底的
に洗脳されます」
「な、なんですって! 五年間も強制労働で
すってOOそ、それはひどい!」
「テロ行為は死刑が普通です。あなたの場合
は犯行の証人が見付からず、状況証拠だけな
ので軽く済んだのです」
「で、でも、人格剥奪って、一体何のことで
すか? それにOOどうやって洗脳されるん
ですか?」
「法律で保証された基本人権が剥奪された上
に、社会慣行上の人間としての扱いが、認め
られなくなります。つまり、貴方は、犬や豚
並に扱われることになるのです。OOそれか
ら、洗脳は、様々な行為を通じてその人を精
神的に傷付けて、人間としての正常な自尊心
や誇りを完全に失なわせるのです。具体的に
は、あなたが実際に体験してみれば、初めて
判ることです」
「わ、判った。もう良い!OO頼むから、僕
が、人違いだと言うことを証明させてくれ。
あのパスポートは、僕を罠に嵌めるために、
偽造されたんだ!」
「お気の毒ですが、判決が決まった以上、あ
とは書面に依る抗議を提出するしかありませ
ん。あなたは、今から刑の執行場所へ移管さ
れます」
 冷やかな宣言だった。
 再び車に乗せられて、砂利道を揺られなが
ら、俊一は自分がどうして罠に掛けられたの
か、もう一度じっくり考えて見た」
 どう考えても思い当たるふしがない。問題
は恭子がどうなったかだが、それを解く手掛
りは一切無かった。どうも、あのワインに、
睡眠薬を入れられていたことは確かである。
すると、あの恭子の謎の友人がOOしかし、
何の為に? 思考の糸は、いつもそこでプッ
ツリと切れてしまうのだった。
 二時間近くも砂漠の中を車に揺られて着い
たのは、草原の中に設けられたイスラエル軍
の基地である。
 予め連絡してあったと見えて、その一角に
ある兵舎の中に連れ込まれて、書類と身柄が
引き渡されると、車は再びもと来た道を走り
去った。
 残された俊一を取り巻いた兵士達は、意外
なことにすべて女性である。
 あとで判ったことだが、こゝには約200
人の女兵士が駐屯していて、軍事基礎訓練を
受けていた。
 風紀上のトラブルを避けるため、男性は一
切居ない。そして、俊一は人間として認めら
れていないから、男性には数えられないので
ある。
 士官らしい女性が、彼を伴なって兵舎に入
り、便所の横の小さな物置に案内した。すべ
て英語だが、ゆっくり発音してくれるので、
何とか意味は取れる。
 こゝがお前の部屋だ
 と言っている様だった。
二畳位の大きさだが、掃除道具が雑然と押し
込まれていて、床にはやっと身を横たえる空
間しかない。
 後からついて来た女兵士が、染みの付いた
古毛布をポンと投げ込んだ。
 パッと埃と異臭が立ち込める。こんな所で
寝起するのかと思うと、俊一は思わず目頭が
熱く成った。
 与えられた作業衣に着替えさせられた後、
大柄な女兵士に紹介された。
「シー イズ ユア ボス」
 どうやら、この女が俊一の直接の上司にな
るらしい。
「マイネーム イズ ローリー」
 よく見ると、中々美人である。
 丸顔にブラウンの髪、そしてアラブ人特有
の、目鼻立のはっきりした顔は、むしろ西欧
人の雰囲気に近かった。その胸とヒップのボ
リュームは抜群で、思わず圧倒される。
 彼女に伴われて、別棟の色々工具の並んだ
工作室らしい部屋へ行く。
 この部屋の係らしい太った女性が、戸棚か
ら幾つかの金属の輪を取り出して、彼の頚に
当てがった。
 適当なサイズのものを選ぶと、それを拡げ
て俊一の頚に嵌め、切口を電気溶接する。
 同時に、そこに鎖が取り付けられ、端が長
く床に垂れた。
 囚れの身であることを、こうして、改めて
はっきり意識させられ、流石に情けなさで胸
が一杯に成る。
 続けて両手首と両足首にも、それぞれ、ぴ
ったりしたサイズの金輪が、しっかりと取り
付けられた。
 これ等には、何時でも鎖が取り付けられる
様に、穴の開いた耳が設けてある。
 鎖を引きずりながら、ローリーの後に付い
て廊下を歩くと、行き交う女達から物珍しげ
な視線を浴びる。
 兵舎に戻って、今度は女兵士達の居住区域
に入った。
 広い細長い空間に、丁度病院を思わせる様
にベッドがずらりと配列されていて、その間
が、それぞれカーテンで仕切れる様になって
いる。
 ベッドの枕元には作り付けの戸棚があり、
ベッドとベッドの間には、壁に向けて鏡台兼
用の机が置かれてあった。
「ユー クリーン ザ フロアー」
 ローリーはモッブで床を擦るジェスチャー
をして見せた。
 兵舎は五十人用のが四棟、それに士官用の
個室と集会室のある棟、更にカフェテリア式
の食堂が別にある。
 それぞれの棟の端には、トイレとシャワー
ルームが設けられているが、勿論すべて女性
用であった。
 トイレの掃除も、勿論俊一の仕事である。
しかも驚いたことには、各ベッドの下には、
白い琺瑯仕上げの丸い便器がそれぞれ置かれ
てあった。
 朝のトイレの混雑時や、夜中に使用するた
めのものである。
 今の所、各自で始末しているが、明日から
は全員の分の後始末を、すべて俊一がやらさ
れると聞いて、彼は目の前が真っ暗になる思
いだった。
 洗濯室が食堂の横にあり、十数台の電動洗
濯機が並んでいる。すべてセルフサービス式
になっているらしい。
 そこでローリーがニヤニヤ笑って、
「ユー ウオッシュ オール パンティー 
バイ ハンド」
お前、このパンティーを全部、手で洗うん
だよ=@                
 と言いながら、傍の壁に掛けてあった大き
な袋から、鼻を摘みながら汚れたパンティー
を取り出してみせた。
 白い木綿の布地の端に、それぞれ番号がプ
リントされていて、誰のものか判る様になっ
ている。
 訓練で身体を動かすため、一般に分秘物が
多いのと、シャワールームの数が限られてい
て、シャワーを浴びる回数が少いのとで、ど
うしてもパンティーの汚れがびどくなって、
洗濯機では落ちないのである。
 これ迄は使い捨てだったが、これからは、
お前が手でその汚れを洗い落すんだと言われ
て、俊一は思わず顔が赤くなった。
 丁度昼食時間になったとみえ、午前中の訓
練を終えた女兵士達が、どっと兵舎に戻って
来て装備を解き、食堂に向かう。
 あたりが一斉に賑やかになった。
 ローリーと一緒に食堂へ行く。
 セルフサービス方式になっていて、女兵士
達はカウンターで並んで食事を受け取ってか
ら、思い思いの席につき、楽しげに談笑しな
がら喫食していた。
 広い食堂に、ムッと食物の香りと人いきれ
が立ち込めている。
 ローリーは、俊一を後方の出口近くに連れ
て行き、傍に置いてあった柄の付いた鍋で、
大きなポリバケツの中に捨てられた残飯を、
掬って床に置いた。
「ユー イーッ ライク ア ドッグ」  
 犬の様に四つ這いになって残飯を喰えとい
うのである。ためらっていると、いきなり首
の鎖をぐっと下に引かれた。
 不意を付かれて前のめりに倒れると、その
まゝ四つ這いにさせられる。
 顔の前に鍋が置かれ、ローリーの靴が俊一
の後頭部をぐいと踏む。
 鍋の中の残飯にべちゃりと顔を押し付けら
れ、止むを得ず一口頬張ると、恥ずかしさが
ふっ切れ、あとは舌を伸ばして次々と残飯を
口に運んだ。
 食事を終えて出て行く女兵士達が三々五々
立ち止って見下ろして行く。
 我ながら、犬そっくりのみじめな自分の姿
を意識して、目頭が熱くなった。
 午後からは、早速仕事をする様に命じられ
た。先ず便所掃除から始める。
 ローリーが監視役でべったりと付き添い、
口うるさく細かい指示をした。
 便所の床に這いつくばって、周囲を清めた
後、便器に付着した汚物を根気良く擦って落
すのである。
 水洗とは言え、あたりに独特の臭気が立ち
込めていて、冷房が余り効かず、むれる様な
熱さだった。
 兵舎の床のモップ掛けは、案外力が要り、
四つの兵舎をすべて終えると、俊一は文字通
りクタクタになった。
 最後に洗濯場へ連れて行かれ、隅に設けら
れた洗い場で、パンティーの手揉み洗いをや
らされた。
 袋には、百枚以上の汚れたパンティーが放
り込まれていて、異臭を放っている。
 十枚程取り出しては水に付け、ひとつずつ
股間の汚れを手で揉んで落して行った。
 俊一が揉み洗いに熱中していると、後から
ローリーがだし抜けに彼の頭からパンティー
を被せた。
「ユー リメンバー ザ スメル」
 臭いを覚えろと言うのである。
 汚れのひどいのが二・三枚、重ねられて、
その股間の部分が俊一の鼻を覆う。強烈なそ
の臭いに、頭がクラクラッとすると同時に、
激しい屈辱感が突き上げて来た。
 目を真っ赤にして、揉み洗いを続ける俊一
を、ローリーはニヤニヤ笑いながら見守って
いる。
 暫く姿を消したかと思うと、今度は自分の
パンティーを手にして戻って来た。
「ジス イズ マイ スペッシャルOOクッ
クックッOOユー テイスト イット」
 自分のを味わえと言うのである。ローリー
の手が、その股間の部分をグッと俊一の口の
中に押し込んだ。
「クリーン ジス イン ユア マウス」
 口の中で清めろとの命令だった。
 悔しさに涙がツーっと頬を伝ったが、抵抗
出来る状況ではない。
 揉み洗いを続けながら、一方ではローリー
のパンティーを口の中で噛みしめて、汚れを
吸う。
 塩辛い臭みが口中一杯に広がり、彼の屈辱
感を増幅した。
 その晩は、流石に腹が減って、夕食の残飯
をガツガツと平らげ、便所横の物置の中で泥
の様な眠りに付く。
 翌朝、食事の後に、おぞましい作業が待っ
ていた。
 女兵士達は、朝の訓練開始の時間迄に、手
早く身ずくろいを終えねばならない。
 そのためには、トイレの順番を待つ余裕は
無かった。大部分の女達が、ベッドの下の便
器を取り出して、その場で跨がって用を足し
た。
 朝の点呼のサイレンが鳴ると、兵舎は途端
にもぬけの空に成る。
 未だ異臭の漂っている兵舎のベッドの下か
ら便器を集め、手押し車に積んでトイレに運
んでは、始末する。
 いやでも臭気漂う女達の便を嗅ぎ、その色
や形を目のあたりにせざるを得ない。便器に
べったりと付着した便は、水を流しても完全
には取れず、結局は手を使って清めることに
なった。
 百数十名の女の便器の始末をやっとのこと
で終えた時には、鼻の臭覚が一時麻痺してし
まった程である。
 こうして、俊一の女兵舎での強制労働は幕
を開けたのだが、点呼の時に全員に彼の刑の
内容が伝達されたと見えて、女兵士達の彼に
対する態度は、全く容赦ないものだった。
 俊一が日本赤軍の兵士だと言うことで、そ
の永年のテロ行為に対する彼女等の憎しみが
輪を掛ける結果と成り、俊一は文字通り犬・
豚の扱いを受けたのである。
 最初のうちは、べったり彼に付き添ってい
たローリーが、そのうち時折のぞきに来るだ
けになったが、その代り、生理で訓練を休ん
でいる女兵士達が、入れ替り立ち替り彼を嬲
り始めた。
 俊一の首から床に垂れる鎖を後ろで踏み付
けて転倒させたり、這いつくばってベッドの
下を掃除する彼の背に、突然ドスンと跨がっ
て驚かせたりするのは未だ序の口だった。
 食堂の出口で床に置かれた残飯に首を突っ
込む俊一に顔を上げさせ、その間に残飯の上
に皆で唾を吐き掛けるのである。
 それでなくても、汚く見える残飯の上で、
ねっとり光る女達の唾の塊り||||勇を鼓
してそれに口をつけ、啜り込む時の身を震わ
す様なおぞましさと、絶え難い屈辱感。
 それは、彼の人間としての自尊心を徹底的
に砕き去るものだった。
 毎週金曜日は、野外訓練が行なわれる。
 この日は朝早くから全部隊、約二百名の女
兵士達が中庭に整列して、その日の訓練内容
の説明を受けた後、目標地点迄約一時間程行
軍する。そこで、本部を設置した上で、装備
を降ろし、射撃や模擬戦闘等の訓練をその日
一日繰り広げるのである。
 俊一は、いつも斥候班と称する先発組に入
れられ、本隊より先に目標地に到達して設営
の作業にこき使われた。
 勿論、皆のいやがる仕事はすべて彼に押し
付けられたが、中でも屈辱的だったのは、女
兵士達のトイレ用の穴を、幾つも掘る作業で
ある。
 しかも穴に或程度、女達の糞尿が溜るとそ
れを埋め立てゝ、また新たに穴を掘らねばな
らない。
 異臭の漂う穴を絶えず覗き込んで、その溜
り具合を監視する役割は、毎朝の兵舎での便
器の清掃にも増して、彼にみじめな思いを強
いた。
 女達は、穴を覗き込む俊一の面前でも、平
気でその巨大な尻を出し排泄する。
 彼を頭から蔑視してしまっていて、一人前
の男性として、いや人間としてすら認めてい
ないのである。
 穴の傍に置かれた箱の中の紙が切れると、
大声で俊一を呼びつけ、中には、彼に自分の
尻を拭く様に命ずる女さえあった。
 俊一の、虜囚としての屈辱に満ちた生活が
始まって、約一ケ月が過ぎた頃である。
 例によって、女達の唾混りの残飯の夕食の
あと、山と溜ったパンティーの洗濯を終え、
彼は床にへたり込んで、ホッとひと息入れて
いた。
「ヘイ、カムオン!」
 背後から突然、聞き覚えのある声が掛けら
れた。振り向くとローリーである。
 彼女は先日、下士官の当番兵に任命された
こともあって、彼とはすっかり御無沙汰にな
っていた。
 彼女は、ニヤニヤと意味ありげな薄笑いを
浮べて顎をしゃくる。付いて来いと言うので
あった。
 漠然とした不安に駈られながら、ローリー
の後に従い下士官棟に入った。
 こゝでは六人の女下士官が、それぞれ個室
を与えられている。
 ローリーは、彼女等の当番兵、と言えば聞
こえは良いが、いわばメード役だった。
 その個室のひとつに連れ込まれた俊一は、
主の居ないガランとした部屋の、中央に置か
れたベッドの裾に俯けに押し倒された。
 ローリーは彼の両手首の輪に、それぞれ細
い鎖を通すと、手を左右に開かせ、鎖をベッ
ドの下に回して彼の上半身が丁度、ベッドを
上から抱きかゝえる形に固定する。
 太股から下が、ベッドの裾からはみ出し、
爪先が床に付いた状態で、少くとも上半身は
身動きが出来なくなった。
「クックックッOOリフト アップ ユア 
フェース」
 ローリーは、彼の髪を掴んで、ぐいとばか
りに顔を上に引き起す。
「ウエイト ヒア!」
こゝで、待ってろ≠ニ言うと、彼女はその
まゝ姿を消した。
 三十分も経っただろうか、廊下に足音がし
て部屋の主が入って来た。バタンと乱暴に戸
が閉められる。
 首を横にひねって見ると、俊一にも顔なじ
みの金髪の女少尉だった。
 そう大柄ではないが、ボリュームはたっぷ
りで、ぐっと張った腰骨から、形の良い大き
なヒップがせり出している。
 黒い瞳の彫りの深いスペイン風の顔立で、
中々の美人だった。
 夕食後のひと時を、食堂横の士官用のバー
で過して来たらしく、頬にほんのりと赤味が
射していた。
 彼と視線が会うと、その途端、意味ありげ
にニッと笑う。
 手早く衣服を脱ぎ捨てると、全裸になり、
彼の方へ近付いた。
 そのまゝ横手から、ベッドの上へ身を横た
える。大きく開いた女の股間が、俊一の目の
前で拡がったかと思うと、彼の顔面はすっぽ
りとその根元に吸い込まれる。
 途端に、強烈な性臭が鼻を突いた。
 シャワーを朝浴びるだけで、滅多に風呂に
入ることの無い彼女等の股間は、その強い体
臭に一日の汗と分秘物が加わって、気の遠く
なる程の臭さである。
「リック イット ナウ!」
さあ、お舐め!≠ニ彼女の声。
俊一は、全身の血が逆流する様な屈辱感に、
顔がカーッと火照った。
 女の手が、もどかしげに彼の髪を掴み、股
間に顔を押し付ける。
 同時に肉付きのよい太股が、彼の顔をグイ
とばかりに締め付けた。
 呼吸を奪われた苦しさに、無意識に舌を出
すと、太股の締め木が緩む。
 舌の動きを止めると、再び柔肉の猿轡が顔
面に押し付けられた。
 遂に屈服した俊一の舌が彼女のクレバスを
這うと、クックックッと勝ち誇った女の笑い
声があたりに響いた。
 舌で掬われた糊状の女の恥垢が、口の中で
溶け、酸味が口一杯に拡がる。
 自由を奪われて女の意志のまゝに嬲られ、
辱められる無念さに、悔し涙が頬を伝って、
秘肉をなぞる舌の上にまで達した。
 しかし、女の膣から湧き出して来た濃厚な
ジュースは、涙で薄まるどころか、ねっとり
と舌にからみ咽喉を妬く。
 女の腰が次第にくねり出して、その厚いラ
ビヤが、懸命に舌を動かす俊一の顔面を擦り
始めると、間もなく女は背を反らして全身を
硬直させた。
 その瞬間、頬を女の太股で締め付けられな
がら、漸くこの屈辱の奉仕から開放されると
ホッとしたのも束の間、今度は女は両膝を立
て、アヌスを彼の唇に押し当てる。
 女の汚れた菊座を吸わされる屈辱に、俊一
は血が再び頭に上るのを覚えた。
 延々とアヌス舐めを続けた後、再びクレバ
スへの奉仕が強制される。
 二回目の頂点を迎えたあと、溢れる蜜を俊
一に吸わせながら、女はスースーと寝息を立
て始めた。
 同時に俊一も疲れ果てゝ、女の股間に顔を
埋めたまゝ、フーッと吸い込まれる様に深い
眠りに入る。
 しかし、明方に目覚めた女は、再び俊一の
髪を掴んで舌奉仕を強いた。
 漸く女がベッドを離れて、勤務に出掛けた
あと、突然、俊一の上半身を覆っていた毛布
が手荒く剥がされた。
 それ迄、ずっと暗闇の世界に慣れた彼の目
は、急に射し込んだ光の為、しばし眩んで何
も見えない。
 途端に誰かが彼の髪を掴んで、ぐっと首を
仰向かせた。
「ヘーイ、ユー ダーティー フェース!
フフフ」
汚ない顔ね!≠ニ嘲笑と共に、ローリーの
声が頭上から降って来た。
 女のねばねばした分秘液で一面に覆われた
俊一の顔は、哀れとしか言い様がない。
 ローリーの手のタオルが、手早く彼の顔を
拭ったかと思うと、出しぬけに、ローリーが
ベッドに入って来た。
 何時の間にかズボンを脱いでおり、先程の
女少尉よりもずっと濃く、しかも硬目の栗色
のヘアーが俊一の鼻をくすぐる。
「ヘイ、メーク ミー ハッピー ツー!」
さあ、私も良い気持にさせるのよ!=@ 
 昨夜と違って、窓からの光で女のクレバス
の襞の奥までが、ありありと俊一の目の前に
露出されている。
 今朝は、シャワーを浴びなかったらしく、
そのピンク色のラビアの間には、白い粕がべ
っとりと付着して、饐えた臭気をあたりに発
散していた。
 おまけに用を足して来た所と見え、プンと
尿の臭いが混る。
 昨夜の女と違って体臭が気にならないのが
救いだが、目に映る不潔な局部へは、とても
舌を這わせる気になれなかった。
 そんな俊一のためらいを敏感に察したと見
え、ローリーは両手で男の左右の耳を掴み、
股間にその顔を引き寄せる。
 耳がちぎれるかと思われる痛みが、どうと
もなれとのなげやりな諦めを生み、舌先が無
気力に女のクレバスをなぞった。
 ローリーへの舌奉仕は、それから小一時間
も続いた。
 流石、勤務中なので、昨夜の様なアンコー
ルは免れたが、終った後をすっかり吸い取ら
され、ついでにアヌスまで舐め清めさせられ
たのだった。
 両手の鎖を外され、兵舎に戻ると日課の辛
い作業が待っている。
 しかし、女のセックスに舌奉仕させられた
ショックは、彼の心にまたひとつ、深い傷を
刻んだのである。
 女少尉の方は、これに味をしめたと見え、
それから毎週彼を個室に引き入れて、彼の舌
を使う様になる。
 そしてそれを伝え聞いた他の下士官達が、
次々とローリーに命じて、自分達のオナニー
用具として俊一を就寝時に呼び寄せる様に成
る迄、そう時間は掛からなかった。
 気が付いてみると、俊一は、六人の女下士
官全員に、毎夜舌奉仕させられる羽目に成っ
てしまっていた。
 つまり、六人が各自、彼を使う曜日を決め
て、順番に回して行くのである。
 従って、俊一は週七日の内、六日間を女下
士官の個室で、その股間に顔を挟まれて寝る
ことになってしまった。
 しかも、今度はローリーが、当番兵の特権
を利して、残る一日を自分の日として彼を使
う様に成る。
 そして遂に俊一は、哀れにも、女の股間か
ら開放されて独りで眠れる夜が全く無くなっ
てしまった。
 来る夜も来る夜も、鎖で両手を拘束され、
女の太股に頭を挟まれ、その濃厚な粘液に顔
をまみれさせながら、舌を動かす様強制され
るのである。
 最初の内は、唇が荒れ、舌の付根が腫れ上
がったが、慣れるにつれて次第にそれも軽く
なった。
 数ケ月経つと、俊一の舌は、耐久性も含め
て、外へ伸び出す度合と言い、舐める強さと
言い格段に強化されたのである。
 一方、精神面でも、最初の何ともやりきれ
ない屈辱感やみじめさが次第に薄れ、女達の
性感の高まりのカーブに合わせて、無心に、
そして機械的に舌を動かすことのみに熱中出
来る様になった。
 こうして俊一が、女達の恰好の慰み物とし
て、身も心も順応し切った時には、すでに、
約一年の歳月が経過している。
 その頃には、女達と俊一の間には、越えら
れぬ身分の差が、はっきりと確立していた。
女達は、勿論最初から彼を人間扱いしていな
かったが、今や彼を犬・豚並に扱うのにすっ
かり慣れ切っていたし、俊一の方でも、どん
な屈辱的な行為でも、女達の命令のまゝに従
う習性が身についていた。
 そんな或る日、俊一にとって忘れられぬ人
である佐藤恭子が、突然、彼の前に姿を現し
たのである。
 丁度その日俊一は、兵舎の窓ガラス拭きを
命じられ、玄関横の植込の中に脚立を据えて
作業の最中だった。
 見慣れない黒の乗用車が、砂煙りを立てゝ
砂利路を近付いて来る。
 兵舎の前に止まったその乗用車から降り立
った恭子は、見知らぬ黒い顎ひげの男に伴な
われていた。
 一年前に俊一を逮捕した将校と、女通訳も
一緒である。
 信じられないものを見る思いで、脚立の上
で茫然と見守る俊一を尻目に、一行は俊一の
存在には気付かず、事務所横の応接室に入っ
て行った。
 俊一の胸は大きく高鳴った。
彼女は無事だったんだ。そして僕を助けに
来てくれたに違いない!
 その期待を裏書する様に、ローリーが早速
彼を呼びに来た。
 飛び立つ思いで、ローリーの後について応
接室に入る。
 途端に、部屋の視線が一斉に俊一の方に向
けられた。
「き、恭子さん。無事だったんですね!OO
ぼ、ぼくの無実を、どうかこの人達にOO」
 将校は、大きく手を上げて俊一の発言を封
じると、恭子の方を振り返った。
「この男に、間違いありませんか?」
 通訳の女性が将校の質問を恭子に伝える。
恭子は大きく頷いた。
「そうです。この男が黒沢貞雄ですわ。間違
いありません」
 恭子の顔は冷く冴えて、ひやゝかに俊一を
見据える。
 それは、一年前に彼との結婚を承知し、手
を取り合って日本を出た時の恭子とは、まる
で別人の様だった。
「そ、そんなバカな! 恭子さん、あなたま
で何を言うんですか。OO僕は、遠山俊一で
すよ。黒沢とか言う男と間違えられて、こゝ
で大変な目に会ってるんです。それをOOあ
なたはOO」
 俊一の懸命の訴えにも、とりすました表情
を変え様としない恭子を見て、彼は突然ハッ
とした。
 成程、恭子もグルだったのである。
 いやもしかすると、彼を黒沢貞雄に仕立て
たのは彼女だったのかも知れない。||||
でも、一体何のために?         
 俊一は、一瞬、頭が混乱するのを覚えた。
しかし、彼女が突然俊一のプロポーズを受け
入れ、親戚の反対を口実に日本を離れたがっ
た理由が、俊一をこのイスラエルで黒沢貞雄
に仕立てゝ、官辺に渡す目的だったとしたら
||||それは、周到に仕組まれた罠だった
かも知れない。
「とにかく、この男の言ってることは出鱈目
です。この男は、自分が遠山俊一だと主張し
ていますが、こゝに居る私の夫こそ遠山俊一
本人です。その証拠にパスポートもあります
し、一年前にこのイスラエルで、私と結婚し
た証明書もあります」
 恭子に続いて、その隣りの黒ひげの男が、
口を挟んだ。
「この黒沢貞雄と言う男は、私の名前を騙っ
て、何も知らない私の家内に近づいたんです
よ。うんと罰してやって下さい」
 通訳の言葉に耳を傾けていた将校が大きく
頷いた。
「判りました。実はこの男から、以前に自分
は無実だと主張する嘆願書が出ていたもので
すから一応調査したまでです。奥さんには、
たまたま同じホテルに泊り合せた関係で、色
々と御迷惑をお掛けしましたが、これではっ
きりしました。私達は、これから国境近くの
駐屯部隊の所まで行かねばなりませんので、
これで失礼しますが、明日の朝、又こゝを通
りますのでその時、お二人をピックアップし
て街迄お送りします。こゝには宿泊設備もあ
りますので、ゆっくりお休みになってゝ下さ
い」
 将校と通訳の女が車で出発したあと、恭子
と黒ひげの男は、下士官用の個室の並びにあ
る予備の部屋に案内されて行き、一方、俊一
は再び作業に戻された。
 何と言うことだろうか。恭子がこのイスラ
エルで結婚していたとは! そしてその相手
の男が、恐らく俊一のパスポートの写真だけ
を貼り代えて、遠山俊一と名乗っているのに
違いなかった。ひょっとすると、黒ひげの男
こそ、黒沢貞雄本人かも知れない。いや、き
っとそうだ。||||作業に戻ったものゝ、
俊一の胸は千々に乱れていた。
 窓拭きを終えて、パンティーの洗濯に移っ
た時である。背後に人の気配がして振返ると
ローリーに案内されて、恭子と黒ひげが立っ
ていた。
「フフフ、男のくせに、情けない仕事をさせ
られてるのね。OOそうだわ、私のも洗って
貰おうかしら?」
 恭子はその場で屈み込むと、パンティーを
脱ぎ、ニヤニヤ笑いながら差し出した。
 屈辱に震える手で、受け取ろうとした俊一
の目の前で、ローリーが引ったくる様にそれ
を取り上げ、俊一の顔に被せた。そして、股
の汚れた部分が、彼の鼻の所に当たる様に、
念入りに調整する。
 パンティーの下で、まるで泣き出しそうな
俊一の顔を眺め、恭子は思わず噴き出した。
「プーッ、これは名案だわ。たっぷり臭いを
嗅がされるってわけね。OOOネ、ネエ、私
の前でこんなことされて、恥ずかしくない?
どんな顔して私の臭いを嗅ぐのか、良く見て
あげるわ」
 恭子に嘲笑されて、俊一の顔は紅潮し、悔
しさで唇がわなわなと震える。
 夢中で、手元のパンティーの洗濯の方へ神
経を集中しようと努めたが、どうしても恭子
の視線を意識してしまい、鼻孔から容赦なく
侵入する彼女の臭いから気を反らすことが出
来なかった。
 暫くその様子を横から眺めていたローリー
が、スーッと手を伸ばすと、俊一の鼻孔を覆
っている恭子のパンティーの汚れた部分を、
今度は彼の唇の中へ押し込んだ。
「クリーン イット」
 ローリーの命令でパンティーを舐め清めさ
せられるのは、これで二度目だったが、昔の
恋人のものを、その面前で口中にするのは、
耐え難い恥ずかしさである。
「どおお? おいしい? フフフ」
 恭子が、面白がって俊一の表情を覗き込む
ので、その恥ずかしさは益々増幅され、彼の
耳は真っ赤に変色していた。
 晩の食事を終えた恭子は、食堂の出口で、
四つ這いの俊一の前に立ってジーッと見詰め
ている。
「浅間しいわねぇ。まるで犬そっくり!」
 聞こえよがしに呟く彼女の声を頭上に聞き
流して、残飯にかぶりつく俊一は、もうどう
ともなれの心境だった。
 通りかゝった女兵士達が、彼の髪を掴んで
顔を上げさせ、食べかけの残飯の上に皆で唾
を吐き掛ける。その上に又、顔を埋める俊一
の有様を見て、恭子の表情に強い蔑みの色が
浮んだ。
「私も、やって見ようかしら?」
 ひとりごとの様な呟きを洩らすと、恭子は
腰をかがめた姿勢で、彼の首輪の鎖を引く。
面を上げた俊一の目を、ジィッと見詰めなが
ら、恭子はいきなり俊一の顔面めがけてペッ
と唾を掛けた。
 途端に、泣き出しそうに歪む男の顔を見据
えながら、口の中にたっぷり唾を溜め、又、
ペッと吐き掛ける。
 それを四、五回続けると俊一の顔は唾液で
べったりと覆われ、目もまともに見えない状
態になった。
 そのまゝ首輪から手を放し、立ち上ると、
足を上げて俊一の後頭部を踏み付ける。
 残飯の上に顔を押し付けられた俊一は再び
ピチャピチャと舌を鳴らし始めた。
「あきれた! 心の底まで、犬に成り切って
いるわね」
 捨て科白を残して去って行く恭子の足音を
聞きながら、俊一の咽喉から思わず低い嗚咽
が洩れるのだった。
 その夜、何時もの様にローリーに連れられ
て、下士官の個室に向かった俊一は、何やら
悪い予感にに駆られ、胸騒ぎがする。
 果して、連れ込まれたのは、恭子と黒ひげ
の泊る予備室だった。
 ダブルベッドの横に置かれたソファーでく
つろいでいた二人は、既に知らされていたと
見え、驚く気配もない。
 例の如くダブルベッドの裾を抱く恰好に、
鎖で固定されかかった俊一は、流石に気が狂
わんばかりに取り乱し、懸命に身もだえして
抵抗した。
 しかし、体力に勝るローリーは、少しも騒
がず、やすやすと彼の自由を奪い、今夜は両
手だけでなく両足の輪にも鎖を掛けて、完全
に彼が身動き出来ぬ様に、ベッドに固定して
しまった。
 横では、黒ひげと恭子の会話が続く。
「考えて見ると、こいつも可愛そうだな。何
しろ、自分を罠に掛けて無実の罪に落し入れ
た、その張本人の女に、これからたっぷり嬲
り者にされるんだからな。気が狂わなければ
幸いさ」
「何言ってるの。こいつを今夜、二人のセッ
クスの慰みものにしようと言い出したのは、
貴方じゃないの。私が賛成したのはねOOO
こいつが私に恨みを持てなくなる様に、徹底
的に辱めて、反抗の気力を奪ってやるつもり
だからよ」
「それも良いさ。今夜はひとつ徹底的にやっ
てやろじゃないか。でも、こいつは俺が黒沢
だと言うことに気が付いているかな?」
「馬鹿じゃない限り判るわよ。でも、貴方が
官辺に追われて、結婚も出来ないって言うか
ら、こいつを替玉にすることを思いついたの
よ。我ながら名案だったわ。OOOあとは、
こいつに因果を含めて、諦めさせればいゝの
よ。それには、先ず、私達二人でこの男を征
服する必要があるの」
 ベッドに俯けに顔を伏せながら、二人の会
話を聞く俊一の胸は、流石に煮えたぎる思い
だった。
 今や、すべては明白である。
 恭子は初めから、俊一を黒沢の身代りにす
るつもりで、彼のプロポーズを承諾したのだ
った。
 彼女の良い様に利用され、罠に落された挙
句の果に、再び辱められ征服される。
 しかし彼には、それに反抗する手段は何も
与えられていないのである。
 諦めの涙が目に溢れ、シーツを濡らした。
その瞬間、彼は希望の全く無い将来を受け入
れる覚悟をきめ、同時に、彼女に征服される
こと自体に喜びを見い出すしか、選択の余地
の無いことに気付いたのである。
「さあ、始めようか」
「いゝわ。貴方、一緒にベッドに入りましょ
うよ」
「お前、シャワーを浴びて来なくて良いのか
い?」
「フフフ、いゝの。汚れてる方が、こいつに
は印象深いわよ」
 二人の体重でマットの中央がぐっと沈み、
俊一が頭をもたげると、抱き会う二人の性器
が顔に触れた。
「舌を出してしっかりお舐め! 知ってるわ
よ、毎晩女達に舌奉仕させられてるくせに。
私達のセックスの間中、ずーっと私達の結合
部を舐め続けるのよ。判ったわね!」
 二人のセックスは、殊のほか濃厚で、しか
も延々と続いた。
 その結合部に顔を差し入れた形で、懸命に
舌を動かす俊一も、いゝ加減うんざりして来
た頃、男の腰がヒクヒクと痙攣し、同時に生
臭い精液が、膣に挿入された男根の周囲から
洩れ始める。
「いゝこと、シーツを濡らさない様に、全部
吸い取るんだよ!」
 と、恭子の声。
 男根がゆっくりと引き抜かれると、ドッと
精液が溢れ出して来た。
 女の膣に口を押し当て、ズズーッと音を立
てゝそれを吸い込み、次々とそれを咽喉に送
り込む。
 吐気を催す様な生臭さが口一杯に拡がり、
忘れていたみじめさ、悔しさが俊一の胸に噴
出して来た。
「あと、お前の舌で、私を良い気持にさせる
んだよ」
 恭子の太股が俊一の頭を挟み込む。こゝか
らは、毎晩の舌奉仕と同じだった。
 しかし、一時間もすると、若い男の特権で
再びそのシンボルが硬直する。
 二回目のインサートが始まり、今回、俊一
は恭子のアヌスをセックスの間中、舐め続け
る様に命じられた。
 こうして、その夜、二人は明け方まで計四
回のセックスを繰り返し、俊一はその都度、
舌による後始末を強いられた。
 就中、最後の二回では男のものを口にさせ
られ、硬直するまでしゃぶり続けさせられた
のである。
 二人が眠りに就くと、疲れ果てた俊一も、
その股間で泥の様な眠りに入った。
 翌朝、俊一の手足の鎖を自らの手で外した
恭子は、手足の痺れた彼を床に仰向けに押し
倒し、その顔面に跨がった。
「いゝこと、この部屋にはトイレが付いてな
いのよ。だからお前が私のトイレに成るの。
OO絶対に零さない様に飲むのよ!」
 恭子は、俊一の口を大きく開けさせ、その
上に局部を押し当てると、ゆっくりと放尿を
始めた。
 彼の顔が極度の屈辱に歪み、ゴクリゴクリ
と咽喉が鳴る。
 生れて始めて飲む女の尿の味の記憶は、め
くるめく屈従の思いと共に、彼の脳裏に深く
刻み込まれた。
 終った後を丁寧に舌で舐めさせ、俊一の顔
から立ち上がった恭子は、彼にそのまゝの姿
勢で寝ている様に命じた。
 そして、ベッドの下から便器を取り出し、
おもむろに大の方の用を足す。
「今日は勘弁して上げるけど、今度私達がこ
こへ来た時は、必ずこちらの方も食べさすか
らね。覚悟しておいで。OOさあ、今日は予
告編だよ」
 再び俊一の顔に跨がった恭子は、べったり
軟便の付着した尻を彼の唇に押し付けた。
「さあ、今度はトイレットペーパーの役目を
するのよ。OOいずれは、完全な便器にされ
るんだから、今の内から良く味わっておきな
さい」
 臭いについては、毎朝の便器掃除で慣れて
いるものゝ、口にして味わうのは勿論生れて
初めてである。
 舌先で糊状の汚物を掬い、唇で懸命に菊座
を吸った。
 その苦味を混えた屈辱の味は、俊一の咽喉
を焼き胃の腑に拡がる。
「いゝわよ。少しくすぐったいけれど、初め
てにしては上出来だわ。いずれ刑期を終えて
釈放されたら、私達二人の奴隷にして、毎日
こうして使ってやるわ。フフフ、楽しみにし
てらっしゃい」
 恭子の言葉は、俊一の心を文字通りグサリ
とえぐった。
 こゝの刑期を終えた後、恭子達夫妻の奴隷
にされ、日夜、嬲り者にされる。|||||
それは、思ってもみないショックだった。
 考えて見れば、彼が釈放されて社会に復帰
すると言うことは、遠山俊一が二人になるこ
とを意味する。
 彼の名前で恭子と結婚し、社会生活を送っ
ている黒沢貞雄にとっては、俊一を二人の奴
隷として永久に飼っておくことが、むしろ必
要なのだった。
 その朝、出発を前にして、恭子夫妻の前に
土下座させられた俊一は、水道の故障でシャ
ワーを浴びられなかった恭子の足を、舌で舐
め清めさせられていた。
 昨夜から今朝にかけての辱めで、恭子に完
膚なきまで征服され、彼女の奴隷に成り切っ
た俊一は、命令のまゝに柔順に女の足の汚れ
を舐め取って行く。
 そんな俊一を満足そうに見下ろす恭子の表
情には、驕慢な笑みが浮かんでいた。
「さっき、ローリーと相談して決めたんだけ
ど、お前は今日から、新しい訓練を受けるこ
とになったのよ。フフフ、どんなことか想像
出来る?」
「………………」
「それはね、お前は今日から女兵士達のトイ
レットペーパーの役目もするの。勿論、舌で
よ。今朝、私が使ってやった様にね。フフフ
OOそれにね。お前の食べる残飯の上には、
女兵士達の唾だけじゃなくって、お小水も掛
けてもらえることに成ったのよ。どおお、こ
れが、私のお前への置き土産よ」
 恭子の足を舐める俊一の舌が震え、嗚咽が
咽喉から洩れた。
あ、あんまりだ!
 俊一は心の中で叫んでいた。しかし、今や
彼の征服者の立場になった恭子に、抗議する
気力は残っていない。
「私達は、お前の様子を見に、月に一回はこ
こに来ることにするわ。そして、ここに泊っ
てお前をたっぷり仕込んでやる。そして刑期
が明けたら、私達の奴隷として一生飼ってや
るからね。楽しみにしておいで!」
 黙って恭子の言葉を聞く俊一は、思わず目
が眩んだ。そして、一生、恭子の虜囚として
転落を続ける我が身に、めくるめく陶酔さえ
覚えるのだった。
 (完)
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1987年12月スピリッツ12月号(スレイブ通信27号に再掲載)
マドンナメイト文庫[黒い爪先]に「転落の虜囚」として収録
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2010/07/23