#58 オンディーヌの秘密
阿部譲二作
K商事のOLが上司の男ににらまれ散々虐められる。或日、会議中の男に上着を届ける途中、床に落ちた名刺入れからクラブ・オンディーヌのカードがこぼれた。そこは彼女の友達が働いているSMクラブだったのである。アイマスクで顔を隠した彼女はプレイに訪れた上司を散々嬲り、写真を撮る。それを種に上司を脅迫し遂には便器奴隷にして復讐する。 |
今から丁度一年前、私がこのK商事に勤めるようになって、四年目の春のことです。
俗に、石の上にも三年と言いますが、私も、女子短大を出て入社以来、OLとしての勤務が
三年を越え、職場での評価も、良く言えばベテラン、悪く言えば、いさゝか薹が立ち始めた頃
でした。
容姿も十人並以上で、スボーツで鍛えたプロポーションには自信があり、学生時代には三学
園祭でミスに選ばれたこともあります。
職場でも、誘いを掛けてくる男は多かったのですが、今ひとつ、ぴったりくる男性に回り会
えずにいました。
両親の家から職場へは通勤の便が悪く、就職して間もなく、会社の近くにアパートを借りて
一人暮しの生活です。
家へは月に一回程度しか帰らず、職場の仲間や学生時代の友人達と、毎日、結構楽しく独身
生活をエンジョイしていました。
しかし、今年の初めの人事異動で、係長に昇進して私の上司に成った菅原靖夫と言う男が、
ことごとに私に辛く当たるのです。
三十歳を越して未だ独身と言うのは、男性なら別に珍しくありませんが、割と男っぽい彫り
の深いマスクをしているくせに女子社員にもてないのは、その陰気なネチネチした性格のせい
なのでしょう。
どちらかと言えば陽気で人見知りしない私とは全く正反対で、何となく虫が好かない、好意
の持てない男だったのです。
でも、仕事の上ではやり手で、係長に成ったのも、同期入社の大学卒の中では一番早かった
様です。
仕事熱心の余り、功名心に駈られて部下を酷使する傾向があり、私も、前触れもなく長時間
残業させられたり、忙しいからと休暇を取らせて貰えなかったりすることが重なるにつれ、次
第に彼を憎む様に成りました。
人間とは不思議なもので、いくら隠しても心の底に抱く憎しみの感情は、何となく相手に伝
わってしまうものらしいのです。
係長の菅原の私に対する態度は、日毎に冷たくなり、それに反発する私の反抗的な素振りが
二人の間に決定的な溝を作って行きました。
私にとって許せなかったのは、菅原が職権を笠に着て、私に色々な意地悪をする様になった
ことです。
それも毎日のことで、しかも、そのネチネチした陰湿なやり方は、すでに意地悪のレベルを
越えて、いじめの域に達していました。
或日のことです。…………
「水沼君、お茶を入れてくれたまえ」
書類を小脇に、セカセカと会議から戻って来た菅原は、席に着くなり私に向かって高飛車に
命令しました。
「はい、一寸待って下さい。……山本さん、係長さんにお茶よ。急いでね」
私は、先月入社したばかりの新人の女の子に声を掛けました。
この私達の職場では、新入社員の女性が一年間お茶当番を担当するのが、しきたりだったの
です。
「何だ、俺は君に言ってるんだぞ!」
菅原は、ムッとした口調で私に言うと、続けて、
「山本君、きみはいゝから、仕事をしていなさい」
と、立上り掛けた女の子を制します。
私も、いさゝかムカッとしました。
「私はお茶当番じゃ、ありませんから……」
切口上で言うと、プイと横を向いてやりました。
いつもなら、この辺りで仲裁が入るか、菅原自身が折れるかするのですが、その日は、生憎古
顔の男子社員が出払って居らず、菅原は前の会議の余韻で気が立っていたと見え、気色ばんで
突っかかって来ました。
「君は、係長である俺に反抗するのか?」
「………………」
「よし、それじゃ、係長命令だ。……たった今から、水沢君、きみをお茶当番に任命する。…
…そして、みせしめの為に席も山本君と代って一番端に座るんだ。……いゝか、もしこの命令
に反抗したら、業務命令違反で、直ちにクビにしてやる」
私は茫然としました。
たかが、お茶を入れる入れない位で、ことがこゝまでエスカレートするとは、常識では考え
られません。
恐らく菅原にとっては、常々私の態度を腹に据え兼ねていた思いが爆発したのでしょう。
しかし、クビにするとまで言われては、従わぬわけにはいきません。
しぶしぶ席を立って、お茶を入れに洗い場へ行きました。
生憎、お湯が切れていて沸すのに手間取り、菅原係長用の大振りな湯呑みに新茶を入れて戻
って来たのは、それから十分程たってからでした。
菅原の机に湯呑みを置き、自分の席を振り返った途端、私は頭にカッと血がのぼりました。
新人の山本さんが、そこに座っていたのです。
私の方をチラッと見やってオドオドしている態度は、明らかに、そこに居るのが彼女の意志
でない事を示していました。
「係長さん、ちゃんとお茶を入れて来たんですから、山本さんを元の席に戻して下さい」
出来るだけ冷静に、抑えて言ったつもりでしたが、私の声は微かに震えを帯びていました。
「君は、私の言うことが判らないのかね。……みせしめ、そう、みせしめだよ。……私の言う
ことを、素直に聞かなかった罰さ。……いいか、当分、一番端に座ってお茶くみをやるんだ。
そして、十分反省するんだな」
なんと言うことでしょう。
私に当てがわれたのは、見習社員用の引出しの無い、ひと回り小型のもので、しかも、戸口
寄りの一番端に置かれてある机でした。
その上には、既に、前の机から移した私の書類や小物類が、雑然と積み上げてあります。
屈辱に目も眩む思いで、固く唇を噛みしめその席についた私に、菅原の非常な声が追打ちを
かけました。
「水沢君。みんなにも、お茶を持って来たまえ。……山本君の分もだよ。フフフ」
そして、……〔私も手伝いますから〕……と腰を浮かしかけた山本さんを、重ねて押し止め
たのです。
もう、とっくに卒業した筈のお茶くみを、毎日三回、それも新人の女の子の分まで、給仕さ
せられる私のみじめさを御想像下さい。
その時以来、私は、何時の日か菅原に復讐することを固く心に誓ったのでした。
そして、その機会は意外に早く、しかも思いも掛けぬ形で、めぐって来たのです。
お茶汲み当番を命じられてから、丁度一週間目の午後でした。
会議に出ている菅原から電話で、デスクの椅子に掛けてある上着を、会議室まで持って来て
くれと言うのです。
汗ばむ程の陽気で、たまたま席に残した上着が、急に必要になったのでしょう。
私は、彼の紺の背広の上着を小脇に抱え、別館にある会議室へと急ぎました。
人影まばらな地下の連絡通路へのステップを下りた途端、パタッと音を立てゝその上着の胸
ポケットから、分厚い名刺入れが下へ滑り落ちたのです。
フロアに散った何枚かの名刺を、慌てゝ拾い集めていると、その中に、派手なデザインの、
クラブ オンディーヌ≠フ会員カードが目に止まりました。
……ただし、会員名は山田一郎となっています。
私は思わずハッとしました。
そのクラブの名前を、数日前に聞いたばかりだったのです。
それは、高校のクラス会の席上でした。
親友だった守山京子に何年振りかで再会した私は、彼女と積る話に熱中しました。
そして彼女が、現在恋人と同棲中で、しかもクラブ オンディーヌ≠ノ勤めていることを
聞かされたのです。
「アラ、京子、オンディーヌって、……私達が演劇部で、学園祭の時に上演した劇の名前と、
同じじゃないの?」
高校時代、演劇に熱中していた私達は、幾つかの劇に共演した仲でした。
殊に卒業前に演じたオンディーヌは、私にとって初めての主役で、忘れられない舞台だった
のです。
「そうよ、あの時の久美ちゃん素敵だったわよ。……泉に棲む水の精の役、あなたの姓の水沢
とも縁があったし、ぴったりの嵌まり役だったわね。……でも、これは絶対秘密にしてよ。…
…クラブ オンディーヌと云うのは、実はSMクラブなの」
京子は、最後に声を密めて囁きます。
「エーッ、SMって、あの、いじめたり、いじめられたりする、あれ?」
「シーッ……そうよ。お店へ来る男のお客と、SMプレイをするのよ。……結構、お金になる
んだから。……久美ちゃんも興味があったら、一度見に来るといゝわ」
その時の京子との会話が、鮮かに脳裏に浮かびました。
菅原係長の上着を届けた後、席に戻った私は、早速、廊下の片隅にある公衆電話で京子を呼
び出し、夕方会う約束をしたのです。
退社後、彼女の指定の喫茶店へ赴いた私は、勢い込んで、京子に、山田一郎と云う会員名の
客に心当りないか訊ねました。
「山田さん……知ってるわ。その人、先週も来たわよ。たまたま指名した女の子が休みだった
ので、私が相手をしたの」
人相風体を詳しく聞くと、あの菅原靖夫に間違いありません。
私は、常々職場で菅原にいじめられている事実を、彼女に洗いざらい喋りました。
「ヘエーッ、あの人、久美子の会社の人だったのぉ。……本当に偶然ね。……でも、久美子を
いじめるなんて許せないわ。……それで、私は何をするばいゝの? 親友の貴女のことですも
の、幾らでも協力するわよ」
京子の話では、菅原がオンディーヌを訪れたのは、これまで三回程で、SMのマニアと言う
より、SMに興味を持った一般客の部類に属するとのことでした。
「プレイの内容も、そう、SアンドMと言って、SとMを半々に混ぜた初心者向きのコースだ
ったわ。……いわば、SMとはこんなもの、という紹介の段階ね。……エート、私の感じでは
彼、どちらかと言えば、Sの傾向が強いのかもね」
京子の説明を聞いている内に、私は、ある計画を思い付きました。
そして、彼女と具体的な方法について色々と話し合ったのです。
その日から、私の毎日の生活には俄然、張りが出てきました。
職場での、菅原の私に対するいじめは相変らずでしたが、私は内心、
(今に見てらっしゃい。……たっぷり仕返しして上げるから!)
と胸を張っていたのです。
そして、それから間もない週末の、日曜日の午後ことです。
私のアパートへ京子から、待ちに待った電話がありました。
「今、連絡があったわ。……山田さん、つまり、あなたの会社の菅原が、一時間後にクラブへ
来るそうよ。……オンディーヌのママさんには、事情を話してOKを取ってあるわ」
私は、兼ねて打合せた通り、直ちにクラブオンディーヌへと急ぎました。
そこは、雑居ビルの最上階の一角に設けられた会員制のクラブで、ドアの横に小さく表示が
あるだけです。
内部は、女の子達の控え室と、幾つかのプレイルームに別れていました。
京子に導かれて、そのプレイルームのひとつへ入った私は、彼女の差し出す衣装に着替えま
した。
バレリーナ風の黒のコスチュームに、網タイツ、銀のハイヒールを穿き、顔には仮装用のマ
スクを着けます。
用意が終った頃、玄関のチャイムが鳴り、客の到来を告げました。
私は、緊張で身が引き締る思いです。
やがて、京子に伴われて、菅原が姿を見せました。
私の方をチラッと見やったものゝ、派手な黒い衣装とマスクを身に着けた私が、まさか自分
の部下の水沢久美子とは、気が付く筈もありません。
「紹介するわ。こちら、山田さん……そちらは、このお店に新しく入ったばかりの泉さんよ。
今日は私のアシスタントを勤めて貰います。……じゃあ、山田さん、Mプレイから始めますか
ら、服を脱いで下さい」
京子は切口上で言うと、ブリーフ一枚になった男を床に座らせ、犬の首輪を穿めます。
「プレイ内容は、この前と同じで良いですね……つまり、前半、貴方がMになって私達にいじ
められ、後半はSとしてその欝憤を晴らすの」
菅原が頷くと、京子は部屋の中央に椅子を持出し、それに腰をすえると、いよいよプレイを
開始しました。
「そこへ四つ這いになりなさい。……お前は犬に成るのよ。……ソラ、舌を出して私の足をお
舐め!」
驚いたことに菅原は、目の前に突付けられた京子の足を、ペロペロ舐め始めたのです。
一瞬、呆気にとられた私は、やがて気を取り直すと、隠し持ったカメラで、気付かれない様
にスナップ写真を撮り出しました。
幸い、部屋の照明も明るく、高感度フィルムのお蔭でフラッシュも不要。
予め、カセットラジオで、ビートの効いたバックミュージックを流しておいたので、シャッ
ター音も目立ちません。
しかも、夢中でプレイに没頭している彼にとっては、私の姿は眼中に無かった様です。
やがて、京子に手招きされて、今度は私が彼の前の椅子に座って、菅原に足を舐めさせる番
になったのです。
生暖い男の舌が、私の足の甲に触れます。
あの憎い菅原が、それとは知らずに私の前に四つ這いになって足を舐めている……快感が、
私の胸に突上げ、驕慢な思いが私の心を満たしました。
私は足を動かすと、甲の部分を舐めている男の唇に、汚れた足の裏を押し付けました。
「足の裏をお舐め! 汚れを清めるんだよ」
わざと、太目の作り声で命令します。
男が首を引き、唇を外らそうとするのを感じた私は、すかさず首輪の鎖をたぐって顔を引き
寄せ、足指で鼻を挟み上げました。
「ウムムゥー……ムゥー」
苦しげな菅原の呻き声が、私の足の裏で押し潰され、耳に快く響きます。
大きく喘いで開けた口に、私は足の爪先をぐっと突っ込みました。そして、口の中で、グイ
グイとこね回してやりました。
(思い知った?……忘れるんじゃないよ、この味を、この辱めを!)
私は、心の中で高らかに叫んでおりました。
それが、彼には余程耐え兼ねたのでしょう。
菅原は、鎖を引ったくり、転ぶ様に身をかわして逃げました。
「駄目じゃないの、山田さん。……Mプレイの間は、おとなしくしてるのよ」
京子が、強い調子でたしなめます。
「で、でも、泉さんが、……あ、あんまり……」
「いゝの、じゃあ次のプレイよ。……そこで、仰向けに寝なさい」
京子は、ごろりと仰向けに床に横たわった菅原の身体に近付くと、慣れた手付で前手錠を、
そして足錠を穿め、その間にロープを掛けてぐっと引き絞りました。
彼の膝が曲がり、丁度あぐらを組んだ状態で、手首が足頚に固定されます。
そのまゝ頭の方を向いて男の顔を跨いだ京子は、腰を落すと、アッと言う間もなく菅原の顔
を、その尻に敷いてしまいました。
ピンクのパンティーに包まれた、張りのあるヒップが男の顔面を覆い、苦しげな呻き声を押
し殺します。
「これが、顔面騎乗よ。……やって見る?」
京子の誘いに大きく頷いた私は、カメラを彼女へ渡し入れ替って菅原の顔に跨がりました。
彼の鼻と口を尻丘の間に挟み込む様にして、じわりと体重を掛けます。
尻の割れ目に、パンティー越しに男の熱い呼吸を感じ取りながら、前後に身体を揺する様に
して尻を動かし、彼の顔を蹂躙してやりました。
「ウ、ウーン、ムーン」
男の呻きを尻に、私は、憎い菅原を征服した満足感に浸ることが出来ました。
しかも今度は、身体の自由を奪われているため、先程の様に逃げることも出来ず、彼は、無
抵抗のまゝ私に存分に嬲られたのです。
何時の間にか時間が経ち、私は京子に促されて、プレイの途中で部屋を出ました。
「お役に立ったかしら?……あとはSプレイだから、私に任せといて」
ドアまで送ってくれた京子は、軽くウィンクすると、私のお礼の言葉を背に、部屋へ戻りま
す。
先程迄の刺激的な経験に未だ熱くほてる頬を、爽かな五月の夜風になぶらせながら、私は、
貴重な数々のシーンを記録したカメラを肩に、アパートへ帰りました。
翌日、出社して菅原の顔を窺うと、流石に心なしか憔悴の色が見えます。
(ウフッ、あの顔を私のお尻の下に敷いてやったんだわ。……それに、あの口で私の足をペロ
ペロ舐めたくせに!)
私は心の中で呟き、優越感に浸りました。
その晩、私は、かねての計画通り、菅原宛の簡単な手紙をしたゝめたのです。
……山田様こと菅原靖夫様……
オンディーヌの秘密を守りたければ、今週の日曜日の午後一時に、クラブまで、おいで下さ
い。 ……泉より
予め調べておいた菅原の住所を封筒に記し、あの時の写真の一枚を封入して投函します。
そして、私は、憎い彼へのこれからの復讐のすべを、あれこれ思い回らせました。
復讐の快感とでも言うのでしょうか。
不思議なことに、思っただけでゾクゾクするのです。
それは、この前、菅原に足を舐めさせ、顔を尻に敷いた時の、あの、背筋を突上げる様な刺
戟と相通ずるものがありました。
しかし、私が自分のS性を本当に自覚したのは、ずっと後になってからのことです。
次の日曜の当日、私は、この前と同じ様にオンディーヌへ先回りして、京子の計いでプレイ
ルームに入り、彼を待ちます。
指定の時間に現れた菅原が、私の素顔を見て驚愕した有様は、まさに見物でした。
「き、きみぃ、水沢君じゃないか。ど、どうして、こゝに……ま、まさか、君が、あの……」
「そうよ、私が泉。……一週間前に貴方がこゝでプレイした時のアシスタントよ」
「じゃあ、き、きみは、……こゝで働いてるのか」
「違うわ、働いてるのは私の友達よ。……それより、貴方はどうなの? こゝへ来てプレイし
てることを、会社に知られても良いのかしら? それに、この写真、焼増して会社中に配りま
しょうか?」
私は、先日撮った写真の束を、ポンと彼の方へ投げました。
慌てゝそれを拾い上げ、一枚宛、食い入る様に眺める菅原の顔が、みるみる青ざめて行きま
す。
無理もありません。
それ等の写真には、彼が様々な体位で女の嬲りものにされている様が、逐一写し出されてい
るのです。
彼の表情迄はっきり写っているものも多く、彼にとって逃れ様のない証拠写真でした。
「ネ、ネガを、この写真のネガを渡してくれないか。……お、お願いだ。金は幾らでも出す。
……なぁ、た、たのむ!」
彼は、床にガックリと膝を着いて、懇願しました。
「お生憎さま。お金では売れないわ。……私はね、貴方に恨みがあるの。だから、貴方を会社
中の笑い者にしてやるわ。……それに貴方の親元や友人にも、この写真を送り届けて、貴方が
二度と顔向け出来ない様にして上げる」
「わ、わるかった。あ、あやまる。こ、この通りだ。……ど、どんなことでもするから、その
写真だけは……お願いだ、頼む!」
彼は、平蜘蛛の様に這いつくばって、額を床に擦り付けました。
(勝ったわ! これで、この男は私の思いのまゝだわ)
私は心の中で、快哉の声を上げました。
予想していたとは言え、男の屈服を目のあたりにする迄は、一抹の不安があったのです。
「じゃあ、貴方は、今から私の奴隷に成るのよ。……私の命令は、どんなことでも従うことを
誓いなさい。……心配しなくても、貴方の社会的な地位は保たせて上げる。でも、二人だけの
時は、奴隷としてウンと辱めてやる。いゝわね」
「奴隷と言っても、一体、何をすれば……それに、辱めるって……じゃあ、この前の様な目に
……」
「そうよ。でも、あんな程度じゃ済まないわよ。……ウフフ、楽しみにしてらっしゃい」
私は、彼を伴ってオンディーヌを出ると、私のアパートへ向かいました。
彼はうなだれて、スゴスゴと後に従います。
2DKのこじんまりした間取りですが、新しいのが取りえの安アパートです。
私は掃除が嫌いで、内部は散らかし放題でした。
部屋に戻った私は、彼をブリーフ一枚の姿にして、先ずバスルームと便所の清掃を命じまし
た。
「しっかりやるんだよ。奴隷のくせにさぼると、ホラ、この通りだよ。フフフ」
不満そうに、ノロノロと手を動かす彼の頬を、私は思い切りひっぱたいてやりました。
パシンと派手な音がして、彼の顔がみるみる真っ赤になり、唇がブルブルと震えます。
よっぽど口惜しかったのでしょう、彼は目に涙を溜めながら、必死に自分を抑えてタワシを
持った手を動かしました。
「何さ、変態男のくせに。……二度と、私に係長づら出来ない様に、うんと卑しめてやるわ。
……ホホホ、口惜しいでしょう」
私は這いつくばって掃除を続ける菅原の背中へ、追打ちの言葉を掛けます。
彼の目から、バスルームの床へポタポタと、口惜し涙が落ちました。
漸く掃除を終えた菅原を、居間の中央に正座させ、私はその前のソファーに身を沈めると、
ゆっくりと足を組みました。
「この前オンディーヌでは、お前は私と知らずに、私の足を舐め、そして私のお尻に顔を敷か
れたわね。……でも、今日は、私と知った上で同じ行為をするのよ。どこが違うか判る?」
「………………」
「それはね、この前はお前の身体が辱められたけど、今度はそれに加えて、お前の心が卑しめ
られるのよ。……お前の人格を徹底的に破壊して、二度と私の顔をまともに見られない様にし
て上げる。……サア、そこに四つ這いになって、私の足の裏をお舐め!」
それが、彼にとって如何に辛い屈辱的な行為だったかは、彼の目が兎の目の様に赤く充血し
涙が頬を伝って流れていることからも明らかでした。
しかし、私も容赦しません。
薄汚れた足の裏から指の間まで、両足共、徹底的に舐め清めさせました。
その後は、例の顔面騎乗です。
たっぷり尻臭を嗅がせた後、私は尻を浮かすと、パンティーをずらし、彼の目の前にアヌス
を露出させました。
「サァー、今度は奴隷の接吻よ。……私の身体で一番汚れたアヌスを吸って、味わいなさい。
そして、奴隷の身分を思い知るのね」
実は、そこは今朝、トイレでわざと良く拭かずに汚しておいたのです。
尻を落としてアヌスで男の口を捉え、ヒップを軽くグラインドさせて、彼の唇に存分に汚れ
を擦り込んでやりました。
菅原は、咽喉から絞り出す様な嗚咽を洩らして、私の尻の下で咽び泣きます。
しかし流石に諦めたと見えて、唇と舌を使って私の括約筋を吸い清め始めました。
「そうよ、それでいゝのよ。……それでこそ、お前は、最低の奴隷にふさわしく成ったのよ。
……どおぉ? どんな味がするの、おいしい? クックックッ」
その翌日の月曜日。
出勤して来た菅原は、私がお茶の盆を手にして近付くと、弱々しく視線を伏せました。
「お早うございます。……係長さん、お茶をどうぞ」
「お、お早う。……あ、あのぅ、水沢君、今週からお茶当番は、もう止めていゝから……どう
も御苦労だったね」
「アラッ、私、ちっとも苦にしてませんわ。……第一、山本さんが今週は休みですから、少く
ともその間は当番を続けさせて頂きますわ」
私は、やゝ動転気味の菅原を余裕を持ってあしらいながら、彼が湯呑茶碗を口に運ぶのを、
ジーッと見詰めます。
ひと口、茶を啜った菅原は、ウッと低く呻いて、目の前の私を睨みました。
私は、声をひそめて囁きます。
「飲むのよ。皆に怪しまれない様にね。……判る? それが何か。そう、それは、私のオシッ
コよ。それも出たてのホヤホヤ。……サア、私の目の前で全部飲み乾して頂戴!」
菅原の顔は、屈辱に歪みました。
しかし、とうとう観念したと見えて、目をつぶって、一気にゴクリゴクリとそれを飲み乾し
ます。
「アラァ、お気に召して嬉しいわ。……後でお代りをお持ちします」
私は、彼をジーッと見詰めながら、
(又、後で飲ませるわよ!)
の意味を含ませて、芝居っ気たっぷりに申し渡しました。
菅原は、皆の手前、懸命に我慢しているのでしょう、空になった湯呑み茶碗を持つ彼の手が
ブルブルと震えていました。
それから一週間、毎日三回、彼の大振りの湯呑み茶椀には、私の小水がなみなみと湛えられ
て机に配られます。
それも、朝の分は、私が目覚めて最初の尿を、わざわざ容器に入れて会社まで運んで来たも
のなのです。
一晩中、私の体内でたっぷり味付けされたそれは、色も味も濃く、菅原も流石に飲み難そう
でした。
私は、すかさずメモを書いて、皆に気付かれぬように彼の机に置きます。
(もっとおいしそうに飲むのよ。少しでも残したら、あの写真を回覧するわよ!)
不潔感を必死に抑えながら、その汚水を口に運ぶ彼の口惜しそうな表情を眺める度に、私は
スカッと溜飲の下がる思いでした。
そして、その週の終りの日曜日、ゆっくり朝寝を楽しんだ私は、ベッドの中から電話で菅原
に連絡をとりました。
予め、彼には、近くの喫茶店で朝から待機している様に命じてあったのです。
数分後に現われた彼を床に仰向きに寝かさると、私はネグリジェのまゝ彼の首を跨ぎ、上か
ら、その顔をジーッと見下ろしました。
その面てに浮かぶ卑屈なオドオドした表情は、将に、女に嬲り抜かれて男の誇りを失った意
気地無しの奴隷のものに相違ありません。
私の心中には、優越感をベースにした、驕慢な嗜虐の思いが湧き起って来ました。
「お前は男のくせに、女に尻の穴まで舐めさせられた挙句、この一週間、小水まで飲まされて
来たんだよ。……情ないとは思わないのかい?」
「………………」
「お前みたいな最低の男は、今日から私の便器にしてやるわ。……この一週間で、味の方は馴
染みになった筈だから、今度は私のオマルとして、零さない様な飲み方を覚えるのよ。御主人
様の何処から、どの位の勢いでオシッコが出るのか身をもって体験するの。……そして、それ
に合わせてお前の口と咽喉を動かす練習をするのよ。……むせない様に呼吸の仕方も工夫しな
さい。……この部屋の鍵を渡しておくから、明日からは、毎朝、会社へ出勤する前に此処へ来
ること。……そして、私が目覚めたら直ぐお前の顔に跨がれる様に、ベッドの裾で待機するの
よ。……そして、会社では、私が催した時は何時でも、使ってない会議室や屋上で便器として
奉仕すること。……判ったわね!」
私の足の間から覗く菅原の顔が、大きく歪んで、唇がワナワナと震えました。
「お、お願いです。そ、そればかりは、ゆ、ゆるして下さい。……私が、わ、わるかった。…
…謝ります。……許して下さい」
「今更、何を言ってるの。お前はもう奴隷に落とされてるのよ。それが、便器に堕とされるの
は当然の成行きよ。五十歩百歩じゃないの、諦めなさい。……サァ、行くわよ」
私は、パンティーをずらすと、しゃがみ込んで彼の顔に尻を当てます。
秘肉に密着する男の唇が十分開いてることを確めると、私はゆっくりと尿道の筋を弛緩させ
ました。
最初の経験のことゝて、少し時間がかゝりましたが、やがて、チョロチョロと汚水が彼の口
中へ注ぎ込まれ、次第にその勢いを増して行きます。
菅原の咽喉がゴクリゴクリと鳴り、その合間に熱い息吹が私の股間をくすぐりました。
(ウフフッ、これで、この男を完全に征服してやった!……でも、未だ物足りないわ。これか
ら、もっともっと嬲り抜いてやる)
私は心の中で呟いておりました。
彼が、その後、更に私の手で転落を重ねて行った事実は、又機会を見て、お話ししたいと思
いますが、今回はこの辺で筆を置きます。
(完)
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1987年7月スレイブ通信4号
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2010/06/21