#46 転落の麻薬(前編) (Falling By Drug - Part One)
                         阿部譲二

麻薬の原料となるケシを壊滅させるビールスを発見した男が南米コロンビアの日系ケシ栽培業者に誘拐され、口封じのために毎日女達に凌辱される。農園主の姪に犬として調教され舌奉仕奴隷に落とされる。スペイン人の女中たちのセックスにも舌奉仕させられ、農園のパーティの席上、女の便器にされる。日本に残した妻までが誘拐され農園主に犯される。

 K大学の植物研究所は、従来、遺伝子の組み替えに依る農作物の
品種改良で有名である。
 しかし、余り世に知られてはいないが、植物病理学、つまり植物
の疫病並びに伝染病の研究でも、優れた業績を上げていた。
 現在その中心になっているのが、数名の少壮気鋭の研究者達であ
り、桜田謙一郎、当年二十六歳、もその内のひとりである。
 ただ、彼の専門分野は主流の農作物ではなく、薬草、特にケシ科
の植物の病理で、この点、世界にも類の無い研究だった。
 ケシ科の植物と言えば、あの恐ろしい麻薬の原料として一般にも
広く知られている。
 しかし、同時にそれは医療用の麻酔薬として、手術や治療に欠か
せないものでもあった。
 所で、桜田謙一郎は新婚三ケ月の身である。
 恋女房の啓子が家で待っているとなると、独身時代の様に研究で
徹夜したり、皆で街へ飲みに行ったりすることも滅多に無く、毎日
夕刻になると真直に家へ戻る生活だった。
 その日、何時に無く興奮気味で帰宅した謙一郎は、出迎える啓子
に熱っぽく語り掛けた。
「新発見だよ、啓子。……それもノーベル賞クラスの大発見さ!」
 一方、啓子は怪訝な顔である。
「稲のいもち病に相当するケシ科植物特有の伝染病があるんだが、
そのビールスを分離することに、遂に成功したんだ」
「すると、その植物の病気を直すことが出来るのね」
 無邪気に合槌を打つ啓子。
「それは未だだけど、そのビールスを撒けば、ケシ科の植物はたち
どころに全滅さ!」
「私、判らないわ。……植物に病気を広めるビールスを見付けて分
離したことが、どうして大発見なの?」
「考えて御覧よ。……今、南米では、麻薬戦争と呼ばれる程、幟烈
な戦いが、警察と麻薬業者との間で繰り広げられてることは知って
るだろう?……麻薬の原料となるけし科の植物を栽培している農園
に、このビールスを撒いたとする。……一週間もしない内に、その
農園は全滅さ。それも、ごく一部に撒くだけで、あとは次々に伝染
して行くんだから世話は無い。……労せずして市場から麻薬を駆逐
出来るって訳さ」
 謙一郎は得意げに解説した。
 ホンノリと頬を染めながら、そんな夫を惚れ惚れと見詰める啓子
は、傍目にもハッとする程美しい。
 かって地方の美人コンテストで優勝しただけあって、輝くばかり
に整った顔立とそのグラマラスな姿態は、学者の女房と言うより、
女優かモデルと言った雰囲気を醸し出していた。
 桜田謙一郎の名前と、その新発見の内容が、新聞の紙面を賑わせ
たのは、それから数日後のことである。
 しかし、麻薬の脅威がそれ程切実ではない日本では、記事の扱い
も地味で、一般の反響も皆無に近かった。
 ところがその翌月、国際植物学会でこの新発見の発表講演をする
ため、単身渡米した桜井謙一郎は、どうしたことか会場に姿を見せ
ず、以来、その消息がプッつりと絶えてしまう。
 彼の突然の失踪は、海外でのことでもあり、日本の新聞に発表さ
れることも無く、以来、関係者の努力にも係わらず、桜田謙一郎の
行方は遥として知れなかった。
 ここで舞台は、一転して南米コロンビアに移る。
 熱帯にあるこの国では、プラジルと並んでコーヒーの産出量が突
出していて、いたる所にコーヒーの実を栽培する大農園が広がって
いた。
 その中に混って、麻薬の原料になるケシ科の植物を栽培する薬草
園が点在している。
 その主力は、阿片を作るケシの実と、コカインを採るコカの葉の
生産だった。
 世界の殆どの国で、法律で禁じられている筈のケシやコカの栽培
が、こゝでは堂々と、しかも大規模に行なわれている。
 農園の経営者、即ち農園主は、世界規模の麻薬の流通機構と密接
に係わりを持っていて、巨大な富と権力とを手中にしていた。
 日系の中山建造、三十五歳、もその一人で、五年前にこの地へ根
を下し、大手のコーヒー園を買収して農園主になるや、北米の麻薬
密輸業者と組んで事業を拡大し、財を成している。
 広壮なその住まいには、私設の警備員が到るところに配置されて
をり、邸内の大勢の使用人や農園の労働者達の上に君臨していた。
 その中山建造の邸宅の庭に、或る日ヘリコプターが着陸し、屈強
の警備員に付き添われて降り立った日本人がいた。驚いたことに、
これがあの桜田謙一郎である。 顔は幾分やつれ気味だが血色は良
く、二人の警備員に両腋を抱えられてはいたが、足取りも確かだっ
た。
 彼の失踪の日から、早、約一ケ月の日が経っている。
 ペルシャ製の絨緞が敷き詰められ、豪華な家具が並べられている
リビングルームで、桜田謙一郎は当主の中山建造の前に引き据えら
れた。
 ソファーでくつろぐ建造は、目の前の床に正座させられた謙一郎
をジーッと見下ろして口を開く。
「お前がこゝへ連れて来られた訳は、説明するまでもないだろう。
……そう、お前の学会での発表を聞いて、俺達の大切な畠に、病原
菌をバラ撒こうと言う奴が現われでもしたら一大事だからな」
「……………………」
「そこで、俺達は、お前の口を封じることにしたんだ。……ただ、
お前を消してしまうのは簡単だが、それじゃ世間を刺激して俺達の
商売が却ってやり難くなる。……だから、お前をこゝで訓練して、
精神的に腑抜けにすることにしたのさ」
「腑抜けって……まさか麻薬を使って……」
「それは最後の手段さ。……先ずは、お前を徹底的に辱めて人間性
を奪うことから始める」
「徹底的に……辱めるですって?」
「そうさ。お前が人間性を失なった卑しい動物になれば誰もお前に
耳をかす者は無くなるさ。……それには、ここで当分の間、女達の
調教を受けるんだな」
「女達の……ですって?」
「その通り。お前はこれから毎日、女達に凌辱されて暮すんだ。…
…そうだ、早速、お前の調教を担当する女を紹介してやろう」
 中山建造は、振り向いて手で合図する。
 奥から現われたのは、年の頃二十余りの若い日本人の女だった。
背はそう高くないが、肉太でウエストが引き締まっている。
 丸顔の美人で、その黒い大きな眸と厚い唇が、官能的なムードを
醸し出していた。
「俺の姪の明美だ。……お前の調教係りを二つ返事で引受けてくれ
たおてんばさ。高校の時には、札付のスケバンで男を散々いじめた
経験がある。……お前を思いっ切り嬲ってみたいんだとさ」
 建造の言葉を裏書する様に、明美はソファーに腰掛けながら、ニ
ヤリと笑みを浮かべる。
 可愛い笑窪の蔭に、ヒヤリと冷たいものが見えた。
「その男を、こゝへ跪かせて頂戴。……首輪を嵌めてやるから」
 明美は、手に持った袋の中をまさぐりながら、声量のあるアルト
で、謙一郎の両腋を抑えている二人の警備員をうながした。
 両肩を押付ける様に、明美の足元の床に這わされた謙一郎の頚に
犬用の革の首輪が巻かれ、カチリと小さい南京錠で固定される。
 首輪に付けられた長い鎖が鈍い光を放っていた。
「いゝわ。……次は、この男の着てるものを取って、丸裸にして頂
戴」
 警備員達の手が邪険に謙一郎の衣服をむしり取る。
 無抵抗の内に、彼はとうとうブリーフまで取られ素っ裸にされて
しまった。
「フフフッ、良い眺めだこと。……じゃあ、最後にこれを嵌めて…
…」
 明美の手には、金属性の手錠と短い鎖で繋がれた足枷が握られて
いる。
 こうして手足を拘束されてしまった謙一郎を、明美は満足さうに
見詰めた。
「歩いて御覧。……ソラ、早く!」
 中腰になったまゝ躊躇する謙一郎の背に、ピシッと明美の鞭が飛
んだ。
 焼ける様な衝撃が、彼の全身に走る。
 何時の間にか袋から取り出された黒い革の一本鞭が、彼女の手に
握られていた。
 若い女に裸にされ鞭打たれる屈辱に、謙一郎の全身がカーッと火
照る。
 しかし、生れて初めての鞭の痛みには勝てなかった。
 前屈みになって、両足の足枷に付けられた短かい鎖の足幅でヨチ
ヨチと歩き出す。
 その無様な格好に、明美も思わずプーッと噴き出してしまった。
「いゝわよーっ。お前にお似合だわ」
 明美に頚の鎖を曳かれながら、よろめきよろめき部屋を一周する
謙一郎。
「次は、私の前に跪いて、私の臭いを嗅いで覚えるの。……ソラ、
犬がよくやるでしょう。フッフッ」
 鎖をツンと引かれて明美の前に膝を付いた謙一郎に、彼女はくる
りと背を見せ、スラックスに包まれた量感溢れる尻を目の前に突き
出す。
「ホレ、私のお尻の臭いを嗅いで覚えるんだよ。………アラお前、
私の鞭が欲しいのかい?」
 たじろぐ彼の目の前で、明美の手の鞭が揺れる。
 建造や警備員達の目を意識しながら、謙一郎は、それでもオズオ
ズと女の尻に顔を寄せた。
 と、明美の手が彼の頭に掛かり、彼の顔をピッタリと自分の尻割
れに押し付ける。
 ムーッと臭気が謙一郎の鼻孔を襲い、屈辱と情けなさとで目が霞
んだ。
「よく覚えた?……いゝこと、これからお前は毎日この臭いを嗅い
で頭に叩き込むのよ!」
 こうして皆の前で、たっぷりと尻臭を嗅がされた後、謙一郎は鎖
を曳かれて広い邸内の廊下を通り、彼女の寝室へと連れ込まれた。
 セピア色の壁紙にベージュの絨緞、そして同じデザインで統一さ
れたチーク材の高級家具が、しっとりと落着いた雰囲気を醸し出し
ている。
 革張りのリクライニング・チェアにくつろいだ明美は目の前の床
に男を正座させた。
「私ね。こゝでは欲求不満なの。……ボーイフレンドは何人か居る
けれど、本当に私を満足させてくれる人は居ないわ。……だから、
私は自分の自由になる男、つまり私のセックスに舌奉仕をさせる奴
隷が欲しかったの」
「………………」
「勿論、舌奉仕はお前を卑しめる調教のひとつよ。だから、私は汚
れたまゝの状態で舐めさせるわ。……それから、私が満足した後で
お前を女中達に下げ渡すことにするの。……当然、お前は女中達に
も舌奉仕を強制されることになるのよ。クックックッ」
 明美は、含み笑いをしながらチェアの上でスラックスを引き下す
と、謙一郎の頚の鎖を引いた。
 跪いた姿勢のまゝ、広げた女の股間に吸い込まれる様に顔が引き
寄せられて行く。
 プーンと女の性臭が鼻を突いた。
「女は男の性器でこゝを穢されるけど、私はこゝで男の舌を穢すこ
とが出来るわ。……どおお? お前、女に征服される気分は?」
 明美は、股間から覗く男の顔をジーッと見下ろすと、蔑みの色を
露わにして、ペッと唾を吐き掛ける。
 屈辱に歪む謙一郎の顔。
 それも鎖のひと引きで明美の股間に埋もれてしまう。
「しっかり舌を延ばして奉仕するのよ。……汚れは唇で吸って飲み
込むの。……ホラ、しっかり!」
 明美の手に何時の間にか握られていた鞭が、ピシッと彼の背で音
を立てる。ピクッと身体を震わせて、舌を懸命に動かす謙一郎。
 女に鞭打たれ、卑しめられながら舌奉仕を強制されるみじめさに
思わず嗚咽が洩れるのだった。
 彼の舌が痺れを帯び、無限の時間が経ったかと思われる頃、明美
は身体を反らせて頂点に達する。
 しかし、それで終りではなかった。
「未だ一回目よ。暫く余韻を楽しむ間、アヌスを舐めていて頂戴。
……フフフ、そこの汚れも奇麗にするのよ」
 異臭を放つ薄茶色の蕾が、彼の唇に押し付けられた。 こ、こ
んなことまで、させられるなんて!
 心の中で泣きながら女のアヌスを吸う謙一郎。
 そこには、女に辱められ、身も心も征服された哀れな男の姿があ
った。
 優に二時間を越える舌奉仕の後、明美はベルを押して現地人の女
中を呼び、宣言通り謙一郎を下げ渡す。
 彼の頚の鎖を握った女中に、明美は流暢なスペイン語で何やら指
示している。どうやら、彼の卑しめ方を説明したらしく、途端に女
中の表情に淫蕩な笑みが浮かぶ。
 その後、地下の女中部屋に連れ込まれた謙一郎は、哀れを極めた
のだった。
 彼を囲んで集まった手空きの女中が五人。
 何れも若く、スペイン系の女の特長である豊な胸と尻のボリュー
ムを備えている。
 手錠足枷で自由のきかない謙一郎をベッドの上に寝かせると、ひ
とりが、いきなり彼の顔面に跨がった。
 そして、圧倒的な重量にひしゃげる彼の顔に、その股間をリズミ
カルに擦り付ける。
 謙一郎の舌が、唇が、女のクレバスで下し金よろしく揉みくしゃ
にされた。
 五人の女中達が次々と彼の顔面を性器で凌辱する。
 その股間から湧き出るネバネバした淫液は、彼の舌を伝って口中
に入り、咽喉を焼いた。
 同時に、彼の男としての誇りは、完膚無きまで粉砕されたのだっ
た。
 その翌日、そしてその翌日も同じ凌辱が繰り返され、一週間が過
ぎた。
 明美の足元の床に這いつくばって、彼女の朝食の残りを、犬の様
に口に頬ばっていた時、彼は明美から新しい仕事を言い渡された。
 農園で働く作業者に、飲料水を運ぶ役である。
 手錠足枷の不自由な身体で、水桶を積んだ車を曳いて農園を巡回
するのが仕事だった。
 早速、その日から開始である。車を曳く彼に、首の鎖の端を握っ
て明美が付添った。
 農園の作業者は、その殆どが労賃の安い女性である。 灼熱の太
陽の元での作業だから、当然、咽喉の乾きも激しい。しかし、まと
まった休憩時間と言えば、昼食時だけだから、作業者は給水車を待
ち兼ねていた。
 素裸で陽に曝されながら車を曳く謙一郎の全身から、汗がしたた
り落る。当然、咽喉がカラカラになった。
 しかし、日傘を差して付き添っている明美は、彼に桶の水を飲む
ことを許さなかった。
「この水は、こゝで作業する人間が飲むんだよ。お前にはその資格
が無い。……どうしても水分が欲しかったらお前にふさわしいもの
を飲むんだね」
「わ、わたしに……ふさわしいものって……」
「馬鹿だね。未だ判らないのかい。……オシッコ、つまり人間の小
水だよ!」
 謙一郎は思わず耳を疑がった。
「私のを飲ませてやってもいゝけれど、それじゃ面白くないわ。…
…水を飲みに来る女達に、お前から頼みなさい。……どうか、お小
水を飲ませて下さいってね。……フフフ、言葉は私が通訳して上げ
るわよ」
 明美の言葉に、謙一郎は唇を震わせて沈黙する。
 しかし、それから一時間も経たぬ内に限界が来た。
 車を止め、集まって来た女達に向かって、遂に彼は自らを卑しめ
る願いを口にしたのである。
「もっと大きな声で!……そこへ土下座して頼むのよ」
 女達の前に這いつくばって、きれぎれに出す言葉を、明美が通訳
すると、ドーッと笑い声が起った。
 笑いがひとしきり収まると、頭に藁帽子を被った女が前に出て、
ニヤニヤ笑いながら声を掛ける。
「飲ましてやるって言ってるわよ。……そこへ仰向けに寝て口を開
けたら、便器代りに使ってやるって!」
 明美が、さもおかしそうに通訳した。
「ど、どうか、何か容器に入れて……そう、コップがあれば……」
 謙一郎は、顔を真赤にして訴える。
「馬鹿ね、こゝにオシッコを入れる容器なんかあるもんですか。…
…サー、早いとこ諦めるのね」
 ガックリ頷垂れた謙一郎は、女の足元の地面に寝た。
 仰向けになって口を開けたものゝ、目は虚ろで、身体がブルブル
震えている。
 ワーッと女達の囃す中で、藁帽子の女が、スカートをたくし上げ
て彼の顔に跨がった。
 下穿きをずらした女のグロテスクな股間が落下し、彼の口の上に
ピッタリと据えられる。
 途端に、なまぬるい汚水が、チョロチョロと謙一郎の口中に注が
れ、次第に勢いを増した。
 彼の咽喉がゴクリゴクリと鳴り、臭味のある女の小水が次々と彼
の胃の腑に送られて行く。
 周囲に集まった女達の嘲けりの声が彼の耳を刺した。
「終ったって言ってるわよ。あとをちゃんと舐めて清めて欲しいそ
うよ。……アヌスの方もですって。フフフ」
 明美の通訳と同時に、女の尻が催促する様に彼の唇を繰返し繰返
し、にじった。
「御苦労さん。皆の前で生恥を曝した感想はどおお?……これで、
お前はとうとう女子用トイレに転落したって訳ね」
 立ち上った女のスカートの下から身を起した謙一郎に揶揄する様
な明美の言葉が浴びせられた。
「明日からは農園では彼女等の小水を、家の中では私や女中達の小
水を飲むことにしなさい。……いゝわね」
 決め付ける様な彼女の念押しに素直に頷いたものゝ、謙一郎の胸
には、一旦薄れかけていた無念さが、又もや鮮かに蘇えって来るの
だった。
(続く)
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1991年1月スピリッツ1,2月号
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2010/06/25