#08屈辱のスパイ教育(狙われた企業秘密)(後編)
阿部譲二

ハイテク会社の製品企画担当の課長の部下がラブホテルで死ぬ。SMプレイの果ての事故死らしく、その調査に乗り出した課長はSMクラブで女の罠に落ち屈辱的な写真を撮られる。それを種に女の夫に、会社の機密を持ち出して競争相手の会社に持って行くように強制され、相手の会社の女子社員達に散々嬲られる。不始末が露見した課長は降格される。

東洋電子の企画室は、事業の海外進出を目ざして活況を呈していた。
 勿論、同業他社との競争は激化の一途を辿っていて、それぞれ相手の手の内を読むのに懸命だった。
死亡した山田の後には、長沼企画室長の遠縁で縁故採用で入社したとの噂のある堀江修一郎が総務部から転籍して来た。
 のっぺりした優さ男で係長のくせに課長の平田に妙に慣れなれしく、何となく好きになれないタイプだった。
 話している内に、彼が山田の妻の光子と高校で同級生だった事が判った。
「実は、昔彼女にプロポーズした事があるんですよ。……結局山田さんに取られちゃったけど、その内又チャレンジしてみようかな」
 彼も三十に近い年なのに未だ独身で、社内でも色々と女子社員との噂の的にされているようだった。
 仕事をやらせて見ると仲々のきれ者で、企画の纏め方もそつがない。
 ただ、課長の平田を飛び越して直接長沼室長の所へ報告したり、指示を受けに行ったりする事があった。
 無視された平田が抗議すると、長沼さんから直接言われたのでと弁解するだけで、一向改めようとしない。
 この所、平田が仕事の上で生彩が無いのを良い事に、益々彼を無視するようになって来た。
 しかし、毎夜、和美達にいたぶられ続けている平田には、堀江を抑えるだけの気力が欠けていた。
 しかも、あまりにも女達に辱められたためか、一種の女性恐怖症に捉えられ、女子社員、殊に堀江の下のベテランのOLから、一寸したミスを指摘されると必要以上に卑屈な態度で謝ったり、不自然な敬語を使ったりして、冷笑を浴びる事もあった。
 それに、このところ毎週のように会社の機密文書を持ち出して、探偵社の山村に渡している事が後ろめたさとなって、彼に何かおどおどした態度を取らせていた。
 だから、漸く一ヶ月が過ぎて、クラブドミナでの教育から開放されると、やっと平田の仕事振りも昔に戻るかに見えた。
 山村から思いがけない申し入れを受けたのは丁度その頃、正確には和美の辱めから開放されて二週間後の事である。
 例の喫茶店でいつものように機密文書入りの封筒を手渡すと、山村は用心深くあたりを窺ってから口を切った。
「実はな、この機密を買ってくれている会社が、あんたに直接会って色々聞きたいと言い出したんだ。つまり書類だけじゃもうひとつ判り難いそうで一々説明して貰いたいし、又質問もしたいそうだ」
「…………」
「それで、あんたの会社は土、日が休みだが先方は未だ土曜日が半どんなんで、毎週土曜の朝に来て欲しいと言っている。……勿論、報酬は今迄通りわしが受け取るから、あんたは来週からこれを持って直接先方へ行ってくれ」
 山村は今受け取ったばかりの書類を平田に返すと(それでいいな)と念を押した。
「一寸待ってくれ。……先方へ行くのはいいが、秘密は十分守ってくれるんだろうな。……それに僕は未だ報酬は一銭も貰っていないんだ。書類を渡すだけじゃなくて、説明もするんだったら当然もっと金が取れる筈だし、この際、今迄の分を含めて纏まったものを貰いたいな」
「あんた契約書を忘れたのかね。わしの方は対価を払うんで、それを金で払うとは言って
ないんだ。……山田さんの時のようにクラブドミナでの経費を持つと言ったら、あんたは金を貰ってもあそこへ行かんと言った。……だから、あんたが行きたくなるように教育してやろうとしたんじやないか」
「…………」
「まあいいさ。……あんたがどうしても金が欲しいって言うんなら、こちらは又教育を続けさせて貰うだけさ。和美の話だと、山田さん並みになるのには後一年位かかるそうだ。……こちらには例の写真もある事だし、あんたに又クラブへ行けって命令する事だって出来るんだからな」
「うっ、そ、それは勘弁してくれ」
「それじゃいいんだな。秘密を守る件は先方にも充分言っとくが、あっちだって表沙汰になったら困るんだ。……まあ、お互い様さ」

 トイレでの屈辱
 ワトソン・エレクトロニクスは、数年前に日本へ進出して来た外資系の会社である。
 本家はアメリカにあり、世界的な電子製品のブームに乗って、この所メキメキ売上げを伸ばしていた。
 平田の勤務する東洋電子はこの業界のトップにランクされているとはいえ、追われる立場にあり、今後の新製品の内容と発売のタイミングに勝負が賭けられていた。
 その週末の土曜日の朝、平田はこのワトソン・エレクトロニクスの東京本社を訪れるように命ぜられたのである。
 もっとも警戒を要するこの競争相手に、会社の機密を売る羽目になろうとは彼としても思いもかけない事だった。
 固い表情で受付に立つと、予め話が通じてあったと見え直ぐに最上階の奥まった応接室に通された。秘書課と役員会議室に挟まれた位置といい、豪華な内装といいそれは恐らく会社幹部の接客用の部屋に違いなかった。
「やあ、待っていたよ。……君が東洋電子の平田君だね……いやいや心配しなくてもいいんだ。秘密は絶対に守るからね」
 赤ら顔の脂切った肌に鋭い目付きの小肥りの男だが、如何にも精悍そうな雰囲気を漂わせていた。
「私は社長室調査課長をやっている金井という者だがね、山村君から貰う資料がどうも判り難いんだ。……それで、ひとつ君から直接説明して貰おうと思って無理をお願いしたってわけさ」
 何か、人を見下したようなしゃべり方が、まず平田の気に障った。
「なにしろ極秘資料ですからね、持ち出すのがやっとで私も不明な点が多いんです。……余り、お役に立つとは思えませんがね……」
 自然に、口調がふてくされた調子を帯びる。
「まあまあ、そう言わずに我々に協力してくれたまえ」
 金井は平田が差し出した分厚い資料をゆっくりとめくり出したが、やがて中程の折込みのページを拡げて平田の前に置いた。
「ここだよ、我々の関心が深いのは。この長期製品計画表だ。……東洋電子の新製品の開発タイミングが一目瞭然なのは良いんだが、肝腎の製品名がコード化されていてさっぱり判らん。……ひとつひとつ解説してくれんかね」
 しぶしぶ口を開いた平田の説明に、いちいち、うなずいていた金井が途中で急に口を挟んだ。
「ちょっと待った。そのZ計画というのは何かね。君の説明では内容未定のプロジェクトだというが、発表時期まで記入されているのはおかしいじゃないか。……えー君、嘘を言っちゃいかんよ。我々は相当な金を山村に払っているんだからな」
 平田は心臓がドキリと鳴るのを覚えた。
 それは、実は業界の関心の的である有線テレビのネットワークを他社に先がけて組織し、政府の認許に持ち込もうという、言わば極秘中の極秘事項で、社内でも極く限られたメンバーしか知らされていない計画だった。
 平田としても、これだけはワトソン・エレクトロニクスに知られたくなかった。
「いや、本当に未定なんです。というより私はそのプロジェクトには直接関与してないので、それ以上の事は判りません」
「おいおい、冗談言っちゃ困るよ。……君は技術計画課長だろう。君が直接関与してなくたっ て内容を知らない筈があるもんか。素直に言いたまえ、素直に」
金井は居丈高になって声を荒げた。
「知らないものは知らないんだ。無理を言うなら僕は帰る」
腰を浮かしかけた平田の脳裏に何か悪い予感が走った。
「山村君と電話で話したんだがね。君はクラブドミナとかいう所で、スパイ教育を受けたそうだな。……そして、和美とかいう女の言う事なら何でも聞くように仕込まれたそうじゃないか。……フフフ、その和美さんに此処へ来て貰ってもいいんだがね。しかしわしにはもっと良い考えがあるんだ」
「…………」
「此処で、たった今から君にもう一度その教育とやらを受けて貰うんだ。此処にはクラブの女はいないが、隣の秘書課には若いOLが沢山いるからな……いま、話して来たんだが皆会社のために協力するそうだ」
 思いもかけぬ展開に頭が混乱して物も言えぬまゝに、平田は金井に追い立てられるように部屋を出され、廊下の突き当りのトイレの前に連れて来られた。
そこにはグレイのビジネススーツのOL達が十人程たたずんでいる。
「立花さん。じゃあ頼みますよ。……皆も会社のためだ、こいつを徹底的に洗脳してくれたまえ」
 立花と呼ばれたのは、背の高いキリッとした顔立の、いかにもしっかり者らしい女である。彼の前にツカツカと歩み寄ると、高慢そうな態度で口を開いた。
「私は立花礼子、秘書課の主任よ。……いいこと、私達の言う事には絶対服従するのよ。お前の性根を叩き直してやるから。……フン、みんな聞いたわよ。何さ、いやらしい変態のくせに!」
 何時の間にか彼の周りはOL達に囲まれてしまっていた。
「こっちへおいで。……さ、早く」
 皆にこずかれるようにして連れ込まれたのは、傍の女子トイレだった。
 中は思ったより広いスペースで片側は手洗いになっているが、鏡が一面に嵌め込まれ、化粧室を兼ねている。
 平田は奥の窓に押しやられ、冷たいタイルの上に正座させられた。
 続いて上着を脱がされ、細紐で後手に縛り上げられてしまった。
自由を奪われると、さすがに諦めの念が拡がる。 「さ、ここでお前はワトソン・エレクトロニクスの女子社員の奴隷になるのよ。……つまり、私達には二度と頭が上がらなくなって、私達の命令には絶対服従するようになるの……フフフ、その為には、お前は私達にうんと辱めを受ける必要があるわね。……さあー、最初は奴隷の誓いの接吻からよ」
 立花礼子はくるりと後を向くと無造作にスカートをめくり、白いパンティに包まれた豊かな尻を彼の目の前に突き付けた。
「ホラ、判る? お前の好きな女のお尻よ。SMクラブではこれを散々舐めさせられたんでしょう? この変態男!」
 それは彼の顔に触れんばかりに迫り、ゆらゆらと揺れる。もう彼にとって馴染みになった尻臭がプンと鼻を打ち、同時に屈辱感がぐっと込み上げる。
「パンティを脱いで上げるから、アヌスに唇をつけて汚れを吸い取るのよ。……但し、お前の目が潰れないように目隠しをしておくわ」
 手拭いのようなものが彼の視界を奪い、続いて女の冷たい尻が顔に押し付けられた。
彼の頭は、後の壁にぴったりと当たる。
 鼻が尻の割れ目にすっぽりと埋まり、口が生暖かいアヌスに捉えられる。
じっとりと湿った粘膜が唇をにじった。
「さ、舌を出して舐めなさい。そして味を良く憶えるのよ。フフッ、奴隷の味をね!」
 次々と新しい尻が平田の唇に押し付けられる。
目隠しをされた男の前で大胆になった女達は、思う存分彼を凌辱した。
 途中から床の上に仰向けにされた彼の顔面に、OL達が次々と跨がった。痩せた骨張った尻、ぽってりとした豊かな尻、臭いも味もとりどりだった。
 何人かのアヌスについていた槽が唇に擦り込まれ、何時の間にか彼の口の中に苦い渋味が、そして心の中に屈辱の念が充満した。
「立花さん、私で最後よ。もう準備良いかしら?……ホレ、さぼらずにしっかりお舐め!もっと吸うんだよ。そうそう、本当に情けない奴」
 彼の顔の上に座り込んだ太った若い女が、尻を揺すりながら礼子に声を掛けた。
「いいわよ。連れて来て頂戴」
 彼は仰向けに寝たまゝ、ずるずると引きずられた。
それでもひんやりした床のタイルをしっかり感じ取っていた。
「そこでいいわ。フフフ、可哀そうだから目隠しを外してやりなさい。きっと、びっくりするわよ」
 ぼんやりとかすんだ視界が段々はっきり見えて来て、やがて彼の顔を跨いで中腰になっている礼子の大きなヒップが目に入った。
 強烈な臭気が鼻を打ち、それが礼子の股間にべったり付着した褐色の糊から漂って来る。  これから強制されるであろうおぞましい行為を察して、彼は跳起きて逃げようとした。
しかし何時の間にか足も縛られていて、上体がピクリと僅かに動いたに過ぎなかった。それでも顔を横に背けて、精一杯の抵抗を示す。
「クックッ、こいつ、生意気に逆らう気よ。……ホラ、お前! みんなの身体の一番きたない所を舐めさせられたくせに、まだ判らないの? お前はもう奴隷の誓いをしたのよ。もう私達と対等の人間には戻れないのよ……諦めて言う事を聞きなさい」
 自分のみじめな立場を改めて礼子の口から聞かされると、判ってはいても悔しさが込み上げ、涙がツーと零れた。しかし顔は横を向けたまゝである。
「いいわ。それじゃ抵抗出来ない事を教えて上げる」
礼子は彼の髪を掴むと、顔を無理やり上向かせ、尻をその顔に触れんばかりの所まで降ろす。と、そのまゝ髪を引き、股間の糊に彼の唇を押し付けた。
(矢張り駄目だ。……とうとうこの女にも征服されたんだ)
 心の中でつぶやくと、彼は舌を出してその糊を口中に運んだ。鼻が曲りそうな臭いに加えて強烈な苦味が咽喉を刺し、思わず(ウウッ)とうめき声が漏れる。
「あらー、こいつ本当に礼子さんのうんこを舐めてるわ……わー気持悪い!」
「ほーんとー。とても人間と思えないわー。豚、そうよ豚よ、こいつ!」
 皆のざわめきが耳に入り、情けなさに、又新たな涙が流れた。
 唾で柔かくなった糊を唇で吸い取ると、ピンクの粘膜が現われる。
と、それがぐいと唇を押し拡げ、顔面に尻圧がかかった。
「初めから素直に言う事をきかなかった罰を上げるわ」
 礼子の言葉の意味は、直ぐに彼の唇に伝えられた。そこで礼子の括約筋が大きく膨らみ、プスッと音を立てて、ガスと共に柔かい塊りが彼の口中に放出されたのである。
(ワァーッ)と思わず叫んだつもりだが、礼子の尻で口を塞がれているため、勿論声にはならない。
 胃のあたりが大きくけいれんして、吐き気が込み上げたが、礼子の尻が重くのしかかり吐き出す事は不可能だった。
 その彼の苦悶の様を、礼子がニヤニヤ笑いながら上からじつと見下ろしていた。その瞳に宿る嘲笑と蔑みの影が、彼の目にもはっきりと写ったが、それも直ぐ涙でぼやけていく。
 すべてが終って再び中央に引きだされた彼は、未だ許して貰えなかった。
「さ、口直しの水を上げる。零したら、さっきのやつをまた食べさせるわよ」
 今度は、先程の太った女が彼の口に汚水を送り込んだ。そして次の新手が続く。
 漸く許されて縄を解かれ、先程の部屋に戻ったのはもう昼近くだった。
 ただし今度は、側に立花礼子がぴたりと付き添っている。
 金井が、ニヤニヤ笑いながら声をかけた。
「やあー、すっかりおとなしくなったな。スパイ教育が成功したのかな? いいさ、もし駄目だったら又繰り返すからな。しかも、もっとハードにな。ハハハ」
 がっくり首を垂れた平田は、半ば放心状態である。臭いゲップが込み上げる度に顔が赤くなった。しかし、今度は礼子にきつく問い詰められると、スラスラとZ計画の全貌をしゃべった。

 次の週の土曜日、再びワトソン・エレクトロニクスを訪れた平田には、もう抵抗する気力は残っていなかった。
 先週追加要求された極秘資料のファイルを差し出し、質問を待ったが、意外にも金井はそれを受け取るや否や、又しても立花礼子に彼の身柄を引き渡したのである。
「ひ、ひどいじゃありませんか。この前、私は洗いざらいお話ししたんですよ。……今日だって、何でも隠さずに言うつもりです。どうか前回のようなお仕置はお許し下さい」
 礼子に襟髪を掴まれ、引っ立てられながら顔色を蒼白に変えて訴える彼の声は、もう悲鳴に近かった。
 大の男が若い女に犬ころのように扱われるおかしさに、礼子に従う社員から思わずクスクス笑いが洩れた。
「ワハハハ、本当にだらしない奴だな。お仕置だって? お前は未だスパイ教育を終っていないんだ。……一回位じゃ身に付くもんか! これからも当分、繰り返し教育して貰うんだ。……いいか、ここの女子従業員は、ワトソン・エレクトロニクスの会社そのものを代表してお前を奴隷として教育し、心から服従するように仕込もうとしているんだぞ」
 廊下に連れ出された彼は、礼子の前で四つん這いにさせられた。
 ドスン、と彼女がその背に跨がる。
「さあ、トイレ迄私を乗せてお行き。それからね、この会社ではお前はこれから二度と立って歩いちゃ駄目。……受付を通り過ぎたら必ず四つん這いになりなさい。そして皆の笑い者になるのよ」
「ホラ、この豚。お歩き!」
 誰かがポンと彼の尻を蹴った。あたりでクスクス笑いが起る。
 礼子を背に乗せてよたよた這い進む彼の周りを先週のメンバーが取り囲み、面白半分、横から後ろから足蹴を加えた。
 トイレの中では忽ち下着一枚にされ、この前のように手足を細紐で縛られた。
「お前は、今日は午前中ここで皆のトイレットぺ−パーになるのよ。この階と、ひとつ下の階の女子社員全員に回覧が回してあるわ。……フフッ、会社の敵、東洋電子のスパイの教育に協力して下さいってね」
「判るでしょう? 私達は仕事があるんだから、お前にかかり切りになる訳には行かないのよ。でも安心なさい。このふたつの階には百人以上の女の子がいるわ。お前はたっぷりなぶって貰えるわよ」
「それから、トイレットペーパーの役目の合間に、もうひとつ仕事をして貰うわ……まあ、そこで見てらっしゃい」
 彼女等は壁際に低くロープを張り、銘々、やおらパンティを脱ぐと裏返してそれに吊り下げて行く。
「ホラ、見て御覧。こんなに汚れてる! これまでには随分苦労したのよ」
「そうよ。私なんか、三日前から穿き続けよ。それも、お前の教育のためにね。……股の所がじっとり濡れちゃって気持悪いったら、ありゃしない!」
 ロープに下げられた色とりどりのパンティは、一様に、股の部分がべっとりと黄褐色に汚れている。生臭い香りが、あたり一面に漂った。
「もう判ったでしょう。お前の舌でこれを全部きれいにするのよ。……フフフ、お前の口はさしずめパンティ用の洗濯機ね」
「そして、その舌がトイレットペーパーでもある事をお忘れなく!」
 どっと笑い声が湧いた。
 タイルの上に正座して、目の前のパンティの汚れに口を付ける。
刺すような酸味が口一杯に拡がった。
「それ、私のよ。お味は如何が? フン、この恥知らず! 本当にスパイ豚にはお似合いの最低の教育ね」
 口惜しさに目を赤くして舐め続ける彼の後ろから、礼子が彼の首に細いロープを緩く巻き、その端を長々と垂らす。
「そら、トイレの御用の時はこれを引いて貰うのよ。ホラ、こんな風にね」
 彼女に曳かれるまゝに、膝でにじり歩きしながら便器の縁まで誘導された。
「私、一番!」
 さっき、三日前からパンティを穿き続けていたと恩着せがましく言っていた女子社員が彼の目の前で便器に跨がりかけて、ふと彼の方を振り向いた。
「いやだ。こいつ、じっと見てる。いやらしいわー、誰か目隠ししてぇ」
 彼の目に薄いストッキングが巻かれる。目の前の物は輪郭が辛うじてボーッと見える程度になった。
「そら、もう終ったのよ。舌を延ばして奇麗にしなさい」
 髪がぐっと引かれて仰向けにされ、プンとアンモニアに似た臭気が近ずいた。
ポタリ、と零が唇の上に落ちる。
 付け根が痛くなる程舌を伸ばし、柔かいクレバスを清めた。
 続いて、じっとり湿ったアヌスが舌の先に当てられた。
 こうして昼前迄の三時間近くを、彼は次々とトイレを訪れる女子社員になぶられながら、ロープに吊られたパンティと便器との間を繰り返し往復し、おぞましい屈辱の行為を休む間もなく強制させられた。

 写真公表
 それから三ヶ月が経った。平田にとっては三年にも匹敵する苦汁に満ちた日々だった。
ワトソン・エレクトロニクス社での毎週土時日の教育は未だ続けられていたのである。
 女達の前ですっかり卑屈になった彼の態度と対照的に、彼女等は奴隷を扱う尊大な女主人の役割がすっかり身に着いてしまっていた。
 もう目隠しはとっくに外され、女達はオドオドと視線を伏せる彼の顔をわざと覗き込み、蔑みの言葉に歪む表情を楽しむ余裕さえ出て来ていた。
 土曜日の昼下がり、今日も女子社員達になぶり抜かれた後、もうろうとした頭で通りを歩いていた時の事である。
「平田さん。平田さんじゃないの」 「平田課長、どうしたんです。……目が真っ赤ですよ」
 急に声を掛けられて、ドキッとして顔を上げると、亡くなった山田の妻光子と堀江係長 が連れ立っている。
 お茶でも、と近くのコーヒーショップに入って漸く人心地が付いた。
「あら、平田さん、顔が汚れてるわよ。……それに臭いわ、トイレの匂いよ」
 あわてて手洗いで顔を清め、席へ戻る。
 光子の顔がひと際あでやかで活き活きしていた。
 堀江は、彼の嫌いなあの底意地の悪い笑みを浮かべ、探るような目で彼を見詰めていた。
「平田課長、何処へ行ってらしたんですか? まるで夢遊病者のようでしたよ」
「い、いや……それにしても、君達二人は知り合いだったのかね?」
「いやだな、課長。私達は高校の時の同級生だって言ったじゃありませんか。……実は、山田さんの一周忌が開けたら、僕達結婚する事にしたんです」
「いやあ……そ、それはお目出度う」
「堀江さんとは昔からのお付き合いだったし、山田が亡くなってからも、良く慰めに来て頂いたわ。……そうそう、平田さんと警察の帰りに立ち寄った先から電話した事があったでしょう。……あの時、家で待っていた人って、堀江さんだったのよ」
「ハハハ、聞きましたよ。……変った趣味をお持ちだそうですな」
 明らかに、ラブホテルで光子のパンティを顔に当てた事を指している。
 平田は、恥ずかしさに、思わず耳迄赤くなって面を伏せた。
「それからね、僕はもうひとつ、平田課長の秘密を握っているんですよ。……写真、そう、平田さんの記念写真を、さる所から入手しましてね」
「そうよ。……とっても破廉恥な写真!」
(どうしてあの写真が二人の手に……もしや和美が……)
 疑惑の黒雲が、次から次と心に浮かぶ。
 そして職場での部下である堀江に秘密を握られた不安が彼の心に重くのしかかった。
 何か、もっと悪い事が起こりそうな予感が彼の背筋を凍らせる。
 そして……その予感は果して数日後現実のものとなったのである。
 たまたまその日、午前中広告代理店を訪問して午後二時頃出社した平田は、玄関を入るなり周囲の異常な雰囲気に気付いた。
 皆が何となくよそよそしく、彼を避けているようである。しかも、女子社員達があちこちで彼の方をチラチラ盗み見ながら、ひそひそとささやき合っていた。
「平田課長、室長がお呼びです」
 彼が席に着くなり、待ち兼ねていたかのように秘書の女の子が固い表情で告げた。
 企画室長の長沼は、平田が部屋に入ると、難しい顔付きでドアを閉めるように命じ、引き出しから束ねた写真を取り出して平田の前にポンと投げた。
「これに、覚えがあるかね?」
 震える手で写真を繰ってみると、それはまぎれもなく、あの、SMクラブの(記念写真)に外ならない。
 和美になぶり抜かれている彼の姿が次々と現われ、それに顔もはっきりと写っていて、誤魔化しようもない。
「どうしたんだ。そこに写っているのは君自身に間違いないんだな?」
「全く破廉恥極まる! 君はこの写真が何処にあったと思う? 昼前には社員食堂の前の掲示板に張り出してあったんだぞ……。俺達部長以上は、いつも幹部食堂へ行くから判らなかったが、一般の社員達は殆んど全員がこれを見てしまったんだ。社長も常務もカンカンだぞ!」
「でも……これは誰かが私を陥れるためにやった事です。……私はむしろ被害者なんです」
「そんな事はどうでも良いんだよ 問題はこんな破廉恥な写真が、社内で公開された事実なんだ。……君には勿論責任を取って貰う。さっき緊急役員会を開いて君の処分が決まったところだ。……結論を言うと、君は課長を首にされて平社員に降格されたんだ」
 彼は、顔からスーッと血の気が失せて行くのが自分でもはっきり判った。
「そ、そんな処分は承服出来ません。あれはあくまでプライベートな事です。……役員会で私に弁明させて下さい。それにあの写真を貼り出した犯人に心当りがあります。明日の朝迄待って下さい。」
「悪あがきは止せ! 俺が君だったら、さっさと辞表を出して退散するな」
 唇を破れんばかりに噛みしめて早々に退社した彼は、その晩堀江係長の住居を訪れた。
 思ったより大きなマンションで、間取りも3LDKと独身者には広すぎる位である。
 意外に小奇麗な応接間に通され、堀江と向かい合った途端、平田は厳しい口調で堀江に詰め寄った。
「あの写真を貼り出したのは君だろう? 隠したって駄目だぞ……! 一体、俺に何の恨みがあるのだ。……それに何処からあれを手に入れたんだ」
 堀江はニヤリとふてぶてしく笑った。
「そうさ、あれは俺がやったんだ。……それがどうかしたのかい?」
 思いがけなくあっさり認められて拍子抜けすると同時に、がらりと変った堀江の態度が薄気味悪かった。
「その理由を聞いているんだ。それに第一その態度は何だ!……それが上司に対する口の利き方か」
「理由はこれからゆっくり説明してやるよ。しかし、お前さんは、もう俺の上司じやないんだぜ。明日から俺が課長、そしてお前は俺の部下の平社員さ。口の利き方に気を付けるのはお前の方だぞ」
 まともに言い返されてみると、悔やしさが、カーッと平田の胸に込み上げて来た。
「おい、光子。もう良いから、そこから出て来いよ」
「あら一寸、早いんじやないかしら? もう少し楽しんでから、止めを刺そうと思っていたのに」
 湯上がりと見え、ネグリジェにガウンを無造作に羽織ったまゝで、ピンク色に上気した肌にほつれ毛がまつわり、なまめかしい風情である。
意外な光子の出現にとまどっている平田へ、耶愉するようないたずらっぽい視線を送りながら堀江の側に腰を下ろした。
「あの写真ね、お察しの通りクラブドミナの和美さんから貰ったのよ。死んだ山田がクラブへ出入りしていた頃、彼の後を追ってあそこへ行った事があるの……彼ったら、あの写真の中のお前のように、和美になぶられていたわ。……それ以来、彼女と私は協力し合う仲になったのよ」
「で、でも何故……あれを会社へ……」
「それはね、お前を山田の代わりに私達の奴隷にする為よ。山田は、私に自分の性癖を知られたと覚って、私には服従するようになったけどこの堀江さんに従うのは拒否したわ。……そこでお前が後釜って訳。……判る? フフフ、お前は会社では堀江さんに使われ、家では私に奴隷として使われるのよ」
「あの写真だけで、お前を私達の奴隷にするのは少し無理かも知れないけど、私にはもうひとつ切札があるの」
(そうか、やっぱり、あの事も知られてしまったのか)
 平田はがっくり首を垂れた。
「そうよ、お前のスパイ行為も私には箇抜けだったわ。和美の亭主の山村もそこ迄は言わなかったけど、偶然、この前のクラス会で私達が出会ったのがあのワトソン・エレクトロニクスの立花礼子だったのよ」 「お前もよくよくついていないな。俺も実はびっくりしたぜ。あのオールドミスの礼子にまで、毎週お前がなぶられてるとはな」
「企業機密を洩らすのは、特別背任罪で監獄行きよ。という事は、お前の運命は私の舌先三寸にかかってるのよ。さ、男らしく観念して、そこに四つん這いになりなさい。そして 奴隷として、私達の足の裏を舐めなさい」

 転落の日々
 翌日の朝、平田は長沼室長の前に出頭し、課長から平社員へ降格の辞令を受け取った。
「驚いたよ。君が役員会への抗議を取り下げたのは当然として、辞表も出さずに、しかも今の今迄課長だった同じ課で平社員として勤務したいって言うんだからな。……昨日迄使っていた者達に逆に使われて、我慢出来るのかい? しかも三年の懲罰期間中は、女子社員より身分が低いんだからな。これからは毎日、女の子に顎でこき使われるぞ」
「…………」
「そうかそうか、君は女になぶられるのが趣味だったな。……まあ好きにしたまえ」
 企画室長の部屋を出て、重い足取りで技術計画課へ向かう彼の胸は、切ない思いで満たされていた。
 昨夜は、あれから堀江と光子に散々なぐさみ物にされ、これから当分の間、堀江のマンションへ住み込んで毎晩二人へ奉仕するように命じられたのである。
長沼室長へ、平社員として今迄の課で勤務したいと願い出たのも堀江の差し金だった。
「おい、そんな所にぼんやり立ってないで、中へ入って皆に挨拶したらどうだ。今日から平社員、それも最低の身分ですってな。ハッハッハッ」
 入口でためらっている彼を、昨日迄平田が座っていた課長席に納まった堀江が、中から手招きする。
 オズオズと皆の間を通って正面の堀江の前に進み、頭を下げた。
「お前は当分、席も机も無しだ。そこの壁を背にして皆の方を向いて立ってるんだ。……そして用を言い付けられたらすぐに従う事、いいな。それから皆の名前は様付けで呼び、常に敬語を使うのを忘れるな」
 クスクス笑いが、あちこちで起こっていた。
 壁の前に立たされ、皆の軽蔑の視線に曝されると、目のやり場に困った。
「平田! お茶をもって来て頂戴」
 昨日まで彼にお茶を運んでいた女の子が、意地悪く言い付けた。
 再び、クスクス笑いが湧く。
 口惜しさをぐっとこらえて湯沸し場へ急ぐ彼の後から、浴びせるように、
「どうしたの? 返事が聞こえないわよ。本当に間抜けな男ね」
 立ち止まって(はい)と答えたものの、情けなさに思わず目頭が熱くなった。
 それが切っ掛けになって、堰を切ったように次々と皆が彼を雑用に駆り立てた。
 煙草を買ってこいと言われて外出しかけた際に、古顔の女子社員についでにアンネのタンポンを買って来るように命じられた時には、さすがに彼も屈辱に身体が震えた。
 辛い一日が終ると、今度は堀江のマンションで光子が待ち構えている。
 夕食の支度から跡片付け、それに洗濯に至る迄こき使われ、その後は二人のセックスに奉仕させられた。
 二人の身体に顔を敷かれ、結合部を舌で舐め続けた後、舌と唇で後始末をさせられたのである。
 光子は仰向けに寝かせた彼の顔に馬乗りに跨がり、クレバスをぴったりと彼の口に押し
つけて、ミックスジュースを次々と彼の口中に送り込む。
「山田はね、案外嫉妬深くて、私が浮気するのを嫌ったの。……だからあの晩、和美とのプレイ中に堀江さんと押しかけて、手錠で自由を奪われている彼の目の前で、堀江さんとセックスして見せたの。……彼、涙をポロポロ流して口惜しがったわ。そしてお前が今してるみたいにジュースを飲ませようとしたら抵抗したの。結局、私のお尻の下で無理矢理飲ませたんだけど、吐き出そうとするからお尻で抑えたら、そのうち動かなくなったの」
「…………」
「山田は結局、私の奴隷として私のお尻の下で窒息して死んだのよ。……でも、安心おし。お前が私に逆らわずに何でも命令通りにしていれば一生、私の奴隷として飼ってやるからね。……え、それでいいんだろう?」
 光子の尻が重く顔面を捉え続ける中で、彼女の口から語られた山田の哀れな運命が、そして山田の後を継いだ平田自身の奴隷としての宿命が、避け難いものとして彼の脳裏に深く刻み込まれて行くのだった。
                  (完)
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1985年4月スナイパー4,5月号
(スレイブ通信23号に部分掲載)
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2010/07/01