#06転落の書生奉公
阿部譲二作
郷里の先輩政治家の家に書生として住み込んだ男が令嬢にこき使われる。ある日女中部屋で脱ぎ捨てられたパンティを顔に当てている所を見られ、二人の女中のオナニー代わりに舌奉仕させられる。それが令嬢にも露見し、罰として哀れにも令嬢の便器にされ、たまりかねて出奔する。15年後に洋裁店を開く令嬢と再会した彼は再び彼女の便器へと転落する |
再びの出会い
此処は東京のビジネス街にある、とある高級レストラン。折しも昼食時で最高の賑わいを見せている。
と言っても、客種は殆んどが管理職のサラリーマン、即ち、課長や部長級が多く、大衆食堂の混雑振りと違って、客の出入も整然としていた。
「じゃあ、青木君、きみは一足先に、皆さんをオフィスにお連れしてくれ。私は勘定を済ませて、直ぐ追いつくから」
共立商事の企画課長、山内は、取引先の要人達との昼食を終え、部下に指示を与えながらレジに立ち寄る。
「関西に本拠を置く共立商事が、こゝ東京に進出してオフィスを開いたのは、つい三ヶ月前の事だった。
従って、この、新東京事務所に働くメンバーは未だ限られた数ではあったが、皆、選りすぐりの実力派ばかりで、中でも商社の頭脳とも言うべき企画部門を頂かる山内は、社内きっての敏腕家と目されている。
勿論、山内を含め大半が家族を関西に残しての単身赴任生活を送っていた。
「あらっ、山内さん。もしかしたら、山内健二さんじゃありませんこと?」
勘定を済ませて、出口の方へ向かいかけた彼は、一瞬、ドキリとして振り返った。
その響きの良い澄んだアルトは、遠い昔に聞いた、あの忘れられない女の声を想いださせた。
やはり、そうだったのである。彼の後ろに立っていたのは、まぎれもなく、あの樋口美津子だった。
昔に比べて多少身体のボリュームは増したが、エキゾチックな輝く様な美貌は相変らずで、黒目勝ちの大きな瞳に切長のまつ毛、肉感的な赤い唇は、若い頃の硬さが取れて、成熟した三十女の魅力を十分に発散していた。
「み、美津子さんじやありませんか。ご、御無沙汰しています」
山内は、まるで亡霊でも見た様に、呆然として、しどろもどろである。
「本当に御無沙汰だったわね。何時、東京に出ていらっしゃったの? ゆっくりお話したいけど、私、いま連れがいるの」
美津子は、なつかしそうに、あでやかなほほえみを浮かべる。
「三ヶ月前に転勤して来たんです。私も今客が居るので失礼します」
「健二さん、きっと出世なさったことでしょうね。お名刺、戴けません? 私、今、新宿で洋裁店を出しているんですのよ」
山内の差し出した名刺を手に取ると、
「まあ、共立商事の課長さん。本当に立派に成られたこと!」
美津子の嘆声に、彼も内心得意の念を禁じ得ない。
「先生はお元気ですか? 政界は引退されたと聞いていましたが」
「父は、二年前に亡くなりましたの。ですから私、今はひとりぼっちですのよ」
母を幼少の時に無くして、父一人、子一人で、わがまゝ一杯に育てられた、あの美津子が、今や女手ひとつで洋裁店を経営している。
そう聞いて、ふと同情の念が湧いた。
そんな自分に気付くと、彼はそそくさと別れを告げて、逃げる様に外へ出た。
"あんなひどい目に会わされた相手の女に同情するなんて、俺もどうかしてる"
急ぎ足でオフィスに向かう山内の心に、あの思うだに胸の煮えくり返る様な、昔の屈辱の日々が、次第に蘇って来た。
麺棒さながらに
それは、今から十五年前に遡る、山内健二が十八歳の春の事である。
その頃、郷里の田舎で高校を卒業した健二は、思いもかけず、樋口家に書生として住みこむ事を条件に、東京の大学に進学する機会を与えられた。
貧しい地方の農家の次男坊に生まれた健二にとって、地元の高校に行かせて貰えたのが精一杯で、東京の大学などは到底手の届かぬ話であった。
一方、学問好きの彼は、高校での成績も抜群で、進学はかねてからの夢であった。
そこへ、郷里出身の代議士である樋口庄蔵から学校の方へ、学費を出す代りに書生として住み込んでくれる、見所のある青年を求めて来たのである。
樋口代議士と、高校での級友だったという校長に呼ばれて、突然この話を勧められた時、彼は天にも上る心地だった。
両親に相談するまでもなく、その場で承諾して、躍る様にして家へ駈け戻った。
卒業後は家業を助けてくれるものと期待していた両親は、いささか、とまどいを見せはしたが、兄の口添えもあって結局は許してくれた。
早速、上京して面接を受け、採用が決まってからは本当に慌ただしい毎日だった。
入試の時期はもうとっくに過ぎてはいたが、庄蔵の口利きで、ある私立大学に入る事が出来、こうして樋口家での書生としての生活が始まったのである。
広い邸内の玄関横の一室が与えられ、持物を解いて落ち着くと、まず一人娘の美津子に引き合わされた。
年は彼と二つ違いの十六歳、都内名門女子高校の二年生と聞いていたが、そこに現われたのは大柄な成熟した姿態がまぶしいばかりの、美貌の女性であった。
目の大きいエキゾチックな顔立ちで、身体全体はスラリとしているが、胸のふくらみとヒップの張りは外人並みである。
そのキラキラした黒い瞳に見つめられると、思わず背筋がゾクゾクした。
「山内健二です。……どうぞ、よろしくお願いします」
下手に出た彼の挨拶に答える代りに、美津子は父の庄蔵に向かって、
「お父様、初めにはっきりさせておいて欲しいの。山内さんはお父様だけの使用人なの?それとも私も使っていいのかしら」
健二を全く無視した、しかも彼を頭ごなしに使用人扱いした、その高慢さむき出しの美津子の言葉に、健二は心中強く反発するものを感じた。
「そりゃ、私は外出がちだからな。……山内君には家の事も手伝って貰えばいいさ。何しろ、運転手の水田が結婚して通いになったんだから、山内君はわが家の貴重な男手という事さ。……だがな、美津子、山内君は学校があるんだから、余り無理言っちゃいかんぞ」
「勿論判ってるわ。でもね私、使用人には節度を守って欲しいの……お父様だけじゃなく、私もこの家の主人だと言う事を忘れない様にね」
そして、美津子は健二の方に向き直る。
「いいこと、私の事はちゃんと"お嬢様"って呼んで頂戴。お前の名前は、"山内"って呼び拾てにさせて貰うからね」
「まあ、お前の様に初めからそうズケズケ言うと、山内君がびっくりするぞ。……しょうのないお転婆だな。アハハハ」
いかにも、目に入れても痛くないといった庄蔵の溺愛振りが伺えた。
「山内、私に付いておいで。……家の中を案内してあげる」
美津子に従って広い邸内を一巡する。
豪奢な応接室に続く庄蔵の書斎に寝室、食堂と台所、それから如何にも女の子の部屋らしく、調度がピンクで統一された美津子の洋室を見せて貰う。
彼の部屋の隣が女中部屋になっていて、たまたま居合せた二人の女中に紹介された。
「そちらが、お民。私の生れた頃から居るのよ。……それから、こちらがお清。年はお前と同じ十八で、三年前にこゝへ来たの」
整った若々しい顔立ちで、未だ独身のせいか、三十の坂を越えたとは見えぬお民だが、何かギラギラと脂ぎった艶っぽさが、女中というより料亭の仲居を思わせる。
−方、お清は、丸顔の明るい、如何にも若さが有り余っているといった田舎娘で、がっしりした腰周りに豊かな胸、それに背丈も大柄な方で健二とそう変らない。
「あと、運転手の水田が居るんだけど、今年の初めに奥さんを貰って、近くのアパートか
ら通っているわ。それ迄は、ずーっとお前が今度入った部屋に居たのよ。明日の朝、紹介して上げるわ。……今日はこれでおしまいよ」
美津子が健二を女中部屋に残して引き上げると、続いて腰を浮かしかけた彼に、お民が声をかけた。
「一寸、山内さん。……逃げなくてもいいでしょう。少し話してらっしゃいよ」
「そうよ。今日から私達お仲間なんだから、この家の事も色々と教えて上げてよ」
お清も親しげな口振りである。
何かホッとした気分に成ると、今度は学生の自分が女中風情と一緒にされてたまるか、 との意識がこみ上げて来た。
この家の主、樋口庄蔵に見込まれて書生に住み込む事になった経緯を、多少脚色も加えて得意げに語る。流石に聞き手の二人もいささか鼻白んで顔を見合わせた。
「だから僕は、僕の将来を見込んで一種の投資をする人から学業を出して貰うのであって、決して給料を貰って働く使用人じゃないんだ。……そこの処を、間違えない様にして欲しいな」
健二は、ふと美津子に向かって抗議している様な錯覚に捉われ、思わず声に力が入った。
「でもね。……それだからといって、あなたがこの家の事を何も手伝わないのは困るわ。水田さんがいなくなってから、私達に随分しわ寄せが来ているんだから」
お民は流石に年の功で、やんわりと健二に釘を刺す。しかし若いお清は治まらない。
「あたり前だわ。……第一、人の家に住んでお金を貰ってるんだから、使用人と何処が違うのよ。……今日から早速、私達の仕事を分担して貰いますからね」
むっとして押し黙っている健二に、お清は更に追い打ちをかける。
「御意見が無い様だから、君の仕事を決めて上げるわ。えーっと、先ず庭掃除と水撒き、それから靴磨きに便所掃除……それと、フフフ、いっその事、私達の下着でも洗濯したらどお?」
真っ赤になって言い返そうとする健二を、お民が笑いながら制すると、
「冗談よ、勿論。……山内さん、あなたが余り偉そうに言うもんだから、お清がからかっただけよ。……家の中の事は私達二人でやるから、あなたには外の方をお願いするわ」
こうして、健二の樋口家でのいささか波乱含みの生活が始まったが、早速、次の日に一寸したトラブルが起った。
学業を終えて帰宅後、休む間もなく、庭に掃き水を打ったあと、自分の部屋で今日の講義のノートを拡げて勉強を始めた時、
「山内さん。庭掃除が終ったら、旦那様の靴を出してあるから磨いといて頂戴」
と、台所の方からお清の声である。渋々腰を上げて、玄関の土間にしゃがみ込んで靴にブラシをかけ始める。
コツコツと足音がして、彼の背中でガラリと戸が聞かれ、美津子が入って来た。
通学のセーラー服をピンクのワンピースに着替えて買物に出かけての帰りとかで、大人びた外観からはとても高校生には見えない。
両手に買物の包みを抱え、上機嫌である。
鼻歌混じりに奥へ入りかけたが、何を思ったか引き返して来て、靴を磨いてる健二を上から見下ろした。
「山内、お前なかなか精がでるわね。お父様のが済んだら私のも頼むわよ。よそ行きの靴だから、丁寧に磨くのよ」
昨日から美津子の見下ろす様な態度に、強い反発を感じていた健二は、思わず顔を上げて彼女をにらみつけた。
「僕はあなたの召使いじゃないんだ。自分の靴は自分で磨いて下さい。第一、僕の郷里では、男が女の靴を磨くなんて事は絶対しないんだ」
美津子の顔色がサッと変り、怒りで唇がワナワナと震える。
「使用人のくせに、私の命令が聞けないって言うの? 何よ、偉そうに! 身分をわきまえなさい、身分を!」
「いいわ。今晩、お父様に言い付けてやるから。覚えてらっしゃい」
足音も荒く美津子が奥へ入ると、気配を聞き付けて、お民が台所から出て来た。
「お嬢様を怒らしたのね。バカな事をしたもんね。美津子様は、そりゃあ執念深いんだから……それに小さい時から、昆虫の手足を一つ一つもぎ取って、苦しむ様を見て楽しむ様な残酷な所が有るのよ。きっと、山内さんが泣きを見る事に成るわよ」
果たして、その晩、応接室に呼ばれた健二は、帰宅した庄蔵の前で美津子に散々油を絞られたのである。
「お父様、私は、山内の私に対する反抗的な態度を問題にしているのよ。……靴を磨く、磨かないといった事じゃないの。お父様から良く言い聞かせて欲しいの」
「判った、判ったよ」
庄蔵は、ややうんざりした表情でうなずくと、健二の方に向き直った。
「山内君、君も他人の家で人生修業してるんだ。出来る限り自分を抑えて、波風を立てない様にしてくれんと困るな。……美津子は一応この家の主婦代りなんだから、多少の事は大目に見てやってくれたまえ」
健二は、唇を噛んで黙ったまゝうなずいた。
その後、美津子の部屋へ呼ばれた健二は、椅子に座った彼女の前の床に正座させられた。
美津子は満足気にニヤニヤ笑みを浮かべ、さながら鼠をなぶる描といった風情である。
「いいこと。……床に頭をこすり付けて、あやまるのよ。"昼間の事は、私が悪うございました。どうかお許し下さい"ってね」
美津子の足元に頭を垂れ、どもりどもり、謝りの言葉をつぶやく健二の胸は、やり切れない悔しさで一杯である。
「今度は"私は美津子様のおとこ女中です"って、十回繰り返して御覧!」
勝ち誇った彼女は、続けて更に健二に屈辱を強いた。
「頭が高いわよ。頭が床に付いてないじゃないの。ホラ、こうして上げる」
美津子は足元の健二の頭の上に、スリッパを穿いた足を載せ、ぐっと体重をかける。
「ホラ、ホラ、ホラ。これでどう? 苦しい? 思い知った?」
美津子の足が、健二の後頭部をぐらぐら揺すり、床にぴったり押し付けられた彼の顔面は、麺棒さながらに床面を転がされる。
涙が床を濡らし、思わずウッウッと鳴咽が洩れた。漸く許されて自分の部屋に戻ったものゝ、美津子に頭を足蹴にされ、辱められたショックに、その晩は寝付かれなかった。
それ以来、彼は美津子に顎で使われる様になり、呼ばれただけでもビクリと体を震わす有様だった。
「山内、昨日は私の靴を磨くの忘れたわね。……そうだわ。罰として、今日から女中達の靴も磨きなさい。フフッ、お前の郷里の人が聞いたら、きっとびっくりするわね」
悔しさに目の奥が熱くなったが、あらがうすべもなく、そのうち、お民やお清にも段々馬鹿にされる様になってきた。
二人は女王様
こうして、三ヶ月が過ぎた或る夏の日のことである。
良く晴れた日曜日で、健二は何時もの様に台所で女中達と遅い朝食をとっていた。
口数の少ない彼に構わず、お民とお清は賑やかに喋りながら箸を運んでいく。
先に済ませた彼が新聞を拡げると、横からお清が覗き込んだ。
「あら、"パンティ泥棒の学生つかまる"ですって。一寸、……この大学、山内君の学校じゃないでしょうね」
「違うに決まってるじゃないか。……馬鹿々々しいにも程がある」
「でも可哀そう。退学処分にされてるわ。ねえ、お民さん、このへんには、こんな変態は居ないでしょうね」
「あたり前よ。この辺りは上流の人しか住んでないのよ。安心なさい」
何気ない会話だったが、苦労して通学している彼には、こんな事で退学させられる学生に、ふと同情めいた気持を抱いた。
同時に女性のパンティという言葉に、何か、なまめかしい背筋がドキッとする様な興奮を覚えたのである。
この日は、たまたま女中達の月一回の休みに当っていた。
今日は、庄蔵が海外旅行中。美津子も一週間の予定で高校のグループと海辺へ出掛けて留守の為、健二がひとりで留守居を引受ける事にしたのである。
お民とお清は久し振りに連れ立って銀座に買物に行くとかで、朝食を済ますと早速うきうきと、おめかしにかかった。
支度に手間取って遅くなったと、大騒ぎして二人が出て行った後、健二はホッとして部屋で大の字に寝ころんで雑誌を読み出した。
と、お清が急に引返して来て窓越しに、日傘を置いて行くからと、彼に手渡す。健二は舌打ちして、傘を置きに女中部屋へ行った。
扉を開けると、脂粉の香りがムッと鼻を打ち、なまめかしい色彩が部屋一杯に散乱していた。傘をお清の鏡台の上に置いて出ようとすると、その側にピンクのパンティが、しどけなく脱ぎ捨てたまゝになっている。 思わず頭にカーッと血が上り、震える手でパンティを拾い上げる。
そのまゝポケットにねじ込もうとしたが、今朝のパンティ泥棒の記事がパッと脳裏にひらめき、手がはたと止まった。
持ち出すのは止めて、その場に座り込むと彼はパンティを裏返して見た。
跨間の当る部分が黄色に染まり、その中央に帯状の褐色の汚れが広がって、しかもその表面が濡れてヌメヌメと光っている。
思わずその部分を顔に押し当て大きく息を吸い込むと、ツーンと生臭い香りが鼻孔の奥を刺激する。
お清のその部分を想像しながら、その香りを味わうと頭がクラクラして理性が失われた。
何時の間にか、彼はその汚れた部分を口中に含み、夢中で味わっていたのである。
「フッフッフッ」
女の含み笑いの声が背後に聞こえ、健二はハッとして後ろを振り返った。
そこに、思いがけずお清の立っているのが目に入ると、彼はみるみる真っ赤になった。
「一寸、失礼するわよ。忘れ物したの」
お情はニヤニヤ笑いながら、彼の横をすり抜けると箪笥から財布を取り出し懐に収め、なおもクスクス笑いながら出て行った。
後に残された健二は、頭にガンと殴られた様なショックで、呆然と身動きもせず座り込んだまゝである。
思い起すだに恥ずかしい有様を、事もあろうに当のお清に見られてしまったのだから、健二は文字通り穴があれば入りたい心境だった。
その日は何も手に付かず、唯ひたすらにお清が黙っていてくれる事を祈るばかりである。
その晩、九時近くなって漸く玄関の戸の開く音と共に、お民とお清が声高に話しながら帰ってきた。
「ただ今。……留守番、御苦労さん。……お風呂は沸かしといてくれた?」
お民が顔の汗を拭いながら声をかける。ホッと救われた様な気がして、うなずく。
しかし、ものゝ五分もしない内に、今度はお清が健二の部屋を覗き込んだ。
「山内さん。一寸、応接間まで来て頂戴」
彼女の切口上の口調に漠然とした不安にかられ、落ち着かぬ気持でお清の後に従う。
来客の多い樋口家では、応接セットも皮張りの立派な物で、シャンデリアの照明の中でひときわ鮮やかである。
クーラーのスイッチが入れられていて、入った途端、ヒヤリとした。
「そこへ正座するのよ」
中でソファに腰かけていたお民が、顎をしゃくって目の前の床を指す。
「何だって? 失敬な事を言うと許さんぞ」
健二は思わずカッとなって言い返した。
すると、お清が彼の背中をトンと押す。
「ぐずぐず言わずに、お民さんの言う通りするのよ」
彼は振り返ると、お清をぐっとにらみ付けたが、彼女はビクリともしない。
「何よ、その態度は。偉そうにしたって駄目よ! 何さ、私のパンティ舐めたくせに」
健二は、まるで鋭い刃物で心臓をグサリと刺された様な気がして、思わず一、二歩よろめいた。
もしかしたら、お清が黙っていてくれるかも知れぬとの期待は、やはりはかない夢にすぎなかったのである。
彼はお民の前にぺたりとへたり込んだ。
「ど、どうか内聞にして下さい。ほ、ほんの出来心だったんです」
お清が前に廻り込んで、お民と並んでソファに腰を下ろす。彼はその二人の足元ににじり寄って、その前に手を着き、深々と頭を下げた。
彼としては、これだけ下手に出れば当然許してくれる筈、との計算からの幾分オーバーな演技だった。
「頭が高いわよー」
お清の声がして、突然、彼の頭の上に圧力が掛けられ、額が床に押し付けられる。
自分の頭が、お清の足で踏み付けられていると判るまで暫く時間がかかった。
カーッと怒りがこみ上げ、思わず身体が震える。
「お嬢様にも、こうして懲らしめられてたわね。……ホラ、ホラ、こうされたでしょう。ちゃんと見ていたんだから」
お清の足が、彼の頭をグラグラ揺する。額が床を擦り、美津子の時と違って女中風情に足で踏み付けられる情なさで、胸が一杯になった。
ひとしきりなぶりものにして、彼の無抵抗振りを確かめると、お民が口を切った。
「とにかく、この家にお前の様な変態男が居るのを、黙って見過す訳にはいかないわね。……と言っても、書察に突き出すと樋口家の名前に傷が付くわ。そこでお清さんと相談したんだけど、私達二人で、お前の根性を叩き直してやろうという事になったのよ」
「そうよ。お民さんの言う通り、私達の努力でお前を更生させて上げるわ。……その代り、私達の命令には絶対服従よ。判ったわね」
「当分、お前の態度を見て、旦那様に申し上げるかどうか決めるからね。……それで文句無いわね?」
健二が、力なく頷くのを確かめて、二人は顔を見合わせてニヤリと笑った。
「それでね、そのやり方なんだけど、お民さんの意見で、所謂"逆療法"を採用する事にしたの」
けげんな顔の健二を見下ろしながら、お清は得意顔で続ける。
「つまり、お前はさっき私のパンティを通して、私の女性自身を味わったでしょう。……フフフ、どんな味だったの? 臭いは気に入った?」
彼は赤くなって下を向く。
「そこで、お前にこれから毎日私のおしもを直接舐めさせる事にしたの。それも、うんと汚れたあとを舌で清めるのよ。臭いもたっぷり嗅がして上げる。フフフ、どーお? 感激
した?」
健二は、一瞬耳を疑った。すると今度はお民が続ける。
「それも、お清さんだけじゃなくて私のも舐めるのよ。お前の変態を二人がかりで治してやるんだから、感謝しなさい」
それが、現実のものとなる事をやっと理解した彼は、余りのことに仰天した。
「そ、そんな馬鹿な! そんな事して何になるんだ。僕はただ、好奇心でやったことなんだ。だから出来心だと言ってるじゃないか。僕は変態なんかじゃない。勘弁してくれ」
健二の悲鳴に似た訴えは冷たく無視され、お民が覆いかぶせる様に引導を渡す。
「お前は、好奇心とか出来心とか言ってるけど、それが変態の証拠じゃないの。……諦めて、私達のお仕置を受けなさい。その代り表沙汰にはしないから」
「そうよ。これから毎日、フフフ、私達のおしもを嗅いだり舐めたりしてる内に、女性のパンティなんか二度と見たくもないと思う様になるわよ。……さあ、急だけど、これから早速始めて貰うわ」
お清はソファに腰掛けたまゝ、屈辱に身を震わせている健二の髪を掴むと、その頭を跨間にぐいとばかり引き寄せた。
「今日は暑かったから、うんと汗かいちゃった。お風呂に入る前に清めて貰うわ。最初は臭いからよ」
彼の顔がお清のスカートの中に隠れ、跨間にピタリと押し当てられる。
ムッとする臭気が鼻を襲う。パンティの時とは比較にならぬ強烈な性臭と尿の臭いが、汗で薫蒸され、むせる様である。
それがこみ上げる屈辱感と、ミックスされ、気が遠くなる程のショックに脳髄が痺れた。
「どうなの? 感激して物も言えないの?……さあ、今度は後ろの方よ」
お清は足を彼の肩に乗せ、腰を前にずらすと身体を寝かせ、尻を突き出す姿勢を取る。
彼の顔面は勢い、彼女の尻にまともに押し当てられた。
お清は、更に両足のかかとを彼の後頭部に当て、股を開きながらぐっと手前に引く。
健二の鼻は、哀れにも彼女の尻の中心にピッタリと当てられ、すえた尻臭がいやおうなしに鼻孔に侵入して来た。
つのる屈辱の念に、思わずウッウッと鳴咽が洩れた。
「おうおう、女のお尻を嗅がされて、口惜しいのかい。変態さん。もっと恥ずかしい目に合わして上げる」
お清はそのまゝの姿勢で足を緩めると、彼の顔面を擦る様にしてパンティを脱ぐ。
「さあ、しつかり舐めて奇麗にするんだよ。まず、フフッ、お尻の穴から始めなさい」
お清の足が、とんとんと彼の後頭部をこずいた。情けなさに目の奥がジーンと熱くなったが、反抗する気力はもう彼からは消え失せていた。
思い切って舌を出し、お清のアヌスを下から舐め上げる。
"ヒヤッ"と彼女が一瞬派手な声を立てたが、彼が、幾分やけくそ気味に舌を動かすと"クックックッ"と満足そうな含み笑いが起った。
「お清さん、スカートめくってごらんよ。この男、一体どんな顔して舐めているのか見てやろうよ」
パッと目の前が明るくなり、お清に並んでお民の顔が覗き込んだ。
「アラ、舐めてる、舐めてる。……あんたの一番きたない所を舐めさせられて、一体どんな気持だろうね。アラッ、涙を流してるよ。よっぽど口惜しいんだね」
「口惜しがったってもう遅いわ。ホラ、どんな味? 男として最抵の行為ね。男失格と言った方が良いかしら。……コラ、舌を休めちゃ駄目!……そうそう、その調子よ。これから毎日こうして清めるのよ」
「そろそろ、前の方を舐めさせたら? 私の分も残ってるんだから」
「そうね、一晩中かかっちゃ可哀そうね。コレ、今度はワレ目ちゃんに昇格よ。しっかり汚れを吸い取るのよ」
屈辱の行為が続く。渋味を帯びたアヌスの汚れと異なり、女性自身のそれは酸性のピリッとした味である。
白いトイレットペーバーの破片が黒いヘアーに点々と付着していて、不潔感を誘う。
「もういいわ。御苦労さん。じやあ選手交代よ。私、先にお風呂に入って来る」
お清は案外あっさりと解放してくれた。それでも、時計を見ると三十分以上も彼女の跨間に顔を埋めて屈辱の行為をさせられたことになる。
ところが、お清が去った後、お民の番になるとそうは行かなかった。三十女の濃厚な体臭と飽くことのない貪欲さが、彼を文字通りもみくちゃにしたのである。
お清の時と同様、たっぷり臭いを嗅がされ、舌での清めが一通り終った後、彼の頭はお民の太腿にしっかりと挟まれ、彼女のセックスに舌で奉仕する様に命ぜられた。
彼女の両手が彼の髪をしっかりと掴み、時折彼の顔を強く跨間に押し付ける。同時に言葉で間断なく命令された。
"もっと強く、そう、今度は吸って"
"も少し上よ。そこ、そこをそっと舐めて"
"舌の先を使うのよ。馬鹿、もっと上手に!"
彼女が頂点に達する度に、彼女の太腿がけいれんして彼の頭を締め付けた。
分泌液がとめどなく流れ、命ぜられるまゝにそれを吸う。
彼女の跨間が上下に揺れ、彼の顔を繰り返し擦る。
自分が彼女のセックスの道具として使われていることを意識すると、情けなさが込み上げて新たな涙が流れた。
それからの毎日は健二にとって苦渋に満ちた日々だった。二人は彼をすっかり馬鹿にし切って、顎でこき使う様になったし、例のお仕置も休みなく続けられた。
彼の部屋と隣りの女中部屋の間には締め切りのドアが付いていたが、この鍵が外され、毎晩、彼が床に付く頃になるとコツコツと合図のノックが聞こえる様になった。
みじめな気持でドアを開けると、寝床に入ったお民が手招きする。
足元からふとんにもぐり込むと、お民の手が延びて来て髪を掴み、彼の顔を跨間に挟み込む。
彼女の太腿が彼の肩を抑え、両耳を挟んで舌奉仕を催促する。
連夜、同じ事の連続であった。
しかも、お民は一度では満足しない。執幼に繰り返し奉仕させられるので、毎回一時間を越える事も珍しくなかった。
大抵はもう寝入っているお清が、時々目覚めていて同じ様に奉仕を要求する事があり、二人分の奉仕に舌の付け根を腫らす夜もあった。
朝になると必ず、夢うつつの中にドアのノブがカチャリと鳴るのが聞こえ、ハッとした時には、もうお清が彼の顔の上に尻を据えている。
顔面にかかる重圧と、むせ返る様な尻臭の中で、屈辱の念に包まれながら目覚める毎日だった。
お清は彼の顔を尻に敷きながら、ゆっくりと最近覚えた煙草をくゆらす。尻を時々前後にずらして、尻臭と性臭を満遍なく彼の鼻孔に送り込んだ。
一服終ると尻を上げ、彼の惨めな顔を覗き込みながらパンティを脱ぐ。
含み笑いと共に尻が落下し、舌による清めを要求した。
二人の所謂"お仕置"のやり方には明らかな差があった。
お民が、彼を自分のセックスの道具として使ったのに対し、お清は、彼の精神を卑しめ、辱める事に喜びを感じているかの様だった。
屈辱の姿勢
一週間が飛ぶように過ぎ、美津子が海から帰って来る前日の事である。
カッと照り付ける夏の日差しの中で、庭掃除を終え、玄関の土間で靴磨きにかかっていた健二の前に、台所の方からドヤドヤと一団となって若い女達が出て来た。
皆、近所の女中達で、お清が先頭に立っている。
それぞれ家人が避暑等で出かけた為、昼間から抜け出して来て台所でおしゃべりにふけっていた連中だった。
お民は、丁度買い物に出かけて留守中である。
「これが今話したうちの書生よ。……私の言う事は何でも聞くわよ」
お清が得意げに皆を見回す。
「へえー、この男が変態なの。普通の顔してるじゃないの」
「きみィ、毎日お清さんに、お尻舐めさせられてるんだって? 本当? それでも男なの? 恥ずかしくないの?」
「ね、ねえ。あんた女のお尻だったら誰のでも舐めるの? だったら私のを一度舐めてご
覧よ。ホラ、赤くなった。やっぱり変態だ、こいつ」
卑わいな笑いがどっと起る。
彼は居たたまれず外へ逃げようとした。
「待って。折角みんなが集まってるんだよ。ちゃんと挨拶くらいしたらどうなの?」
お清の言うままに彼は皆に頭を下げた。
「どうか皆さん、よろしくお願いします」
「そうそう、じゃあ、お近付きのしるしに、フフフ、皆さんのお尻を舐めさせて頂きなさい。さあ、そこへ四つん這いになって、一人一人お願いするのよ」
この辱めは、もはや彼の耐えられる限界を越えていた。彼は真っ赤になって皆の軽蔑の視線を振り切る様に、無我夢中でその場を逃げだしたのである。
外で時間をつぶし、頃を見計らって戻って来ると、何も知らぬお民に無断で外出したと散々油を絞られた。お清は、そ知らぬ顔でそっぽを向いている。
しかし次の朝、いつもの様に彼の顔を尻に敷きながら、お清は彼をなじった。
「お前、昨日はよくも私に恥をかかせてくれたわね。覚えてらっしゃい。このままでは済まないからね。コレ、聞いてるのかい?」
彼女が尻を揺すると、それにつれて彼の頭はぐらぐら揺れる。それは彼にとって文字通り屈従の姿だった。
美津子が日焼けで真っ黒になって帰宅したのはその日の午後だった。
そこへ旅先の庄蔵がらの便りで、帰国が十月末になるとの報せである。
あと三ヶ月近くも留守と聞いて、美津子もさすがに心細くなったのか、その晩は土産の魚を料理させ、皆と一緒に食堂で夕食を取る事になった。
「山内、お前、何だか元気がないわね。顔も青白いし、どこか身体の具合でも悪いんじゃないの?」
「いえ、大丈夫です。一寸、精神的に落ち込んでるだけです」
「そおお、それなら良いけど。……それにしてもお民とお清によっぽどしっかり仕込まれた様ね。……さっきから見てると、二人に頭が上がらないって感じよ。女の靴なんか磨けないって威張ってたお前らしくないわ」
お民とお清はニヤニヤしながら下を向き、彼は心持ち赤くなった。
夕食の後片付けまで手伝わされ、漸く解放されて部屋でくつろいでいた彼の所にお清が呼びに来た。
「お嬢様がお呼びよ。フフフ、とっても御立腹だから、うんと油を絞られるわよ」
心当りのないまゝに、不安の気持に駆られ美津子の部屋へ急ぐ。
彼の足音を聞き付けた彼女は厳しい口調で、
「すぐにトイレへ行って、そこのスリッパを取ってらっしゃい。一番汚れたのをね」
何の事かさっぱり判らず、命じられた通り薄汚れたスリッパを一足下げて戻る。
「そこに正座するのよ」
椅子に座った美津子の前の床にぺたりとへたり込んだ彼の脳裏には、かつて彼女の足の下でじゅうりんされた記憶が蘇った。
両手にスリッパを握った彼女は、いきなりそれで彼の頬を張り付けた。
ぐらりと揺らいだ頭を、今度は反対側の手のスリッパが襲う。
いわゆる、往復ピンタである。
「お、お許し下さい。どうして、どうしてこんな目に会わされるのか説明して下さい」
懸命に訴える彼を、冷たい眼差しで見下ろすと美津子は如何にも軽蔑し切った口調で、「判らないの? お前の破廉恥な行為を思い出して御覧。女中のパンティを舐めるなんて、恥知らず! お前みたいな変態はこうしてやるわ」
続いてスリッパの嵐である。彼は本能的に両腕で頬を覆った。
「腕をどけなさい。自分が悪いと判ったら、男らしくお仕置を受けるのよ」
観念して腕を下ろした彼の両頬を、容赦なく彼女の両手のスリッパが交互に襲う。ピシッ、ピシッとその度に派手な音がした。みるみる頬が赤味を帯び、熱を持って来る。
痛みもさる事ながら、年下の若い女性に罵倒され、思う存分痛められる屈辱が精神的な苦痛となって加わり、彼の顔は涙でクシャクシャになっていた。
彼の顔面が、あわれにも赤鬼の様に紅潮し腫れ上がった頃、漸く彼女の手が止まった。
暫く、肩で息をしながら彼を見下ろしていた美津子は、口をすぼめると彼の顔面にペッ
と唾を吐き掛ける。
「いいざまね。そのまゝ犬みたいに四つん這いになって自分の部屋に帰りなさい」
涙に咽びながら廊下へ這い出した彼の尻を、彼女が後ろから足蹴にした。
両頬の腫れ上がった彼を見て、さすがにお民は哀れに思ったか丁寧に湿布を施した上、
その晩の奉仕は勘弁してくれた。
しかし、お清は次の朝、未だ腫れの引かぬ彼の顔に、情容赦無く跨がったのである。
「どおお、少しは骨身に泌みたでしょう。何? 何か言った? そうか、私のお尻で蓋されて声が出ないのね。可哀そうだこと! そうよ、お嬢様に言い付けたのは私よ。でも約束は守って表沙汰にはしてないわよ」
「む、む、む」
「いいのよ。言いたい事は判ってるんだからね。私に恥をかかせると、どんな事になるか
思い知ったわね」
お清は、尻を揺すって健二の屈服を促す。顔面に尻を押し付けられた屈辱の姿勢では、所詮、対等の話し合いは無理だった。
鼻を突く異臭
それから十日程経った日曜日の午後、美津子がお民を連れて外出した後、健二は、主人の留守を狙って集まった近所の女中達の前に引き出されていた。
場所は、玄関横のガレージの中である。
車は、通いの運転手の水田が持ち帰っているので、中はガランとしている。コンクリートの車置場に続いて六畳の控えの間が設けてあり、軒側に大きな窓があるので明るく、風も良く通る。
すでにパンツ一枚の姿にされた彼の首には、隣の家の女中が持参した犬の首輪が穿められている。
四つん這いのまゝ、彼はお清の手に握られた鎖でガレージの中を引き回された。
「ほら、チンチンして、そうそう、今度は三辺回ってワンと言うのよ。クックックッ、ああ、おかしい。とても良くお似合いよ」
プッと吹き出す者あり、腹を抱えてゲラゲラ笑う者ありで、洪笑の渦の中、彼は猿回しの猿よろしく、お清の掛け声にあやつられ、浅ましい犬真似を強いられていた。
「さあさあ、お立会いよ いよいよ、本番、尻舐めの芸とござーい」
どっと、ひとしきり笑い声が高まる。
「ホラ、今度は逃げられないんだから、諦めて、ひとりずつ舐めさせて下さいってお願いするのよ」
お清は、彼の尻をポンと蹴る。
「さあー、誰のお尻から舐めたいの?」
「こっちのお尻は、あーまいぞ。クククッ」
再び爆笑が起る。若い女達になぶり抜かれて、あわれにも、彼はもう目が眩み、半ば正気を失っていた。
何を血まよったか、正面でニヤニヤ笑いながら率先して彼を揶揄していた、小ぶとりの隣家の女中の足許に這い寄って、スカートの中に顔を突っ込もうとした。
「キャー、変態犬!」.
頭がぐいと踏み付けられる。続けて肩を足蹴にされ、仰向けに転がった。そのまゝ胸の上に、どんとばかり跨がられてしまう。
「さあ、まず私にお願いするんでしょう。フフッ、とても破廉恥なお願いをね」
「うっ……ど、どうか、お、お尻を舐めさせて下さい」
彼女はそのまゝ腰をずらして、彼の顔の上に跨がってしまう。
「あらっ、どうして舐めないの? あ、そうかあ、パンティが邪魔だったわね」
スカートを捲ってパンティを下ろすと、
白い大きな尻が露出し、見た目にも茶色に薄汚れたその割れ目に、彼の唇が凌辱されるさまが、皆の視線の前に晒された。
「随分熱心に舐めるわね。さすが、お清さんのお仕込みね。さ、もういいから、どんな味だったか言って御覧。お清さんのと、どちらがおいしかったの? フフフ」
「健二、答えなさい。そしてちゃんとお礼を言うのよ」
お清が、おかしそうに傍から釘を刺す。
「あのお……有難うございました。お味は……お清さんのより少し辛めで……余りおいしくありませんでした」
どっと笑いの渦が湧く。
「さあ、次は私よ。さ、早く」
大柄な初顔の女が、中腰になって彼の方に尻を突き出す。
今度はパンティを口で脱がす様に命じられ、女の尻に顔を擦り付ける様にして悪戦苦闘する。その有様がおかしいと又ひとしきり笑いが起った。
数時間もかかって全員の尻を舐め終り、漸く許されて部屋に戻ったのは、もう夕闇が迫る頃だった。ぐったりして畳の上に横たわると、今しがたの屈辱の光景が次々と瞼に浮か
ぴ、無念さが込み上げて来る。涸れた筈の涙が、後から後から湧き出して来た。
その晩の事である。
夕食後、突然、美津子の部屋に呼ばれた健二は、何か不吉な胸騒ぎを覚えた。
そして、それは直ぐに現実のものとなったのである。
部屋の床に正座を命じられた彼は、今夜も美津子に折かんされるのかと体が震えた。
しかし、お清の意のまゝにされた以上、彼女が美津子に告げ口する筈がない。
黙ったまゝ彼を見下ろす美津子の前で、不安と不審の念が交錯した。
「お前、今晩どうして此処へ呼ばれたか判ってるの?」
「…………」
「私、見たのよ。……今日の午後お前がどんな破廉恥な行為をしたか、覚えているわね」
「…………」
「私、思わずへどが出そうになったわ。……お前って人間は、普通のお仕置じゃこたえないのね。今晩は一生忘れない様な目に会わせて上げる。世間に恥を晒したくなかったら、おとなしく言う通りにするのよ」
健二は唇をかすかに震わせたが、言葉にならない。あの光景を見られた以上、どんな弁解をしても役に立ちそうもなかった。
「両手を後ろへ回すのよ。お仕置の間あばれない様に手を縛っておくの。……そうそう、それでいいわ。あら、お前、震えてるのね。心配しなくてもいいのよ。今日は痛い事はしないから。本当よ」
美津子は細紐で彼を後手に縛り上げると、次に椅子を持ってきて、正座している彼の胸に触れる位置に据えた。
美津子がその椅子に腰かけ、彼の両肩に太腿をかけると、彼の顔は彼女の股の間に挟まれた形になった。
彼の目の前に、彼女の花模様のパンティに包まれたデルタが迫り、彼の顔に触れんばかりである。むせる様な香りが鼻を衝く。
捲り上げたスカートの縁から、彼を見下ろす美津子の顔が、丁度、大仏を下から見るように映った。
「良いもの見せて上げる。フフフッ、目が潰れない様に御用心」
彼女は彼の鼻の先で、ゆっくりとパンティを脱いだ。ヘアーに縁取られたクレバスが惜し気もなく目前に露出する。
と、その肉ひだから一本の糸が垂れているのが目に入った。
「クックッ、判った? その糸の先をくわえて引くのよ」
彼の視線を追っていた美津子の指示通りにすると、秘肉の間から赤く変色したタンポンが、ずるずると引き出された。
それは、彼にとって生まれてはじめてのショッキングな光景だった。タンポンは、ぽとりと彼の鼻先に落ち、肉ひだの合わせ目にうっすらと赤いものがにじんだ。
「どお、これが女のアンネよ。お前は今からこれを味わうの。さ、そこのタンポンを口に入れなさい」
彼女は、さすがにためらいを見せる彼の髪を掴んでぐいと引き、椅子の緑に転がったタンポンの上に彼の唇を押し付けた。
続いて髪が下に引かれ、彼の顔は仰向けになる。唇からタラリとその糸が垂れているのを見て、美津子はニヤリとした。
「唾を出して、口の中で洗濯しなさい。そして良く味わうの。……昔から女の汚れ物と言って男達が軽蔑していたもの、それをお前が今、口にしているのよ。……どお、どんな味? そしてどんな気持がする?」
それは、彼にとって残酷な刑罰であった。
口の中に拡がる塩っぽい苦味もさることながら、女の汚れを口にさせられ美津子の軽蔑の視線の下で味わされている屈辱の苦味が、彼の心に鋭い痛みを感じさせた。
「もういいかしら?」
彼女は、彼の顎に垂れている紐をツイと引く。唇の間から薄いピンク色の綿の塊りが顔
を覗かせ、ツルリと外へこぼれた。
「もっと白くならないの? しょうがないわね。あとは直接吸いなさい」
彼女は腰を前へせり出すと、彼の口をクレバスでぴったり覆う。毎晩お民に奉仕させら
れている経験を思い起し、舌で肉ひだをかきわけ、唇を割り込ませる。
プンと鼻を衝く異臭をこらえて、思い切って吸い込むと、意外に多量の汚物がズズーッと口中に満ちた。
濃い塩味に酸味が加わって咽喉を刺し、思わず"ウウッ"とうめきが漏れる。情けなさに涙がツーと頬を伝った。
繰り返し彼女の跨間が健二の唇に押し付けられ、その度に、新たな赤い汚液が彼の口腔に注入された。
「さあ、その辺で勘弁して上げるわ。口直しに私のお水を飲みなさい。……でも、少しでも零したら、何回でも続けて飲ますから覚悟するのよ。ホラ、大きく口を開けて!」
催眠術にでもかけられたかの様に、トロンとした目で、言われた通り開けた口に、汚水がチョロチョロと注ぎ込まれる。
それが次第に勢いを増し、必死でゴクリゴクリと咽喉を鳴らして飲み込むが、一部が彼の首を伝って胸を濡らした。
「やっぱり零したわね。……いいから後を清めなさい」
唇と舌で濡れた肉ひだを吸い、そして舐め清めた。
「臭いわぁ。もう下がってもいいから、今度は明日の朝、七時頃、そこのトイレの前で待っていなさい。これからはね、毎日、私のお水を飲むのよ。全部飲めたら、その日は一回で勘弁して上げる。でも少しでも零したら、何回でも飲み直すのよ」
今夜も四つん這いで帰る様に命じられ、すごすごと廊下を這い進むと、どうやら部屋の外で様子を窺っていたらしい、お民とお清にバッタリ出会った。
「どうしたの? 何をされたの? あらっ、この臭いは何! まあ、判った。お嬢様にオシッコをかけられたのね」
お民が頓狂な声を出す。
一方、お清はクスクス笑いながら、
「かけられただけじゃなさそうよ。きっと飲まされたのよ。お前、そうでしょう。お嬢様に便器にされたんでしょう?」
健二は黙ってうなずく。悔やし涙がポタポタと床に落ちた。
「とうとう落ちる所まで落ちたわね。変態書生の末路かぁ。さ、早く身体を洗いなさい。今晩は、お民さんだけじゃなくて、私もお前の舌を使って上げる」
翌朝、言われた通り、美津子の部屋近くのトイレの前で、ぼんやりたたずんでいる彼の姿があった。昨夜は深夜まで、二人の女中のセックスに奉仕させられ、舌の付け根がうずいている。
バタンと戸の開く音がして、ネグリジェ姿の美津子が現われた。彼を見て、一瞬、不審そうな色を見せたが、すぐ思い出してニヤリとする。
「御苦労さん。でも便器が二本足で立っているのはおかしいわ。さあ、中へ入って仰向けに寝なさい。顔の上に跨がって使って上げるからね。明日からはこの姿勢で待つのよ」
彼女の朝尿は、昨夜と異なり味が濃く、しかも、しつこい臭みが際立っていた。
顔に跨がられた屈辱的な姿勢を充分意識する暇もなく、次々と注ぎ込まれる汚水を懸命に飲み込んだ甲斐あって、首尾よく一滴残さず口に収める事が出来た。
しかし、彼の舌で清めさせた後、腰を上げた彼女の跨間から、どうした事かポタポタと雫が垂れた。清めが不十分だと叱られ、その罰に、もう一度飲み直しを命じられる。
明らかに彼女が故意にやった事だが、それをなまじ咎めたばかりに、怒った彼女に、大便の後まで舌で清めさせられたのである。
「どおお、悔しい?……これで、お前は私の排泄物を全て味わった訳ね。私に逆らったらどうなるか、良く判ったでしょう」
その日は、その後、昼前に一回、そして午後に二回、合計四回も彼女の跨問に敷かれ、便器としての勤めを強制された。
それも午後の分は、縁側で女中達が見ている前での屈辱である。しかも彼がいくら零さぬ様に努力しても、彼女が尻を揺すって零す様に仕向ければそれまでで、彼は悔し涙に暮れながらやり直す外なかった。
悪魔の電話
それからというものは、美津子と二人の女中に朝晩なぶられる生活が続く。
ことに美津子の"お仕置"はエスカレートする一方だった。
お民とお清への晩のセックス奉仕も、その内、露見してしまう。
美津子はそれを中止させる代りに、自分にも同様の奉仕を命じた。……しかも女中達の前にである。
従って、彼は最悪、ひと晩に三人に使われるケースを経験する羽目になった。
幸い、若い美津子とお清は三日に一回程度の欲望処理だったが、三十女のお民は毎晩、それも長時間の舌奉仕を要求した。
しかも、彼が毎月美津子のアンネを吸わされているのを知ってからは、臆面もなく血染めの奉仕をも彼に強いた。
お清は寝起きに彼の顔に尻を敷きながら、煙草を一服くゆらすのを毎朝の習慣にしてしまった。しかも、彼が毎日、美津子の汚水を飲まされる様になってからは、別に対抗意識という訳ではないが、先にトイレに行った後、拭かずに彼の顔に跨がり、清めを要求するようになった。
前の方の汚水を唇と舌で吸い取るのには慣れたものの、アヌスにべったり付いた、異臭を放つ褐色の糊にはさすがに泣かされた。
美津子に、一度強制された経験はあったものの、女中風情のお清に、しかも毎日の事である。健二が身を震わせて嫌がるのを見て取ると、お清は面白がってわざと汚れをひどく付けて来ては、彼の唇に押し付けた。
九月の新学期が始まっても、庄蔵の帰国が十一月に延びたのを良い事に、樋口家での彼の転落した立場には変化なかった。
彼が学校から帰ると、すぐに美津子の部屋に挨拶に行く。
彼女の気分によっては、その場でなぶりものにされる。
「ホラ、お菓子を上げるから、チンチンして御覧。そうそう、それ、御褒美」
彼女の薄汚れた足の指に挟まれたビスケットを、四つん這いで口にさせられるみじめさ、それにも増して、その後、その黒ずんだ足裏を舐めて清める様に命じられた時の情けなさは、ひとしおである。
彼女の汚水は、場所を問わず彼の咽喉に注がれる。もう、零しても零さなくても、毎日何回となく飲まされ、多い日には五、六回にも及んだ。
彼が部屋で机に向かっている時にも、美津子は遠慮会釈なくズカズカ入って来て、彼の髪を掴んで引き倒すや、顔の上に跨がって汚水を飲ませる。
彼を更に耐え難くしたのは、美津子が、家に遊びに来る常連の友人達の前で、彼をなぶるようになった事である。
中学時代からのクラスメートで特に親しい女友達が近所に三人居り、何かにつけて集まっては、おしゃべりするのが常だった。
或る日、美津子の命で、応接室にお茶を運ばされた後、その場に残る様に言われたのが発端である。
盆を片手に所在なげにソファの横に立たされている彼を、三人がジロジロ見る。
皆、いわゆる良家の子女で、陽気な屈託の無さと旺盛な好奇心、それと上流階級の子女
特有の高慢さが共通していた。
平均以上の美女揃いで、何れもグラマーな姿態を競っている。
「これが、うちの書生で山内健二。ちょっと、変った趣味の持主よ。……それはね、フフフ、女のパンティを舐める事。……ホラ、お前の口から皆さんに説明して御覧」
突然、皆の前でスッパ抜かれて、彼は真っ赤になった。
さすがに、令嬢達の前で自分の破廉恥な行為を述べる訳にもいかず、うつ向いて押し黙るしかない。
「まあ、赤くなってるわ。でもこの男が美津子のパンティを舐めたなんて、ちょっと想像出来ないわね」
「違うのよ。私のならまだ許せるわ。女中の部屋に忍び込んで、汚れたパンティを舐めている所を見つかったのよ」
「まあ、いやらしい!」
「それからが傑作なの。罰として、うちの二人の女中に今でも毎日お仕置されてるのよ。
それも、ぶたれたり叩かれたりするんじゃなくって、汚れたあそこやアヌスを舐めさせら
れてるの」
「あきれた! この男それでも大学生なの。よっぽど変態なのね、きっと」
皆が、改めて彼の顔を覗き込む。
彼は、身の置き所の無い恥ずかしさに、耳まで赤くなった。
「美津子はこの家の主婦がわりでしょう。こんな変態書生をよく許しておくわね」
「フフッ。御心配なく。勿論、毎日お仕置してるわ。コレッ、どんなお仕置か、お前の口から言うのよ」
彼女の厳しい声音に、彼も観念してポツリポツリ、口を開く。
「み、美津子様には……毎日……お、お小水を、飲ませて頂いています」
三人は、意口同音に驚きの声を洩らした。
「お前、男のくせに、美津子のオシッコまで飲まされてるの? あきれたぁ」
「それだけじゃないのよ。アンネも口にするわよ」
「ひやぁー、まるで豚だわ。よっぽど意気地無しね、この男。みんなで、もっといじめてやろうか?」
「賛成! だけど今日はマージャンするんじゃなかったの?」
「勿論、するわよ。ゲームしながら、いじめる事だって出来るわよ」
若い女性特有の残酷さに、群衆心理が加わって、無抵抗の男をなぶるのも一種のゲームと考えている。
「こっちへ来るのよ!」
四人の女性に従って、すぐ隣の六畳間に移った。
マージャン卓と座布団を並べ終ると、牌を出して親を決める。
そこで美津子が振り返って、ニヤニヤしながら彼を手招きした。
「ここに仰向けに寝るのよ。そこじゃないったら! 頭を座布団に乗せて、足を外に向けるの。そうそう、それでいいわ」
最初に親になった美津子が、無造作に彼の顔の上に座った。
急に目の前が真っ暗になって、顔面に圧力がかかる。
ムーッとする尻臭が、パンティを通して鼻腔に満ちた。
若い女達の視線に晒されながら辱められているとの意識が、彼の脳裏にめくるめく転落感を焼きつける。
呼吸を確保するために、あわてて口を開く。この姿勢は、毎朝お清の尻に敷かれている時と同じだが、今度はずっと時間が長い。
しかも、親が変る度に、次ぎの親の尻の下に移動する様命じられた。
何という事はない。彼の顔が座布団代りに使われ、女達全員の尻臭を嗅がされる羽目になったのである。
それだけではなかった。美津子は、一荘目が終ると、今度はパンティを脱いで、裸の尻でじかに顔に跨がって来た。じっとり湿った尻割れが彼の鼻と唇を包み込んで屈辱の世界
に引き入れる。
「何してんの。豚は豚らしく、舐めなきゃ駄目じゃないの! クックックッ」
含み笑いと同時に尻が揺れ、粘膜の部分が彼の唇を擦る。慌てて舌を伸ばし、唇を突き出す様にして、ねっとりとした粘膜の表面を撫で、水分を軽く吸い込む。
「そうそう、上手じゃないの。お前はこういう破廉恥な奉仕がピッタリね。その味を良く覚えるのよ。そして、みんなの一人一人の味と比較しなさい」
こうしてゲームが進み親が変るに連れて、彼の唇には、次々と汚辱の刻印が重ねられて行ったのである。
それ以来、彼女等は集まる度にお喋りに飽きると健二を呼び出し、彼をなぶったり辱めたりして楽しむ様になった。
彼がこの様な状況で学問が出来る筈がなかった。
精神状態も段々おかしくなって来て、ノイローゼ気味になる。
遂に意を決して、彼はある夜、身の回りの物をまとめて、樋口家から逃亡したのである。
会議室の窓には、もう夕闇がしのび寄り、外では家路に急ぐ勤め人の姿が増えてきた。
細長い会議机の上にはコップや灰皿が雑然と残っているが人影は見えない。
「課長、山内課長、此処だったんですか。いやぁ、あちこち捜しましたよ」
窓際で十五年前の苦い回想に耽っていた健二は、ハッとして我に返った。
「いや、一寸考え事をしてたんだ。……何か急用かね?」
「いえ、でも明日の予定表を見ておいて欲しかったものですから」
「よし、じゃ席へ戻ろう」
企画課長のデスクの上には、僅かな時間の内にもう書類が山積している。
健二は、精力的に次々とそれ等を処理して行った。
と、電話が鳴る。
左手で受話器を掴み、無意識に右手がメモをまさぐる。
「はい、山内さんね。私、先程お目にかかった樋口美津子。さっきは余り突然で、何もお話し出来なかったわね」
どうして、美津子が此処の電話番号を、と一瞬、いぶかしく感じたものの、名刺を渡した事を思い出し、"しまった"と心の中で舌打をする。
「あ、あの、何か御用でも……」
「フフフ、周りに人が居るのね。一度ゆっくりお話したいの。折入ってお願いしたい事もあるしね。明日の晩でもいかが?」
「明日は仕事があって、どうも……」
「あらそう。じゃ明後日の夕方七時に、今日お会いしたレストランで。いいわね」
半ば押し付ける様な強引な話し方は、昔とちっとも変っていない。
「で、でも、予定が……はっきりしないんで、約束しても……行けるかどうか……」
「あらっ、まさか又逃げる気じゃないでしょうね。今度は居場所が判ってるんだから、そうはいかないわよ」
「ふふっ、心配しなくてもいいのよ。まさかとって食おうっていう訳じゃないんだから。……じゃ、いいわね。きっとよ」
カチャリと切れてからも、しばらく彼は呆然と受話器を握ったまゝである。
昔の悪霊が、突然蘇って取り付いて来た、そんな感じで頭が一杯になると同時に、明るかった前途に黒雲が湧き出した不吉な予感に、彼は思わず身震いするのだった。
屈辱写真
美津子から一方的に押し付けられた約束の日の夕刻、彼は何度かためらった末、待ち合わせのレストランへ重い足を運んだ。
昼食時の賑わいには及ぶべくもないが、それでもかなりの客が入っていて、空いたテーブルは数える程である。
約束の七時には未だ二十分近くあった。どこか静かなコーナーの席でもと、目で追いつつ奥に進む。
「山内さん。ここよ!」
と、横手から美津子の声。先を越されていささか軽いとまどいを覚えたが、健二も覚悟を決めて美津子の前に腰を下ろす。
「随分早く来ていたんですね。食事は未だでしょう。……私も会社の帰りなんで、宜しかったら御一緒にどうですか?」
「フフフ、勿論そのつもりよ。……ところで、先日は見違えたかと思ったけど、こうして見るとあなた、昔とちっとも変ってないわね」
「美津子さんは変られましたよ。昔より一段と奇麗になって。……勿論、結婚されたんでしょう?」
「一応はね、でも別れたの。父の政界での実力を当てにしていた人だったから、もともと愛情なんか無かったのね。父が死んでからは、とたんにギスギスし出して、一年前に離婚したわ」
「それで洋裁店を始めたんですか。……でも新宿にお店を出している位なら、きっと成功したんですね」
「フフフ、御想像にまかせるわ」
高価そうなワインカラーのスーツに派手なフリルのブラウスが覗き、大きなジルコンのペンダントが胸を飾っている。
垢抜けた姿形は洋裁店のマダムとしては当然だが、手にした輪入物のバッグを始め、一見して高価と判る装身具にもリッチな雰囲気が漂っている。それにも増して、彼女のあでやかさは出色だった。
頬のあたりが昔よりふっくらし、エキゾチックな顔立に成熟味が加わっている。キラキラ光る大きな瞳でじっと見つめられると、思わず吸い込まれそうな魅力があった。
夕食の間は、何となく当りさわりのない会話が続いたが、食後のコーヒーが来ると彼女は改まった表情で切りだした。
「あのね、電話でも言ったけど、ひとつお願いがあるの。ある雑誌社から特殊な衣装のデザインを頼まれたんだけど、男のモデルが要るの。それも中年男に限るのよ」
「相手の若い女のモデルは居るんだけど、中年男でモデルをやってる人なんか、めったにないわ。そこで物は相談だけど、健二さんにその役をやって頂く訳に行かないかしら?……お手間は取らせないわ。ホンの一日か二日、それも週末を利用して貰って良いのよ」
美津子は煙草をとり出すと、紫色にマニキュアした形の良い指に挟んで、健二に向かって催促するように顎をしゃくる。
思わず目の前のマッチを掴み、火を点けたものゝ、如何にも女主人に対する下僕の様な態度だったと気付き、彼は心中舌打ちをした。
彼女は、満足気にニヤリとして椅子により掛かり、フーッと煙を吐く。ジーッと彼の表情を見つめる美津子の顔には、かっての高慢な若き日の面影がそのまゝ浮かんでいた。
「急に、モデルだなんて言われたって、困りますよ。……第一、私にはそんな経験はありませんからね」
「あら、経験なんて要らないわ。……それに君の性格にピッタリの衣装だから、きっと地のままでやれるわよ」
「一体、それはどんなデザインの衣装なんですか?」
彼女はバッグから小さなノートブックを取り出すと、おもむろにそれを彼の目の前に置いた。
「ちょっと、化粧室へ行って来るわ。その間に良く見ておくのよ」
彼女が立ち上がると、フワリとあたりの空気が揺れ、上品な香水の香りが漂う。
残された彼は、何気無くノートブックのぺ−ジをめくった。とたんにドキッとする様な衣装スケッチが展開する。
そこにはブーツを穿き、太腿を大胆に露出した度のレオタードを着けた女性が、鞭を手に立っており、その足元にマスクをすっぽりかぶり四つん這いになった男が描かれている。
男の下半身には、これも皮製と覚しいパンツがピッ夕リと喰い込んでいて、その尻のあたりには大きな穴が開けられ、露出した双球の部分には、鞭のあとと覚しい条痕まで描いてあった。
跨間には、別に開けられた小さな穴から怒張が突き出しており、その根元に着けられた細い鎖が女性の手に握られている。
それは、あたかも彼の未来の姿を暗示しているとも取れ、思わず背筋が寒くなった。
「如何が? 君にピッタリだと思わない?」
びくりとして振り返ると、何時の間にか彼女が背後に立っている。
「そのまゝ動いちゃ駄目よ。……君に昔を想い出させて上げるから」 彼女の手がスッと伸び、何やら柔かい布のような物で彼の口を覆う。
ツーンと鼻に強い臭気が襲った。
アンモニア臭の混じったそのすえた匂いは、まぎれもなく遠い昔に毎日嗅がされた、あの女性の跨間の香りである。 彼女が自分の顔に当てているのが、彼女のパンティである事を悟ると、彼の心には強い当惑と同時に、昔味あわされた屈辱の数々が鮮やかに蘇っていた。
「口を開けるのよ。早く!」
彼女は周囲に気を配りながら、小声で鋭くささやく。
思わず開いた彼の口に、そのパンティがぐっと押し込まれた。
「口から出しちゃ駄目よ。フフッ、そのまゝ味わうのよ」
頬を膨らませて目を白黒している彼の顔をニヤニヤ笑いながら見下ろして、彼女はゆっくりと席に戻った。
「どう? 何だか昔に戻ったみたいね。……それで、もしあなたが断わった時にはこの写真が物を言うのよ。ホラ、手に取って良く見て御覧」
それは、なんと書生時代の彼が、美津子になぶり者にされている写真であった。
何時の間に撮られたのか記憶がないが、そこには四つん這いになって彼女の足を舐めている彼の姿や、彼女の尻の臭いを嗅がされている彼の顔が、はっきりと写っている。
明らかにそれは彼にとって"止め"だった。
がっくりして写真を見つめている彼を、勝ち跨った表情で眺めながら彼女は、
「承知するわね。じゃ、今週の土曜の朝九時に、このメモの地図に書いた私のお店に来てちょうだい。フフフ、きっと忘れられない日になるわよ」
「…………」
「あ、そうそう、君の口の中の物は、その時まで頂けておくわ」
彼女が去った後も、健二はしばらく呆然として身動きもしなかった。
"とうとう、捕まってしまった"
無念さと、いまいましさが心の中で渦巻き、口の中に詰め込まれたパンティがみじめさをかき立てる。
ハッと我に帰ると、あたりを見廻し慌てて彼女のパンティを吐き出した。
唾をたっぷり含んだそれを手にすると、改めて情けなさに思わず目尻からツーと涙が零れた。
再度の転落
共立商事が週五日制を採用してからは未だ日が浅い。
山内も、関西の本社に居た時は、休みとなった土曜日も自発的に出社して仕事をするのが常だったが、ここ東京では殆どの取引先が土、日を休むため、郷に入っては郷の例えで、社員は完全休養をとる事にしている。
単身赴任の彼は月に一回、本社に出張の際に家族に会うのみで、週末は大抵ひとりで好きな釣りにでかける事が多かった。
その土曜日も朝からカラリと晴れ上がった釣り日和だったが、美津子との約束を破る訳にも行かず、彼女のメモを頼りに新宿を訪れたのは指定の九時少し前である。
目抜きの高級商店街の中に、こじんまりした構えながら、しゃれた雰囲気の彼女の洋装店がすぐ見付かった。
小さいながら独立した五階建のビルになっていて、落ち着いた茶色の棟瓦パターンの壁に、フランス風の窓があしらってある。
明るいショーウィンドーには、色とりどりの婦人服が飾られ、入口近くには華やかなアクセサリーのコーナーが設けられていた。
透明な自動扉を入ると奥は意外に広く、あちこちに鏡をあしらった飾り付けが高級感をかもし出している。
「あら、いらっしゃい。……時間ピッタリね」
店の奥から現われた美津子は、深みのあるブルーのツーピースに鰐皮のベルトをアクセントにして、流石に垢抜けしたマダム振りである。
「雑誌社の人が少し遅れるって、今電話があった所なの。とりあえずお店の中を御案内するわ」
美津子の後に従って店の裏手に入ると、そこには、ゆったりした空間を持った応接室と和風の居間が設けられている。階段の横には小さなエレベーターまで付いていた。
二階へ上がると、ガラリと雰囲気が変り、そこは広い仕事場である。大きな裁断机やミシンが幾つも置かれ、若い女性の従業員達が忙しげに立ち働いていた。
健二が美津子に連れられて足を踏み入れると、一斉に女達の視線が集まった。
「紹介するわ。この人が山内健二さん。今日のモデルになってくれる人よ。……健二さん、これが、うちの従業員、左から恵子、道子、幾代、里子、ひろ子の五人。みんな昨年、高校を出てここに勤めている人達よ」
「山内です。宜しく」
律儀に頭を下げた健二の態度が、幾分バカ丁寧すぎたため、女の子の中からクスクス笑
いが起って健二をドギマギさせた。と、同時に初対面の屈託が取れて、座が和んだ。
「マダム、この人が、先日お話を聞いたマダムの家に昔いた書生さんですの?」
皆の中で一番大柄な恵子が問いかける。
美津子がうなずくと、皆が顔を見あわせて一斉にざわついた。
「じゃあ、この男が、あの写真の変態男なんですね。ひゃあー、気持悪いわー」
色白の幾代と呼ばれた子が、ひょうきんな調子で声を張り上げた。
「本当にこの人が、マダムのおしっこを毎日飲んでいたんですか? 人は見かけによらないわねー」
すぐ近くで、ミシンを使っていた丸顔の道子が、いかにも信じられないといった表情で、しげしげと健二を覗き込んだ。
慌てたのは健二である。まさか美津子が、彼女等に彼の恥ずかしい写真を見せたり、昔の彼の事を話したりしているとは、思いもかけない事だった。
「ひ、ひどいじゃないですか、美津子さん。こんな関係の無い人達に私の事を知らせるなんて!」
恥ずかしさと怒りに思わず真っ赤になって、懸命に抗議する健二の顔を、ニヤニヤ笑いながら見据えた美津子は、
「あら、そんな事、私の自由じゃないの。第一、この人達が君に関係が無いなんて、どうして判るの? フフフ、これから大いに関係があるかもよ」
美津子の真意を計りかねて、思わず健二は黙ってしまう。
「さあ、上へ行って準備するのよ。あなた達も、今日は仕事はもういいから、見物がてら手伝ってちょうだい」
美津子は女の子達に挟まれる様にして、三階に上ると、フロアの半分近くを占める広々としたスタジオがある。天井から幾つもライトやマイクが吊るされ、小視摸な映画撮影スタジオといった所である。
「此処は、今日ここへ写真を撮りに来る人達にずっと貸切りにしてるのよ。あと、この上
の四階は従業員の宿泊に使ってるし、五階は全部私のプライベートルームなの」
美津子がライトのスイッチを入れると、パッとあたりが浮き立ち、かすかに換気扇の音が聞こえて来た。
「さあ、何をぐずぐずしてるの。早く服を脱いで、この衣装を身に着けるのよ!」
ポンと包みが床に投げられ、はずみで解けて、中からはみ出した首輪や革のパンツが、ライトの中に浮かんだ。
しかし美津子だけならともかく、見知らぬ五人の若い女性達の前では、さすがに彼も二の足を踏んで立すくむばかりである。
「どうしたの? 服を脱がないなら、皆で無理矢理にでも裸にするわよ!」
美津子の叱る様な激しい口調に、健二も諦めざるを得ない。衣装を抱えて部屋の隅に行
き、女達の視線を気にしながら、その恥ずかしいコスチュームを身に着けて行く。
「あらっ、これを忘れたわ。あなた達の中で誰か、自分の手で彼のものに穿めてやって頂戴。ひろ子さん、あなたどう?」
美津子は、鎖の付いた小さな革のリングを人差指に掛けて、これ見よがしにかざして見 せた。
「いやー、気持悪いわー。マダム、勘忍!」
美津子の傍に居たひろ子は、大袈裟に手を打ち振って後ずさりした。
しかし五人共、彼から終始目を離さぬところを見ると、如何にも興味に駆られている風情である。
「仕様がないわね。じゃ、私がやるわ」
美津子は、ツカツカと健二の傍へ歩み寄ると、丁度黒革のパンツを穿き終えた彼の跨間に手を延ばした。
「駄目ね。やり難いわ。四つん這いになって。股を開いて。そうそう、それでいいわ」
もぞもぞと彼の跨間で美津子の手が動き、やがて鎖がぐいと引かれて、彼は四つん這いのまゝ部屋の中央へ引き出された。
キラキラ光る金具を打った幅広の首輪は、鎖さえ付いていなければ、アクセサリーの一種かと思わせるきらびやかさである。
上半身は裸だが、下半身を覆う黒い革のパンツは、ボトムレスになっていて尻は丸出し。
前の方に開けられた小さな穴からは、男性のシンボルが垂れ、その根元には先程の細い鎖付きの革リングが穿められている。
「ホラホラ、こっちへおいで。そうそう、まるで犬そっくりね。……フフフ、お前のこの姿を皆に良くみて貰いなさい」
二本の鎖を繰りながら、美津子は四つん這いの健二を引き回して、皆の前を一周させた。
若い女達の好奇の視線を身に浴びて、みじめさで頭の芯がしびれる思いである。
「おやおや、元気が出てきたようね。ホラ、こんなに大きくなって」
美津子はハイヒールの先で、彼の一物をトントンと突く。その部分は益々硬さを増して吃立した。
「皆さん、こいつが生まれついての奴隷だという事が良く分かったでしょう。マゾの男というのは、こうして女性に辱められると興奮するのよ。……撮影が終ったら、皆でなぶり物にしてやりましょうよ」 思わず抗議しようと顔を上げた彼の首筋を、美津子のハイヒールがぐいと踏み付ける。
とたんに彼は尻を上げたまま、顔を床に押し付けられ、がま蛙のように、その場に這いつくばってしまった。
その不様な有様に、周囲から思わずクスクス笑いが洩れた。
あまりの悔しさに、思わず目がかすみ、続いて涙がにじむ。
しかし、もう首筋に加えられた彼女の体重をはね返す気力もなく、ただ彼女に征服されている我身を、そして再び転落の道を辿るであろうこれからの運命を心に刻まされていた。
小水拝受
「おやおや、もう演技スタートですか。いやあ、マダムにも是非モデルになって頂きたいですな。凄い迫力だ!」
突然、後ろから男の声がし、続いて数人が階段を上がって来る音がした。
「いやだわ。……あなた達があまり遅いから、先に準備していたところよ。さ、選手交代しましょう」
スーッと首筋が軽くなり、あわてて身を起こす。ライトに眩んだ目に、おぼろげに闖入者達の姿が浮かんだ。
カラフルな、思い思いのラフな服装の連中が五人、その内二人は女である。
気障な黒眼鏡をかけた男がリーダーらしく、後から上がって来た大きな三脚付のカメラをかついだ中年の男と、両手にアルミのトランクを下げた小柄な若者にあれこれと指図をしている。
女の方は二人共かなりの美人で、年の頃は二十代半ばだろうか、派手な化粧をした、一見、バーのホステス風の女達である。
「蓮見さん、これが、今日の男モデルよ。……昔は私の家で書生をしていた男で、その時に私の奴隷として仕込んであるから、遠慮なく使って頂戴。……ホラッ、皆さんに御挨拶するのよ」
美津子は、未だ床にへたり込む様に座っていた健二の顎の下にヒールの先を入れると、グッと彼の顔をこじ上げた。
涙の跡が乾いて縞を作り、観念したとはいえ、無念さの残る表情がライトに照らされ皆の前に晒された。
「やあ、しつかり頼むよ。書生さん。……俺達はこの世界じゃ名の通ったプロダクションのチームさ。元々雑誌のグラビアが専門だが、この頃じゃポルノ写真や裏ビデオの方に転向したって訳だ。SM物は得意中の得意だから、安心して任せときな」
「フフフ、随分ひねた書生ね。とにかく、今日は私達二人で、たっぷりなぶってあげるから覚悟しなさい」
蓮見と呼ばれた男に続いて、仲間のホステス風のモデル役の女が話しかけながら近ずいて来て、彼の顔を覗き込む。
もう一人の女がニヤニヤしながら美津子から鎖を受け取って、細い方をツンツンと引く。
健二の跨問の物がブラブラと揺れ、どっと笑い声が湧いた。
「私は朱実、今鎖を引いているのが麻紀よ。SMクラブで毎日男をいじめているのよ」
朱美は、フロアに両手を着いて四つん這いになった彼を、高慢な表情で見下ろした。
「さあ、始めるぞ。みんな用意するんだ」
カメラが据えられ、ライトの方向の調整が終ると、衣装を着けた二人の女のモデルが登場する。
露出度の大きいビキニ水着スタイルの黒皮のコスチュームに、編み上げのブーツを穿いた女達は、早速健二を挟んでポーズを取った。
アイマスクを付けた彼の顔の両頬を、背中合わせになった二人の女の尻が挟み込む構図に始まり、騎馬スタイル、顔面騎乗と様々なシーンのショットが、次々と撮られて行く。
皆の前で女になぶられ、それを写真に振られる……それは健二にとって勿論初めての経験であり、時折起こるクスクス笑いに、頭の芯に泌みるような屈辱感を味あわされた。
あっという間に時間がたち、昼の休憩になった。
近くの仕出屋から配達された折詰が皆に配られ、壁際に並べられたソファに思い思いに腰掛けて腹ごしらえにかかる。
「皆さん、お茶をどうぞ。……あらっ、お弁当、奴隷のモデルさんの分がなかったのかしら?」
大きな盆でお茶を給仕して廻っていた幾代が、ふと気が付いてあたりを見回す。
健二はといえば、あわれにも首と跨間からの二本の鎖を引きずって、フロアに取り残されたまゝである。
「いいのよ。彼の分はわざと注文しなかったんだから。奴隷は皆の残り物で十分。そろそろ自分の身分をわきまえさせなくっちゃね」
美津子は彼の方に向き直ると、顎をしゃくった。
もう、すっかり彼を軽蔑し切っているのが、ありありと態度に現れている。
「ホラ、ぼんやりしてないで! これを持って皆さんに残り物を恵んで下さいって、お願いして廻るのよ」
彼女の手から投げられたプラスチックの盆が、コロコロと彼の前に転がった。
「立ち上がっちゃ駄目! お前は、これからは私の前では、いつも四つん這いよ」
膝を立てかけた彼に、美津子の声が追い打ちをかけた。くやしさに、熱い物が喉にぐっとこみ上げてくる。
ソファに腰掛けて食事中の男女の前に這い寄って、盆を差し出しては残り物を乞いながら、彼は自分の姿の余りのみじめさに、目を赤くしていた。
先程からの彼の奴隷としてのモデル振りや、美津子に辱められる姿を目のあたりにしただけに、皆の彼に対する態度は、最早、人間に対するというよりも、むしろ犬や描に対するそれに近かった。
盆の上には食べ残しの魚の皮や、歯形の付いたかまぼこ、食い散らした肉の脂身といった色とりどりの残飯が盛られて行った。
中には彼の目の前で、ニヤニヤ笑いながら、一たん口に頬張った飯を盆の上に吐き出して見せる女もあった。
唾でねっとり濡れて光るそれは、彼に対する軽蔑の証しのようでもあった。
「さあ、皆から良く見える所で、それを犬のように四つん這いのまゝで食べなさい。手を使っちゃ駄目よ。……そうそう、まるで犬そっくり! フフッ、お前に良く似合うわよ」
スタジオの中央のフロアで、食事の終った皆の軽蔑の視線を痛い程感じながら、盆に盛られた皆の、それも唾混じりの残飯に顔を押し付けるようにして舌を伸ばす。そして唇で掬い上げるように口中に吸い込んで行った。
あと命ぜられるまゝに、空になった盆を舌でペロペロ舐め清める。
それは、もし午前中の撮影で羞恥心が麻痺していなかったとしたら、とても耐えられぬ屈辱に満ちた浅ましい行為だった。
「さあ、ひと休みしたら、みんな午後の部にかかるんだ」
腰を上げかけた蓮見を押し止どめる様に美津子は、
「一寸待って。この犬にもお茶を飲ませてやらなくっちゃ」
ツカツカと彼の傍に歩み寄ると、中腰になって彼の顔を覗き込む。
「山内、お前、お茶が欲しいでしょう。いいこと、昔を想い出すのよ。ここで、みんなの前で、私のお小水を飲んで昔のお前に戻りなさい。……抵抗したら、お前の会社や家族にすべてを知らせるわ。そうすればお前は社会的に破滅する事になるのよ。いいわね、諦めるのよ!」
ささやく様な美津子の声だった。
"諦めるのよ!"……その言葉が彼の心の中で何回もこだました。
返事の代りに、がっくり頭を垂れた健二を見下ろす美津子の顔に、ニンマリと笑みが浮かぶ。
「皆さん、この犬が私のお小水を欲しがっているの。失礼してここで飲ませてやるわ」
彼女の足が彼の肩を蹴り、不様に仰向けに転がった彼の顔に美津子が前向きに跨がる。
「こりゃ凄い。おい、カメラだ、違う! ビデオカメラの方だ。早く!」
パンティが、彼の顔面を擦るようにめくられ、彼女のやや固目のヘアーに縁取られた、懐かしいその部分が彼の唇に押し付けられた。
反射的に彼の口は大きく開かれ、受け入れ体制になる。プンと鼻を突く臭いも、じわっと顔に掛ける重みも、全てが昔のあの頃の手順通りだった。
「一寸、スカートの裾を上げて下さい。もう少し、そうそう。……おい、カメラ、こっちへ移動だ。尻の下になってる顎と喉を狙うんだ」
ポタポタと舌の上に汚水が落ち、それがチョロチョロと流れに変る。
そして次第に勢いを増す。同時に独特の臭みが、舌と鼻の両方を襲う。
頬がふくらみ、ゴクリゴクリと咽喉が鳴る。
一滴も零さぬように厳しく仕込まれた昔を想い起すと、何か自信の様な物が湧き、口中の汚水を味わう余裕さえ生じた。
十数年の歳月で、熟し切った美津子の身体からは、若い頃に無かった濃厚な分泌が出ると見え、その臭味は昔、たまに味あわされた、当時三十女のお民のそれを想い起こさせた。
流れの止まった後尻が少し浮き、唇と舌で跡を吸い清めると、チューッと派手な音がして、周囲からクスクス笑いが起こった。
とたんに皆に見られている自分が意識されて、屈辱感でカーッと顔に血が上る。
「フフフ、とうとう、又、私の奴隷に戻ったわね。今度は、二度と逃げない様に皆の前でうんと辱めてやるわ」
彼女の尻がスッと前に移動し、クレバスが鼻を捉える。と、同時にじっとり湿ったアヌスが彼の唇に押し付けられた。
「さあ、今度は後ろを清めるのよ。随分汚れているから、しっかり味わいなさい。……フッフッフッ、みんなが見て呆れてるわよ。女のお尻を舐めさせられてるお前の情けない姿を、良く見て貰いなさい」
ジーッとカメラの廻る音、ザワザワとささやき声に混って、如何にも軽蔑し切った笑い声。全てが彼のみじめさを意識させ、身の置き所のない屈辱の思いをかき立てる。
彼は思わず、めくるめく一種の陶酔感に陥って、夢中で美津子のアヌスを舌で舐め、唇で吸った。
屈従宣誓
「いいぞ、迫力満点だよ 続けてお前達、マダムと交代して、この男をなぶり物にするんだ。裏ビデオの傑作が出来るかもしれんぞ」
蓮見がいささか興奮気味に、朱実と麻紀の二人のモデルに登場をうながした。
美津子が尻を上げると、首の鎖がグイと引かれ、薄笑いを浮べた朱実が、いきなり彼の髪をわし掴みにする。半身を起こしたまゝ顔を上向きにされ、両手を後ろに着いて辛うじて身体を支えた。
「口を大きく開けるのよ。そうよ、そのまゝ動かないでね。お茶の後になったけど、デザートを上げるわ」
朱実は、咽喉を大きく鳴らすと、頬をすぼめ、彼の口中にペッと痰を吐き込んだ。続けて麻紀が、同様、これも唾混じりの痰をたっぷりと吐き入れる。
舌の上から咽喉の奥にかけて、ねっとりした二人分の痰がへばり着き、薄い塩味と共に耐え難い不潔感が込み上げた。
「良く味わうのよ。そして痰壷にして頂いて有難うございますって、お礼をお言いよ」
"こんな女達にまでなぶられるなんて、なんと情けない!……でも、もう毒もくらわば皿までもだ!"
観念した健二の咽喉がゴクリと鳴り、汚物が飲み下される。口ごもりながらお礼の言葉を言わされる彼の目に涙がにじんだ。
「さあ、今度は、私達のお尻をお舐め」
革のパンツを脱いだ朱実が、前かがみになって、大きな尻を彼の眼前に突き付ける。
見た目にも割日が褐色に汚れ、プンと異臭が鼻を突く。
思わずたじろぐ彼を見て、麻紀が頭を掴み、彼の顔をぐつとその尻割れに押し付けた。
「早くお舐め! マダムの時はあんなに熱心に舐めたじゃないか。選り好みすると承知しないよ。そらよ、もっと舌を延ばして!」
朱実に叱たされ、彼はもう意志を無くした人形のように、ペロペロと女のアヌスを舐め続けた。
「さあ、交代だよ。あらっ、こいつ泣いてるよ。意気地無し!」
「あら、意気地があったら、女の尻を舐める筈がないわよ」
「フフッ、それもそうだわ。最低の男ね、こんな真似をするなんて」
女の嘲りは針の様に彼のこころを刺し、彼の羞恥心をいたぶった。
今度は、麻紀の尻に顔を埋めて清めを続ける彼の唇の下で、女の菊座が急に盛り上がり、ピーッと派手な音を立てて、ガスが放出された。
思わず顔を反らそうとしたが、今度は朱実が素早く頭を抑えた為、まともに臭気を吸い込む羽目になった。
鼻の奥がツーンと刺激され、どっと起こる笑い声に、やり場の無い悔しさ、情け無さが込み上げ、涙がポロポロとこぼれた。
「ワッハッハッハ、こりやあいい。女の尻からガスを吸わされて泣き濡れるマゾ男か。こりや傑作だ」
蓮見が笑い転げる。つられて又、ひとしきり爆笑の渦が起こった。
「さ、次のカットを撮るのよ。少し運動させて上げる。私の馬になりなさい」
麻紀が、ドスンとはずみを付けて彼の背に跨がって首の鎖を握ると、朱実が、彼の跨間の細い鎖を彼の首の間から前に引いて、彼を引き回す形で先に立った。
ビシリ、と麻紀の手の鞭が彼の尻に鳴り、朱実の手が跨間の鎖をツイと引く。
彼は思わず身をよじらせる様にして、歩き出した。
続けて麻紀の鞭が尻を打ち、"早く、早く!"と掛け声が浴びせられる。
彼は顔を真っ赤にして、懸命に這い進んだ。
皆の見守る中を、何周かさせられると、さすがに健二も息が切れた。
段々スピードが鈍り、膝を引きずるように進むが、身体が思う様に付いて来ない。
汗が一面に吹き出て来て、背中の麻紀の尻がずっしりと重味を加えた。
遂に彼の動きが止まり、麻紀を背に乗せたまゝその場に、がま蛙のように不様にへたり込んでしまった。
「おやおや、だらしない馬だこと。随分汗が出て、さぞ咽喉が乾いただろうね。私のお水を飲ませてやるから、有難く頂くんだよ」
耶揄する様な麻紀の言葉に、逆らう気力も無く、彼はあえぎながら、へたり込んだまゝである。
「でも、その前に、お前の舌で私の汚れた足を清めてお呉れ。ホラ! 早く舌を出して舐めるんだよ」
彼の背から降り立った麻紀の足先が、漸く四つん這いに戻った彼の唇を突く。
黒ずんだ彼女の足裏が彼の顔にピッタリと押しつけられ、麻紀は彼の舌の感触を楽しむかの様にうっとりと目を閉じた。
女の足元に這いつくばって、足裏を舐め清めている我身が何とも厭わしかったが、麻痺した羞恥心のおかげで、周囲の観客は殆んど気にならない。
かかとから足指の間まで、丁寧に舐め清めると、今度はもう一方の足が突き出された。
「いいわ、お前、舐めるのは上手よ。きっと犬の様に随分仕込まれたのね。男のくせに哀れなもんね」
女が軽蔑の眼差で見下ろしているのに答える様に、彼の舌は休み無く動いた。
「御褒美に約束の私のお水を上げる。でも、きっと臭いわよ。フフフ、でもそれがお前にふさわしいかもね。……そこへ跪いて御覧」
麻紀は、目の前に膝を折って彼女を見上げている健二の肩を大きく跨いで、彼の顔をそのボリュームのある太腿で挟み込んだ。
結局、彼は立ったまま女の股倉に顔を挟まれて、汚水を飲まされたのである。
撮影を終えて、モデルやプロダクションの一行が引き上げた後、健二はすっかり打ちひしがれ、美津子の足許にうずくまった。
衣装もそのまゝで、首と跨間から垂れ下がった鎖が、床に長く延びている。 若い五人の従業員の女達は、興奮覚めやらずといった態で二人を取り囲んだ。
「マダム、この変態男、どうするんですか?……でも、驚いたわー。世の中にこんないやらしい男がいるなんて」
「本当にあきれたわ。よく恥ずかしくないわねえ。……昔もきっと、マダムに今日みたいに毎日なぶられていたのね」
「でも、女のおしもに征服された男って、私達女にとって便利な存在かもよ。だって奴隷として思いのまゝに使える筈だわ」
彼女等は、全員がいささか上気して、口々に生まれて初めて見た異常なシーンの感想を語り合った。今日一日の出来事で、もうすっかり、皆が彼を軽視し、卑しい見下げ果てた存在として、軽蔑し切っている事が、言葉の端々からもはっきりうかがえる。
「まあまあ、皆さん。少し落ち着いて頂戴」
美津子は、一同を制するとゆっくり足元の健二の頭をハイヒールで踏み付けた。
「いいこと。この男は今日から又、私の奴隷に成り下がったのよ。昔と同じ様に、毎朝毎晩、私の便器としてお小水を飲み、私のセックスに舌で仕えるの。でも今度は昔逃げた罰として、あなた達みんなにも奴隷として奉仕させる事にするわ。……これ、お前、聞いてるの? それで文句無いわね?」
美津子のヒールの先が、彼の後頭部を邪険にこずき、屈服をうながす。
床に顔を押し付けたまゝ、くぐもった声で彼が"はい"と答えるのを聞くと、彼女はニヤリと笑みを浮かべた。
「安心しなさい。お前が、私の忠実な奴隷として仕えている限り、お前の社会的地位は保たせて上げる。……今晩からここへ寝泊りして、月曜からは、ここから毎日会社に通うのよ」
「じゃあ、これから皆にひとりひとり、奴隷の誓いをなさい。フフフ、やり方は私が見本を見せて上げるわ」
ソファに浅く腰掛けたまま、美津子は彼の髪を掴んで、ぐいとばかり彼の顔を跨間に引き寄せる。股を開き、両足を曲げてソファの上に乗せ、身体を後ろに寝かせる様にして、尻を突き出す姿勢を取った。
パンティは先程、彼に小水を飲ませた時に脱いだまゝで、彼の顔面のすぐ前に、彼女のむきだしの跨間のクロ−ズアップが迫る。
と、美津子の右足が上がり、かかとを健二の後頭部に当てて手前に引くと、彼の顔面はピタリと彼女の跨間に密着した。
「さ、奴隷の接吻よ。洋画のキスシーンを想い出して、心を込めて味わうのよ」
もう、とうに観念した彼は、我ながら驚く程平静な気持で、彼女の性臭を嗅ぎながら唇と舌で彼女のアヌスを味わった。
それは、美津子に対する彼の永遠の屈従を皆の前で誓う、というより、我と我身に言い聞かせる為の儀式でもあった。
しかし、続いて五人のうら若い女達に、次々と同様の行為を強いられた時には、さすがに彼も無念の思いに気も狂わんばかりだった。
美津子に倣って最初に彼を跨間に引き据えた幾代は、たっぷりと時間をかけて、繰りかえしアヌスを吸わせながら、軽蔑の表情と共に、何回も彼の顔に唾を吐きかけたのである。
続いて、すっかり大胆になった恵子が、そして道子、里子、最後にひろ子が、つかれた様に同じ調子で彼を辱めた。
涙をポロポロ流しながら、屈辱の儀式を終えた健二は、帰宅の途に就く五人を四つん這いのまゝ、階下まで見送りに行かされる。
挨拶代りに、五人に次々と頭を足蹴にされた後、彼は五階のフロアにある美津子の寝室に連れ込まれた。
「さあ、お前の舌をお役に立てるのよ。私に虹の夢を見せなさい」
ベッドに腰かけて、彼の顔を跨間に挟んだまゝ、こう命ずると美津子はそのまゝ倒れ込む様に仰向けに横たわった。
ふと、遠い昔と思っていた書生時代に戻った様な気がして、我を忘れて舌を動かす。
これからの長い長い屈辱の生活を、こうして美津子の跨間に顔を埋めて暮すのかと、ともすれば、情け無さに心も狂わんばかりだが、彼女のピンク色のクレバスを一心不乱に舐めているうちに、そして彼女の両腿が快楽のわななきと共に彼の頭を強く締め付け出した頃には、諦めと共に訪れた一種の陶酔に身をゆだねて行くのだった。
(完)
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1984年11月スナイパー11,12,1月号
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2010/06/17