#03屈辱の降格人事
                阿部譲二作

直属の専務が急逝し、巨額の資金の流出の濡れ衣を着せられた男は課長から平社員に降格され、懲罰勤務の名目で元部下だった女子社員達に嬲り者にされる。特性の椅子の座面に顔を固定され女達の尻臭を嗅がされ、皆の吐き出したものを犬食いさせられる。その後、女子寮勤務にされた彼はブタとして昔の部下の股間に舌奉仕させられ、便器として使われる。

監獄それとも……
 三沢商会の定期人事異動の発表は年に一度、三月一日と決まっている。
勿論六月の株主総会の承認を要する役員人事を除いての話だが、部課長レベル、それに係長まで含めた異動が範囲の大小こそあれ例年この日を期して行なわれ、四月からの新しい会計年度への布石がなされるわけである。
 御多分に洩れずここでも幾つかの派閥が渦巻いていて、その勢力の消長が新人事にはっ
きりとその影を落とすのが常だった。
藤山東平、三四歳、独身。彼が総務部の花形である経理課長の要職についたのは、丁度二年前の人事異動の時で、彼の親戚筋の高田専務派が全盛の頃だった。
ところが半年前に突然その高田専務が心臓発作で故人となってからは、中核を失った同派は四散。さらに悪いことには高田専務の機密費として、巨額の資金が経理の二重帳簿操作で社外に流れていたことが判明したのである。
直接の責任者である藤山経理課長が、社内の調査委員会の厳しい取り調べの結果、クロとの判定を受けたのは約一ヵ月前のことだった。
 二重帳簿が高田専務の直接管理下にあり、これも直系の総務部長がコントロールしていたので経理課長は無関係……との藤山の懸命の主張も、対立していた社長一派に黙殺され、頼みの総務部長も気がついた時には退職して郷里に引きこもってしまっていた。
 人事異動の発表の当日、課長社宅のマンションをいつもより早く出た藤山は、暗たんとした気持で会社へ向かう足もにぶる思いだった。
 昨日のことである。総務部長に昇格して間のない社長派の元総務部次長、佐谷に呼び出された藤山は、今日の人事異動で経理課長の職を免ぜられ、庶務課所属の用務員に降格されることを内示されたのである。
突然、課長職を降ろされたのである。
課長職を降ろされることは覚悟していたが、高卒の女子社員よりも下級の用務員とは思ってもみなかったし、所属が庶務課とは重ね重ねの屈辱であった。
というのも経理課長になる前、藤山は二年間庶務課長を勤めており、仕事熱心な彼が常に課員にきびしく当ったため、そこでは色々と恨みを買っていたのである。
 彼が庶務課長に任命されたのは、同期入社の連中の課長昇格がひとわたり終ったあとで、しかも課員四十数名がすべて女子社員という女の園で、さながら雑用係のとりまとめ役といった庶務課長のポストは、彼にとって大いに不満だった。
そのやり切れない気持をぶつける様に、彼は文書係と庶務係の二人の女子係長をピシピシ督励し、"皆をきたえ直す"ことに専念したのである。
 これまで野放しだった生理休暇をきびしく制限したり、勤務時間中の雑談を厳禁し、皆の緩慢な動作に叱声を浴びせた。勢い、女子社員達は縮み上がって目立って働く様になったものの、彼への恨みをつのらせる者が増えたのは止むをえぬ仕儀だった。
彼の経理課への転出の後には、先任のオールドミス、栗原春子が課長に昇格し、ここに庶務課は完全に課長以下すべて女性になり、男子社員からは通称"大奥"という呼び名を与えられるようになった。
 三沢商会では高卒の女子が入社すると顧員という肩書を与えられ、見習いとして一年間勤務したうえで漸く正式社員に登用される。
用務員は、昔、中卒の女子新入社員に与えられた資格で、高卒以下は採用しなくなった今では社内で誰一人として該当者のない職位である。勿論社内では最低の身分であり、臨時雇いの清掃員並みの扱いを受けることになるのである。
憤然とした彼が直ちに退職を申し出たのは当然のことだった。
 しかし、それならと部長が切り出した話は、彼にとって意外を通りこして背筋の凍る様なものであった。
「藤山君、君はいったいどれだけ会社に損害をかけたか知っているのかね? 優に、億のオーダーなんだよ。君が社員である間はともかく、退社したら直ちに会社は君を業務上横顔罪で告発して警察に収監してもらうことになる。金額が金額だから保釈金は数千万必要だし、有罪になれば先ず八年から十年の懲役さ。まあ、君が我慢して社内に留まれば強いて社員から縄付きを出すこともないし、第一外部に対して社の名誉を傷つける様なスキャンダルは避けるのが常識だからな」
「でも、用務員とは余りにひどい! これでは新入の女子社員にあごで使われる立場になるし、それに庶務課所属になるのは私にとって昔の部下に恥をさらすことになります。何とか考えて頂けませんか」
 藤山の嘆願も佐谷部長の冷たい声にそっけなく拒まれる。
「ダメだ。……君はどうして庶務課所属の用務員にされるか判ってない様だな。……これはね、君、懲罰人事なんだよ。会社に大損害を与えた犯罪人を警察の監獄に入れる代りに、社内で精神的にたっぷり罰を与えて皆のみせしめにするのと同時に、充分に罪をつぐなって貰うのが目的なんだ。……勿論期限付だ。一年間の懲罰勤務のあとは元の課長は無理だが、地方支店の係長格に復職させてあげる。……まあこの一年、死んだつもりでじっと我慢して罰を受けるんだ」
 こうまで言われると、藤山もがっくりして引き下がらざるをえなかったのである。
 昨日のこうした部長との対話が、通勤の途中、払っても払っても繰り返し頭に浮かんでくる。
「課長さん、お早うございます」
 背後からの元気な挨拶にハッとして振り返ると、男子社員からミス経理と呼ばれている里山玲子、コツコツとハイヒールの音を響かせながら近づいて来た。黒目がちの大きなひとみとふっくらとした両頬、それに丸味のある女らしい身体つきの美人で彼のお気に入りの女子社員である。しかもバレー部で活躍中のスポーツギャルでもあった。
「お早う、早いんだね」
「あら、課長さんだっていつもより早いじゃありませんの? 何かあったんですか?」
「いや、昨晩よく眠れなくてね。早く目が覚めたもんでそのまま出て来たのさ」
「まあ、そう言えば課長さん、お顔の色がもひとつ良くありませんわ。大事にしてらして
下きい」
 自然に連れ立つ形で並んで歩き出すと、玲子の優しい心根が伝わって来る様で、先程からの暗い気分が幾分なりとも救われる思いだった。
「おかげ様で今日付で庶務課に転籍させて頂きます。本当に課長さんには今までお世話になりましたわ。何てお礼を申し上げたらよいかしら」
"あっ、そうか!"そういえば英文タイプの資格を活かしたいからと、庶務課の文書係に転籍を希望していた彼女の願いを叶えてやったのは、他ならぬ藤山自身だったのである。
 我が身に突然降りかかって来た不幸に、彼女のこと等すっかり忘れていた藤山は、自分自身も彼女の転籍先の庶務課でこれから恥をさらすことに思い至り、余りの偶然にカーッと頭に血が上るのを覚えた。
「課長さん、課が変っても今まで通り時々ダンスに連れてって下さいね。これ迄は同じ課だったので遠慮してたんですけど、今度からはもっと親密にお付き合いさせて頂ける様な気がするんですの」
 首を少しかしげながら瞳をキラキラさせ、少し声を低めてささやく様に語りかける。
 昨日の降格内示の前だったらどんなにか彼を有頂天にさせたであろうその言葉も、今となっては却って彼には針のむしろを与えられる思いだった。あと数時間して彼女が彼の新しい立場を知ったらどんな態度をとるだろうか? それは披にとって考えるだにいとわし
かった。
 十時の定期人事発表までもうあと十五分もない。三沢商会では伝統的に新人事はすべて入試合格発表さながらに、巻紙に墨書されたものが二階集会室のロビーの掲示板に貼り出されることになっている。
先程からそわそわとして落ち着かなかった社員達も、上司に気がねしつつポツポツと席を立ち始めていた。
「課長さん、お先に」
 里山玲子が彼の前を小走りに通り抜けると、同僚の女子社員グループに追い付いて行く。藤山は周囲が殆ど空席になってから、やっと重い腰を上げた。
 皆の前で掲示を見るのは忍びなかったが、さりとて帰って来る部下にここで顔を合わせるのもためらわれたのである。
 ロビーは大変な混雑だった。掲示板の最上段に高々と貼り出された異動人名表の前には、ぎっしりと黒山の人だかりが出来ている。
視力には自信のある藤山は皆の後ろから走り読みしているうちに高田専務派で占めていた総務部と営業部の課長達が、すべて社長派の連中に置き換えられているのに気がついた。
高田派はすべて顧問とか主事といった部下を持たない閑職に追いやられており、課長から課長付に降格になった者さえいる。
名簿の一番最後に漸く自分の名前を見付けると、藤山は思わずはっとした。
庶務課勤務用務員・藤山東平と書かれた下に"懲罰勤務"とそれも朱記してある。
それは黒々とした人名の羅列の中で、ひときわ鮮やかだった。
「ちょっと! 藤山課長、じやなかった、藤山用務員、こっちをお向き」
 背後からこづかれて振り向くと庶務課の西田洋子である。小太りの肉感的な、少し下品な感じのする彼女はもう三十を越えた筈だが、彼の庶務課長時代にはタイピストグループのリーダー格で、ことごとに彼に反抗的だった。勿論藤山も披女には特にきびしく当たり、何度か長時間の叱責を加え涙を流させたことがある。
「今度は庶務に戻って来るのね。昔と違って今回は用務員として皆から懲罰を受けるってわけね」
ニヤニヤ笑いながら、いたぶる様に彼の顔を眺めまわす。
「私ね、今日から係長よ。ホラ、あそこ」
 彼女があごでしゃくった先を見ると、西田洋子の名前の上に、庶務課・庶務係長の肩書が付いている。
「それは……お目出度う……」
「フン! 言葉づかいに気をつけるのよ。何しろお前は用務員なんだからね。今度こそは昔の仕返しをたっぷりとしてあげるからね。フフフ、期待してらっしやい」
 すごすごと席に戻ったものの、皆から浴びせられる好奇の視線を痛い程意識しながら、彼は机の中の整理に熱中している様を装っ
た。
午後からは新しい人事職制のもとで仕事を始めるため、職場変更を発令された者は午後一時迄に異動を完了するのが慣例である。
 藤山がロッカーの整理を終ったのを見届けると、彼の後を追って課長に昇格する後藤係長が、課の全員を集めて口を切った。
「皆も人事発表で見た通り、今度、藤山課長はある社内の不祥事件の責任をとって課長の座を退きます。そして不肖私が経理課長として今後皆さんと頑張って行きたいと思います」
 そしてひとしきり、今後の抱負と教訓めいた挨拶が続いたあと、
「あ、それから我が課の人気者、里山玲子君が残念ながら今日付で庶務課の文書係に転籍になります。では皆席に戻って仕事を続けて下さい」
「あのー、質問があります。藤山課長が責任をとられた事件って、どんなことですか?」
 後藤係長はしぶい顔で、
「この件は公表出来ませんが、かなりの金額の損害を会社に与えたことは確かで、社外には絶対に洩らさない様にして下さい」
 荷物をかかえて庶務課と書かれたドアの前に来た藤山は、立ち止まって大きく息を吸い込むと中へ入る。大奥の別称にたがわず、一面に広がっているカラフルなざわめきに、一瞬、昔の庶務課長時代に帰った様な錯覚に陥入った。
目ざとく彼を見つけた数人からのささやきが波の様に伝わると、たちまちあたりがシーンと静まりかえる。彼は全員からの突き刺す様な視線を感じながら、課長席に近づいた。
大柄なキリッとした顔立ちの栗原春子は藤山が庶務課長時代、課長付として彼を補佐する立場にあったが、前述の様に二年前彼が経理に移ったあと、課長に昇格したのである。
 年こそ三十半ばを越してはいるものの、まだまだ女盛りの彼女は仕事の上では脂の乗り切った年頃で、社内で数少ない女性課長として皆の期待に応えている。
ただ彼との折り合いは至って悪く、当時彼女の進言を殆んど容れず、ビシビシ皆を追い立てる様に課内を切りまわした藤山は、彼女をその立場も斟酌せず、皆の前で叱りとばしたことも再三であった。
 にんまりと笑みを浮かべて彼を見つめる栗原春子の前に、深々と頭を下げた彼は呟く様に「宜しくお願いします」としか言えなかった。
「とうとう里帰りして来たわね。お前も充分覚悟はしているだろうけど、これからうんと幸い目に会うのよ。顔を上げて真っ直ぐこちらを見てごらん」
 いきなり"お前"呼ばわりは予期していたこととは言え、彼にはこたえた。
「皆さん集まってちょうだい」
 文書係長の磯田初世が声高にふれまわる。
 課長席のまわりに約四十名の女子課員が集まると、さすがにムッと脂粉の香りがたちこめる。型通りの課長訓辞に続いて、新任係長の西田洋子の挨拶に拍手がひとしきり湧き、さらに経理より転属の里山玲子がこれも拍手で迎えられた。
「では最後にお待ちかね。皆さんおなじみの藤山東平……フフフ……用・務・員でーす」
 横田初世の思わせぶりの紹介に、あちこちでクスクス笑いが起る。
「これ! こっちにおいで」
 栗原春子は課長席から手を延ばすと、藤山の耳をぐいと引いた。
思いもかけぬ手荒な行為に虚を突かれた彼は、よろけながら引き寄せられる。
屈辱にカーッと血が上り、一方、ちぎれる様な一耳の痛みが去ると、ひとしきり高まったクスクス笑いに顔が紅潮した。
「皆さん。この藤山は莫大な会社のお金を使いこんだので、用務員に降格されて今日からこの庶務課で毎日懲罰を受けることになりました。罰の内容はあとでゆっくり皆さんに伝えますが、要は全員でこの男をこらしめるのです。それから勿論この男の名前は呼びすてにしますが、名前の東平の東の一字をとってトンと呼ぶことにします。麻雀のトンですよ。勿論ブタのトンと同じ」
 プッと前列の女の子達が吹き出すと、笑いが全員に広がった。
「トン、これ、トン。返事をおし! 黙っているとこれよ」
 西田洋子が今度は反対側の耳をグイと引く。
情けなさと痛さに思わず涙がこぼれた。
ひとしきり笑いものにされたあと、彼は栗原課長に伴われて佐谷総務部長の前に出頭していた。
「ウハハ、呼び名が"トン"は良かったな。まさに傑作だ。ワッハハハ……。え−と、ところで庶務課での懲罰の内容は説明したかね?」
「いえ、まだなんですが、部長さんの前で申し渡した方が本人も納得すると思うんです」
「それもそうだ。実は栗原君から詳細を聞いた時には、私も、こりや藤山君が反発するな、と気になったんだ。しかしね、藤山……トン君、君が会社にかけた損害を考えて、男らしく諦めるんだ。君は自分は無罪だと言うだろうけど、会社という組織の中では派閥の責任を負うスケープゴートが絶対必要だ。ホラ、閑ヶ原の戦に敗れた石田三成が、河原で打首になった様なもんだ」
「じゃあ、部長さんのお言葉もあったことだし……ホラ、これが庶務課でお前が受ける罰のリストよ」
 栗原春子が冷たい笑みを浮かべながら突きつけた懲罰通告書と表題をつけられた書類を受け取った藤山は、幾分ふるえる手で頁を繰った"藤山東平は庶務課において一年間、以下の懲罰を受けるものとする"と書かれた下には次の箇条書きが続いた。
 一、庶務課員への茶の給仕をすること。
 二、女子便所の清掃をすること。
 三、以上の業務以外はすべて課内は四つん這いで歩くこと。
 四、毎日、全員に何等かの辱めを与えて貰うこと。
 五、昼食は皆の食べ残しを四つん這いで犬の様に手を使わずに食べること。
 六、新作の懲成器具(ただし現在製作中)で毎日全貝から懲罰を受けること。
 七、その他庶務課長が必要と認めた内容に従うこと。
 さらに後記として"庶務課全員の命令には決してそむかず従うこと。不服従の場合は、こらしめを受けたうえ懲罰期間の延長を行なうものとする"とあった。
 読み終えた藤山の顔は蒼白だった。
「こんなひどい目に会うのは絶対に御免だ! 今度こそ会社を止めさせて貰う」
「それじや止むを得ないが警察に行ってもらう。この書類を見ておくんだな」
それは、藤山を横領罪及び特別背任罪で訴える告訴状である。
"有罪になれば八年から十年の懲役だ"と言われた言葉がよみがえった。
"一年間死んだ気持で我慢すればいいんだ"
自分に言い聞かせる様に心の中で呟くと、彼は頭を垂れた。
「懲罰を……お受けする……ことに致します」
 藤山の屈服を確認すると、佐谷部長と粟原春子は顔を見合わせてにんまりした。
「あの……ここに書いてある製作中の器具というのは何でしょうか?」
「ああ、それね。フフフ、それは出来てからのお楽しみよ。でも安心なさい。別に痛い目に会わすわけじゃないのよ。それにどうせ毎日みんなに辱められて、ごはんもみんなの食べのこしを四つん這いで食べる様になるんだから、何をされたって大差ないでしょう」
「まあ君も庶務では大分うらみを買ったんだから、このさいその債いをするんだな。君は独身だから自分ひとりで我慢すればいいんだ。何年かたてばすっかり忘れるさ」
 部長はさすがに哀れを覚えたとみえて、同情的な口調になっていた。

金だらいのお食事
 翌朝、重なる心労からつい寝すごした彼は、あわてて身仕度もそこそこに部屋を飛び出した。抜ける程背い空から降る朝の光は漸く春の訪れを告げ、職場に急ぐ人々の動きも活き活きとしている。昨日のことが悪夢の様で、今日から辛い懲罰を受けるかと思うと心は重いが、死んだつもりで我慢するんだと呪文の様に繰り返し自分に言い聞かせる。
庶務課のドアを押したのは始業のチャイムが鳴ると同時だった。
 あわててロッカーへ直行して作業衣に着替える。
ロッカーといえば聞こえは良いが、彼に割り当てられたのは女子トイレの奥の掃除道具入れで、作業衣もつぎの当ったみすぼらしいものである。
着替えの間にもトイレを使用する女子社員が相次ぎ、鏡の前で彼の方をチラチラ見ながら何やらささやき合っている気配である。
「課長さんが呼んでるわ。遅いって怒っているからすぐ行って謝った方がいいわよ」
 経理課から一緒に移って来た里山玲子が声をかけてくれた。玲子の心づかいに感謝する気持がちらと心をかすめたが、かけ込み出勤の責めを受ける不安が先に立ち、
「そうかい、判ったよ」とぶっきらぼうに応答するや、心せくまま廊下に飛び出した。
「一寸待って」
 後ろから玲子の声。振り返る彼の前に、後を追って来た玲子が厳しい表情で言葉をかけた。
「用務員のくせに言葉づかいに気をつけなさい。昨日までと違うのよ。……心安くされたら迷惑だわ。……お前が今日からどんな恥知らずなことをさせられるか、課長さんから全員に話があったのよ」

心頼みにしていた玲子の冷たいまなざしと軽蔑しきった口調は、少なからぬショックであった。
 三沢商会の主な取扱製品は繊維関係で、それも海外の取引先が圧倒的に多い。
従って庶務課文書係には英文の書簡だけでなく、契約書、請求書、見積書等のタイプがあちこちから依頼されて来る。
二十人に近い女性タイピストがここに配属されているのはこのためで、他に社内の庶務全般、さらに社内の諸設備や社員寮等の厚生施設の管理事務を担当する庶務係があり、これも社の方針からかすべて女子社員が処理している。
四十名余の庶務課員は従って、社外施設の管理人を除くと、全て女子と言うわけであった。何となく戦場全体がざわめきがちなのも、女性特有の口数の多さもあるが、タイプや複写機の音も混じり、何となく華やかな活気が満ちていた。
 課長席で電話を終えた栗原春子は目の前に立っている藤山に気づくと、口をひきしめ厳しい顔付きになった。
面長のきりっとした表情に、どこか底意地の悪いオールドミスの風情がのぞく。
「どうしたって言うの。始業前三十分に来て掃除をする様にあれ程言ってあるのに。それにお前は懲罰通告書の内容をもう忘れた様ね。そら四つん這いになるのよ。そうそう、良く似合うわよ。さあ、直ぐ仕事に掛かるのよ。あとでたっぷり罰を与えてあげるから」
 春子の足蹴を尻に受けると、彼はスゴスゴと皆の机の間を四つん這いで進んだ。
クスクス笑いの中を顔を赤くして湯沸し場に向かって這い進む彼のみじめな姿の前に、西田洋子が立ちはだかった。
「そら、これもトンのユニホームの一部よ」
 藤山の首のまわりに冷たい革のベルトが巻かれ、くさりがグイと引かれる。犬の首輪をはめられたのに気付くと、屈辱感が頭の中を渦巻いた。
洋子の手に握られたくさりが庶務課の中をくまなく彼を引きまわして、さげすみの視線の中にたっぷりと彼をさらして行った。
そのあと全員にお茶の給仕、女子トイレの掃除とこれもみじめな仕事が続いたあと、再び四つん這いに戻った彼は西田洋子の机の横に引きすえられた。
床に正座させられた彼の顔の前に、足を組んだ洋子のハイヒールがブラブラ揺れている。
「どお? 転落第一日目の感想は。四つん這いも悪くないでしょう?」
「何とか言ったらどうなの。コラ! トン!」
 沈黙している彼の額を洋子のハイヒールの先がトンと小突く。
「お前はここで懲罰を受ける身だってことを忘れちゃだめよ。でも別に鞭で叩いたりするわけじゃないんだから。ただ精神的に辱めを受けて毎日みじめな思いをするわけ。少しでも反抗したら懲罰期間がそれだけ延びるのよ。だから締めて素直に運命に従いなさい」
「ホラ、こうされてもお前は反抗出来ない立場なのよ」
 ぐいと鎖が引かれ、前にのめりかけた彼の顔を洋子の靴の裏がとらえる。
「フフフ、口を開けて」
 思わず開いた彼の口の中にヒールが押し込まれ、首輪が前に引かれて靴の裏が顔に押しつけられる。グリグリと靴が顔面をにじり、ヒールが口中をかきまわす。血がカーッと頭に上り、周囲のクスクス笑いが屈辱感を倍加した。
「フフ、どんな味がするの? よく舐めてきれいにするのよ。昔の自分のした事思い出してごらん。私の生理休暇を許可しなかったわね。思い知るがいいわ」
 ヒールが口から引き抜かれると、"ホラホラ"と今度は爪先が唇をこする。
「舌を出すのよ、でないと唇が切れるわよ!」
 鼻の奥がツーンとし、涙が流れ出した。
「あら、口惜し涙? それとも嬉し涙かしら? そら、もっと舌を伸ばして、靴の底を犬の様にぺロぺロ舐めるの。そうそう上手よ」
 足が下ろされ、涙と汚れでベトベトになった彼の顔をニンマリと見下ろすと、洋子は、ぺッと彼の顔に唾を吐きかける。
ビクッと顔を後ろに引こうとするのを鎖で引き寄せ、再び今度はカッと痰を吐きかけた。ネバッとした青痰が唇の上にへばりつく。
「そら、今度はこっちよ」
 もう一方のヒールの底が痰をぬぐつたと思うと、それを彼の口に押し込んだ。
「フフフ、ブタにふさわしい御馳走だこと」
 塩っぽい痰の味が、ザラザラした土塊りに混じって口の中に広がる。それは文字通り屈辱の味だった。
顔面を覆う靴底の横から、勝ち誇った洋子の丸顔が見下ろしている。
"もうこれで、この女には反抗出来ないんだ"と諦めの念が藤山の脳裡をよぎった。
 長い長い時間の様に思えたが、実際は正味三十分位だったろうか。
漸く許されて顔を洗って戻ってきた彼は、全員に挨拶に廻る様命ぜられた。
「ただ挨拶してまわるだけじゃないのよ。懲罰通告書の四項に"全員に何らかの辱めを、与えて貰うこと"とあるでしよう。どうか辱めをお与え下さいって、一人一人お願いに廻るのよ」
 西田洋子はおかしそうに付け加えるのだった。
最初に文書係席の磯田初世の椅子に近づく。
「あのお……今日からこちらに移って来た藤山です」
 四つん這いの彼にチラッと視線を走らせた初世は、そのまま彼を無視して仕事を続ける。
「あの……宜しければ何か……辱めを頂けませんか」
 反応がないのでもう一度、さらにもう一度繰り返す。無視されている口惜しさ以上に、四つん這いで辱めを乞う自分の情けなさに顔がほてった。
「うるさいわね」
 回転椅子を廻して向き直った初世は、冷たいまなざしで彼を見下ろす。
「人が仕事をしている時に話しかけるのは失礼よ。第一お前の名前は藤山じやなくてトンでしょう」
 小ぶとりの洋子と違って、スラッとした磯田初世は証券会社勤務の夫を持った庶務課で数少ない妻帯者の一人である。美人とは言えないが、色白で少々面長な日本的な顔立ちをした彼女は、確か洋子より三年程先輩の筈だった。
仕事はかなり出来る方で、藤山が課長時代随分目をかけてやった女である。
彼にとってみればこの冷たい態度は意外だった。
「さあ、どんな辱めが欲しいっていうの? 言ってごらん」
「どんな……と言っても……どんなのでも結構です」
「どんなのでもと言ったって判らないわ。それともさっきの西田係長の時みたいに、靴の底で踏みつけられたいの?」
 うなだれた彼に、さすがに哀れをもよおしたのか
「じやあ、上を向いて、口を大きくあけるのよ。そうよ、そのままにしてるのよ」
 初世は喉を鳴らして痰をためると、ぺッと彼の口中に吐き込む。
「まだよ、もうひとつアンコール」
 こんどはたっぶりとした唾のかたまりが口に入れられた。
「よく味わって。そして痰壷にして頂いて有難うございましたってお礼をお言い」
「声が小さいわ。もう一度。ダメね、もう一度よ」
 全員に聞こえる様に声を張り上げさせると、こちらを注目していた全員から笑い声が上がった。
「ほら、お次が待ってるわよ」
 ポンと肩に足蹴を受ける。すごすごと這い出したが、目もくらむ思いで隣の席に向かう。
昔、課長としてあごで使っていた女子社員達の前で、四つん這いになって、こともあろうに辱めを乞う……普通ならとても耐え難い行為であった。しかし洋子と初世になぶられた彼の精神状態は、もはや平常とは言えなかった。
口惜しさを通り越し、深い奈落の底へ転落して行く自分をどうすることも出来ない、そこにはかすかだがめくるめく陶酔さえ感じられた。
 殆んどの女子社員が、係長にならって彼の顔を土足で踏みにじるか、痰唾を彼の口中に吐き込むかを選んだが、経理課での部下の里山玲子の番になると、彼女はソックスを抜いで素足を彼の顔の前に突きつけた。
「足の裏が汚れているの。きれいに舐めてちょうだい」
 周囲からの好奇の視線を感じながら、ぐっとこみ上げるものを抑えて、玲子の黒ずんだかかとに舌を走らせる。
「指の間もよ。そうそう、こんどはこっち。その味をよく覚えなさい。まるで犬そっくり
よ。身分の差がよく判ったでしょう。これで
もう二度と私になれなれしい口はきけなくなったわね」
 庶務課の女子社員の中には、僅かだが藤山にこれと言った恨みを持たぬ者や、彼の立場にかすかな同情を抱くものもいたが、皆の目にも次々と辱められその度に礼を言わされている有様や、皆の足もとを這い進む無様な姿は、哀れを通りこしてむしろこっけいですらあった。群衆心理も手伝って、普段内気な連中もかなり積極的にこの"懲罰"に参加したこともあって、全員を廻り終えた時はもう昼になっていた。
 十二時のチャイムが鳴ると一時間の昼休みである。
三々五々と連れ立って地下の従業員食堂へ行く者、息抜きを兼ねて外出する者、持参の弁当を開く者と様々である。
「ホラ、これを持ってお弁当を食べている人の所を廻りなさい。そしてひと口ずつ分けて貰うのよ」
 課長の栗原春子から渡されたいびつになった金だらいを、四つん這いのまま受け取る。
「私のを一番にあげるわね。ほら」
 春子は自分の弁当からひと口ほうばると、口中でかみくだき金だらいの中へぺッと吐き出した。ねっとりした唾にまぶされた米粒が、べっとりと底にへばりつく。
「あの……通告書には残飯となっていたと思いますが……こんな吐き出したものを食べろなんて、ひどいと思います」
 朝からの辱めで、口のきき方はすっかり被征服者のそれで、弱々しい声音だが藤山にとっては精一杯の抗議だった。
「うるさいわね。つべこべ言うと命令違反で懲罰期間を延長するわよ。何さ、さっきはみんなの痰唾を飲み込んで、お礼を言ってまわったくせに。みんなに貰った分が溜まったら
見せにいらっしゃい」
 金だらいを片手で捧げる様に持って、半ばいざりながら席の間を廻る。
全体の約半数が弁当組で、春子にならって次々にひと口ずつ金だらいの中に吐き出していく。所々にまじった色とりどりのおかずの切れ端が唾で光り、まるで吐渇物そっくりであった。
「まあ、随分集まったじゃないの。……見かけは余り良くないけれど、味は本物のゲロみたいなことはないわよ。本当にお前にふさわしい食物ね。……これをみんなから良く見える所で犬の様にして食べるのよ。 ただし食べる前に、ひとつお前に聞いておきたいことがあるの。……午前中お前はみんなの所を廻って一人ずつ辱めてもらったでしょう。あの時、どうして私の所だけ来なかったの? 忘れたの? それとも課長である私を無視したのかしら」
「あのお、みんなには挨拶が未だだったので……課長さんには朝一番にお会いした時、済ませているからいいと思ったんです」
「あら、あの時には私が呼んで小言を言ったのよ。そう言えば遅刻の罰もまだだったわね。丁度いいわ、その入れ物をかしてごらん」
 春子はいきなり金だらいの上に跨がると、素早く下ばきをずらし、勢いよく放尿した。
「何してんの。早く紙を丁だい」
 あっけにとられていた彼は、あわててポケットを探ったが生憎作業衣に着がえているため紙が見当らない。
「何をもたもたしてるの。いいわ、それじゃそこへ仰向けに寝るのよ」
 春子の意図がわからずもたつく彼も"さ、早く"と催促され、床に横たわった。
 と、金だらいから腰を上げた春子がスッと彼の顔面を跨ぎ、あっと言う間もなく、彼の顔面の上へしゃがみこむ。
「さあ、お前の舌であと始末するのよ」
 予想もしなかった展開に気もどうてんする思いだが、目の前にはグロテスクな春子の局部が追っている。と直ぐに尻がおろされ、濡れそぼった部分が唇に押しつけられた。
プンと独得の臭いが鼻をつく。あまりのことに頭が空白になって考える力もない。
夢中で舌を出し唇で吸い清めた。
「もういいわよ。いつまで舐めてるの、フフフ、感じちゃうじゃないの」
 すっと春子の尻が上がり、ボォッとかすむ視界に彼をのぞき込んでいる幾つかの顔がうつり、クスクス笑いが耳に入った。ドオッと、みじめさ、口惜しさが押し寄せてくる。
「トイレットぺーパーのお役目がすんだら御馳走が待ってるわよ」
 今度は西田洋子の声である。四つん這いになって金だらいの上に首をさしのべた彼のまわりを、何人かの女子社員がとり囲んだ。
 唾でヌメヌメした食べ糟の上を、泡だった春子の尿が覆い、まだかすかに湯気が立っている。ツーンと臭いがし、とても口をつける勇気が出ない。
「みんなが見てるのよ。早くしなさい」
 声とともに後頭部にヒールが当てられ、彼の顔は金だらいの中へ押しつけられる。
息がつまって夢中で尿を吸いこむと、スッとヒールの力がゆるんだ。
もう、やぶれかぶれの思いでドロドロした塊りをすすりこみ、喉に送り込んだ。
「あらいやだ。本当にガツガツ食べ出したわよ」
「こんなもの、よく口に出来るわね。きっ"殆ど、びょ−き"なのよね」
「これが昔の課長のなれのはてだなんて、信じられて?」
 ガヤガヤと話す言葉が耳に入り、彼の屈辱感を増幅する。
すっかり平らげて底に残った尿汁を吸い、舌で金だらいの中を舐め上げて清める。
「仲々食べっぷりがよかったわよ。オシッコと唾のカクテルの味どうだった?」
 ぐいと髪が後ろに引かれ、顔を上向きにされる。
「あの、夢中だったので味は覚えていません」
「あらあら、折角の御馳走をよく味あわなかったってわけ? それじゃ明日から毎日これと同じカクテルにしてあげるから、楽しみにしてらっしゃい」
 ガンと頭をなぐられた様な気がして、ガックリうなだれた彼の背中に洋子が馬乗りになった。
「さあ、トイレまで私を乗せて行くのよ」
 誰かが尻をポンと蹴る。弱者をいたぶる群衆心理からか、それとも女性特有の残酷さからか、涙をポロポロ流しながらよたよた洋子を乗せて這い出した彼に嘲笑が浴びせられた。
 午後も、午前中の繰り返しである。
二度目にみんなの所を廻る様に言われた彼は、今度は真っ先に栗原課長の所へ行ったのはよかったが、待ちうけていた春子に足裏の甘皮を軽石代りに舌と歯で削りとると言う屈辱的な作業を延々とやらされたのである。

カクテルランチ
「ブタ」としての数週間が、アッと云う間にたった。
女子社員たちも器用に彼の喉の奥めがけて痰や唾を吐き込む様になり、最初の頃の様に彼の顔が唾でぐしょぐしょになることは稀になった。
靴で彼の顔を踏みにじる代りに、素足を舐めさせる者がふえ、或種の性感を刺戟されるとみえて彼が舐めている間うっとりと目をつぶる女の子もいた。
 昼食の小水カクテルは初日以来毎日人をかえて続けられており、噂を聞いて時々他の課の女の子が見に来る様になった。
彼としては、ついこの問まで課長としてあごで使っていた経理課の女の子達が達れ立って見に来た時は、流石に恥ずかしさがひとしおで、しかも意地悪く西山洋子が彼女達にもすすめて小水をかけさせたので、いつもの数倍の量の尿をしかも彼女達の目の前ですすらされる破目になり、身の震えがとまらぬ程の屈辱感を覚えたものだった。
 丁度転落の日から一ヶ月たった昼休みのことである。
彼が例によって屈辱のカクテルランチを食べ終ったあと、新しいとりきめに従って今日の小水の供給者である里山玲子の足許に四つん這いになって、今日の味の報告をさせられていた。
「あの、今日は少し苦い味がしましたが、生理ではございませんか」
「バカァー。あてずっぽうもいいかげんにしてよ。この頃毎朝ビタミン剤飲んでるのよ。お前はビタミン剤のたっぷり入った私のオシッコを飲んだってわけね。毎日毎日みんなの痰唾やオシッコを飲まされて恥ずかしくないの? この頃お前の顔がブタに見えて来たわ。フフフ、ほら、こうするとそっくりね」
 ヒールの先がグッと鼻をひしゃげる。
昔の部下になぶられる身が何とも情けなかった。
 あの製作中と聞かされていた懲罰器具が納入されて来たのは、丁度その頃であった。
何でも磯田初世の親戚の大工に特注したとかで、一見普通の食堂用の椅子に見えるが、坐る所がくり抜かれ便座がはめ込まれていて、その下に幅広のゴムベルトが網の目状に張られている。
何人かがとり囲んでしばらくガヤガヤ話していたが、クスクス笑いに続いてワッとはじける様な笑いが湧いた。
「トン、こっちへおいで」
「いいもの見せてあげるわよ」
 呼ばれた方に向かう彼の姿は相変らずみじめな四つん這いだが、それもすっかり板について速度も早くなっていた。
「ホラ、仰向けになってここに頭を入れてごらん。さあ、ここよ!」
 初めて見る器具にしりごみを見せる彼の髪がつかまれ、椅子の後部から頭を押し込まれた。背を反らして仰向けの姿勢ながら、後頭部はゴムベルトの網に支えられ、はめ込まれた便座の中にポコリと顔が出る。
喉の所が固定されるともう首が抜けなくなった。
 ニヤニヤ笑みを浮かべた顔が幾つも上から彼をのぞき込む。
「どお? これで君は人間椅子になったのよ」
 とまどう彼の間の抜けた表情が皆の嘲笑をさそった。
「坐りぞめはやはり課長さんにお願いしまーす」
彼の視界に栗原春子の顔が入り、
「あら、情けなさそうな顔だこと。行くわよ」
 目の前に春子のタイトスカートに包まれた大きな尻が広がり、顔面に押しつけられたと思うと、またスッと持ち上がる。
「ごめんごめん、やり直しよ」
 今度はスカートがまくられ、黒いパンティが顔面をおそった。
ゴムベルトがたわみ、その弾力で顔面が春子の尻に押しつけられる。
ムッとする異臭が鼻孔をついた。
「少しゴムがきつすぎるかしら。窒息したら可哀そうだもんね」
 張力が少し緩められ息は楽になったが、顔面は依然ぴったりと尻に押しつけられたままで、呼吸ごとにすえた尻臭が胸一杯吸い込まれる。
「さあ、試運転は終りよ。仲々良く出来ているわ。早速、本格的に使いましょう」
 いったん椅子から解放されてホッとしたのもつかのま、庶務課の片隅の談話室にその椅子が持ち込まれると、今度は西田洋子の指図で彼の首は再び椅子に固定された。
「いいこと、通告書にあった様にこの器具での懲罰を今日から追加するわ。毎日午後はこうしてみんなのお尻に敷かれるのよ。みんなの臭いをよく嗅いで覚えること。勿論、自分のみじめさをよくかみしめるのよ」
 洋子のピンクのパンティが目の前一杯にひろがり、春子の時よりも強い尻臭が鼻孔に侵入する。しばらくすると、プスッとガスが放出された。
固定された頭はゴムで洋子の尻に押しつけられて逃げようがない。
まともに鼻孔に注入された形になり、鼻の奥から脳天にかけてしびれる様な刺戦があった。思わずウアッと叫んだ声も尻に押しつぶされて声にならない。
 ただ背筋がピクリとけいれんし、椅子の脚がカタッと鳴る。
「ウフッ、いかが? もうひとつよ。それ、二発目、それから……こんどは三発目」
 注入が続き、その度に背中が反り、喉の奥から押し殺されたうなり声が洩れた。
「口惜しい? お前も女のおならを吸わされて、ブタの身分が身にしみたでしょう」
 洋子のいたぶりの言葉に目の奥がジーンとしたが、尻球に視界を奪われ涙をこぼす自由もなかった。
 洋子の発案で一人終るごとにお礼を云わされることになり、一人五分程度で次々と女子社員の尻が彼の顔と鼻をじゆうりんして行く。
全員が終ったのはもう退社時間寸前だった。
 三沢商事では夏のボーナスは例年七月十日と決まっている。
例年六月中に決着がつく筈の労組との団交が妥結したのは、今年は支給日の三日前で、こんなにぎりぎりまでもめたのは数年来のことである。
と言うのも会社の提示額が昨夏を大きく下まわっており、その理由のひとつが例の藤山が関係した欠損にあった。
 結局、昨年の十%ダウンに落ちついたが、藤山は改めて全社員の恨みを買う立場に置かれてしまった。
 妥結の後の社長室では社長と腹心の副社長、それに佐谷部長を加えた所謂社長派のメンバーが密談中である。
「とにかく佐谷君、今度組合が見付けた欠損を何とか藤山のせいにするんだ。我々が疑わ
れることは絶対に避けなきゃならん」
 社長の額のしわは、そのまま事態の深刻さを物語っている。
「でも社長。藤山が尋問されて否認したらどうします。……組合はかげで色々調べ始めた様ですよ」
「要は藤山の口を封じれば良いんだ。彼は今、庶務課で懲罰勤務に服している筈だが、彼が懲罰にたえかねて精神異常になったことにすればいい」
「でも、藤山が調べられればすぐバレてしまいますよ。それより良い考えがあるんです。藤山は今、庶務課の昔の部下の女の子達になぶりものにされているんですが、これをもっとエスカレートさせて狂気に追い込むんです。……そして、精神病院に監禁してしまえば安心です。精神異常者に証言の能力はありませんからね」
「でも、気が狂う程の懲罰が果してあるかね。身体を傷つけてはいかんのだよ。すぐ判ってしまうからな」
「それは今の庶務課では無理ですが、藤山を女子社員寮に移して、四六時中女共になぶりものにさせれば可能性は充分あります。まあ私にまかせておいて下さい」
 佐谷部長は確信あり気に請け合うと、そそくさと席を立った。
 一時間後、栗原春子と西田洋子が呼ばれて、佐谷部長と可成長い間密談を交わしたが、これが、藤山の身をさらに深い奈落の底に突き落とす計画の相談だったのである。

人間便器
 懲罰も三ヶ月間も続くと、女子社員も最初のぎこちなさがとれ、心の底から藤山を軽蔑し切っている態度が全員に定着していた。
 一方藤山には、逆に一種のひくつな、人の顔色を伺う様なところが身についてしまっている。例の懲罰器具による尻臭教育もすっかり軌道に乗り、女子社員も大半の者が、時々ガスを嗅がせて藤山の身もだえを楽しむ様になったし、わざとよごした尻を押し当てて藤山のうめき声を誘い、笑い者にすることもあった。
 彼が栗原春子に呼ばれたのは、そうした初夏の或日のことである。足許に平伏した藤山の顔の下にハイヒールが差し込まれ、ぐいと上にこじる。顔を上に向かせるとあごの下に靴の爪先がくい込む。
「トン。お前もこの頃ようやくブタらしくなって来たわね。でもね、残念だけどこの庶務課での懲罰が急に今日で中止になったの」
「で、では許されることになったんですか」
 信じられない幸運に出会った様な顔を輝かせた披も、続く栗原課長の宣告に再び失意の底に突き落とされる。
「お前はね、これから女子社員独身寮に移されて、そこで懲罰を受けることになったのよ。この庶務課でも五人程そこに入っているから、続けて仕込んでもらえるわよ。ただね、可哀そうだけど懲罰の時間が今迄の勤務時間中だけじやなくて、二十四時間絶え間なしになるのよ。つまりね、フフフ、寝てる間も恥ずかしい臭いを嗅がされるの。それにね、休みの日もスペシャルプログラムを計画してあるわ。もうお前には片時も自由な時間はなくなるのよ」
「でも、それは……ひどい……それに、通告書の内容と違うことになります」
「それはいいのよ。最後の項に"庶務課長の必要と認めた内容に従うこと"とあるでしょう。庶務課長の私が言うことは全て合法的なのよ。……男らしく、じゃなくてブタらしくあきらめなさい」
 女子社員独身寮は会社から程遠くない下町の一角にあってかなりの面積を占めている。
収容定員は一応三十室六十人となっており、会社の補助があるため寮費は格安で、現在ほぼ満杯に近い状態だった。
ここからかなり離れた所にある男子社員寮は最近鉄筋に改築されたが、ここは予算の関係もあって未だ古い木造平屋建である。
ただ同じ敷地内に最新の設備を跨る体育館が三年程前に建てられていて、その時シャワールームを体育館内に作る代りに、隣接の女子寮の浴場がシャワーコーナーの付いた立派なものに改築されていた。
 社長のスポーツ好きから誕生した女子バレーチームが、社のPRに有効との理由でかなり予算が割り当てられ、この体育館も今のところ女子バレーチームの専用の形となっている。
 会社施設の管理を担当している庶務係長の西田洋子に連れられて、藤山がこの女子寮の門をくぐつたのはその日の午後だった。
背中には例の懲罰椅子を背負わされ、首輪をはめられている。
寮の談話室の一角にその椅子を据えると、ソファに身を沈めた洋子の前に正座させられた。
「ここはね、自治寮になっているの。つまりね、専任の管理人は置かずに毎日二人宛、原則として生理休暇の人が交替で留守番をするのよ。朝食と夕食は通いのおばさんが作ることになっているわ」
「ここでは……一体どんな懲罰を受けるんですか? あの椅子でまた臭いを嗅がされるんでしょうか?」
 心配げな彼の表情を楽しむ様にニヤニヤしながら、洋子は煙草に火をつけフゥーと彼の
顔に吹きつける。
「聞きたい? でもびっくりしない様に覚悟するのよ」
 鎖がぐいと引かれ、思わず四つん這いになる。
「あの椅子はね、ここでは臭いを嗅がすためじゃないのよ。お前はね、あの椅子でみんなに便器にされるの。わかる? おしっこやうんこを食べさせられるのよ」
 洋子は彼の顔の血の気がスーッと引いて行くのを見守りながら、ゆっくりと続けた。
「もっとも、お前はおしっこは問題ないわね。毎日お昼に飲まされていたんだから。でもね、ここではお昼の御飯がないの。留守番の人のお弁当は二人分だけですものね。だからおしっこのカクテル御飯は晩までおあづけよ。それまでは朝も昼も抜きだから、当番の二人の排泄物でおなかを一杯にするのよ」
「そ、そんなバカな。僕は人間ですよ。そんなことが出来ると思っているんですか」
「おだまり! そんな口を私に向ってきけると思うの」
 首輪の鎖が横に引かれて、横転した彼の肩を洋子のスリッパが踏みつける。
さらに、仰向けにされて顔を素足で踏みにじられた。
「何よ! お前はブタよ、人間じゃないのよ。いいわ、今は人間と思っているかも知れないけど、こんどは本当のブタになるのよ。さ、もう一度四つん這いになって十回まわってごらん。一回ごとに私はブタになりますって誓うのよ。命令に違反したら懲罰期間が倍になるわよ」
「フフフ、そうそう、よく似合うわ。何さ、涙なんか流して。今に涙が涸れるまでなぶり抜いてやるから、期待してらっしゃい」
 首輪を引かれて見上げると、満足そうな洋子の顔が涙の中にぽんやりと見えた。
「お前のこれからの毎日のスケジュールを説明するから、よく聞きなさい。いいこと、もう少しするとバレー部の練習が終るから、お前はお風呂場へ行くのよ。そら、こっちよ」
 四つん這いで洋子の後に従う。
浴場の広い脱衣場の片隅で仰向けに横になる様に命ぜられた。
「そう、そのまま動かない様にね」
 洋子は彼の顔を大きく跨ぐと、ゆっくりとパンティをおろした。
"フフフ"嘲笑と共に大きな白い尻が目の前に広がる。
顔に触れんばかりの所でそれが止まると、洋子の顔がのぞき込んだ。
今まで散々嗅がされて来たおなじみの臭いが、プンと鼻をつく。
「どおー? 今までは臭いだけだったけど、今度はアヌスをよく味わうのよ。そして汚れを吸い取るの。……そうそう、おいしい? これがブタのレッスンの第一歩よ。……よく吸うのよ。そしてこの味を味わうの」
 頭の芯が激しい屈辱感にしびれ、自分の意志と関係なく再び涙がにじむ。
「もういいわよ。今度は前の方よ」
 洋子の局部が唇の上にこすりつけられ、かすかな苦みを加えた尿の味がする。
夢中で舌を出し、諦め、かつ吸った。スッと尻が上がる。
「今はこれ迄よ。これ以上だと感じちゃうから。いいこと、舐め奉仕は晩にゆっくりさせるから。ここでは清めるだけなのよ」
 身を起そうとする彼を制しながら、
「そのまま私が許すまで動いちゃだめよ。もう少しすると、バレー部の部員が練習を終えて、ここへ汗を流しに来るわ。……お前はみんながお風呂に入る前に、さっきの様にしてみんなのおしもの汚れを吸いとるのよ。……終ったら迎えに来るから、それまで、うんとみじめな目に会うのよ」
 洋子が去ってから十分程というものは、彼の心は苦悶に満たされていた。余程はね起きてここから逃げ出したい衝動にかられたが、首輪をはめた自分のみじめな姿、それにあとのことを考えると勇気がなかった。
そしてこの数ヶ月の懲罰を通じて、女になぶられる時の精神的苦痛を、そのまゝ性感に転化することで救いを見出そうとする自分自身内の変化を、うっすらと意識し始めていた。
ガラガラと浴室の戸が開き数人が入って来るや、彼を見ていっせいに嬌声が上がった。
「あらー、西田係長の言った通りだわー」
 真先に近づいて来たのは里山玲子だった。
"どうして、玲子がここに?"
 と一瞬意外な気がしたが、彼女がバレー部員だったことを想い出すと、重ね重ねの縁が不思議でもあった。
たちまち人垣が出来る。
「これが、有名な庶務課のブタかぁー」
「本当にこいつ私達のおしも舐めるかしら? かみつかない?」
「大丈夫よ。昨日私のおしっこかけたランチを食べさせたとこよ。私が試してやるわ」
 玲子のショーツが下げられると、引き締った形の良い双球がこぼれる。
意外に濃いかげりがチラと目をかすめると、すぐに玲子の尻に目を覆われた。
激しい練習で活発になった分泌系のため、彼女の尻臭は汗の匂いも加わって、ツンと鼻の奥を突き、アヌスはねっとりとした分泌液で濡れ、塩っぽい苦みで彼の舌を刺した。
「フフフ、ほらごらんなさい。おとなしく舐めてるわ。ホラ前の方もよ」
 玲子の尻が揺れ、クレバスが彼の鼻を唇をじゆうりんする。
「こんなことする男なんて最低ね。……やっぱりブタだわ」
 周囲でどっと笑い声が上がった。
「お次と交替よ」
 玲子の尻が上がると、入れ替りに新たなクレバスが落下して来る。
そして、又次が……
 時々"キャーツ"とか"くすぐったい"と言う嬌声が嘲笑の渦に混じって披の耳に入る。一方、彼の鼻と舌は次々と新たな刺戟にさらされて行った。
 二十名を越す部員に文字通りじゆうりんされ、痴呆の様に横たわっていると、ポンと頭を蹴られた。
「何よ、その顔は。……鏡で見てごらん。まあ、それに臭いこと!」
 洋子が鼻をつまんでみせる。
 傍の鏡に写る我が顔は、褐色の汚れがべったりとまだらにこびりつき、あまりのみじめさに思わず涙を誘う。
口中はねっとりした分泌物のカクテルに覆われていた。
 許されて顔を洗い、続いてうがいをしょうとすると、ぐいと首の鎖を引かれた。
「ダメよ、口の中に入ったものはそのまゝ味わい続けるのよ」

天からの宣告
 食堂はかなり広く、正面の壁には装飾用のマントルピースが設けられている。
談笑しながら夕食をとる女子社員の見守る中で、正面の柱に鎖でつながれた彼は、例の小水入りの残飯を食べている。
庶務課の中では見なれた光景だったが、ここでは好奇の視線が突き刺さってくる。
何人かは時々傍へ寄って来ては、汚水に浮かんだ痰唾を吸い取って行く彼をあきれ顔で眺めていた。
 食後は再び浴場に連れて行かれ、先程と同じ行為を、今度は寮の女子社員達にする様命ぜられた。
「入浴時間は九時迄だから、たっぷり二時間はあるわね。みんなさっきみたいに一度に入りにくるわけじやないから、お前も息が抜けるわよ。ただ遊んでいてはダメ、ちゃんとお前にふさわしい仕事があるのよ」
 洋子は薄笑いを浮べて傍らの洗濯物入れの籠を引き寄せると、中味をつかみ出した。
色とりどりの柄があざやかにこぼれる。
「そら、これみんな汚れたパンティよ。この汚れたところをお前の舌で舐めて清めるのよ。九時迄に全部清めたら、御ほうびに今夜はゆっくり寝かしてあげる。でも出来なかったら、一晩中私のセックスに舌奉仕するのよ。私は今晩ここに泊って明日もたっぷり教育してあげるから有難く思いなさい」
 洋子の非情な宣言にもう抗議する気力もなく、手渡されたパンティを裏返した。
股間の部分を走る褐色の汚れが、あかりを浴びてヌメヌメと光っている。
目をつぶって口を寄せ、唾でしめらすと軽くかんで汚れを吸い取る。
何回か繰り返すと最初の苦い味が薄らぎ、褐色の澱も殆んど消えて来る。
二枚目、そして三枚目にかかった時に数人が入って来た。
「あらっ、こいつパンティ舐めてる。これ、私が本物舐めさせてあげるわよ」
「バレー部の連中が言ってた通りだわ。最低の男ね」
 夕食の時のみじめな姿に、すっかり彼を軽蔑しきっている女子社員達は、西田洋子に言われたと見えて、ためらいもなく彼を引きたおし、顔面に次々と跨がった。
同じ様な情景が何回となく繰返され、九時過ぎに浴場がクローズされた時には、汚れたパンティも大半が清められていた。
「随分頑張ったわね。……でもまだ少し残っているわね。……私が入ってる間に、清めておきなさい」
 様子を見に来た洋子の声はいつになく優しくひびいた。
最後のパンティを片づけるのを見とどけた洋子に鎖を引かれて、寝室に入る。
「さあ、約束通り、一晩中私にサービスするのよ」
「で、でも、パンティは全部清めました。……ゆっくり寝かせてくれると言われた筈です」
「ダメね、タイムオーバーよ。私は九時までにと言ったでしょう。……しかも清め方が不充分よ。さあ、あきらめてこっちへおいで」
 彼は、六畳間に敷かれたふとんの上に腰を下ろしたネグリジェ姿の洋子の跨間に、ひき据えられた。
「どお、昔の部下のセックスにブタとして奉仕するのよ。思い知った? さあ心をこめて
舌を使うこと。手を抜いたりすると罰を与えるわよ」
 フワリと布団が被せられ、暗闇の中で彼の首はしっかりと洋子の太ももに挟まれる。
「さあ、早く!」
 洋子の声が遠くから聞こえる。
髪の毛をわしずかみにされ、顔が股間に押しつけられる
と、彼は夢中で舌を使い始めた。
それから、何時間経ったであろうか、……何回目かの頂点に、洋子の太腿が彼の顔を締め付ける。そのあとは、またアヌスが唇に押しつけられる。
やがて限りなく貪欲に彼の奉仕を求め続ける洋子も、動きがにぶくなり精魂尽きた彼も一緒に深い眠りに落ちた。
 暗い奈落の底で息苦しさにもがいている夢で目が覚める。息苦しさは顔の上に覆いかぶさった重い物体のせいで、それが洋子の尻だと判るまで暫く時間がかかった。
洋子が尻をずらすと両眼に朝の光が入り、上から見下ろしている彼女の顔が、ぼんやり写る。
「随介眠りが深いのね。もう夜が明けたわよ。さ、朝のお勤めをするのよ、口を開けて」
 尻が少し持ち上がり、言われるままに開いた彼の唇の上に割れ目が据えられた。
「しっかり飲むのよ。こぼすと承知しないわよ」
 チョロチョロと口の中に液体が流れ込む。
その生臭い、しかも濃い朝尿の味が喉を焼き、眠気を追い払った。
吐き気がこみ上げ、飛び起きて逃げ出したい衝動に襲われたが、がっちり洋子の股間に挟みこまれた頭は、びくとも動かせない。
そのうちに流れの量が増してくる。
窒息しないためには必死でそれを飲み込むほかはなかった。
喉がゴクゴク鳴る。
 多少、量をコントロールしていると見え、むせる寸前で量が少くなったかと思うと、又増える。……もう終りかとホッとすると、再び注入が始まる。
洋子の小水を飲まされている屈辱を、現実のものとしてはっきり意識した時は、もう大部分が胃の中に送り込まれていた。
最後の注入が終り、尻が少し持ち上げられ、勝ち誇った洋子の顔がのぞく。
「とうとう私の便器になったわね。どお? 口惜しい? さあ、後をしっかり舐めて清めめるのよ」
 打ちひしがれた気分で、目の前の洋子のその部分に唇を這わせると雫を吸いとり、舌でなで清めた。
「さあ、今度はお前の新しい仕事にかかるのよ。こっちへ、いらっしゃい」
 首輪がぐいと引かれ、ネグリジェ姿の洋子に四つん這いで従うと、廊下の端にある洗面所に来る。タイルの冷たさが膝にしみた。
未だ六時をまわったところで、あたりはひっそりとしているものの、もう二人程歯ブラシを使っている。
「お早うございます。アラ、こいつどこで寝たのかしら」
「フフフ、お早う。いよいよブタの出番よ。さ、こっち」
 洗面所の奥は女子トイレになっていて、両側に五ヶ宛計十ヶが並んでいる。
「ほら、見てごらん」
 洋子がそのひとつを開いて見せる。中は変てつもない和式の水洗便器だが、突当りの壁のトイレットぺーパーの傍らにスイッチがついている。
洋子がこれを押してみせるとブザーが鳴り、戸の外側についているランプが点滅した。
「フフフ、判る?……このスイッチはね、用が終った時にお前を呼ぶためのものよ。……それから、ホラ、これをごらん」
 洋子は戸をいったん閉めて、その下側を意味あり気に指さした。
戸の下には二十cm程の隙間が設けられている。
「仰向けに寝て、頭をここへ差し入れてごらん」
 彼の頭がスッポリと戸の下に入り、中の便器に達した。
あわてて身をよじって外へ逃れる。
そのあわてぶりがおかしかったと見えて、歯ブラシを頬張ったまま様子を見に来ていた女子社員達から笑い声が起こった。
「さあ、あんた達も手伝って」
 洋子は彼女等に声をかけると、トイレットペーバーを片はしから取り外し、用意した貼紙をスイッチの傍に貼って行く。
「ホラ、読んでごらん」
 彼の前に突きつけられた貼紙には、
"このスイッチを押すと、ブタの頭が戸の下から差込まれます。トイレットペーパーの代りにブタの舌を使って下さい"
とある。うすうす予感していたこととは言え、藤山の顔は恥ずかしさに赤くほてった。
「いいこと、一人終るごとにその隅のタオルで顔を拭くのよ。お前の顔でみんなのお尻が汚れては申し訳ないでしよう。……ただし口の中に入れたものは吐き出さないこと。よく味わって飲みこむのよ。同時に自分のみじめな身分も味わいなさい」
 そうこうしているうちに洗面所の方に人の気配が増え、朝のざわめきが伝わって来る。
「みんなには昨晩通知を廻してあるのよ。これから毎朝、人間ブタがトイレットペーパーの役を致しますってね。でも念のためにみんなにもう一度伝えてくるわ」
 戸口でもう一度振り返ると、がっくり床に手をついてうなだれている藤山を見下ろして、
「そら、しっかりつとめるのよ。ウオッシュレットのコマーシャルにあるでしょう"人のお尻をきれいにしたい"って。……心の底からそう思いなさい。初めの方だけ見守っていて上げるからね」
 押戸をへだてた洗面所では、洋子のかん高い声に大勢の嬌声が混じり、ドッと笑い声が渦巻いている。パタパタとスリッパの音がして、何人かがトイレに入って来た。
思わず身を固くして顔を伏せる。二、三人がその前に立ちふさがった。
「顔を上げてごらん。……こっちをちゃんと見るのよ」
「舌を出して見て、動かして、そうそう、その調子で舐めるのよ」
「私の、臭いわよ!。お前、よく恥ずかしくないわね」
 口々になぶられて、彼は耳まで真っ赤になった。
こちらでパタン、あちらでパタンとトイレの戸が閉まって行き、排泄音が恥ずかし気もなく高らかに響く。
やがて入口に近い所でランプがつき、ブザーが鳴った。
 ビクッと背筋に冷たいものが走る。一瞬、身体が金縛りになった様で身動きが出来ない。又、ブザーがさいそくする様に鳴る。
「何してんの! さっき教えた様にやるのよ、早く!」
 入口からのぞき込んでいる洋子の声。
彼はすごすごと這い出した。
ランプのついた戸の下から顔を差入れる。
後頭部にひやりとタイルを感じた途端、突然顔のすぐそばに白い大きな女の尻が現われ、割れ目の黒いかげりが迫る。
むっとした臭気が鼻を打ち、褐色ののりがべったり付いたアヌスが顔に触れんばかりである。
「ちゃんとお舐め。フフフ、ブタらしくね」
 情けなさに瞼に星が散る思いで、それでも言われるままに汚物に唇を寄せる。ねっつとりとしたのり状の便を思い切って吸いとる。
 ピリッと舌を刺す味がする。
今度は舌を使って谷間を舐め上げると、ピンクのアヌスが顔を出した。
とけた便が口中一杯に広がり、しぶ味が口腔一面にへばりつく。
「バカね、前を先に清めるのよ。唾を出して舌の先をきれいにしてからやってよ」
 舌先が前の割れ目を舐め上げると、ピクッとその部分がけいれんした。尿に混って白い滓が糸を引き、おりものの酸味の強いすえた味が、屈辱感を倍加する。
 漸く解放されて這い出すと休む暇もなく次のブザーである。
そして舐め終るか終らぬうちにまた呼ばれる。
息をつく間もない程、屈辱の行為を繰返し強いられ、女達の白い尻が彼を嘲笑う様に次々と何回も目の前に突きつけられた。
 約一時問半にわたって五十人をこえる女子社員の股間の汚れを吸わされ、皆が出社して行ったあと流石に精塊つき果てた気がして、彼は女子トイレの床にへたりこんでいた。
「どうしたの、未だそんな所にいるの?……余韻を楽しんでいるのも良いけど、おあとがあるのよ。……おいでよ」
 洋子が顔をのぞかせ、あごをしゃくった。
 スゴスゴと四つん這いで後に従う。
洗面所でよく顔を洗う様に言われ、洋子の目を盗んで口中を清めたが、殆んどの汚れは飲みこんでしまっていて手後れである。
 談話室には、今日の留守当番の二人がテレビを見ていた。
二人共顔に見おぼえがあり、一人は庶務課のタイピストで昨日まで毎日唾を飲まされ、尻臭を嗅がされていたなじみである。
もう一人は確か営業部の受付で、かっては毎朝彼に丁寧に挨拶していた女の子であった。
洋子に連れられて四つん這いで部屋に入って来た彼を見下ろすと、二人は顔を見合せてクスッと笑った。
二人におかまいなしに、洋子は彼の首輪をグイと引くと、例の懲罰椅子に仰向けに顔を押し込んだ。首を固定すると今度は今までの尻臭責めの時は自由にしていた両手を椅子の後脚に縛りつける。
「どお、覚悟はいいかしら? 今日からこの椅子でその日の当番から毎朝便器にして貰うのよ。今日は二人の前に私が特別に使ってあげる。お前の喉の筆おろしって言うところね」
 洋子はゆっくりパンティをぬぎ、彼の顔をのぞき込みながら椅子に腰かける。
洋子の大きな尻がスローモーションのフィルムを見る様に目の前に徐々に広がり、顔にピタリと当てられた。
いつものパンティごしの尻と異なり、ヒヤリとする弾力のある肉の感触はこれから始まる新しい転落を暗示していた。
「口を大きく開きなさい」
 洋子の冷たい声に、諦めきった彼は従順に従った。
尻がずらされ仕置がきまると、チョロチョロと汚水が口中に注がれる。
朝、寝起きに多量に飲まされたので、抵抗なしに喉を鳴らして胃に送り込む。
「朝から二度目だから余り出ないわ。でもこっちはたっぷりたまっているわよ」
 洋子は尻を少し上げると前へ移動し、アヌスをぴったりと口に当てがった。
「フフフ、これでお前も完全なブタになるのよ。女の大便を朝食に食べさせられるなんて、とうとう落ちるところまで落ちたものね」
 彼の唇の上で尻が微妙に動き"プスッ"とまずガスが放出される。
頬が、思わずいったんプッとふくれるが、直ぐにガスは鼻に抜け、同時に臭気が頭の中一杯に広がった。
 ウッとうめき声が洩れ、最初のひと塊りをぐっと飲みこむ。
喉ごしの便の味は思わず吐き気を誘い、胃が大きくけいれんするとその塊りが口中に逆流して来た。
しかし唇は洋子の尻にがっしりと蓋されている。
しかも新たな塊りがズルズルと口中に押し込まれて来る。
思わず全身をふるわせるが、両手も首もしっかりと縛りつけられていて自由がない。
もう一度、必死の努力で口中のものを飲み込む。
今度は何とか喉を通りホッとすると、もう女の新しい塊りがガスと共に放出される。
情けなさに涙があふれてこぼれた。
尻を少し上げて洋子がのぞきこむ。
「どお? ブタの御馳走は。飲みこむだけじゃなくてよく味わいなさい。そしてその原料が、お魚かお肉か判る様に努力するのよ。さあ、あともっともっと出るわよ」
 再び肉の口かせがはめられ次々とおびただしい量の便が放出され、彼は必死で飲み込んで行く。味を味わう余裕はとてもなかった。
 あとを舌と唇でていねいに清めることを命じられ、洋子の尻圧から解放されると、今の体験を口に出して描写させられた。自分が如何におぞましいみじめな行為をしたかを自分の口から言わされ、それを彼女等の軽蔑の笑いと共に聞かねばならぬのは、流石に気も狂わんばかりの情けなさであった。
「いいわ、上出来よ。次は当番の二人に使って貰うのね」
「あ、あの、とてもあと二人分は入りそうも
ありません。洋子様の分でお腹が一杯です」
「あらあら、それじゃ栄養失調になってしまうわよ。それにお前には命令を拒否する権利なんかないんだからね」
 新しい白い尻が彼の顔をじゆうりんしたのは、それでも十分程間を置いてからであった。
 チョロチョロと注がれる小水の中にメンスの塩辛い味が混ざり、便は洋子のより硬目だったがそう太くなく、丁度うどんを思わせる感触だが味とかおりは勿論似ても似つかぬものである。
 それでも、時間をかけて休み休み放出されたのが唯一の救いであった。
 もう一人は、便秘とかで小水だけで許してくれたが、その代り午後になってから、便秘が直る様にと一時間余もアヌスを吸わされた。
「もうじき四時だから又バレー部の連中が来るわよ。早くお風呂場へ行って受け入れ準備をするのよ。どお? こうして休みなしになぶられたら、余計なことを考える暇なんかないでしょう。ひたすら自分の身分をわきまえてブタになるのよ。……私はこれで帰るけど、時々見に来て上げるから、しつかり努めなさい」
 洋子の宣告が遠い所から聞えて来る様で、恰かも天の声の様に受けとめられた。
彼の理性は今や半ば殺され、ひたすらにこのみじめな境遇にのめり込んで行く自分を、そして、その中に彼は或る種の陶酔を、今やはっきりと感じとりながら、転落の淵に深く深く沈んで行くのだった。
(完)
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1984年6月スナイパー6,7月号
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2010/06/16