#02屈辱と転落のシナリオ(汚辱のシナリオ) 阿部譲二作
町の有力者の娘と同級になった男は彼女と事々に対立する。しかし彼女は父にせがんで彼の父親の倒産を救うこととし、その代わりに彼に自作のシナリオを渡してその内容通り皆の前で演技することを強要する。その結果、女子ロッカーの中でパンティを舐める姿を皆の前に披露した挙句、彼女の尻を舐めさせてくれと懇願までさせられる。 |
火種
春のうららかな陽射しが校庭に射し込み、始業式を終えて運動場に飛び出してきた生徒
達を柔らかく包んだ。青い空が雲の間からのぞき、さわやかな微風がやっと講堂から解放
された道夫の肌に心地良く感じられる。
人口がやっと一万そこそこのこの町に、この町立の高校が設立されたのは比較的最近のことであった。漸く校内の設備も整っては来たものの苦しい町の財政では自ずから限度があり、勢い町の有力者の寄付で何とか運営されているのが現状である。
従って有力者の子弟は在校生の中でさながら特権階級の様な待遇を得て、わがまま
一杯に振舞っていた。
今日から二学年の新学期が始まるというのに道夫はいささか憂うつである。
ひとつにはこのところ父の帰りが毎晩遅く、しかもむっつりして黙り込んでいることが多い。父ひとり子ひとりのただでさえ淋しい家庭が、春というのに暗い冬の木枯らしが吹き込んで来る様に寒々と感じられた。
父の事業が行き詰まって金策に駈け廻っているらしいことが、時々洩らすつぶやきや頻繁にかかってくる金融業者かららしい電話でのやりとりから道夫にも察せられたが、他に身寄りのない悲しさで相談に行く所とてなく、唯、いらいらしながら見守るしかなかった。
ついてない時は仕方のないもので、今日発表された新しい学級編成名簿には、道夫の名
前のすぐ上に彼の大嫌いな町切っての有力者である田所要造の一人娘、幸江の名があった。一年生の時にも隣の組の幸江がとりまきのグループをひきいて女番長よろしく我がも
の顔に振舞っているのを、いつも苦々しく時には憎しみをこめて眺めていたものだった。
幸江自身は鼻筋の通った色白の美人で、大柄なスラリとしたグラマーな肢体はもう一人
前の女である。道夫の新しいクラスにはその幸江だけでなくその取巻きの女の子達の名前
を次々に見つけ、道夫の憂うつは一層その度を増した。
道夫が幸江とそのグループに決定的ともいえる反感を抱いたのは昨年の夏に遡る。
夏休みのホームワークを片付けるため図書室で勉強しての帰途、人気のない校庭を横切って裏門への近道をたどり運動具等の入れてある倉庫の前を通りかかった時のことである。
内部から何かすすり泣きの様な声と、何やらざわついた人の気配を感じて、道夫は何
げなく戸の隙間から中をのぞき込んではっとした。
中央正面に立ちはだかった幸江の前に、一人の男生徒がひきすえられている。
幸江のとりまきの常連である女の子達がその周りをかこみ、男のこの腕を二人がかりでねじ上げていた。
思わず息をのんだ道夫の目に、男生徒の頭に足をのせ踏みにじる幸江の形の良い足が、そしてミニスカートからこぼれた白いたくましい太ももが飛び込んで来た。
混血ではないかと噂のあったエキゾチックな幸江の美しい顔が幾分上気して、誇らしげに足の下の男を見下ろしている。その様は映画の女賭博師の姉御が見得を切っている様な凄艶な感じさえあった。
動転した道夫は中へ入って注意するどころか、男生徒が誰なのか確認することも忘れ夢中でその場を離れた。
宿直室の教師を伴って再び倉庫へ戻ってくるまでものの5分とかからなかったであろう。教師が扉を引き開け、
「そこで一体何をしているんだ! すぐ外へ出ろ!」
と一同に命じると、彼女は悪びれもせず足もとに横たわる男生徒にひと蹴りをくれて
悠々と戸口の教師の所に近づいて来た。
教師の後にかくれる様に後ずさりした道夫にじろりといちべつをくれると、
「先生、私達何も悪いことなんかしてないわ。あの男が私のパンティを盗んだので皆でお仕置していた所よ。それとも先生は女のパソティを盗む様な男生徒の味方をするつもり?」
「いや……、しかし……、まあほどほどにしてほしいな」
彼女が田所の娘であることを看てとった教師はもう叱りつけるどころか逃げ腰であった。
「ちょっと、谷本さん……だったわね」
教師のあとからすごすごと帰りかけた道夫はギクッとして足をとめた。
「あなたが御注進に及んだってわけね。何れ借りを返してあげるわ。覚えていらっしやい!」
キラキラ輝く大きな目で見据えられ、道夫は何やら背筋がぞくぞくと寒くなる思いだっ
た。
「谷本さぁーん。……道夫さぁーん。……待ってぇ!」
物思いにふけりながら家路をたどっていた道夫はハッと我に返って後を振り返った。
濃紺のセーラー服のスカートが風にまくられるのを防ぎながら小走りに追いかけてくる
桜井登美子の姿が目に入った。とたんに彼の憂うつな心にパッと明るい光が差し込んだ様
であった。
「また一緒の組になれたわね! よかったぁー」
丸顔のふっくらとした登美子の顔には邪気のない笑みが溢れている。
美人というよりまだどこか子供っぽい所の残っている"可愛い少女"といった表現のぴったりする披女だが、体つきはもうめっきり大人びて、刳りの大きいXネックからこぼれる白い肌とふっくらとした胸のふくらみ、それに豊かな腰まわりが幼馴染みの道夫の目にも何となくまぶしかった。
「本当だ! そういえば登美ちゃんとは中学時代からずっと一緒の組だなあ」
家が近所同志で昔から親しく付合っていたためか、ひとりっ子の道夫にとって登美子と
は身内同然の仲だったが、めっきり大人びた登美子がこの頃何かにつけ姉さん振るのが何
となくしゃくの種だった。
「でも、田所さん一派がごっそり入って来たなんて、がっかりね。道夫さんもなるべく彼
女には近寄らない方がいいわよ」
「何だい、もう今から妬いているのか」
からかう様な道夫の言葉に登美子はかすかに頬を染めて、
「まさか! 道夫さんが彼女に誘惑されて家来にされてしまわない様に注意してあげてる
のよ。彼女すごいんだから。噂では今まで男の生徒が何人か彼女に泣かされてるって話よ」
「判ったよ! 大きなお低話さ。それより今度の日曜には映画でも見に行かないかい?
この頃、おやじも留守ばっかりでくさくさしているんだ」
屈伏
田所幸江との対立は道夫の予感通り間もなく現実のものとなった。新学期早々の最初の
ホームルームの時間での学級委員の選出の折である。
この町立高校では委員は年間を通じて学校の生徒側代表として町の教育委員会の主催する懇談会に出席したり、その他町の公式な行事に招待される等華々しい存在となる。
勢い生徒間では表向きは禁じられている事前の票集め工作が活発に行われることが多
かった。
ずばぬけて学業成続が良く生徒間でも人気のある道夫が一年の時に引き続いて選出されたのは当然ともいえる結果だったが、問題はもう一名の女生徒側の委員である。
蓋を開けてみた結果は一票の差で田所幸江が桜井登美子を抑えて当選したのだが、この数日の幸江一派の票集め工作は目にあまるものがあった。
さすがに腹に据えかねていた道夫は立ち上がって議長役の教師に発言を求めると、真向から抗議を申し入れたのである。
一票差の勝利にいささか興奮気味で周囲の仲間と私語を交していた上機嫌の幸江は、道
夫の発言にサッと顔色を変えるとすぐ立ち上がって応戦した。
「谷本さん、事実無根のことで選挙の結果にケチをつけるのは止めてちょうだい! 一体
何を証拠にそんな言いがかりをつけるの?」
気色ばんだ幸江の剣幕に、立ち合いの教師は"まあまあ"となだめにかかる。
しかし道夫はひるまなかった。
「事前の選挙運動は違反の筈です。証拠はありませんが、皆が自由意志で田所さんに投票
したとは思えないんです。そこでひとつ提案ですが、無記名で運動の事実があったかどう
か全員に投票して貰ってはどうですか」
意外に強硬な道夫の意見に教師もしぶしぶ同意した。
その結果は道夫の圧倒的な勝利で幸江は失格、次点の桜井登美子がくり上げ当選となったのである。
解散のあと廊下に出た道夫はトゲトゲしい幸江の声に呼びとめられた。
「谷本さん! あなた、私にうらみでもあるの? 覚えてらっしゃい。私にこんな恥を
かかせて無事にすむと思ったら大間違いよ!」
まともに取り合わず背を向けた道夫は、背後に怒りに然える幸江の視線が突き刺さって来るのを感じていた。
それから三ヶ月余り経った、あと少しで夏休みに入るという或る日のことである。
帰宅した道夫に父が改まって話があると言うのである。
憔すいした父の思いつめた様な顔を見ると、道夫は胸をしめつけられる様な不安を感じた。ぽつりぽつり口ごもりながらの父の話は、果してそれを裏書きする様なものだった。
事業の手詰まりから高利の金を借り、それが雪だるま式に増え、せっぱつまった父は
保証人の印を偽造して、他の金融業者から多額の融資を受け一時しのぎをしたのだが、当てにしていた得意先が倒産したため二週間後に迫った返済期限に対応するすべもなく、万
策尽きた状態にあったのである。
このままだと破産は良いとしても、文書偽造で檻獄に入る破目となり、一生再起の途を
閉ざされることになる。父は一時、自殺すら真剣に考えたと告白した。
あまりの深刻な事態に、道夫はただ茫然とするばかりだった。
が、それからの父の話の意外な展開に思わず耳を疑った。
つまり昨日父は意外にも資金を融通しても良いとの申し出を受け、しかも更に意外だったのは、それが父とは殆んど面織のない田所要造だったというのである。
「田所さんはね、私の文書偽造の件も金融筋のルートを通じて御存知でね、話の成り行き
によっては私の負債をそっくり肩替りしてやろうとおっしゃるんだ。聞けば、お嬢さんがお前と同級で、そのお嬢さんの強い頼みがあったからだそうだ。……私としちゃあ本当に地獄で仏の思いさ。これもお前のおかげだ、良い息子を持って私も幸せだが、田所さんの御恩も一生忘れちゃいかん」
"そ、そんな筈がない。幸江がそんなことをしてくれるなんて!"
道夫は心の中で叫んだ。
「しかも田所さんは私に九州の知合の会社に仕事まで見付けて下さり、今晩すぐにも先方
の所へ発ってくれとのことなんだ。向うでの仕事の様子が判るまで二〜三ヶ月くらいは帰
れないかも知れんが、その間お前の面倒まで見て下さるそうだ。急なことでお前も面食ら
っただろうが、今晩から早速田所さんのお宅へ伺ってくれ」
「そ、そんなことを急に言ったって……第一お父さんがいなくたって、三ヶ月くらい僕ひとりでこの家で暮すくらい別に不自由ないさ。食事は外食すればよいし、いざとなったら登美ちゃんの所で世話になっても良いんだから」
「とにかく、私は今晩の汽車で出発するからお前はこれから田所さんのところへ伺って、向うのお嬢さんにもよくお礼を言うんだ。しばらく田所さんの所に置いて頂くか、この家
で暮すかは向うで良く相談すれば良いじゃないか」
父を駅まで見送ったあと、田所家へ向う彼の足どりは重かった。
父の危難があやうく救われた模様にホッとしたものの、幸江の真意が計りかね、何やら不吉な予感にいたたまれない様な不安な気持である。
田所家の豪華な客間に招じられた道夫は、落着かない思いで女中の運んで来た茶菓子に
も手をつけず身を固くしたままだった。
「やあやあ、よく来たね、谷本君。そんなにしゃちこばらんで、さあ、もっと楽にしてく
れたまえ」
でっぷり太ったあから顔の田所要造は人の良さそうな笑みを浮かべ、立ち上がって挨拶
する道夫を如才なくあしらってどっかりと腰を下ろした。
「固くるしい挨拶は抜きにしてと、オイ幸江、何をしているんだ。早くここへ来て谷本君のお相手をせんか!」
「フフフ 谷本君、今晩は」
見馴れたセーラー服姿とは一変して派手なデザインの真紅のブラウス、それに黒ビロードのゆったりとしたスカートに身を包んでふわりと父の隣のソファに腰を下ろした幸江は
まるで大輪の薔薇の様だった。
「どうも、この度は父が大変お世話になったそうで……」
道夫はまぶしい程あでやかな幸江に圧倒されて視線をそらすと、あわてて要造に向ってぎこちなく切り出した。
「アハハ、君ィ、勘違いしちゃいかんよ。わしはまだ何もしちょらんのだよ。……実は、わしの知合の金融業者から君のお父さんのことを聞いたんだが、幸江がそれを聞きつけてね。……するとどうだろう、こいつ、すっかりのめり込んで来てどうしてもわしに一役買えというんだ。だから今度の張本人はこの幸江さ!」
「そうだったんですか。幸江さん本当にどうも有難う!」
道夫は素直に幸江に頭を下げた。
動機は何にせよ、仮にも父の窮状を救ってくれたことに対してはいくら感謝してもした
りない気持だった。
「あらあら、私にお礼を言うのは少し早くってよ。それじゃ言ってしまうけど、私ただで
谷本くんにこんなことしてあげる気はないのよ。ちゃんと私の交換条件を聞いてからにな
さったら如何が?」
「そうなんだ。こいつ親に似て勘定高くていかん。何か君に頼みたいことがあって、それ
を君が聞いてくれなければ一切話はなかったことにしたいんだそうだ」
「…………」
「まあ、わしとしては、こいつの母親に早く先立たれて男手ひとつで育てて来たひとりっ子なんでね、親馬鹿の様だが何でも無理を聞いてやることにしているんだ。……おう、そう言えば君も父ひとり子ひとりだそうじやないか。それならわしの気持も判ってくれるだろう。まあ、あとは二人でゆっくり話し合ってくれ。……あ、それからわしは来週から何ヶ月か商用でアメリカに出かけるので準備もあるし、君には当分会えんかも知れんな。……まあ留守中すべては幸江を通じて弁護士が代行してくれるから心配はいらんよ」
要造が席を立つのを見送ると、道夫は幸江と二人だけで向い合う形になった。
幸江はテーブルから煙草を一本とると、カチッとライターを鳴らし、フーッと道夫の頭上に煙を吐き出した。
足を高く組み、身をソファにひとしきり深く沈めると、いつもの高慢な幸江がチラッと顔を見せる。
「谷本君もいかが? そうそう、あなたみたいな品行方正な人に煙草なんか勧めちゃいけ
なかったかしら?」
「僕は吸えないんだ。お茶いただくよ」
幸江はじっとじらす様に何も言わずに道夫を眺めて煙草をくゆらしている。
たまりかねて道夫が話しかけた。
「さっきの交換条件っていうのを聞かせてくれないか」
「フフッ、聞きたい? それじゃ教えてあげようか。その代りびっくりして腰を抜かさな
いでちょうだいね」
幸江はニヤニヤ笑いながら、思わせぶりにもったいをつける。
「実はね、私、谷本君にはいろいろうらみがあるの。判ってるわね。だからあなたに思い
知らせてあげるチャンスを待っていたの。女の仕返し三層倍ってよく言うでしょう。でも
私の仕返しは十層倍、いいえ百層倍かも知れなくってよ」
"やっぱりか"
不吉な予感が適中した思いに道夫の胸はさわいだ。
"何をされるんだろう。でも父のためだ、何でも甘んじて彼女の言うなりになろう"
自分に言い聞かせる様に心の中でつぶやく。
そんな道夫の顔をのぞき込む様に心持ち身体をのり出しながら幸江は、
「谷本君にはね、色んなことをやってもらうつもりだけど、まず手始めにね、みんなの前
でうんと恥をかいてほしいの。それもうんとはれんちな真似をして皆に軽蔑される役を演
じて頂くわ」
口許にうすら笑いを浮かべた幸江は、
「ちょっと、谷本君、顔を上げて。私、君にこのせりふを言う機会を待ちに待ったのよ。君の反応を充分楽しみながらお話ししたいの。……そう、それでいいわ。でも何だか顔色が青くなったみたい。心配? そう、無理ないわね。……どんな風に赤っ恥をかかされるのか知りたい?……それとも知るのがこわい?」
幸江の態度はまるでねずみをなぶる猫のそれであった。
「あなたの役割はこのノートに書いてある通りよ。せりふもここに書いてある通りを暗記
してしゃべって貰うわ。ひとことでも間違えたり、ためらったりしたら取引は御破算よ。
判っているでしょう。あなたのお父さんは監獄に行くことになるのよ」
幸江から手渡されたノートには何頁にも渡って何やらぎっしりと書き込んである。
走り読みして行くうちに道夫の顔色がみるみる変っていった。
幸江は予期していた様にそんな道夫をニンマリと笑みを浮かべながら覗き込んでいる。
「待って、ノートを閉じちゃダメ。最後までちゃんと読むのよ!」
突然ノートを引き裂きたい衝動にかられた道夫は先手をとられ、血走った目を再びノー
トに戻した。
頁をめくる手がブルブルふるえ、唇は血の気が失せている。
「ひどい! あんまりだ! こんな真似は死んでも出来ないよ!」
「あら、そう。それじゃ、あなたの手でお父さんを牢やに入れることになるわね。……
それでいいの? あなたみたいに現孝行の息子がね。……フフフ」
"ウッ"と道夫の口からうめき声がもれた。
心中のかっとうを押さえ切れず、突然立ち上がると手を頭に当て、獣の様に部屋を歩
きまわる。やがてそれもおさまり、屈服の瞬間が計れた。
「その代り、その代り、父の借金は本当に……」
「そうよ、あなたが間違えずにその役を演じたらまず一次試験は及第するわけよ。でも
ね、これはほんの手始めよ。あと、もっともっと色々恥ずかしい目に合わせてあげるわ。
君が私の命令に従っている限り、君のお父さんは安奉よ。判ったわね」
冷酷な幸江の宣言が打ちのめされた道夫の耳にキリの様に突きささる。
ポロリと頬に涙が伝わり、あきらめと絶望の中に這夫は低く頭を垂れた。
汚辱
六月の終りとはいえもう野山は夏の装いを終り、道を歩いていてもふと汗ばみを覚える
暖かさである。父が出発して三日間があっという間に過ぎた。
風邪を口実に学校を休んでいた道夫にとって、今日は幸江に指定された"その日"の朝である。そしてそれは夏休みに入る前の最後の授業日でもあった。
彼女から渡されたノートをもう一度パラパラとめくって見る。
あちこち文字がにじんでいるのはこの三日間せりふを暗記しながら、あまりの情けない役割に思わず流した道夫の涙の跡であった。
誰にも会わない様いつもよりかなり早く家を出て学校へ向う道夫の顔は、この三日間の
苦脳にいささかやつれたものの、覚悟をきめたあとの安らぎさえ浮んでいた。
人影のまばらな運動場の片すみに腰を降ろしてぼんやり始業のベルを待っていると、後から、
「谷本さん、早いのね、今日も休むのかと思って心配してたのよ」
幸江のとりまきグループではリーダー格の一人である大柄なグラマーでパレーの選手の
水原洋子と、これも幸江の腰巾着を自認している丸ぽちゃ型の山田敬子の二人がニヤニヤ
笑いながら近づいて来た。
「いかが、あのノートすっかり暗記した?」
と洋子。
「私達みんなで随分苦労して筋書を考えたのよ。さすが良く出来ているでしょう?」
敬子が口を添える。
"そうか。道理で色々な筆跡が混っていた筈だ。幸江のグループ全員が共謀だったんだ
な"
道夫は心の中でつぶやくと共に、今日の演技の当面の相手役がこの二人であることを思
い出して思わず赤くなった。
「フフフ、品行方正な学級委員、谷本さんもとうとう今日でおしまいね。今日の午後から
はいやらしい変態男としてみんなに軽蔑されるんだわ。さぞ口惜しいことでしょうね」
洋子はうつむいた道夫の顔をのぞき込む様にして言葉をかける。
折しも始業五分前の予鈴に、道夫は救われた様にほっとして二人の傍を離れた。
校内図書館の閲覧室の時計が三時をしらせた。
約束の時間だ!
道夫は鉛の様に重い足をひきずって外へ出た。
校舎をへだてて反対側の運動場から、スタートの合図のピストルの音とワーッというにぎやかなざわめきが伝わって来る。
午後からは学期末恒例の全校生による体育競技会が始まっていたが、風邪を理由に欠席した道夫は図書室での自習組に加わっていたのである。
校舎に入った道夫はあたりに気を配りながら、人気のない女子更衣室に入って行った。奥から二列目の教えられた場所に、水原洋子のロッカーを探し当てると震える手で扉
を開く。
折畳んだセーラー服の上に、道夫を嘲笑うかの様に白いパンティがふわりと置いてあった。
それをむづと掴むと扉を閉め、入口と反対の隅にある物置の中に閉じこもった。
三畳程の狭い空間に掃除道具やがらくたがごたごた詰め込まれてはいるが、高窓から
射し込む光で内部は意外に明るかった。
道夫は手に持ったパンティを広げ裏返した。ドキッとする程褐色に染まった汚れが中
央に走り、その部分が気のせいかヌメヌメ光っている様に感じられる。おずおずと鼻に近
づけるとプンと異臭が鼻を刺した。
予想外のひどい汚れにしばらくためらったが、あまり時間のないことに気づき、目をつぶると思い切ってその部分に口を当てた。
むっとする生臭い臭いと、ホロ苦い多少しょっぱい味を複雑な気持で感じとる。
水原洋子の腰骨の張った豊かなヒップが、そしてその奥まった割れ目が脳裡に浮かび頭にカーッと血が上った。
パラパラッと足音がしたかと思うと更衣室がワッとざわめいた。競技会が終って、皆が帰って来たのである。
パッと物置の戸が聞けられ、スッ頓狂な山田敬子の声が響き渡った。
「そこにいるのは誰なの? まあー、谷本さんじやないの!」
「こんな所で何してるの? その顔に当てている布は何? あらあら、女のパンティだ
わ。とにかくこちらへ出ていらっしゃい!」
敬子の大声に、着替えをしかけていた女生徒達が一勢に集まって来て物置から出て来た
道夫をとりかこむ。
たちまち若い女の汗ばんだ体臭がむっとする程あたりにたちこめた。
敬子はうなだれて立ちすくんでいる道夫の手からパンティをひったくると高くかざした。
「ほらごらんなさい! みんなこの汚れたパンティ見てぇ。これを谷本さんが物置の中に
かくれて顔を当てていたのよ!」
そして道夫の方を振り向くと、
「これをどこから持って来たの? それから一体何をしていたの? はっきり皆に言って
ちょうだい!」
「実は……それは……水原さんのロッカーから……」
「声が小さいわ。えっ! 水原さんのパンティですって? それで何をしていたんですっ
て?」
「臭いを……嗅いで……そして……そして舐めて……味を……」
顔を真っ赤に染めてどもりどもり呟く道夫の告白に、クスクス笑う声が広がった。
後ろから皆をかき分け、水原洋子が前に出て来た。
大柄な姿体を包んでいる紺に白のトレーニングウェアの所々に汗がにじんでいる。
「あらぁ、これ私のパンティだわ。ひどいわぁ。あらまあ、汚れた所が唾でべとべとにな
っているぅ。谷本さんって、本当にここを舐めたのね! いやらしい人!」
いつの間にか傍に来た幸江がその言葉を引きついで、
「谷本さん! 顔を上げて。あなたよくこんな恥ずかしいことが出来たものね! それと
もあなた、女のパンティを舐めるのが趣味なのかしら? 学級委員の模範生が聞いてあき
れるわ!」
「あの……女の人のお尻を見ると……なやましくって、もうたまらなくなるんです。まさかお尻の臭いを嗅がして下さいって口に出して頼むことも出来ないもんで、いつもパンティで代用して……それに汚れた所の味が僕には何ともいえない程魅力的なんです」
「あきれたあー。谷本さん、あんたすごい変態ね! いいわ。あなたの言うことが本当か
どうかためして上げる。さあ特別に許すわ! ここで私のお尻を嗅いでごらん!」
幸江はニヤニヤ笑いながら、くるりと道夫に背を向けるとトレパンを素早くずり下げ、
花模様のパンティに包まれた、はち切れそうな双球を惜し気もなく露出する。
腰をぐっと後ろへ突き出し、首をねじって道夫の表情を眺めながら、尻を左右にゆさゆさと振って挑発した。
「どお? 変態さん! これを見るとたまらないんでしょ?」
ぐっと胸にこみ上げるものを抑えながら、道夫はそのヒップの前にひざまずく。
「道夫さん! はれんちな真似は止めて!」
たまりかねた桜井登美子の悲鴨に似た声が
人垣の後ろから道夫の耳に響いたが、それを振り切る様に、彼は眼の前に突き出されたヒ
ップの割れ目に顔を埋めた。
ムッとする饐えた尻臭が、汗と混って道夫の鼻孔を満たす。
と同時にワーッという嘲笑の渦が耳をおそった。
幸江がなぶる様に尻をかすかに前後左右にゆすると道夫の顔がぐらぐら揺れる。
クスクス笑いながら誰かが後ろから道夫の髪をつかんで顔をしっかりと幸江のヒップに押しつけた。
強烈な異臭に頭がくらくらして暫し時間の観念を失ったかの様だったが、やがてぐいと髪が後ろにひかれ頭が上向けにこじ上げられた。
幸江を含め何人かの顔がのぞき込む。
「あきれた。いつまで嗅いでるのよ! いやらしい」
言葉と共にビシッと道夫の頬が鳴った。
痛みにハッとして目を聞くと意地悪い笑みを浮かべた幸江の顔が前にある。
「どお、たんのうした?」
「あの、どうか、どうか味を……お尻をじかに舐めさせて下さい」
ピシリ、今度は反対の頬が鳴る。
「いやらしい男! みんなが見てるのよ! 少しは恥をお知り!」
「どうかお願いです。幸江さんの……お尻の味を……」
「いいわ、幸江さんの代りに私が舐めさせて上げる」
髪がさらに後ろに引かれて、抑向けに倒れた道夫の顔を跨いで太り肉の山田敬子の尻が
スッと降り、道夫の顔前でパンティがくるりとまくられ、いやらしい程大きな白い尻が視
界に広がった。と、思う間もなくぐっと顔に重量がかかり、じっとり湿めった尻の割れ目
が道夫の顔面を覆う。
そしてプンと臭うアヌスがぴったりと唇に押しつけられた。
「さあ、女のお尻がどんな味がするかよく舐めるのよ!」
今迄こらえにこらえていた口惜し涙が敏子の尻の下でどつと溢れ出た。
鳴咽がウッウッと喉の奥からこみ上げて来るが声にならない。
敏子の尻が前後に揺すられ、ねっとり濡れたアヌスが催促する様に道夫の唇をにじる。ようやくのことで気をとり直し、ノートで指示された通り敬子の菊座を唇と舌を使って
ねぶり吸った。
「フフフ、まるで蛸みたいに吸いついたわ。いやらしい! ぺロペロ舐めてるぅ!」
どっと周囲の笑い声が爆発する。
アヌス周辺に付着していた滓が口の中に溶け込み、ほろ苦い軽い酸味のある味が口中一杯に広がり、鼻孔からはすえた異臭が遠慮えしゃくなく侵入して来る。
「さ、もういいでしょ。あとはほかの人に舐めさせて貰いなさい」
すっと尻が上がり、彼をのぞき込んでいる幾つかの顔が、ぼんやりとした視界の中に浮かんだ。
あわてて立ち上がったものの、周囲からの刺す様な視線を意識して身を固くして立ち
すくむ。
「君の念願がかなって良かったわね。敬子に良くお礼を言ったら、フン、その顔はなぁに? ベトベトになって、あら臭い! すっかりお尻の臭いがしみ込んだ様ね。みんなの前でこんなハレンチな真似をして恥ずかしくはないの?」
幸江のあざけりの言葉にもうなだれるばかりである。
「顔を上げてごらんなさい。谷本君」
「どんな味だった? 山田さんのお尻は」
「こんないやらしい男って初めて!」
周囲から口々に興奮した言葉が飛んで来た。
誰かが道夫の正面からペッと顔に唾を吐きかけた。
それが導火線になったと見え、次々と唾が浴びせかけられる。
恥ずかしさで頭に血が上り、顔が火の様にほてった。
あわてて人混みをかき分け、ようやくのことで更衣室の外へ出た。
額から頬、それに首筋にかけてべっとりと吐きかけられた唾がだらだら流れるのを感じながら洗面所にとび込む。
幸い人気もなく、鏡の中に写る自分のみじめな顔を見ると先刻からの数々の屈辱がどっと思い起され、道夫は思わずポロポロ涙を流した。
廊下を通る足音にハッと気をとり直し、顔を清めると誰にも会わない様にそっと校外へ抜け出し家へ急いだ。
自分の部屋に帰りつくとようやく緊張が解けて、彼はベッドに横たわり虚脱状態のままぼんやりと空間を眺める。
この数日の心労で睡眠不足が続いていたのでいつのまにかぐっすり眠ってしまったらしく、しつこく鳴り続ける玄関のベルに目を覚ました時はもうたそがれ時であった。
扉を開けるとそこには同級の木村里子と石塚みどりが立っていた。
二人共、幸江のいわば親衛隊員で、先程のロッカールームの一件では、主役格の山田敬子や水原洋子と一緒に先に立って道夫を罵倒した連中である。
木村里子は水原洋子と同じバレー部員で、大柄な洋子に背丈は及ばないがバネのあるかた太りした身体で、二重まぶたの黒目勝ちの瞳が愛くるしい顔立ちを引き立てている。
石塚みどりは山田敏子に似た太り肉の女で男好きのする顔立だが、厚い唇と切れ長の目がやや品のない、それでいてどこか崩れた感じを与える。
ただ不釣合に大きなバストとヒップはもう成熟した女のそれであった。
「何をぼんやりしているの? 私達をいつまでここに立たせておく気?」
あわてて後ずさりする道夫を押しのける様に、里子が先に立ってズカズカと中へ入って来た。
「さ、早く仕度するのよ。当分ここへは帰れないんだから身の廻りの物を持って行くのよ」
「仕度って……一体どこへ行くんだ。君達なんかに命令されてたまるか。すぐ出てって
くれ!」
気色ばむ道夫の肩を、横からみどりがグイとばかり突きとばした。
「何を偉そうな口をきいてんの! さっきのざまを思い出してごらん。みんなの前でいい
恥さらしたくせに! これからね、君は幸代さんの所に住むのよ。そうね、住むって言うより、飼われるって言った方がいいかしら?」
みどりの言葉をひきとる様に弘子が、
「そして毎日毎晩、幸江さんや私達にたっぷりなぶられるの。どお、口惜しい? そして
今晩はこれから私達も幸江さんの所へ集ってみんなで君を仕込んであげる。それから、い
いこと、私達に反抗したりしたら幸江さんと君の約束はフイになるのよ。判った?」
目の前が暗くなり、気持がまるで奈落の底に落ち込んで行く様に暗たんとして、道夫は
二人の前で力無くうな垂れた。
勝ち誇った二人に代るがわるこづかれながら、道夫は戸棚の奥から旅行用のトランクを
出し着替えをつめ始めた。
嬲られて
突然玄関のベルが短く鳴る。
小窓からこっそり様子をうかがったみどりが小走りに戻って来た。
「桜井登美子よ。何しに来たのかしら? 谷本君出て追い返すのよ。いいこと、私達が来
てることは内緒よ」
「でも……いつも部屋迄上がってるんだ。玄関で追い返したら変に思うかも知れないよ」
「それもそうね。じやあ、こうしましょう。私達は隣の部屋にかくれているから、適当に
あしらって帰すのよ。余計なこと言ったら只では済まないわよ」
催促するようにまたベルが鳴る。谷本道夫はうなづくと立ち上がった。
「やあ、まあ上がれよ」
何となくバツが悪く、登美子の顔がまぶしく感じられる。
無言で道夫の部屋に入った彼女はくるりと振り向くと道夫に向い会った。
キッと一文字に結んだ唇と、いささか緊張した面持ちに目がキラキラ輝いて、どちらか
と言うと平凡な顔立ちの彼女が、オヤと思う程冴え冴えと美しく見えた。
「道夫さん。今日のあの有様は一休何! あんな恥ずかしい真似が良く出来たもんだわ。
私まで恥ずかしくって身休が震えたわ。でも私にはどうしてもあなたがそんな変態だって
信じられないよ 何とか説明してちょうだい」
"ああ、登美子にだけは判ってもらいたい! しかし隣にはあの二人がいる。ここですべ
てを話せば今迄の苦しみが無駄になってしまう。何とかだましおおすしかない"
心の中で呟いた道夫は、
「最近になって、みんな狂ってしまったんだ。女の人を見ると自分でもどうしようもない。
あれが本当の僕さ。君が愛想をつかすのは当然だけど……」
「フーン。突然色気づいたってわけ? いやらしいわ! でもこうして道夫さんの口から
聞くまでとても信じられなかったわ。本当にあきれたものね。軽蔑するわ! そうね、こ
うしてあげる」
ピシッと道夫の頬が鳴った。
はっとしてたじろぐ彼に追い打ちをかける様に、ピシリ、ピシリと登美子の力をこめた平手打ちが襲う。
遂に頭をかかえてうずくまってしまった道夫を、冷たい目で見下ろしながら戸口の方へ歩き出した登美子は、ふと、蓋を聞けたままのトランクに気がつき、
「あら、あなたどこかへ旅行でもするの?」
「あの……今日から田所さんの所へ泊めてもらうんだ。父がしばらく旅行しているもんで……」
「へえー、でもどうして田所さんの家へ? ああ……そう、判ったわ。またさっきみたい
な恥知らずな真似をするのね。え、どうなの?」
力無くうなづく道夫を見つめる登美子の目が、妖しく光った。
「いいわ、行きなさい! 行って幸江にたんとなぶって貰うといいわ。でもその前にここ
であなたを私の手で汚してあげる。さあ、そこへ横になってちょうだい」
意外な事の成行きに、かがんだまゝ身をすくめている道夫の前に立つと、登美子はいきなり足をあげて彼の肩を強く蹴った。
突然の暴力にひとたまりもなく仰向けに倒れた道夫の胸を登美子の足が抑えつけ、続いて胸元に馬乗りに跨がってしまった。
スカートの裾が顔面を半分覆い、意外に重量感のあるヒップが胸を圧迫する。
上から見下ろす登美子の顔が、豊かな胸の隆起の間からのぞき、きたないものでも見るような眼差しが彼の顔を射た。
「覚悟はいいわね。じゃあ始めるわよ」
彼女の尻が顔前でおどると、白いパンティが玉子の皮をめくるように簡単に素早く下ろ
され、同時に視野一杯に広がったヒップがそのまま顔面に押し当てられた。
ツンと異臭が鼻を打ち、昼間の山田敬子から受けた屈辱が脳裡によみがえる。
「どうしたの? 早く舐めて! それとも、敬子や幸江のお尻は舐めるけど、私のは嫌だっていうの? そんな好き嫌いは許さないわよ。どお? これでも? これでも?」
登美子のアヌスが彼の唇にぴたりと当てられたまま、ヒップが顔の上にぐいぐいと押し
つけられる。
お互いに好意を持ち合っている幼な馴染みの登美子にまで、このような辱めを受ける自
分のみじめさを思うと道夫は気も狂わんばかりだった。
しかし登美子のヒップは彼の意志とは無関係に繰返し彼の唇をにじり、屈辱の行為を強
制する。鼻には登美子のじっとり湿った柔らかいクレバスが押し当てられ、熱帯の花の香
りにも似た強烈な性臭が道失の脳の神経を痺れさせた。
尻の下の道夫の唇が夢中で舐め行為を開始したことを感じると、登美子の心は不思議な
優越感と道夫に対する軽蔑の念に満たされ、腰を揺すりながら道夫の顔をさらに蹂躙する。漸く登美子が尻を上げたのは三十分余りもあとのことであった。
彼女がみじめに汚れた道夫の顔の上にペッと唾をかけ無言で立ち去った後も、彼は仰向きのまま茫然として横たわっている。
頭を強く蹴られ我に返ると里子とみどりが立っていた。
「どお? このざま! 登美子にまでなぶられて! 早く顔を洗って幸江さんの所へ行く
のよ! フフッ、それとも登美子の臭いをいつまでも顔につけていたいの?」
無念の涙
宏荘な幸江の邸宅の玄関で、里子とみどりが中へ入ってから、道夫はもう十分以上も待たされていた。
ここへ来る途中、二人はもうすっかり道夫を馬鹿にし切って、彼と連れ立ってと言うよりむしろ囚人をひったてる獄卒のように、トランクを下げておとなしく従う彼を笑いながら突きとばし、或いは女だてらに後ろから蹴って転倒させる等、抵抗を封じられた彼に、再三、無念の涙を流させたのだった。
奥から足音がして若い女中が出て来た。
「皆さんお揃いでお待ちですから、上がって下さい」
靴を脱いで上に上がろうとする道夫を、その女中はクスクス笑いながら押し止めると、
「幸江お嬢様のお言い付けで、この家ではあなたには犬のように四つん這いになって頂き
ます」
「何だって! でも、そ、そんな」
「あなたを犬並みに扱うようにとのことでした。犬が二本足で立って歩くのはおかしいで
すわ。それがあなたにはふさわしいんですって! フフフ、あなた、皆の前で幸江お嬢様
のお尻を嗅いだり、山田様のきたない所をペロペロ舐めたって言うじゃありませんか!
それにこれから皆様でたっぷり……フフフ。お嬢様のお話しでは、そのうち私の番も廻って来るらしいんですよ。さあ早く四つん這いになって! それから皆さんの前に出たら、チンチンして御挨拶しろとのことです」
"もう今から……それにこんな女中にまで……心の中で泣きながら、道夫はぶざまな四つ
ん這いの恰好で廊下を歩き出した。すると、いきなり尻に軽い足蹴を受ける。さすがにカ
ッとした道夫は振り向くと、
「な、なにをするんだ!」
女中はクスクス笑いながら、
「これもお嬢様の御命令ですから悪く思わないで下さい。コレ! ちゃんと手をついて。
そっちじゃない。右の方よ」
続けて足蹴が加えられる。
「クソ! 幸江の奴、どこまでいたぶらせる気だ!」
無念さで目がくらむ思いだが、ヨタヨタ這い進むしか今の道夫にはとるすべがない。
やがて賑やかな笑い声の洩れる応接間に着いた。
息を大きく吸い込むと、道夫は這いながら部屋の中に入る。
「真ん中へ行ってチンチンよ。しつかりね」
女中は彼の耳もとにささやくと最後のひと蹴りをくれて出て行った。
広い応接間に円形にソファが並べられ、幸江を始めおなじみの面々がすわって談笑して
いる。その中央のテーブルが取り除かれた空間に道夫は勇をこして出て行った。四つん這
いのみじめな彼の恰好を見て、ドツと笑い声が起る。
道夫がベソをかきながら中央でチンチンの真似をすると、それはゲラゲラ笑いに変った。
「まあまあ! 谷本さん、ようこそ。とても良くお似合いよ。クックックッ、ついでに三
辺廻ってワンとほえたら? さ、早く」
幸江がおかしくってたまらない表情で、それでも意地悪く声を掛ける。
それに従うと、笑い声が一段と高まった。
「ああ、おかしい。涙が出るわ! 谷本さん、あら、谷本さんなんて呼び名、その恰好にふさわしくないわね。谷本、谷公、どうもぴったりこないわ。え−っと、そうだ、君は舐めるのがお得意の様だから"ペロ"はどうかしら? ねえ、みんな」
「そりゃ傑作だわ。谷本君にぴったり。コレ、ぺロ! 呼ばれたらワンと返事するのよ。それもう一度、ぺロ! そうそう」
「でも何だか元気のない犬ね。ここへ来て私に挨拶しなさい」
幸江は、自分の足許にみじめな四つん這いの姿でにじり寄って来た道夫を、勝ち誇った態度で見下ろすと、ホラ、と素足をさしのべる。
けげんそうに見上げる道夫に、
「あら、犬のくせに挨拶の仕方が判らないらしいわね。ソラ、君の得意技を出せばいい
のよ。そう、私のあんよを舐め舐めするの」
さすがに道夫の目には口惜し涙が溢れた。
しかしそれも幸江の勝利感を満足させたにすぎず、肉づきの良いふくらはぎ、形の良い足首、それに少しばかりうす汚れた足の裏がゆらゆら揺れて披に屈辱の行為を促す。
男の誇りの最後のひとかけらを呑み込む様にごくりと喉を鳴らし、道夫は目の前の足に
唇を寄せた。
「そこじゃないの! 汚れている足の裏を舐めるのよ。かかとから足の指まで、よくしやぶって清めるの」
「あら、くすぐつたい。バカ!」
かかとが道夫の鼻先を突き上げる。
「もっと力をこめて吸うのよ! そう、その調子。あらあら、目に涙がたまってるわ。口
惜しいの? そうね、男のくせに女の足の裏をペロペロ舐めさせられてるんですものね」
「どお、思い知った? でも、今になって後悔してもダメよね。これから君は毎日こんな
目に会うのよ。……さあみんな近寄ってこのざまを見てやってよ」
ピリッと塩辛い味が舌先を刺し、周囲のクスクス笑いが屈辱感を倍加する。
「だんだん上手になって来たわ。今度はこっち」
足が替えられ、再び奉仕が強いられる。
やがて舌の付根がだるくなり、唇がしびれて来た。
「どうやらきれいになった様ね。いいわ、許してあげる。それじゃ谷本君……じやなかっ
た……ぺロちゃん。今度はね。みんなに一人ずつ順番になぶって貰うのよ。この水でうが
いをして、そう、ぐつと飲み込む。さあぐずぐずしてないで、早くお行き!」
幸江の足が邪険に道夫の肩口を蹴った。目がくらむ思いでよろけながら夢我夢中で四つ
ん這いのまま歩き出すと、憐のソファにぶつかり、坐っている水原洋子のスカートの中に
首を突っ込んでしまった。
ドツと笑い声が起る。
「あらあら、今度はどこが舐めたいの? 私のお尻? でもお生憎様! 私、今さっきア
ンネが始まった所よ」
「洋子、丁度良いわ。ぺロの舌をアンネナプキン代りに使ってやるのよ」
幸江の言葉にさすがに洋子も眉をひそめた。
「そりやむちゃよ。いくらなんでも人間の口にするもんじやないわ。それに最初の日はお
りる量も多いのよ」
「いいこと。ぺロはこの家では犬よ。人間扱いはしないのよ。そして自分が犬に成り下が
ったことを骨身にこたえる様に思い知らせてやるの!」
洋子はそれでも何か言い返そうとしたが、思い直すと目にかすかな憐れみの色を浮かべ
て道夫を見下ろした。
「それじゃ、あきらめるのよ」
尻を浮かしてアンネ用のパンティを下ろすと身を前に乗り出し、浅くソファに腰かける
と膝を聞く。
無言のまま右手で道夫の髪の毛をつかむと手前に引き寄せ、彼の顔を股間にぴったりとはさみ込み位置を調整すると、今度は両ももで頭をグッとしめて固定した。
女とは言え、スポーツできたえた筋肉は道夫に身動きひとつ許さない。
いきなり視界が真暗になり、強烈な臭気が鼻を奪うと同時に、彼女のクレバスの暖かい柔肉が彼の唇を覆う。
「さあ、そこをそっと舐めるのよ」
洋子の声に覆いかぶさるように、
「舐めるだけじゃだめよ。強く吸うのよ! 女の汚れ物をたっぷり味わうの。そして身も
心も穢れに染まるのよ!」
と幸江の非情な声。
同時に彼女の手が道夫の喉に当てられ、その動きを確かめようとする。
「さ、早く、それとも契約を破棄したいの?」
あきらめの念がしびれた頭をかすめ、道夫は言われるままに舌を動かし、やけっぱちで
思い切り吸い始めた。
ズズッと音がして思ったより多量の汚物が口に入り喉を焼く。
苦みと塩辛さの混った濃厚な味が口一杯に広がり、"ウッ"と吐き気がこみ上げる。
と同時に生臭い悪臭が鼻に抜け、一瞬、気が遠くなった。
"ゴクッゴクッ"と彼の喉が鳴るのを確かめると幸江の頬に冷笑が浮かぶ。
それは拷問に似た苦痛の運続であった。
漸く肉の締め木から解放された時は、流石に彼も口を痴呆のように開け、へたり込んだまま荒い吐息をつくばかりである。
「まあ、赤鬼ソックリね。不潔だわぁー」
「あんなきたないものを口にするなんて、犬以下よ。いやらしい男!」
周りから口々にあざけりの言葉が浴びせられる。
「さあ、早く洗面所に行って顔を洗ってらっしゃい」
洋子の助け舟に救われて、道夫は転げるように廊下に這い出した。
そのとたん、半開きのドアから仲間と一緒にのぞき込んでいた先程の若い女中のまたぐ
らに丁度首を突込んでしまう。
女中は"キャッ"と悲鳴を上げて飛び退いたものの、クスクス笑いながら洗面所へ先導
してくれた。
「まあまあ、その顔、哀れなもんね。あんなになぶられてよく我慢出来るものだわ」
「きつと、この男変態なのよ。ホラあるでしょう。女にいじめられて喜ぶの。ソラ、マゾ
って言うのかしら」
顔を洗っている道夫の耳には、後ろの二人の女中の会話がいやでも聞こえて来る。
"クソ! こいつらにまで馬鹿にされて!"
煮えくり返る胸中を抑えて再び応接室に這い戻った。
ドアを頭で押し開けて中へ入ったとたん、フワリとスカートの裾が目の前でひるがえっ
たかと思うと、先程道夫の家へ石塚みどりと一緒に押しかけて来た木村里子が、いきなり
彼の背中に跨がった。
「今度は馬になるのよ。ハイドウ、ハイドウ、さあ、ぐるっと廻って!」
そう大柄ではないが筋肉の発達した彼女の尻が、意外に重く道夫の背中にのしかかり、太ももが腹部をしめつける。
ともすればよろけそうになりながら、彼は中央の空間を何回も廻らされた。
途中、みどりや敬子がソファに坐ったまま、前を通りすぎる彼の頭を足蹴にする。
そのたびに倒れかかり、背中の里子が派手な嬌声を上げ、皆がどっと湧いた。
口惜しさと息切れの苦しさで、道夫はとうとう目がくらんでうつぶせにへたり込んでし
まった。
邪けんに仰向けに転がされ、何とか起き上がろうとする彼の肩口を足で押さえて、幸江
の顔がのぞき込んだ。
「少し運動したので喉が乾いたでしょう? さっきの洋子の汚れ物はどんな味がしたの?
口直しに今度はいいものを飲ませて上げる」
幸江の両足が披の顔を大きく跨ぎ、花模様のパンティがスルッと滑るように下ろされる
と、フランスバンのような幸江の尻が落下して来た。
ほのかなかげりを帯びた柔らかいクレバスが彼の鼻と口を覆う。
スカートがたぐり上げられ、幸江のいたづらっぽく輝く瞳が、彼女の股間から僅かにのぞく彼の目を見下ろした。
「さあ、これから君は私のおしっこを飲むのよ。どお? どんな気持? 女性ホルモンが
たっぷり入っているわ。君もこんなに女になぶられたんだから、男の資格ゼロよ! これ
から毎日私のホルモンを飲んで女に変身するといいわ。さあ、口を大きく開けて! 少し
でもこぼしたら、また他の人の分を飲み直させるわよ」
あごが外れんばかりに大きく聞かれた彼の口の中に、汚辱の液体が少し宛注がれ始めた。
独得の臭気が口一杯に広がり、ほろ苦い液を味わう道夫の胸がやりきれない無念さで満たされる。
彼の喉に注がれる液流の量が加速度的に増え、夢中で飲み干そうと努めたが、ごく僅かな量が口の端からツーと糸を引いて顎から首筋に流れ込んだ。
それでも彼女は多少、量をコントロールしていると見え、とぎれかけたかと思うとまた
流れ込んで来る。
クックックッと満足げな幸江の含み笑い。
「終ったわ。さ、あとをしっかり舐めてきれいにするのよ。そお、その調子よ。フフフ、 これで君は完全に私に征服されたってわけね。男のくせにこんなハレンチな真似をして よく恥ずかしくないわね。どお? 顔を良く見せてごらん」
さすがに幸江の視線をまともに受け止めかねて顔をそむけた道夫の目から、新たな口惜 し涙がこぼれる。
「まあまあ、やっぱり恥ずかしいのね。……アラッ、お前少しこぼしたのね!」
襟首のしめりを目ざとく見つけた幸江は、
「お気の毒だけど、約束通りやり直して貰うわ。さあ、誰かもう一度今すぐ飲ませてやっ てちょうだい」
「そ、そんな! もうかんべんしてくれ!」
あわてて身を起こそうとした道夫の胸を、石塚みどりの足がぐいっとふみつけた。
「おっと起き上がっちゃダメ! 今度は私が征服する番よ。あきらめておとなしくするの
よ」
いやらしい程発達した大きなヒップが道夫の顔面を捕える。体臭が余程強いと見えて、
強烈な臭気が道夫の鼻を襲った。
「フフフ、どお、私のお尻は? お気に召して? さあ今度はちゃんと飲めるわね」
じっとり湿った柔肉の割れ目からチョロチョロと汚水が注入され口中に溢れる。
先程の幸江の味より濃厚で、吐き気を抑えて飲み下すのがやっとであった。
二人分の排泄液で道夫の胃はふくれ上がり、たて続けに臭いゲップが出る。
「どうやら満腹したようね。夏休み中に私達五人分を続けて飲めるように修業するのよ。
勿論私の分は毎日全量飲ませるわ。ま、そんな恨めしそうな顔をして!」
幸江の宣言は、道夫を完全に打ちのめしてしまった。
「ぉ嬢様、お食事の用意が出来ました」
女中の言葉に一同が腰を上げ、道夫は皆の後から四つん這いで従う。
豪華な食堂の正面に席を占めた幸江の足許に土下座させられた道夫の口に、幸江の足指にはさまれた肉片がつきつけられた。
「お上がり。犬のように口だけで食べるのよ」
ぐっとこみ上げるものを抑えて幸江の足を口にふくむ。
幸江が口から吐き出した脂身のねっとりした小片をごくりと飲み下すように喉を通すと、続けて山田敬子が筋肉の部分を床にぺッと吐き出し、笑いながら道夫に食べろと命ずる。
床に追いつくばって口を動かすみじめな姿に、全員から嘲笑が浴びせられた。
「今度は、チンチンしてえー」
先程は道夫に多少同情的だった洋子までが、くしゃくしゃにかみ砕いたつけ合わせの
野菜を丸めて宙にかざす。犬そっくりのチンチン姿で口を開ける道夫の涙でベトベトの顔が、みじめさを通り越してこっけいでさえあった。
「ああ、おかしい! 谷本君、とってもお似合いよ」
給仕に出入りする女中達も思わずプッと吹き出す。
一同にゲラゲラ笑われ、道夫の顔は真赤に染まっていた。
食事の間、そして食後の幸江の居間でのくつろぎの間も、執拗ないたぶりが次々と加えられたのである。
舌の奉仕
やがて時計が九時をまわると、洋子以外の三人は幸江の寝室の隣の和室に泊ることになり、タクシーで洋子を送り出したあと漸く寝仕度にかかった。
幸江の寝室に連れ込まれた道夫は、そこで幸江のセックスに奉仕することを言い渡されたのである。
「いいこと! 舌と唇を使って私を良い気持にさせるのよ。間違っても歯を立てないこと。それからお汁は全部飲み込むのよ。少しでもサボったら承知しないわよ」
ベッドに腰をかけ、ピンクのネグリジェの裾をはだけて足を組んだ幸江の足許に、四つん這いのまゝうずくまっている道夫の背がふるえ、ウッウッと鳴咽がこみ上げる。
「いくら泣いても許さないわよ。さあ顔を上げて始めるのよ」
「フフフ、目をつぶっているわね。いいわ、恥ずかしくって目を開けていられないのならそれでもいいわ。さあ舌を出して! そおそお。じや、スタートよ」
幸江の手が道夫の髪をつかむと、ぐいと彼の頭を跨間にひき寄せる。顔面がピタリと彼女のクレバスに密着し、太ももが両耳を締めつけた。早くも分秘液でじっとりしめったその箇所は、むせかえるような臭気を放っている。
思わずウッとうめき声が出たが"早く"の声に舌を夢中で動かし始めた。披女はゆっくり身体をベッドに沈め、立て膝のまゝ彼の奉仕を楽しむ。
長い長い時間が経ったように感じられたが、実際はものの三十分位だろうか。
彼女の太ももがけいれんし、頬骨が砕けんばかりに締め上げられた。
フウッと深い息をついた幸江は、
「初めてにしちゃ上出来よ。コラ! まだ終ってないのよ。しばらくアヌスを吸って! そこも感じるのよ。フフッ、鼻がくすぐったいわ。どお? 男のくせに女のセックスにこんな形で奉仕させられるなんて、想像したことあって? 毎晩こうして使ってやるから有難く思けなさい」
しばらくすると又、頭がぐいと引き上げられ締め木にかけられる。
「もう一度アンコールよ」
無念の涙を抑えながら、再び屈辱の奉仕が繰り返された。
幸江の背が再び弓なりに反ると、暫くして、物憂げに彼女は道夫に後始末を命じた。
ひとしきり分秘液をすすり込むと、漸く道夫は彼女の跨開から解放された。
「さあ、隣の部屋へ行ってみんなに使って貰いなさい」
幸江はくるりと寝返りをうつと、スヤスヤと寝息を立てた。
和室の三人は寝床には入っていたが、まだおしゃべりに余念がない。幸江の寝室から扉を頭と肩で押し開けて道夫が這い込んで来ると、ピタリと話し声が止まった。
「あら、どうしたの、その顔、何? ベトベトだわ」
「あの……幸江さんが皆さんに使って貰えって……」
「使うって、君の何を使うの? 幸江に一体何をされたの?」
「あ……の……今まで舌で奉仕させられて……」
三人共、一せいに笑い声をあげた。
「なあーんだ。君の舌を使えばいいのかぁ。でも可哀そう! 今まで幸江にそんな真似さ
せられて、よく黙って言うこと聞いたわね。それに今度は私達に自分から奉仕したいって
言うの? あ、そうか、それも幸江の命令ね」
山田敬子は今度はさすがに哀れを催したと見え、幾分同情的である。
「アラ、使ってくれって言うんだから何も遠慮することないわ。ホレ! ぺロ! 私が最
初に使って上げる。ふとんの裾からもぐり込んでおいで! そうそう、いい子ね」
みどりのひんやりした太ももが彼の頬をはさみ、目のくらむような異臭をこらえながら
奉仕が始められた。次いで里子が、そして最後に敬子迄が道夫の頭を跨間にはさんで舌の
奉仕を強いたのである。最後の敬子に解放された時はもう深夜だったが、まだ目覚めていたみどりにつかまって再びアンコールを命ぜられた時は、道夫の舌も唇も半ばしびれて感覚が失われかけていた。
こんしんの力を舌にこめてみどりへの奉仕を終えると、道夫は哀れにも彼女の跨問に顔を挟まれたまま深い眠りに陥ってしまった。
突然髪の毛をつかんだ手がぐいぐい道夫の頭を揺する。
うつぶせになって、みどりの秘所に鼻を突込んだ形で前後不覚に眠りこけていた彼は、ハッと気がつくとあわてて舌の奉仕を再開しようとした。
みどりの膝が立てられ、ふとんが少し持ち上げられると、カーテン越しの朝の光がかすかに射し込み、暗闇の中で一夜を過した道夫の視力を蘇えらせた。
ひやりとした室内の空気が、みどりの強い体臭を長時間呼吸させられていた身には何と言っても新鮮である。
「フフフ、まだ舐めるの? お前も好きね。もう朝だからそれは晩までおあづけ! でも
昨晩はよく働いたから御褒美あげる」
みどりは道夫の顔を股にはさんだまゝ、むっくり身体を起こすと向きを変えて彼の顔の
上に坐りこんだ。
尻をもぞもぞ動かしてアヌスで彼の鼻孔をぴったりととらえると、いきなり勢いよく放屁した。
"プスッ"
にぶい音がして道夫は鼻孔から脳天に貫くような衝撃を受けた。
背が弓なりにのけぞり"ウウッ"と呻き声がみどりの尻の下から洩れる。
目がくらむ様な屈辱に、みるみる涙があふれた。
暫く、そのまゝの姿勢でたっぷり余韻を味わわせて、おもむろに尻を上げる。
涙に濡れた彼の顔を、里子と敬子がゲラゲラ笑いながら横からのぞき込む。
「どお? みどりの臭いは? あら、彼ったら涙を流して感激してるわ。フフフ」
「まあまあ、何をしてるのかと思ったら、女 にオナラを嗅がされるなんて、ほんとに最低の男ね!」
いつの間に来たのか幸江の声がする。
「谷本君、私の御賛美いかが? もうひとつフロクをつけて上げるわね」
再び尻が彼の顔を圧し、間もなく再度の注入が行われた。一発そしで一寸間を置いて又一発。その度に道夫の身体が痙れんし、四人の笑い声が耳を刺す。
「さあ、朝のおつとめよ。ついてらっしゃい。おっと立ち上がっちゃダメ。この家ではいつでも君は四つん這いよ」
幸江の後に従って廊下に出る。全面タイル張りの洗面所の奥にある洋式トイレに連れ込まれた。下には毛足の長い敷物が置かれ、便器の前横にたっぷりと空間をとったぜいたくな設計である。ついうっかりパンティを下ろして便器に腰かけようとした幸江は、
「あら、危い所、君のこと忘れるところだったわ。さあ、そこへ仰向けに寝るのよ」
豊かな幸江のヒップが道夫の顔面に接し、じっとりしめった尻割れが彼の鼻と口を覆う。
この屈辱の姿勢、それにこの独得の臭気ももう何回目だろうか。
唇にぐいぐい押しつけられるアヌスが無言のうちに屈服を命じた。
抵抗する気力もなく彼女の菊座を吸い味わいながら、道夫は女に征服されていると言う実感がつくづく身にしみ渡るのを覚えた。
「いいわ、その味を忘れないようにするのよ。さあ、今度は飲むの。昨夜みたいにこぼさないように注意してちょうだい」
彼女の尻がスッとずらされると、半開きの彼の口の中に汚水が注がれた。昨夜のまだ舌に残る味を予期していた道夫は、意外に濃厚な朝尿の味と一だんとしつこい臭いに思わずビクリと身を震わせた。
しかしそのうち次第に急いを増した流れをこぼさぬように胃に送り込むため、精一杯喉を動かしているうちに、彼は一種不思議な陶酔状態に落ち込んで行った。
「終ったのよ! ぼんやりしないであとを清めて!」
ハッと我にかえると、舌を動かし、しめりを吸う。チューと音がして幸江の満足そうなクスクス笑いが耳に入ると、どっと屈辱感が押し寄せて来た。
尻を上げて便器に腰かけると、幸江は足許に横たわる道夫の額を素足で軽く踏み、身を起こそうとした彼の動きを止める。
かすかにいきむ吐息が彼女の口から洩れ、ポチャンと水音が続き、それが何回か繰返された。
衣ずれの音と共に彼女の尻が再び道夫の顔面に据えられた。プンと激しい異臭が鼻をつき、目前に迫る白い尻の割れ目にびっくりする程多量に付着した褐色の糊が、匕首のように彼を脅かした。
「クックックッ、いかが? 私のトイレットぺーパーの役をさせられる気持は? よく味わいながら清めるの、そお、その調子よ。一週間程したら、後仕未だけじゃなくて全部君の口の中にするんだから。その時から君は私の完全な便器になるのよ。楽しみにしてらっしゃい」
「私ね、君がこうして私の手で少しづついやしめられ、辱められて、涙を流しながら転落して行くのを見るのが楽しいの。一気に最低の状態に落ちちゃあまりにあっけないもの」
懸命になって不潔感をこらえ、ねっとりした汚物を唇ではさみ込み口の中に吸い取る。
刺すような味が喉にまで達し、気の遠くなる程の臭気が鼻腔を満たす。唾にとけた汚物をごくりと飲み込むと吐き気がグッとこみ上げ、それをこらえるのと屈辱感とで、今迄抑えていた涙が溢れて来た。
舌で最後の仕上げをすると漸く許されて身を起こした。
幸江に従ってトイレを這い出すと、目の前に里子の足が立ちはだかっている。
「フフッ、気の毒だけど君はトイレに逆戻りね。里子にも私と同じように奉仕するのよ。敬子とみどりにも順番にここで君を使うように伝えておくわ。少しでも言う通りにしなかったり、奉仕のやり方がみんなの気に入らなかったら契約も御破算よ」
幸江のあまりにも非情な言葉に、先程から彼女の辱めをやっとの思いで耐えて来た道夫も、さすがに顔色を変えた。
「ひ、ひどいじゃないか。こんなにがまんして君達の言いなりになって来たのに。一体どこまでなぶれば気が済むんだ。一体……」
こみあげる鳴咽に言葉が消える。
「頭が高いわよ!」
幸江の足が上から道夫の首筋をとらえ、そのままぐいと床に押しつけた。
「君はね、どんなにもがいたってもう私達の奴隷なのよ。そんな偉そうな口をきける身分じゃないわ。……おやじさんを監獄に送りたくなかったら、気をつけることね。……この夏休みの間、それこそ少しの休みもなしにみんなでなぶってやる。私一人の時は女中達に手伝わせるわ。……そうだ、今晩はみんな家へ帰る予定だから、私に夜の奉仕をしたあとは女中部屋へ行きなさい。フフフ、当分君はうちの女中の股倉に首を突っ込んだまま眠ることになりそうね」
首を抑えている足にぐっと体重がかかり、一瞬息が止まって呻き声が洩れる。
幸江の口から予告されたこれからのみじめな日々を考え、道夫は目の前が真暗になった。
「さあ、中へ入るのよ」
里子の足蹴をうけてトイレの床にへばりついた彼の目から、何度目かの無念の涙がホロホロとこぼれた。
「さあ、こぼさないでね」
里子の尻が涙にかすむ視界をふさいで、屈辱の行為が繰返される。次いで敬子が、そしてみどりが、彼を汚辱の底に深く深く突き落として行く。
めくるめく思いの中で、彼は先程経験した一種の陶酔感に浸って、次第に変身して行く自分をはっきり意識するのであった。
(完)
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1984年2月スナイパー2,3月号(スレイブ通信8号に再掲載)
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2010/06/02